有価証券報告書-第115期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/21 15:00
【資料】
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【項目】
92項目
「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」 (2019年1月31日内閣府令第3号) による改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」第二号様式記載上の注意(30)の規定を当事業年度に係る有価証券報告書から適用しています。
本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は2019年3月31日現在において判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
トヨタは経営の基本方針を「トヨタ基本理念」として掲げており、その実現に向けた努力が、企業価値の増大につながるものと考えています。その内容は次のとおりです。
1. 内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
2. 各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する
3. クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む
4. 様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する
5. 労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる
6. グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
7. 開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する
(2) 会社の対処すべき課題
今後の自動車市場は、短期的な循環局面はあるものの、中期的には、新興国を中心とした自動車普及進展もあり、緩やかな拡大に戻ると期待されます。一方で、環境問題など社会課題への対応や、電動化、自動運転、コネクティッド、シェアリングなどの技術革新の急速な進行などにより、自動車産業は100年に一度の大変革の時代を迎えています。
このような経営環境の中、トヨタは、これまで培ってきた車両品質や販売・サービスネットワークのリアルの世界と、技術革新に対応するバーチャルの世界の総合力で、人々の移動に関わるあらゆるサービスを提供する「モビリティカンパニー」にモデルチェンジしていきます。その実現に向け、新たな価値を創造する「未来への挑戦」と、1年1年着実に真の競争力を強化する「年輪的成長」を方針に掲げ、次の分野の取り組みを加速させていきます。
①電動化
環境問題への対応には、クルマの電動化の推進が必要不可欠です。トヨタは、「エコカーは普及してこそ環境への貢献」との考えのもと、国や地域ごとのエネルギーやインフラ整備の状況、さらにはエコカーの特徴に応じて、お客様の用途に合わせた最適なクルマを提供することを目指しています。
電動車の主力であるハイブリッド車は、従来のトヨタハイブリッドシステムを燃費、コスト、走りの面でさらに磨きをかけるだけでなく、加速性能を高めたスポーツ型など、様々なタイプを開発していきます。また、多くのステークホルダーと思いを共有し、協調して電動車の普及に取り組むため、ハイブリッド車開発で培った車両電動化関連の技術について、特許実施権の無償提供などを決定しました。電気自動車は、2020年以降、中国を皮切りに導入を加速し、2020年代前半には全世界で10車種以上に拡大していきます。燃料電池車は、2020年代に乗用車・商用車の商品ラインアップを拡充するとともに、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) など幅広いステークホルダーとの連携により、燃料電池技術を様々な分野に展開していきます。さらに、電動車普及のキーファクターである車載用電池では、競争力のある電池の実現に向けた取り組みを強化・加速させるため、パナソニック㈱と合弁会社の設立に合意しました。
低炭素で持続可能な社会の実現に向け、「2030年に電動車販売550万台以上」というチャレンジ目標を掲げ、今後も技術開発を加速させていきます。
②自動運転
トヨタは、交通事故死傷者ゼロを目指し、1990年代から自動運転技術の研究開発に取り組んできました。その開発理念、「Mobility Teammate Concept (モビリティ・チームメイト・コンセプト) 」は、人とクルマが見守り、助け合う、気持ちが通った仲間のような関係を築くというものです。
自動運転に必要不可欠な人工知能技術の研究・開発を行うトヨタ・リサーチ・インスティテュート㈱では、一昨年設立したファンドと共に、ベンチャー企業支援に関するグローバルプログラムを立ち上げました。加えて、自動運転開発用のテスト施設を米国ミシガン州に開設し、新型の自動運転実験車「TRI-P4」を公表するなど、自動運転システム開発の加速に取り組んでいます。さらに、トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント㈱が本格稼働し、実用化に向けたソフトウェアの先行開発を開始しました。また、自動運転技術の研究成果を広くお客様に利用いただくため、予防安全技術パッケージの導入を進めており、昨年には、全世界での累計出荷台数1,000万台を突破しました。
すべての人に、安全、便利かつ楽しいモビリティを提供することを究極の目標に、自動運転技術の開発・普及に取り組んでいきます。
③MaaS (モビリティ・アズ・ア・サービス)
トヨタは、お客様に様々なモビリティの選択肢を提供できるよう、MaaSビジネスを推進しています。
Grab Holdings Inc.とモビリティサービス領域での協業深化に合意し、当社が開発した配車サービス車両向けトータルケアサービスの提供を開始しました。また、Uber Technologies, Inc.と自動運転技術を活用したライドシェアサービスの開発促進に向けた協業拡大に合意しました。さらに、ソフトバンク㈱と新しいモビリティサービスの構築に向けて戦略的提携に合意し、共同出資会社MONET Technologies㈱を設立しました。
また、クルマが所有から利活用にシフトしていく中で、お客様にもっと気楽に楽しくクルマとお付き合いいただくため、愛車サブスクリプションサービス「KINTO」を開始しました。車両代のほか、税金、保険、メンテナンスなどの手続をパッケージ化した月額定額サービスを提供することにより、人とクルマの新しい関係を提案していきます。
さらに、日本国内では、販売店と共にお客様の求めるあらゆるニーズに対応するため、トヨタブランド全販売店での全車種併売化をはじめとする販売ネットワークの変革に取り組んでいます。その上で、それぞれの地域に根差した、新しいモビリティサービスの開発・提供を行うことにより、「地域に欠かせない存在」を目指していきます。
④仲間づくり
トヨタの「仲間づくり戦略」は、3つの柱からなります。
第1の柱は、同じルーツを持つグループ内での連携強化です。「ホーム&アウェイ」の視点で、グループ内の事業を見直し、より競争力のある「ホーム」の会社に集約する。あるいは、各社の強みを出し合って、新たな「ホーム」をつくる。そして、競争力のある製品を、グループ以外の会社も含めて、積極的に販売していくことによって、仲間を増やし、「デファクトスタンダード」にしていくことが重要と考えています。この考えに基づき、当社と㈱デンソー両社の主要な電子部品事業を㈱デンソーへ、当社のアフリカ市場における営業業務を豊田通商㈱へ、そして、当社のバン事業をトヨタ車体㈱へ、それぞれ集約を進めています。
第2の柱は、他の自動車メーカーとのアライアンス強化です。これは、資本による規模の拡大が目的ではなく、開発、生産技術、販売網など、お互いの強みをリスペクトし、「もっといいクルマ」づくりに向けた競争力強化を目的としています。本年3月にはスズキ㈱と、当社グループが持つ強みである電動化技術とスズキ㈱が持つ強みである小型車技術を持ち寄り、生産領域での協業や電動車の普及など、新たなフィールドで共にチャレンジしていくことに合意しました。
第3の柱は、モビリティサービスを提供する新しい仲間とのアライアンスの強化です。コネクティッドカーの情報基盤である「モビリティサービス・プラットフォーム」を介してソフトバンク㈱やGrab Holdings Inc.、Uber Technologies, Inc.といったあらゆるサービス事業者とオープンに連携し、新たなモビリティサービスの創出を目指していきます。
⑤原価低減・TPS (トヨタ生産方式)
当社は、真の競争力向上に向け、先人たちが強みとして受け継いできた当社のDNAである「原価低減」と「TPS」を徹底的に磨くことに取り組んでいます。
当社における「原価低減」とは、単純に予算やコストを一律でカットするのではなく、リアルな図面、現物、ものづくりの現場を現地現物で確認し、徹底的にムダを取り、仕事のやり方を変えて生産性を向上することによって、原価を造りこむことです。役員・従業員全員参加で知恵を出し、ものづくりのすべてのプロセスで発生する出金、ムダの低減にベターベターの精神で情熱を持って取り組むことにより、未来を生き抜くために必要な人材の育成、そして、企業体質の強化につなげていきます。
また、「TPS」を生産分野だけでなく事務・技術職場にも浸透させ、全社を挙げた意識改革や改善活動に取り組んでいます。例えば、経理部門では昨年1月に新設したTPS本部と一体となって決算業務の見直しを行い、ムダの洗い出しや改善を進めています。このような取り組みを各部門で地道に続け、さらに好事例については全社的に共有することにより、「TPS」の全社的な実践につなげていきます。
⑥人事制度
当社は、これらの取り組みを支える「人材育成」や「仕事の進め方改革」を一層促進するために、役員体制の見直しおよび組織再編を継続的に行ってきました。今、自動車産業においては、異業種の参入や急速な技術革新により、これまでにないスピードと規模で構造変革が起きています。
そうした中で、本年1月には、従来の専務役員以上を役員に、常務役員、常務理事、基幹職などを幹部職に統合し、階層を減らしました。若手、ベテランに関わらず、幅広いポストに適材適所で配置することで、即断、即決、即実行でその時々の経営課題に対応するとともに、現場に根ざした「専門性」と「人間力」を兼ね備えた「プロ人材」の育成を強化していきます。
このような取り組みを進めるため、トヨタは、「モノづくりを通じて社会に貢献する」という創業の理念を受け継ぎ、品質・安全を最優先に、役員・従業員一同が心を合わせ、謙虚・感謝の気持ちと情熱を持って歩んでまいります。