有価証券報告書-第122期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(4) 【役員の報酬等】
<報酬委員会の概要及び活動内容>当社は、2019年6月25日の株主総会をもって指名委員会等設置会社に移行した。報酬委員会の委員(委員長を含む)は、4名全て独立性を有する社外取締役としている。当委員会は、法定の権限である取締役及び執行役の個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針、並びに取締役及び執行役の個人別の報酬等の内容を決定する権限を有している。
2020年度は合計14回の報酬委員会を開催し、全委員とも出席率は100%であった。
当事業年度における、当委員会の活動には以下が含まれる。
・ 取締役及び執行役の報酬に関する方針の決定
・ 報酬水準検討のためのベンチマーク企業を選定、外部第三者専門機関の調査結果も踏まえた報酬水準の審議
・ 取締役及び執行役の当事業年度の報酬額及び個人別の報酬等の決定
・ 新長期インセンティブ報酬制度の決定と導入
当社は報酬委員会において、報酬方針及び規則を策定し、また透明性の高い議論を行うことにより、報酬ガバナンスのより一層の向上を図っている。当委員会は、当事業年度において、主に次の観点に留意して議論を行った。
・ 報酬委員会の決定は公平で一貫性があり、改善されたガバナンスと透明性に寄与する方針・規則に沿ったものであること
・ 報酬委員会の決定に際して、当社の置かれている事業環境や、グローバルな競合との関係性を適切に考慮すること
<報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針>① 方針の決定の方法
当社は、会社法に従い、報酬委員会が取締役及び執行役の個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針を定める。
② 基本方針
当社の役員報酬は、顧客、株主、事業を展開する地域社会、従業員といった当社のステークホルダーに最大限の価値をもたらすべく、その価値創造に向けて動機づけられるよう設計されることを、基本方針とする。かかる方針を踏まえ、取締役及び執行役の報酬等は、以下の原則を総合的に勘案して、決定するものとする。
<役員報酬の内容>① 全体像
・ 当社は、2020年度から2023年度までの期間を対象とした事業構造改革計画「NISSAN NEXT」に取り組んでいる。
「NISSAN NEXT」は、当期間での確実な実行により当社の回復基調を確かなものとし、さらに、将来の課題にも対応できるような持続的な事業の回復に繋がるよう、設計されている。
・ 上記計画に沿って、持続可能な中長期の企業と人材の双方の成長を目指す。役員報酬についても、その実現に対して動機付けられることを重視して設計した。
・ 当社は「NISSAN NEXT」の定量的目標である財務目標について、会社を成長軌道に戻すために必要とされる指標を抽出し、目標設定をおこなった。また、社員の長期的な成長に欠かせない要素である日産ウェイとの整合性を持って、目標を達成しているかどうかを評価する。
・ 「NISSAN NEXT」の目標達成が見込まれた時点においては、将来の持続的な成長を確保するための新たな目標を設定する。
・ 報酬委員会では、2019年度をもって株価連動型インセンティブ受領権の付与を廃止し、それに代わる新たな長期インセンティブ報酬として、2020年度より株式報酬制度である譲渡制限付株式ユニット(RSU)を新規導入した。
RSUは、役員の利益を株主の利益と一致させるとともに、中長期的な当社への貢献意識の向上のために効果的な株式報酬制度であり、「NISSAN NEXT」の目標を反映するように更新された既存の業績連動型インセンティブ(金銭報酬)とともに運用される。2020年度の長期インセンティブ報酬は、これら2つのプログラムで構成されており、以下でさらに詳説する。
② 報酬水準の考え方
報酬水準の検討にあたっては、報酬のベンチマーク結果を評価・検討している。当社は、一般的な基準を適用して選択した企業をベンチマーク参照先としている。この参照先企業は、当社と同様の事業規模と事業展開上の複雑性を有するグローバル企業としており、当社と競合する主要な自動車会社を含んでいる。
③ 報酬の構成
i) 取締役
取締役の報酬は、基本報酬に、各人の役割に応じて委員会参加報酬や委員長報酬、筆頭社外取締役報酬等を加算した固定報酬のみとしている。執行役を兼務しない取締役には、業績連動報酬である年次賞与及び長期インセンティブ報酬は支給しない。執行役を兼務する取締役には、取締役としての報酬は支給しない。
ii) 執行役
執行役の報酬は、固定報酬である基本報酬、変動報酬である年次賞与及び長期インセンティブ報酬から成る。また、執行役のうち対象となる者については、当社の方針に基づき海外出向に伴う手当がそれぞれ支給される。
(a) 基本報酬
執行役の基本報酬については、グローバル企業の報酬のベンチマーク結果や外部専門機関の調査結果に加え、個々のスキルや経験、社内の職責及び当社の業績を鑑みて設定している。基本報酬は毎年見直され、その昇給には前年度の業績と貢献を反映している。
なお、執行役については、コロナ禍による事業への影響を踏まえ、当事業年度の一定期間の基本報酬につき減給としている。
(b) 変動報酬
執行役の変動報酬は、毎年の業績に応じて支給する「年次賞与」と、株主価値を高め会社の持続的な成長と収益性を高める行動をとるよう動機付けることを目的とした2種類の長期インセンティブ報酬で構成される。この長期インセンティブ報酬は、非業績連動報酬である「譲渡制限付株式ユニット(RSU)」の付与と、目標が達成された場合にのみ支払う「業績連動型インセンティブ(金銭報酬)」の授与で構成される。この結果、当社の変動報酬プログラムは、経営陣が単年度と中長期の両方の業績目標の達成に対し動機付けられるよう設計されている。
(c) 年次賞与
業績連動報酬の年次賞与は、基本報酬に役位ごとに設定されている一定の倍率を乗じた上で、持続可能な成長の実現を示すための評価指標の達成率を乗じて算出し、支給する。2020年度については、「NISSAN NEXT」の初年度として重点的に取り組むべき事項に対応し、下表の6つの評価指標を選択した。
「NISSAN NEXT」の初年度は、営業利益目標水準の達成に注力する計画である。従って、限界利益に焦点を合わせた。固定費も利益目標を達成するための重要な要素であり評価指標とした。なお、ここでの固定費の定義は、当社内部で制御可能な項目として重点管理するため、財務諸表で使用される定義とは異なるものを当社にて設定している。
自動車事業における健全なフリーキャッシュフローは、当社の持続可能な成長の実現のために重要な指標の一つである。市場占有率については、当社が算出した世界需要車両数に対する当社の販売台数に基づいている。品質については、品質保証及び顧客満足度からなる内部管理目標である。従業員エンゲージメントは、従業員意識調査にて参照するグローバル企業の外部ベンチマーク値に基づいている。
[執行役の年次賞与のウェイト]
[年次賞与の支給率モデル]
年次賞与の支給額は、目標の総合達成率及び役位ごとに設定されている一定の倍率を基本報酬に乗じて算出する。目標の総合達成率は、達成率50%に相当する閾値(下限)と達成率125%に相当する閾値(上限)をもとに算出された評価指標ごとの目標達成率に、評価ウェイトを乗じた値の合計である。なお、達成率50%に満たない指標は、当該値は0と扱う。

(d) 長期インセンティブ報酬
当社の長期インセンティブ報酬は「譲渡制限付株式ユニット(RSU)」及び「業績連動型インセンティブ(金銭報酬)」の2種類で構成しており、RSUは長期インセンティブ報酬全体の40%を、業績連動型インセンティブ(金銭報酬)は60%を占める。業績連動型インセンティブ(金銭報酬)は、年次賞与で参照する単年度の業績指標ではなく、複数年にかかる業績指標により評価することで、持続的な長期業績の達成を促進するように設計されている。また、業績連動型インセンティブ(金銭報酬)はRSUの1.5倍になるよう意図的に設計されており、「NISSAN NEXT」の目標達成に重点を置いている。
[長期インセンティブ報酬の導入目的]
長期インセンティブ報酬は、次の4つの目的をサポートするように設計されている。
(1)特に今後3会計年度にかけて「NISSAN NEXT」に関連する業績の達成を促進すること、(2)役員の利益を株主の利益と一致させること、(3)株主価値の創造を役員に動機付けること、(4)当社の主要な人材の長期的な定着を促進すること。
[長期インセンティブ報酬の概要]
譲渡制限付株式ユニット(RSU)は、当社が定める期間(以下「対象期間」という)中の勤務継続等を条件として対象者毎に予め定める数の当社普通株式(以下「本交付株式」という)に相当するRSUを付与するものである。対象期間は3年間とし、このRSUを付与後3事業年度にわたり3分の1ずつ権利確定させ、本交付株式を支給する。
なお、対象者による重大な不正・違法行為等があった場合には、当社は本交付株式の割当てを受ける権利の剥奪や割当て済みの当社普通株式の返還請求を実施することができる。この方針(クローバック)は、コーポレート・ガバナンスを改善するための当社の取り組みの一環として実施される。本方針はRSU規程に明記した上で対象者に配布・周知する。
業績連動型インセンティブ(金銭報酬)は、将来の「持続可能な成長」の実現のため特に重要である、営業利益、自動車事業のフリーキャッシュフロー、市場占有率を評価指標として設定し、各評価指標の2020年度から2022年度までの3事業年度での目標の総合達成率及び役位ごとに設定されている一定の倍率を基本報酬に乗じて算出し、支給する。なお、目標の総合達成率の算出方法は年次賞与と同様であり、達成率50%に相当する閾値(下限)と達成率125%に相当する閾値(上限)をもとに算出された評価指標ごとの目標達成率に、評価ウェイトを乗じた値の合計である。なお、達成率50%に満たない指標は、当該値は0と扱う。
市場占有率については、年次賞与で既述した、当社が算出した世界需要車両数に対する当社の販売台数に基づいている。
[執行役の長期インセンティブ報酬のウェイト]
[長期インセンティブ報酬の支給スケジュール]

(e) 執行役退任時の報酬等の決定方針
当社は、執行役が、当社を退任した後一定期間、競業避止義務及び守秘義務等の義務を遵守すること、並びに経営の適切な移行を促進することを目的とする、退任する執行役に対する退任時報酬等の決定方針を有している。
当該方針は、当社の報酬委員会の裁量により運用されており、報酬委員会は、執行役退任時の事実関係及び状況を踏まえて、退任時の支給の有無及び金額を決めることができる。
<役員区分ごとの報酬等の総額、報酬等の種類別の総額及び対象となる役員の員数>(単位:百万円)
(注)1.当事業年度に費用として、引当計上された額である。
2.RSUは、非金銭報酬等・非業績連動報酬であり、当事業年度に執行役に付与したRSUについて、付与後3事業年度にわたり支給する株式の総数は最大で約858千株である。
3.①役員が、当事業年度に、過去の事業年度に付与された株価連動型インセンティブ受領権を行使して当社から受けた金銭の額から、②過去の事業年度に係る有価証券報告書に開示した当時の株価に基づく当該株価連動型インセンティブ受領権の公正価額を控除した額を記載している。
4.報酬委員会が当社の内規その他の基準に基づき決定した、執行役6名に対する税金及び税金調整手当、住宅手当、その他のフリンジ・ベネフィット相当額等の合計額を記載している。
5.当事業年度に執行役を退任した1名を含んでいる。
6.執行役を兼務する取締役は執行役の区分にて掲載している。
7.取締役を兼務する執行役に対しては、執行役としての報酬等のみを支給している。
8.役員に外貨建てで支払われる報酬等については、年間平均レートを用いて円換算した額を開示している。
<役員ごとの連結報酬等の総額等 但し、連結報酬等の総額1億円以上である者>(単位:百万円)
(注)1.当連結会計年度に費用として、引当計上された額である。
2.RSUについて、当連結会計年度に費用計上した額は一定の失効見込額が控除されているが、上記には含めて記載している。
3.報酬委員会が当社の内規その他の基準に基づき決定した、対象執行役に対する税金及び税金調整手当(240百万円)、住宅手当、その他のフリンジ・ベネフィット相当額等(119百万円)の合計額を記載している。
4.2020年度は、基本報酬の一定期間の減額及び昇給の時期後ろ倒しが実施された。上記基本報酬は、これらを反映した実際の支払額である。年次賞与は、これらを反映しない理論値に、目標の総合達成率及び役位ごとに設定されている一定の倍率を乗じて算出されている。
<執行役に対する年次賞与の評価指標ごとの目標、実績及び支給率等>当社は前述のとおり、事業構造改革計画「NISSAN NEXT」に取り組んでおり、その初年度である当事業年度の年次賞与の業績目標の目標水準は、新型コロナウイルスの影響等も加味した上で「NISSAN NEXT」で定めた業績見通しをベースにしている(評価指標については(年次賞与)の箇所にて詳説)。
限界利益及び固定費、自動車事業のフリーキャッシュフローについては、営業利益目標マイナス4,500億円を達成するために必要な目標値をそれぞれ設定し、実績はその目標を達成し、財務指標である3項目合計の達成率は115%であった。
市場占有率については、目標値を5.73%に設定し、実績は5.3%、達成率は0%であった。品質については、品質保証及び顧客満足度からなる目標値を設定し、実績は達成率114%であった。従業員エンゲージメントについては、社外ベンチマーク(多数のグローバル企業が導入する従業員サーベイ結果に基づくもの)をもとに目標値を設定し、実績は前年度と同程度の結果となり、達成率は下限レベル([年次賞与の支給率モデル]の箇所にて詳説)の50%であった。
上記を受け、加重ベースでの業績目標の総合達成率は89%であった。この結果に基づき、年次賞与の額は、基本報酬に、当該達成度及び役位ごとに設定されている一定の倍率を乗じて算定した。
<執行役に対する業績連動型インセンティブ(金銭報酬)の評価指標ごとの目標、実績及び支給率等>上述の年次賞与と同様、業績連動型インセンティブ(金銭報酬)の業績目標の目標水準は、「NISSAN NEXT」で定めた業績見通しをベースとしており、2022年度までの3事業年度での目標の達成度に応じて支給する(評価指標については[長期インセンティブ報酬の概要]の箇所にて詳説)。
この業績連動型インセンティブ(金銭報酬)に基づく支払いは、3年間の評価期間が終了して結果が確定した後、2023年度に予定されている。この業績評価期間は各年の実績を集計しており、当事業年度の目標と実績に関しては以下のとおりである。
2020年度の指標に関して、営業利益については、目標値をマイナス4,500億円に設定し、実績はマイナス1,507億円であった。自動車事業のフリーキャッシュフローについては、上記営業利益の目標値を達成するために必要な目標値を設定し、実績は中国合弁会社の業績を比例連結したベースでマイナス3,455億円であった。市場占有率については、目標値を5.73%に設定し、実績は5.3%であった。
上記を受け、2020年度について、加重ベースでの業績目標の総合達成率は75%であった。
<報酬委員会の概要及び活動内容>当社は、2019年6月25日の株主総会をもって指名委員会等設置会社に移行した。報酬委員会の委員(委員長を含む)は、4名全て独立性を有する社外取締役としている。当委員会は、法定の権限である取締役及び執行役の個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針、並びに取締役及び執行役の個人別の報酬等の内容を決定する権限を有している。
2020年度は合計14回の報酬委員会を開催し、全委員とも出席率は100%であった。
当事業年度における、当委員会の活動には以下が含まれる。
・ 取締役及び執行役の報酬に関する方針の決定
・ 報酬水準検討のためのベンチマーク企業を選定、外部第三者専門機関の調査結果も踏まえた報酬水準の審議
・ 取締役及び執行役の当事業年度の報酬額及び個人別の報酬等の決定
・ 新長期インセンティブ報酬制度の決定と導入
当社は報酬委員会において、報酬方針及び規則を策定し、また透明性の高い議論を行うことにより、報酬ガバナンスのより一層の向上を図っている。当委員会は、当事業年度において、主に次の観点に留意して議論を行った。
・ 報酬委員会の決定は公平で一貫性があり、改善されたガバナンスと透明性に寄与する方針・規則に沿ったものであること
・ 報酬委員会の決定に際して、当社の置かれている事業環境や、グローバルな競合との関係性を適切に考慮すること
<報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針>① 方針の決定の方法
当社は、会社法に従い、報酬委員会が取締役及び執行役の個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針を定める。
② 基本方針
当社の役員報酬は、顧客、株主、事業を展開する地域社会、従業員といった当社のステークホルダーに最大限の価値をもたらすべく、その価値創造に向けて動機づけられるよう設計されることを、基本方針とする。かかる方針を踏まえ、取締役及び執行役の報酬等は、以下の原則を総合的に勘案して、決定するものとする。
ガバナンスと監督責任 | 当社は、コーポレート・ガバナンス、コンプライアンス、及び企業倫理のより一層の向上に努めている。報酬プログラムについても、このような動きを踏まえて、効果的に運用され、方針に沿っているかを適切に監督していく。 |
公平性と透明性 | 人種、性別、国籍、個人の属性にかかわらず、公平で一貫した報酬プログラムとする。業績評価や報酬の仕組みは、透明性のある開かれたものとし、公平な取扱いを前提とする。 |
価値創造とアカウンタビリティー | 顧客、株主、事業を展開する地域社会、従業員といった当社のステークホルダーに対して長期的な価値を創造できるような業績や行動に繋がる報酬のプログラムとする。 |
優位性 | 人材確保において競合している自動車企業やグローバル大企業に比肩する、優位性のある報酬を提供する。 |
運用の実効性 | 報酬プログラムは、適切に運用され、役員にも理解しやすく、費用対効果が高く、グローバルに適用されうる、実効性があるものとする。 |
変革と適応 | 当社は、テクノロジーや人々の生活が大きく変化している環境下で、グローバルに事業を展開している。よって、グローバル基準の視点を持って、今後も人材市場とビジネス環境の多様性に報酬プログラムを適応させる。 |
<役員報酬の内容>① 全体像
・ 当社は、2020年度から2023年度までの期間を対象とした事業構造改革計画「NISSAN NEXT」に取り組んでいる。
「NISSAN NEXT」は、当期間での確実な実行により当社の回復基調を確かなものとし、さらに、将来の課題にも対応できるような持続的な事業の回復に繋がるよう、設計されている。
・ 上記計画に沿って、持続可能な中長期の企業と人材の双方の成長を目指す。役員報酬についても、その実現に対して動機付けられることを重視して設計した。
・ 当社は「NISSAN NEXT」の定量的目標である財務目標について、会社を成長軌道に戻すために必要とされる指標を抽出し、目標設定をおこなった。また、社員の長期的な成長に欠かせない要素である日産ウェイとの整合性を持って、目標を達成しているかどうかを評価する。
・ 「NISSAN NEXT」の目標達成が見込まれた時点においては、将来の持続的な成長を確保するための新たな目標を設定する。
・ 報酬委員会では、2019年度をもって株価連動型インセンティブ受領権の付与を廃止し、それに代わる新たな長期インセンティブ報酬として、2020年度より株式報酬制度である譲渡制限付株式ユニット(RSU)を新規導入した。
RSUは、役員の利益を株主の利益と一致させるとともに、中長期的な当社への貢献意識の向上のために効果的な株式報酬制度であり、「NISSAN NEXT」の目標を反映するように更新された既存の業績連動型インセンティブ(金銭報酬)とともに運用される。2020年度の長期インセンティブ報酬は、これら2つのプログラムで構成されており、以下でさらに詳説する。
② 報酬水準の考え方
報酬水準の検討にあたっては、報酬のベンチマーク結果を評価・検討している。当社は、一般的な基準を適用して選択した企業をベンチマーク参照先としている。この参照先企業は、当社と同様の事業規模と事業展開上の複雑性を有するグローバル企業としており、当社と競合する主要な自動車会社を含んでいる。
③ 報酬の構成
i) 取締役
取締役の報酬は、基本報酬に、各人の役割に応じて委員会参加報酬や委員長報酬、筆頭社外取締役報酬等を加算した固定報酬のみとしている。執行役を兼務しない取締役には、業績連動報酬である年次賞与及び長期インセンティブ報酬は支給しない。執行役を兼務する取締役には、取締役としての報酬は支給しない。
ii) 執行役
執行役の報酬は、固定報酬である基本報酬、変動報酬である年次賞与及び長期インセンティブ報酬から成る。また、執行役のうち対象となる者については、当社の方針に基づき海外出向に伴う手当がそれぞれ支給される。
(a) 基本報酬
執行役の基本報酬については、グローバル企業の報酬のベンチマーク結果や外部専門機関の調査結果に加え、個々のスキルや経験、社内の職責及び当社の業績を鑑みて設定している。基本報酬は毎年見直され、その昇給には前年度の業績と貢献を反映している。
なお、執行役については、コロナ禍による事業への影響を踏まえ、当事業年度の一定期間の基本報酬につき減給としている。
(b) 変動報酬
執行役の変動報酬は、毎年の業績に応じて支給する「年次賞与」と、株主価値を高め会社の持続的な成長と収益性を高める行動をとるよう動機付けることを目的とした2種類の長期インセンティブ報酬で構成される。この長期インセンティブ報酬は、非業績連動報酬である「譲渡制限付株式ユニット(RSU)」の付与と、目標が達成された場合にのみ支払う「業績連動型インセンティブ(金銭報酬)」の授与で構成される。この結果、当社の変動報酬プログラムは、経営陣が単年度と中長期の両方の業績目標の達成に対し動機付けられるよう設計されている。
(c) 年次賞与
業績連動報酬の年次賞与は、基本報酬に役位ごとに設定されている一定の倍率を乗じた上で、持続可能な成長の実現を示すための評価指標の達成率を乗じて算出し、支給する。2020年度については、「NISSAN NEXT」の初年度として重点的に取り組むべき事項に対応し、下表の6つの評価指標を選択した。
「NISSAN NEXT」の初年度は、営業利益目標水準の達成に注力する計画である。従って、限界利益に焦点を合わせた。固定費も利益目標を達成するための重要な要素であり評価指標とした。なお、ここでの固定費の定義は、当社内部で制御可能な項目として重点管理するため、財務諸表で使用される定義とは異なるものを当社にて設定している。
自動車事業における健全なフリーキャッシュフローは、当社の持続可能な成長の実現のために重要な指標の一つである。市場占有率については、当社が算出した世界需要車両数に対する当社の販売台数に基づいている。品質については、品質保証及び顧客満足度からなる内部管理目標である。従業員エンゲージメントは、従業員意識調査にて参照するグローバル企業の外部ベンチマーク値に基づいている。
[執行役の年次賞与のウェイト]
評価項目 | 評価指標 | 評価ウェイト |
全社業績 | 限界利益 | 20% |
固定費 | 20% | |
自動車事業のフリーキャッシュフロー | 20% | |
市場占有率 | 20% | |
品質 | 15% | |
従業員エンゲージメント | 5% |
[年次賞与の支給率モデル]
年次賞与の支給額は、目標の総合達成率及び役位ごとに設定されている一定の倍率を基本報酬に乗じて算出する。目標の総合達成率は、達成率50%に相当する閾値(下限)と達成率125%に相当する閾値(上限)をもとに算出された評価指標ごとの目標達成率に、評価ウェイトを乗じた値の合計である。なお、達成率50%に満たない指標は、当該値は0と扱う。

(d) 長期インセンティブ報酬
当社の長期インセンティブ報酬は「譲渡制限付株式ユニット(RSU)」及び「業績連動型インセンティブ(金銭報酬)」の2種類で構成しており、RSUは長期インセンティブ報酬全体の40%を、業績連動型インセンティブ(金銭報酬)は60%を占める。業績連動型インセンティブ(金銭報酬)は、年次賞与で参照する単年度の業績指標ではなく、複数年にかかる業績指標により評価することで、持続的な長期業績の達成を促進するように設計されている。また、業績連動型インセンティブ(金銭報酬)はRSUの1.5倍になるよう意図的に設計されており、「NISSAN NEXT」の目標達成に重点を置いている。
[長期インセンティブ報酬の導入目的]
長期インセンティブ報酬は、次の4つの目的をサポートするように設計されている。
(1)特に今後3会計年度にかけて「NISSAN NEXT」に関連する業績の達成を促進すること、(2)役員の利益を株主の利益と一致させること、(3)株主価値の創造を役員に動機付けること、(4)当社の主要な人材の長期的な定着を促進すること。
[長期インセンティブ報酬の概要]
譲渡制限付株式ユニット(RSU)は、当社が定める期間(以下「対象期間」という)中の勤務継続等を条件として対象者毎に予め定める数の当社普通株式(以下「本交付株式」という)に相当するRSUを付与するものである。対象期間は3年間とし、このRSUを付与後3事業年度にわたり3分の1ずつ権利確定させ、本交付株式を支給する。
なお、対象者による重大な不正・違法行為等があった場合には、当社は本交付株式の割当てを受ける権利の剥奪や割当て済みの当社普通株式の返還請求を実施することができる。この方針(クローバック)は、コーポレート・ガバナンスを改善するための当社の取り組みの一環として実施される。本方針はRSU規程に明記した上で対象者に配布・周知する。
業績連動型インセンティブ(金銭報酬)は、将来の「持続可能な成長」の実現のため特に重要である、営業利益、自動車事業のフリーキャッシュフロー、市場占有率を評価指標として設定し、各評価指標の2020年度から2022年度までの3事業年度での目標の総合達成率及び役位ごとに設定されている一定の倍率を基本報酬に乗じて算出し、支給する。なお、目標の総合達成率の算出方法は年次賞与と同様であり、達成率50%に相当する閾値(下限)と達成率125%に相当する閾値(上限)をもとに算出された評価指標ごとの目標達成率に、評価ウェイトを乗じた値の合計である。なお、達成率50%に満たない指標は、当該値は0と扱う。
市場占有率については、年次賞与で既述した、当社が算出した世界需要車両数に対する当社の販売台数に基づいている。
[執行役の長期インセンティブ報酬のウェイト]
評価項目 | 評価指標 | 評価ウェイト |
全社業績 | 営業利益 | 1/3 |
自動車事業のフリーキャッシュフロー | 1/3 | |
市場占有率 | 1/3 |
[長期インセンティブ報酬の支給スケジュール]

(e) 執行役退任時の報酬等の決定方針
当社は、執行役が、当社を退任した後一定期間、競業避止義務及び守秘義務等の義務を遵守すること、並びに経営の適切な移行を促進することを目的とする、退任する執行役に対する退任時報酬等の決定方針を有している。
当該方針は、当社の報酬委員会の裁量により運用されており、報酬委員会は、執行役退任時の事実関係及び状況を踏まえて、退任時の支給の有無及び金額を決めることができる。
<役員区分ごとの報酬等の総額、報酬等の種類別の総額及び対象となる役員の員数>(単位:百万円)
区分 | 総報酬 | 総報酬の内訳 | 対象となる人数 | |||||
基本報酬 | 年次賞与 | 業績連動型 インセンティブ (金銭報酬) (注1) | 譲渡制限付株式ユニット(RSU) (注1,2) | 株価連動型 インセンティブ受領権(行使分について、過去の開示額との差額)(注3) | その他報酬 | |||
取締役 (社外取締役を除く) | 18 | 18 | ― | ― | ― | ― | ― | 1 |
取締役 (社外取締役) | 171 | 171 | ― | ― | ― | ― | ― | 7 |
執行役 | 1,529 (注7) | 436 | 401 | 111 | 214 | ― | 367 (注4) | 8 (注5,6) |
(注)1.当事業年度に費用として、引当計上された額である。
2.RSUは、非金銭報酬等・非業績連動報酬であり、当事業年度に執行役に付与したRSUについて、付与後3事業年度にわたり支給する株式の総数は最大で約858千株である。
3.①役員が、当事業年度に、過去の事業年度に付与された株価連動型インセンティブ受領権を行使して当社から受けた金銭の額から、②過去の事業年度に係る有価証券報告書に開示した当時の株価に基づく当該株価連動型インセンティブ受領権の公正価額を控除した額を記載している。
4.報酬委員会が当社の内規その他の基準に基づき決定した、執行役6名に対する税金及び税金調整手当、住宅手当、その他のフリンジ・ベネフィット相当額等の合計額を記載している。
5.当事業年度に執行役を退任した1名を含んでいる。
6.執行役を兼務する取締役は執行役の区分にて掲載している。
7.取締役を兼務する執行役に対しては、執行役としての報酬等のみを支給している。
8.役員に外貨建てで支払われる報酬等については、年間平均レートを用いて円換算した額を開示している。
<役員ごとの連結報酬等の総額等 但し、連結報酬等の総額1億円以上である者>(単位:百万円)
氏名 | 役員区分 | 会社区分 | 総報酬 | 総報酬の内訳 | |||||
基本報酬 (注4) | 年次賞与 (注4) | 業績連動型インセンティブ(金銭報酬) (注1) | 譲渡制限付株式ユニット(RSU) (注2) | 株価連動型インセンティブ受領権(行使分について、過去の開示額との差額) | その他報酬 | ||||
内田 誠 | 執行役 | 当社 | 327 | 100 | 107 | 32 | 64 | ― | 24 (注3) |
アシュワニ グプタ | 執行役 | 当社 | 350 | 91 | 90 | 24 | 48 | ― | 97 (注3) |
該当なし | 欧州日産 自動車会社 | 13 | ― | ― | ― | ― | ― | 13 | |
スティーブン マー | 執行役 | 当社 | 229 | 58 | 46 | 13 | 26 | ― | 86 (注3) |
該当なし | 北米日産 会社 | 19 | ― | ― | ― | ― | ― | 19 | |
クリスチャン ヴァンデンヘンデ | 執行役 | 当社 | 318 | 62 | 62 | 14 | 28 | ― | 152 (注3) |
坂本 秀行 | 執行役 | 当社 | 109 | 44 | 35 | 10 | 20 | ― | ― |
(注)1.当連結会計年度に費用として、引当計上された額である。
2.RSUについて、当連結会計年度に費用計上した額は一定の失効見込額が控除されているが、上記には含めて記載している。
3.報酬委員会が当社の内規その他の基準に基づき決定した、対象執行役に対する税金及び税金調整手当(240百万円)、住宅手当、その他のフリンジ・ベネフィット相当額等(119百万円)の合計額を記載している。
4.2020年度は、基本報酬の一定期間の減額及び昇給の時期後ろ倒しが実施された。上記基本報酬は、これらを反映した実際の支払額である。年次賞与は、これらを反映しない理論値に、目標の総合達成率及び役位ごとに設定されている一定の倍率を乗じて算出されている。
<執行役に対する年次賞与の評価指標ごとの目標、実績及び支給率等>当社は前述のとおり、事業構造改革計画「NISSAN NEXT」に取り組んでおり、その初年度である当事業年度の年次賞与の業績目標の目標水準は、新型コロナウイルスの影響等も加味した上で「NISSAN NEXT」で定めた業績見通しをベースにしている(評価指標については(年次賞与)の箇所にて詳説)。
限界利益及び固定費、自動車事業のフリーキャッシュフローについては、営業利益目標マイナス4,500億円を達成するために必要な目標値をそれぞれ設定し、実績はその目標を達成し、財務指標である3項目合計の達成率は115%であった。
市場占有率については、目標値を5.73%に設定し、実績は5.3%、達成率は0%であった。品質については、品質保証及び顧客満足度からなる目標値を設定し、実績は達成率114%であった。従業員エンゲージメントについては、社外ベンチマーク(多数のグローバル企業が導入する従業員サーベイ結果に基づくもの)をもとに目標値を設定し、実績は前年度と同程度の結果となり、達成率は下限レベル([年次賞与の支給率モデル]の箇所にて詳説)の50%であった。
上記を受け、加重ベースでの業績目標の総合達成率は89%であった。この結果に基づき、年次賞与の額は、基本報酬に、当該達成度及び役位ごとに設定されている一定の倍率を乗じて算定した。
<執行役に対する業績連動型インセンティブ(金銭報酬)の評価指標ごとの目標、実績及び支給率等>上述の年次賞与と同様、業績連動型インセンティブ(金銭報酬)の業績目標の目標水準は、「NISSAN NEXT」で定めた業績見通しをベースとしており、2022年度までの3事業年度での目標の達成度に応じて支給する(評価指標については[長期インセンティブ報酬の概要]の箇所にて詳説)。
この業績連動型インセンティブ(金銭報酬)に基づく支払いは、3年間の評価期間が終了して結果が確定した後、2023年度に予定されている。この業績評価期間は各年の実績を集計しており、当事業年度の目標と実績に関しては以下のとおりである。
2020年度の指標に関して、営業利益については、目標値をマイナス4,500億円に設定し、実績はマイナス1,507億円であった。自動車事業のフリーキャッシュフローについては、上記営業利益の目標値を達成するために必要な目標値を設定し、実績は中国合弁会社の業績を比例連結したベースでマイナス3,455億円であった。市場占有率については、目標値を5.73%に設定し、実績は5.3%であった。
上記を受け、2020年度について、加重ベースでの業績目標の総合達成率は75%であった。