有価証券報告書-第73期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/20 15:12
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【項目】
115項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営環境、経営方針、対処すべき課題、経営戦略
自動車業界を取り巻く環境は、今後、2つの変化があると予想されます。
第一に、地球温暖化の問題から、ヨーロッパ、中国、インドなどの主要国でガソリン車やディーゼル車への規制などが厳しくなり、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV・PHV)などの環境対応車の比率が高まって行くと予想されます。
第二に、「安全」技術の動向は、「衝突安全」から「事故回避」への動きが中心になると考えられます。事故回避技術はいかに危険を検知するか、そしていかに車両の動きをコントロールするかという技術が中心になります。それらの技術はITの発達とともに急速に進歩を遂げており、自動運転の技術も従来をはるかに超えたスピードで進展すると思われます。
当社グループは、これらの変化に対応するとともに、中期経営計画『Yorozu Spiral-up Plan 2017』(YSP2017)の結果を踏まえ、第2期目(2018年度~2020年度)となる中期経営計画『Yorozu Spiral-up Plan 2020』(YSP2020)を2018年5月に策定・公表いたしました。
重点取り組みは次の通りです。
①収益力の強化
・ ヨロズオートモーティブアラバマ社(YAA)設立やメキシコでの生産能力の増強などで先行した設備投資の着実な回収と、今後の投資採算性評価の強化と管理を通じたキャッシュフロー経営を進めてまいります。
・ 機能軸・事業軸管理にプロジェクト収益管理を加えた経営管理の強化を行ってまいります。機能軸・事業軸管理にプロジェクト収益管理を加えた経営管理の強化を行ってまいります。
・ 米国アラバマ州に設立したYAAに導入した組立無人化ライン(製品搬送装置、簡易ロボット含む)や周辺設備であるAGV(無人搬送車)などの「ものづくりの革新技術」を他の生産拠点にも拡大し、生産コストの低減を行ってまいります。
・ ものづくり機能であるヨロズグローバルテクニカルセンター(YGTC)と生産設備、金型の生産会社であるヨロズエンジニアリング(YE)による開発初期段階からのサイマル活動の強化により、新車の生産コストと設備投資の低減を進めてまいります。
②製品力・開発力の向上
・ 当社は軽量化のため、構造、材料と工法の3つの側面からアプローチしております。これまで主力製品に採用してきた鋼板材料では超ハイテン鋼板の利用技術開発に取り組んでおります。また、鋼板以外では、樹脂材料や炭素繊維強化プラスチック及びアルミとの複合構造の開発も行っております。また、これらの新構造を製品化するうえで必要な、接合・成形・防錆に関する新工法の技術開発も行い、高付加価値の製品開発に、今後も取り組んでまいります。
・ 更なる成長を目指し、今後、環境対応車や自動運転等による車両重量増に対応する更なる軽量化やコスト低減に対応すべく、当社のプレス、溶接技術などを生かした製品の提案を進めてまいります。
・ 当社では、世界各国で生産するサスペンションの生産技術を日本に集約することで技術力をみがき、世界同一品質と徹底した競争力アップに取り組んでおります。そのため、日本のヨロズエンジニアリング(YE)を拡張・能力増強し、ヨロズグループとして更に競争力を高めてまいります。また、日本以外では、ヨロズエンジニアリングシステムズタイランド社(YEST)でも、能力増強を進めております。
・ そして、顧客のニーズに基づき開発されたこれらの製品を、顧客・製品・地域の3つの軸の観点から積極的に拡販を行ってまいります。
③企業力の充実
永続的な成長の証である100年企業を目指し、競争を勝ち抜くための強靭な企業体質の構築に取り組んでおります。
・ 人財育成
全社を挙げて「働き方改革」に取り組むとともに、日本の労働人口の減少を見据え、女性、外国人と海外拠点の人財、高齢者、障がい者が更に活躍できるダイバーシティに積極的に取り組むことにより、優秀な人財の確保に努めてまいります。また、全従業員が共有する共通能力と、各機能での業務に必要な専門能力の開発と育成を推進してまいります。更には、山形県鶴岡高等専門学校との産学協同や、ヨロズオートモーティブグアナファト デ メヒコ社(YAGM)での、JICA(国際協力機構)主催メキシコ自動車産業人財育成プログラム支援など地域に密着した人財育成に引き続き取り組んでまいります。
・ 組織の見直し
YSP2020を確実に推進していく体制の強化を実施してまいります。
ものづくり機能の迅速な意思決定のため、ヨロズグローバルテクニカルセンター(YGTC)にセンター長を任命し、ものづくり機能の強化を図ります。
研究開発部を新設し、将来に向けた生産技術、新製品の開発を促進します。
プロジェクト収益管理体制の強化を図ってまいります。
ダイバーシティ推進グループを新設し、働き方改革やダイバーシティを推進してまいります。
・ ESG経営
当社は、今後の中長期的かつ持続的な成長のためには、ESG(環境、社会、ガバナンス)は非常に重要な要素と捉えております。当社は、社会貢献と経営に及ぼすリスク低減を目的としてESGを意識した経営(ESG経営)を推進してまいります。各項目の取り組みとして、環境(E)では環境負荷の低減、社会(S)では、働き方改革とダイバーシティの推進、ガバナンス(G)では、更なるコンプライアンスの推進に取り組むとともに、積極的な情報開示に努めてまいります。
(2)株式会社の支配に関する基本方針
(1) 基本方針
当社は、当社の企業価値が、当社及びその子会社・関連会社が永年にわたり蓄積してきた営業・技術・生産のノウハウ及びブランドイメージ等を駆使した機動性のある企業活動に邁進し、国内外の社会の発展に貢献することにより、株主の皆さま共同の利益を向上させていくことにその淵源を有していると考えております。そのため、当社は、特定の者またはグループによる当社の総議決権の20%以上に相当する議決権を有する株式の取得により、このような当社の企業価値または株主の皆さま共同の利益が毀損されるおそれが存する場合には、かかる特定の者またはグループは当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であるとして、法令及び定款によって許容される限度において、当社の企業価値または株主の皆さま共同の利益の確保・向上のための相当な措置を講じることを、その基本方針としております。
(2) 基本方針の実現に資する取組み
当社の企業価値または株主の皆さま共同の利益を確保・向上させるための取組みとして、下記の企業価値の向上に向けた取組み、コーポレートガバナンスの強化に向けた取組み、積極的な株主還元及び当社の考える企業の社会的責任に向けた取組みを、それぞれ実施しております。
① 企業価値の向上に向けた取組み
当社は、更なる企業価値向上のため、2015年3月に、企業ビジョンとして「サスペンションシステムを通じて新たな価値を生み出し、“ヨロズブランドを世界に”」を掲げるとともに、この企業ビジョンを実現し、今後企業として持続的に成長するためのロードマップとして、「サスペンション部品と周辺部品とを一体システムとして性能開発から量産まで行う『サスペンションシステムメーカー』を目指す」という10年間の長期ビジョンを定めました。また、当社はこの長期ビジョンを実現するためのマイルストーンとして、2017年度までの中期経営計画YSP2017を策定し、長期ビジョンの実現に努めてまいりました。2018年5月には、第2期目となる新中期経営計画YSP2020を策定し、企業価値の更なる向上に向けた取り組みを進めております。
② コーポレートガバナンスの強化に向けた取組み
当社は、「高い倫理観と遵法精神により、公正で透明な企業活動を推進すること」を経営の基本としております。取締役会は経営の基本方針、法令で定められた事項やその他経営に関する重要な決定を行うと共に、取締役及び執行役員の業務執行状況を監督する機関として位置付けておりますが、株主の皆さまに対する経営陣の責任をより一層明確にするため、平成13年6月27日開催の第56回定時株主総会において、取締役の任期を2年から1年に短縮しております。
更に、当社は、コーポレートガバナンスの一層の強化の観点から、平成27年6月10日開催の第70回定時株主総会において、過半数を社外取締役で構成する監査等委員会を置く「監査等委員会設置会社」に移行し、監査・監督機能の強化を図りました。また、これに伴い、それまでに選任していた社外監査役2名に替え、新たに、東京証券取引所が定める独立社外取締役の要件を満たす法律・会計分野に造詣の深い女性2名を、監査等委員である取締役に選任いたしました。その後、平成29年6月16日開催の第72回定時株主総会において選任された後任の監査等委員である取締役も、同様に独立社外取締役の要件を満たす法律・会計分野に造詣の深い女性2名であり、取締役会は多様性を考慮した構成となっております。
更に平成30年6月18日開催の第73回定時株主総会において、社外取締役を1名増員いたしました。この結果、監査等委員である取締役を含め、当社の取締役9名の内3名が東京証券取引所の定める独立社外取締役となり、取締役会の3分の1が独立社外取締役で構成されることとなります。
なお、当社は、当社が持続的に成長し中長期的に企業価値の向上を実現するため、「コーポレートガバナンス・ガイドライン」を制定し、コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方及び運営方針を明らかにしております。
当社は、このような取組みによりコーポレートガバナンスを強化し、企業としての持続的な成長を図り、すべてのステークホルダーにとっての企業価値向上に引き続き努めてまいります。
③ 積極的な株主還元
当社は、中期経営計画において、財務戦略の基本方針を、これまで財務安全性重視に加え、株主還元の充実に注力することといたしました。これに伴い、配当方針についても、これまでの「安定配当」から「目標配当性向の設定」へと変更し、2015年度から2017年度の連結配当性向35%を目標といたしました。この基本方針及び配当方針に従い、当社は、2015年度から2017年度において、連結配当性向35%を実現するとともに、平成28年9月には、発行済株式総数の4.0%の自己株式の取得を取締役会にて決議し、取得いたしました。
この基本方針は、新中期経営計画においても継続しており、配当性向については、新中期経営計画においても、連結配当性向35%を目標といたします。当社は、今後も積極的な株主還元の実施に努めてまいります。
④ 当社の考える企業の社会的責任に向けた取組み
当社は、創立以来、「高い倫理観と遵法精神により、公正で透明な企業活動を推進すること」を経営姿勢とし、関連法令の遵守はもちろんのこと、良き企業市民として社会的責任を果たすことが必要と認識し、事業活動を行ってまいりました。今後とも、お客さまの満足と技術革新、法令等の遵守、環境問題への取組み、グローバル企業としての発展、企業情報の開示、人権の尊重、公正な取引、経営幹部の責任の明確化を図ることによって、企業の社会的責任を遂行してまいります。
(3) 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みについて
当社が導入した買収防衛策(以下、「本プラン」といいます。)は、当社が発行者である株券等について、特定の株主、その特別関係者及び実質的に支配する者もしくは共同ないし協調して行動する者の株券等保有割合が20%以上となる買付を行うこと等を希望する買付者が出現した場合に、当該買付者に対し、事前に当該買付等に関する必要かつ十分な情報の提出を求めます。その後、買付者等から提供された情報が、当社社外取締役を含む当社の業務執行を行う経営陣から独立した者のみから構成される独立諮問委員会に提供され、その検討・評価を経るものとします。独立諮問委員会は、当該買付者が本プランに定める手続を遵守しなかった場合、その他買付者の買付等の内容の検討の結果、当該買付者による買付等が当社の企業価値ひいては株主共同の利益に著しく反する重大なおそれをもたらす場合で、かつ、対抗措置を発動することが相当と認められる場合は、当社取締役会に対し、対抗措置の発動を勧告します。また、独立諮問委員会は、当社取締役会に対して、株主総会において大規模買付行為に対する対抗措置発動の要否や内容について賛否を求める形式により、株主の皆さまの意思を確認することを勧告できます。当社取締役会は、独立諮問委員会の上記勧告を最大限尊重した上で、対抗措置の発動、不発動または中止の決議を行います。なお、当社は、対抗措置の発動要件をいわゆる高裁四類型及び強圧的二段階買付けのみに限定しております。具体的な対抗措置として新株予約権の無償割当てを行う場合には、対抗措置としての効果を勘案した行使期間、行使条件及び取得条項を定めることがあります。
本プランの有効期間は、平成33年開催予定の第76回定時株主総会の終結の時までとします。ただし、有効期間の満了前であっても、当社の株主総会において本プランを廃止する旨の議案が承認された場合、または独立諮問委員会の勧告により取締役会で本プランを廃止する旨の決議が行われた場合には、本プランはその時点で廃止されるものとします。
(4) 本プランの合理性について
本プランは、経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に公表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則(①企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、②事前開示・株主意思の原則、③必要性・相当性確保の原則)を以下のとおり充足しており、また、経済産業省に設置された企業価値研究会が平成20年6月30日に公表した「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」及び東京証券取引所が平成27年6月1日に公表した「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」の「原則1-5.いわゆる買収防衛策」その他の買収防衛策に関する実務・議論を踏まえた内容となっており、高度な合理性を有するものです。
① 企業価値または株主共同の利益の確保・向上
本プランは、大規模買付者に対して事前に大規模買付行為に関する必要な情報の提供及び考慮・交渉のための期間の確保を求めることによって、当該大規模買付行為に応じるべきか否かを株主の皆さまが適切に判断されること、当社取締役会が当該大規模買付行為に対する賛否の意見または代替案を株主の皆さまに対して提示すること、あるいは、株主の皆さまのために大規模買付者と交渉を行うこと等を可能とし、もって当社の企業価値または株主の皆さま共同の利益の確保・向上を目的としております。
② 事前の開示
当社は、株主及び投資家の皆さま及び大規模買付者の予見可能性を高め、株主の皆さまに適正な選択の機会を確保するために、本プランを予め開示するものです。また、当社は今後も、適用ある法令等及び金融商品取引所規則に従って必要に応じて適時適切な開示を行います。
③ 株主意思の重視
当社は、平成30年6月18日開催の第73回定時株主総会において本プランによる買収防衛策の継続を承認いただいております。また、前述したとおり、当社株主総会において本プランを廃止する旨の議案が承認された場合には本プランはその時点で廃止されるものとしており、その存続が株主の皆さまの意思に係らしめられています。
④ 外部専門家の意見の取得
当社取締役会は、大規模買付行為に関する評価、検討、意見形成、代替案立案及び大規模買付者との交渉を行うにあたり、必要に応じて、当社取締役会から独立した第三者的立場にある専門家(フィナンシャル・アドバイザー、弁護士、公認会計士、税理士等)の助言を得たうえで検討を行います。これにより当社取締役会の判断の客観性及び合理性が担保されることになります。
⑤ 独立諮問委員会への諮問
当社は、本プランの必要性及び相当性を確保し、経営者の保身のために本プランが濫用されることを防止するために、独立諮問委員会を活用するものとし、当社取締役会が対抗措置を発動する場合には、その判断の公正を担保し、かつ、当社取締役会の恣意的な判断を排除するために、独立諮問委員会の勧告を最大限尊重するものとしております。
⑥ デッドハンド型買収防衛策またはスローハンド型買収防衛策ではないこと
本プランは、当社の株主総会または株主総会において選任された取締役により構成される取締役会によっていつでも廃止することができるため、いわゆるデッドハンド型買収防衛策(取締役会の構成員の過半数を交替させてもなお、発動を阻止できない買収防衛策)またはスローハンド型買収防衛策(取締役会の構成員の交替を一度に行うことができないため、発動を阻止するのに時間を要する買収防衛策)ではありません。
以上から、当社役員の地位の維持を目的とするものでないことは明らかであると考えております。