有価証券報告書-第114期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/25 15:00
【資料】
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【項目】
63項目

対処すべき課題

本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は2018年3月31日現在において判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
トヨタは経営の基本方針を「トヨタ基本理念」として掲げており、その実現に向けた努力が、企業価値の増大につながるものと考えています。その内容は次のとおりです。
1. 内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
2. 各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する
3. クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む
4. 様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する
5. 労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる
6. グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
7. 開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する
(2) 会社の対処すべき課題
今後の自動車市場については、先進国では安定的に推移、新興国では景気回復などを背景に緩やかな拡大が期待されます。一方で、深刻化する環境問題など社会課題への対応や、急速な進化をとげる人工知能を活用した自動運転、コネクティッド (クルマのつながる化) 、ロボティクスなどの技術革新、さらには、人々のライフスタイルの多様化などにより、自動車産業は100年に一度の大変革の時代を迎えています。
このような経営環境の中、トヨタは、品質・安全を最優先に、新たな価値を創造する「未来への挑戦」と、1年1年着実に真の競争力を強化する「年輪的成長」を方針に掲げ、次の分野の取り組みを加速させていきます。
①電動化
環境問題への対応には、クルマの電動化の推進が必要不可欠です。トヨタは、「エコカーは普及してこそ環境への貢献」との考えのもと、国や地域ごとのエネルギーやインフラ整備の状況、さらにはエコカーの特徴に応じて、お客様の用途に合わせた最適なクルマを提供することを目指しています。
昨年、グローバル累計販売台数が1,000万台を突破したハイブリッド車や、プラグインハイブリッド車に加え、「究極のエコカー」である燃料電池自動車の開発・普及を進めています。また、電気自動車についても、社内ベンチャーとして「EV事業企画室」を立ち上げ、マツダ㈱、㈱デンソーと共同技術開発に向けた新会社を設立するなど、取り組みを加速させています。電動車の基幹部品である車載用電池では、パナソニック㈱と協業の検討を開始しました。また、高性能な次世代電池として「全固体電池」の研究・開発を進めています。
低炭素で持続可能な社会の実現に向け、「2030年に電動車販売550万台以上」というチャレンジ目標を掲げ、今後も技術開発を加速させていきます。
②自動運転
トヨタは、交通事故死傷者ゼロを目指し、1990年代から自動運転技術の研究開発に取り組んできました。その開発理念、「Mobility Teammate Concept (モビリティ・チームメイト・コンセプト) 」は、人とクルマが見守り、助け合う、気持ちが通った仲間のような関係を築くというものです。
自動運転技術・先進安全技術を多くの人に利用いただくため、自動ブレーキなどの予防安全技術をパッケージ化し、日本、北米、欧州のほぼすべての乗用車に設定を完了しました。さらに、昨年10月に発売した新型「LS」には、世界トップレベルの高度運転支援技術を搭載しました。
また、自動運転に必要不可欠な人工知能技術の研究・開発拠点として設立したトヨタ・リサーチ・インスティテュート㈱では、革新的な技術を持つベンチャー企業との連携拡大に向け、ファンドを立ち上げました。さらに、それらの先端研究の成果を、効率的に製品化につなげるべく、一気通貫のソフトウェア開発を行うトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント㈱を設立しました。
すべての人に、安全、便利かつ楽しいモビリティを提供することを究極の目標に、自動運転技術の開発・普及に取り組んでいきます。
③MaaS (モビリティ・アズ・ア・サービス)
トヨタは、電動化、自動運転に加え、すべてのクルマをコネクティッド化することで、お客様の価値観やライフスタイルの多様化に合わせた、新たなクルマの価値やモビリティサービスの創出に努めています。あらゆる異業種、IT企業と連携の上、自動車会社からモビリティカンパニーへの変革を推進していきます。
本年1月に米国で開催されました国際家電見本市において出展した「e-Palette Concept(イー・パレット・コンセプト) 」は、これまでのクルマの概念を超えて、移動、物流、物販など多目的に活用できる新たなモビリティサービス「MaaS」専用の次世代電気自動車です。サービス事業者や開発会社と企画段階からオープンに提携し、本格的な実用化に向けた取り組みを続けていきます。
④アライアンス
当社は、ビジネス環境が複雑化する中で、技術・商品競争力を高めるために、積極的にアライアンスを進めています。
昨年8月にはマツダ㈱と業務資本提携に関する合意書を締結し、電気自動車の共同技術開発などについて検討を開始するとともに、本年3月に、米国での完成車生産を行う合弁新会社マツダトヨタマニュファクチャリングUSA, Inc.を設立しました。また、昨年11月には、スズキ㈱とインド市場向け電気自動車投入に関する覚書を締結しました。「スピード&オープン」な連携により、相互にシナジー効果を発揮できる取り組みを進めていきます。
異業種との連携では、本年2月にはJapanTaxi㈱とタクシー向けサービス共同開発などの検討に関する基本合意書を締結しました。それぞれが培ってきたサービス、技術を活かして、配車支援システムの共同開発、ビッグデータ収集といった分野などで協業を検討していきます。
「モビリティ社会をもっともっと良くしたい」という思いを共有するパートナーと連携しながら、人々の暮らしに役立つ新たな価値を創造し、持続的な成長を目指します。
⑤仕事の進め方改革
当社は、これらの取り組みを支える「人材育成」や「仕事の進め方改革」を一層促進するために、組織再編および役員体制の見直しを継続的に行ってきました。今、自動車産業においては、異業種の参入や急速な技術革新により、これまでにないスピードと規模で構造変革が起きており、明日を生き抜くための瀬戸際の戦いが始まっています。
そうした中で、従来以上に「お客様第一」を念頭に、「現地現物」で「即断、即決、即実行」していくため、一昨年4月に製品群ごとのカンパニー体制に移行しました。本年1月には、現場と一体となった執行のさらなるスピードアップを目指し、従来4月に行っていた役員体制の変更時期を前倒ししました。また、役員自ら役割・意識を変革することを狙い、役員の位置づけを見直すとともに、適材適所の考え方に基づいて社内外から高度な専門性を有した人材を配置しました。組織面では、トヨタの競争力の基盤であるトヨタ生産方式 (TPS) を生産分野以外にも再徹底し、生産性の向上を目指すため、TPS本部を新設しました。
これからも、常に「もっといいやり方がある」ことを念頭に、役員・従業員全員がチャレンジを続けていきます。
このような取り組みにより、トヨタは、「もっといいクルマ」をお届けすることを通じて「いい町・いい社会」づくりに貢献し、結果として多くのお客様にクルマをお求めいただき、安定した経営基盤を構築していきます。このような循環を続けることによって、持続的成長を実現し、企業価値の向上に努めていきます。また、法令遵守をはじめとした企業行動倫理の徹底など、企業の社会的責任を果たしていきます。