訂正有価証券報告書-第119期(2022/04/01-2023/03/31)
②戦略
a.組織が特定した短期・中期・長期の気候関連のリスクと機会
トヨタは環境問題から生じる様々なリスクと機会の把握に努めており、「トヨタ環境チャレンジ2050」などの戦略が妥当かどうかを常に確認しながら取り組みを進め、競争力の強化を図っています。
なかでも気候変動については、政府による規制強化への対応を含め、新技術の採用など様々な領域での対策が必要になると考えられます。また気候変動が進むことによって、気温の上昇や海水面の上昇、台風や洪水など、自然災害の激化も予想されます。これらは、当社の事業領域にも様々な影響を及ぼす可能性があり、事業上のリスクになりますが、適切に対応できれば競争力の強化や新たな事業機会の獲得にもつながると認識しています。この認識に基づき、気候変動に関するリスクを整理し、影響度やステークホルダーからの関心も踏まえ、特に重要度の高いリスクをリスク管理プロセスに沿って特定しました。

b.気候関連のリスクと機会が組織のビジネス、戦略および財務計画に及ぼす影響
気候関連課題が、事業、戦略、財務計画に大きく影響を与える可能性があるとの認識のもと、気候関連課題に伴うリスクや機会を踏まえて、戦略を随時見直しています。以下の表は、事業、戦略、財務計画に与える具体的な影響について説明しています。
トヨタでは、Toyota Global Risk Management Standard (TGRS) という仕組みのもと、リスクを特定してその重要度を決定し、優先付けています。

c.ビジネス、戦略および財務計画に対する2℃シナリオなどのさまざまなシナリオ下の影響
気候変動影響を踏まえた社会像の設定
気候変動やそれに伴う各国の政策などにより、自動車業界やモビリティ社会全体が大きな変化にさらされる可能性があり、それらはトヨタにとってリスクや機会となります。リスクと機会の分析を踏まえ、IEA※1などのシナリオ※2を用いて2030年ごろを想定した外部環境として、「公表政策に基づく社会像」「1.5℃以下の社会像」の2つの社会像を描きました。
※1 International Energy Agency:国際エネルギー機関
※2 IPCC※3のRepresentative Concentration Pathways (RCP) 4.5相当、IEAのStated Policies Scenario (STEPS) 、Sustainable Development Scenario (SDS) 、Net Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE) などのシナリオを参照し設定
※3 Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル
トヨタへのインパクト
STEP1で描いた各社会像におけるトヨタへの影響を検討しました。気候変動対策が進む「1.5℃以下の社会像」の社会においては、新車販売に占めるZEV※1の比率が大幅に高まり、カーボンニュートラル燃料※2の利用も広がると言われています。また生産や調達への影響として、炭素税などの導入や税率引上げによってコストが上昇する可能性があるため、省エネルギー技術、再生可能エネルギーや水素などの利用を拡大していくことがリスク低減につながります。
一方で、「公表政策に基づく社会像」に描かれるように、社会全体の気候変動対策が十分ではない場合には、洪水などの自然災害の頻発や激甚化による生産停止や、サプライチェーン寸断による減産や生産停止などの可能性が高まると考えています。
※1 ZEV (Zero Emission Vehicle) :BEVやFCEVなど、走行時にCO2やNOxなどを排出しないクルマ
※2 バイオ燃料、合成燃料など
トヨタの戦略
トヨタは2021年4月に、2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを地球規模でチャレンジすることを宣言しました。環境車は、普及してこそ温室効果ガス (GHG) の排出量削減に貢献できると考え、各地域のお客様に選んでいただけるように多様な技術の開発 (マルチパスウェイ) に取り組んでいます。その一つの方策として、ハイブリッド車 (HEV) 、プラグインハイブリッド車 (PHEV) 、バッテリーEV (BEV) 、燃料電池自動車 (FCEV) など、電動車の環境技術開発を加速しています。また、電動車だけでなく、水素燃料・水素エンジン車、カーボンニュートラル燃料などの開発にも取り組んでいます。
現在、世界の約200の国・地域で販売を行っていますが、それぞれ、経済状況、エネルギー政策、産業政策、お客様のニーズなどが大きく異なっています。このため、各々の国・地域にとって最適となるよう、多様な電動車の選択肢を提供する戦略が重要であると考えています。
この電動化戦略に基づき、これまで累計2,250万台の電動車を世界で販売 (2023年2月時点) し、いち早く気候変動のリスクに対応してきました。
今後、BEVについては、専用プラットフォームによるモデルを順次導入、電池の開発・生産戦略などを通じてプラクティカル (実用的) な車両供給に取り組んでいきます。
2026年までに10モデルを新たに投入し、BEV販売台数も年間150万台を基準にペースを定め、2030年にはグローバル販売台数で年間350万台を目指します。
BEV以外にも、全方位で電動化戦略に取り組み、今後の市場に変化があれば、電動車の販売台数などを、今までの経験で得た強みも活かして、柔軟かつ戦略的に変更することで、各地域のお客様に選んでいただき普及を加速させていきます。
「1.5℃以下の社会像」において、例えば、お客様ニーズの変化に伴い電池需要が増加した場合でも、パートナーとの協力強化や新たなパートナーとの協力体制の検討、トヨタと資本関係のあるサプライヤーによる生産体制の迅速な立ち上げなどによって柔軟に対応することで、カーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでいきます。
また、電動車を増やすことに加え、モード燃費に反映されないものの、CO2排出削減効果のあるオフサイクル技術※に取り組んでいます。さらに、既販車にも利用可能なカーボンニュートラル燃料や、水素燃料・水素エンジン車などのように、CO2排出量削減に寄与する技術は多様であり、こうした技術の選択を広げることにチャレンジしています。
※ オフサイクル技術:「高効率ライト」「廃熱回収」「能動的な空力改善」「日射・温度制御」など、実走行燃費向上につながる技術があり、米国では改善効果に相当するクレジットを付与する制度がある
カーボンニュートラルの実現
自動車産業におけるカーボンニュートラルの実現には、再生可能エネルギーや充電インフラなどのエネルギー政策と、購入補助金、サプライヤー支援、電池リサイクルシステムの整備などの産業政策の一体的な運用が不可欠であり、各国政府や業界団体など様々なステークホルダーと連携した取り組みが必要となってきます。
トヨタはグローバルに事業活動を展開するうえで、各国政府と電動化推進に向けた環境整備について連携し、ライフサイクル全体でのCO2排出量削減に資する電動化戦略を推進しています。
生産分野での取り組みとしては、グローバルで2035年に工場のカーボンニュートラルをめざすことを発表し、炭素税などのリスクにも備えていきます。工場では、徹底的な省エネルギー技術と再生可能エネルギー・水素の導入によるCO2排出量削減を推進しており、欧州の工場では既に電力100%を再生可能エネルギー化しています。
戦略的レジリエンスの強化
自然災害に対処する取り組みを推進し、BCPを策定するとともに、情報収集の強化によるサプライチェーンの強靭化やコミュニケーションの強化に取り組んでいます。
そして、自動車産業だけではなく、あらゆる業界と協力し、サステナブルなだけではなくプラクティカルな取り組みにより、「1.5℃以下の社会像」で描く社会にも対応できるようチャレンジを継続しています。
このほか、安定的な資金調達や持続的な企業価値向上につなげるために、各種ESG評価指標に対する適切な情報開示や、機関投資家をはじめとするステークホルダーの皆様との対話の充実を通じて、トヨタの戦略の妥当性と進捗を確認しています。
a.組織が特定した短期・中期・長期の気候関連のリスクと機会
トヨタは環境問題から生じる様々なリスクと機会の把握に努めており、「トヨタ環境チャレンジ2050」などの戦略が妥当かどうかを常に確認しながら取り組みを進め、競争力の強化を図っています。
なかでも気候変動については、政府による規制強化への対応を含め、新技術の採用など様々な領域での対策が必要になると考えられます。また気候変動が進むことによって、気温の上昇や海水面の上昇、台風や洪水など、自然災害の激化も予想されます。これらは、当社の事業領域にも様々な影響を及ぼす可能性があり、事業上のリスクになりますが、適切に対応できれば競争力の強化や新たな事業機会の獲得にもつながると認識しています。この認識に基づき、気候変動に関するリスクを整理し、影響度やステークホルダーからの関心も踏まえ、特に重要度の高いリスクをリスク管理プロセスに沿って特定しました。

b.気候関連のリスクと機会が組織のビジネス、戦略および財務計画に及ぼす影響
気候関連課題が、事業、戦略、財務計画に大きく影響を与える可能性があるとの認識のもと、気候関連課題に伴うリスクや機会を踏まえて、戦略を随時見直しています。以下の表は、事業、戦略、財務計画に与える具体的な影響について説明しています。
トヨタでは、Toyota Global Risk Management Standard (TGRS) という仕組みのもと、リスクを特定してその重要度を決定し、優先付けています。

c.ビジネス、戦略および財務計画に対する2℃シナリオなどのさまざまなシナリオ下の影響
気候変動やそれに伴う各国の政策などにより、自動車業界やモビリティ社会全体が大きな変化にさらされる可能性があり、それらはトヨタにとってリスクや機会となります。リスクと機会の分析を踏まえ、IEA※1などのシナリオ※2を用いて2030年ごろを想定した外部環境として、「公表政策に基づく社会像」「1.5℃以下の社会像」の2つの社会像を描きました。
※1 International Energy Agency:国際エネルギー機関
※2 IPCC※3のRepresentative Concentration Pathways (RCP) 4.5相当、IEAのStated Policies Scenario (STEPS) 、Sustainable Development Scenario (SDS) 、Net Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE) などのシナリオを参照し設定
※3 Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル
STEP1で描いた各社会像におけるトヨタへの影響を検討しました。気候変動対策が進む「1.5℃以下の社会像」の社会においては、新車販売に占めるZEV※1の比率が大幅に高まり、カーボンニュートラル燃料※2の利用も広がると言われています。また生産や調達への影響として、炭素税などの導入や税率引上げによってコストが上昇する可能性があるため、省エネルギー技術、再生可能エネルギーや水素などの利用を拡大していくことがリスク低減につながります。
一方で、「公表政策に基づく社会像」に描かれるように、社会全体の気候変動対策が十分ではない場合には、洪水などの自然災害の頻発や激甚化による生産停止や、サプライチェーン寸断による減産や生産停止などの可能性が高まると考えています。
※1 ZEV (Zero Emission Vehicle) :BEVやFCEVなど、走行時にCO2やNOxなどを排出しないクルマ
※2 バイオ燃料、合成燃料など
トヨタは2021年4月に、2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを地球規模でチャレンジすることを宣言しました。環境車は、普及してこそ温室効果ガス (GHG) の排出量削減に貢献できると考え、各地域のお客様に選んでいただけるように多様な技術の開発 (マルチパスウェイ) に取り組んでいます。その一つの方策として、ハイブリッド車 (HEV) 、プラグインハイブリッド車 (PHEV) 、バッテリーEV (BEV) 、燃料電池自動車 (FCEV) など、電動車の環境技術開発を加速しています。また、電動車だけでなく、水素燃料・水素エンジン車、カーボンニュートラル燃料などの開発にも取り組んでいます。
現在、世界の約200の国・地域で販売を行っていますが、それぞれ、経済状況、エネルギー政策、産業政策、お客様のニーズなどが大きく異なっています。このため、各々の国・地域にとって最適となるよう、多様な電動車の選択肢を提供する戦略が重要であると考えています。
この電動化戦略に基づき、これまで累計2,250万台の電動車を世界で販売 (2023年2月時点) し、いち早く気候変動のリスクに対応してきました。
今後、BEVについては、専用プラットフォームによるモデルを順次導入、電池の開発・生産戦略などを通じてプラクティカル (実用的) な車両供給に取り組んでいきます。
2026年までに10モデルを新たに投入し、BEV販売台数も年間150万台を基準にペースを定め、2030年にはグローバル販売台数で年間350万台を目指します。
BEV以外にも、全方位で電動化戦略に取り組み、今後の市場に変化があれば、電動車の販売台数などを、今までの経験で得た強みも活かして、柔軟かつ戦略的に変更することで、各地域のお客様に選んでいただき普及を加速させていきます。
「1.5℃以下の社会像」において、例えば、お客様ニーズの変化に伴い電池需要が増加した場合でも、パートナーとの協力強化や新たなパートナーとの協力体制の検討、トヨタと資本関係のあるサプライヤーによる生産体制の迅速な立ち上げなどによって柔軟に対応することで、カーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでいきます。
また、電動車を増やすことに加え、モード燃費に反映されないものの、CO2排出削減効果のあるオフサイクル技術※に取り組んでいます。さらに、既販車にも利用可能なカーボンニュートラル燃料や、水素燃料・水素エンジン車などのように、CO2排出量削減に寄与する技術は多様であり、こうした技術の選択を広げることにチャレンジしています。
※ オフサイクル技術:「高効率ライト」「廃熱回収」「能動的な空力改善」「日射・温度制御」など、実走行燃費向上につながる技術があり、米国では改善効果に相当するクレジットを付与する制度がある
カーボンニュートラルの実現
自動車産業におけるカーボンニュートラルの実現には、再生可能エネルギーや充電インフラなどのエネルギー政策と、購入補助金、サプライヤー支援、電池リサイクルシステムの整備などの産業政策の一体的な運用が不可欠であり、各国政府や業界団体など様々なステークホルダーと連携した取り組みが必要となってきます。
トヨタはグローバルに事業活動を展開するうえで、各国政府と電動化推進に向けた環境整備について連携し、ライフサイクル全体でのCO2排出量削減に資する電動化戦略を推進しています。
生産分野での取り組みとしては、グローバルで2035年に工場のカーボンニュートラルをめざすことを発表し、炭素税などのリスクにも備えていきます。工場では、徹底的な省エネルギー技術と再生可能エネルギー・水素の導入によるCO2排出量削減を推進しており、欧州の工場では既に電力100%を再生可能エネルギー化しています。
戦略的レジリエンスの強化
自然災害に対処する取り組みを推進し、BCPを策定するとともに、情報収集の強化によるサプライチェーンの強靭化やコミュニケーションの強化に取り組んでいます。
そして、自動車産業だけではなく、あらゆる業界と協力し、サステナブルなだけではなくプラクティカルな取り組みにより、「1.5℃以下の社会像」で描く社会にも対応できるようチャレンジを継続しています。
このほか、安定的な資金調達や持続的な企業価値向上につなげるために、各種ESG評価指標に対する適切な情報開示や、機関投資家をはじめとするステークホルダーの皆様との対話の充実を通じて、トヨタの戦略の妥当性と進捗を確認しています。