有価証券報告書-第135期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/29 9:22
【資料】
PDFをみる
【項目】
164項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、グループ企業理念「市民に愛され市民に貢献する」のもと2019年2月に、2022年3月期を最終年度とする「シチズングループ中期経営計画2021」(以下「本中期経営計画」という。)を策定しました。
本中期経営計画においてグループ中期経営ビジョン「Innovation for the next ~時を感じ、未来に感動を~」を掲げ、それぞれの事業において、新たな価値創造に挑戦してまいります。
(2) 経営戦略等
本中期経営計画におけるグループ経営ビジョン実現に向けて、以下の3つの重点施策に取り組んでまいります。
1)時計・工作機械事業の成長促進
時計事業は、グループ経営資源を積極的に投下し、100年間培ってきたマニュファクチュールとしての高い技術力や開発力、確かな品質という土台に加え、更に新たな顧客体験を生み出す“コト”の価値をも提供するようなものづくりを進めてまいります。
工作機械事業は、景気動向に左右されやすいという特性もある事から、市場状況に合わせた投資を継続し、景気変動の渦中にあっても、世界最先端の生産革新ソリューションを創造し「新・モノづくり企業」のポジションを確立することを目指してまいります。
2)サステナブル経営の推進
当社グループは、永続的に事業を継続できる企業となる為、事業を通じてさまざまな社会課題の解決を図り、2030年を見据えたグローバルな社会課題であるSDGs(持続可能な開発目標)達成に貢献していくことを目指してまいります。
その一つとして、製品の製造プロセスにおいてはSDGsを視野に入れ、「サステナブルファクトリー」というコンセプトを打ち出し、従来からの環境配慮に加えてサプライチェーン全体で、コンプライアンス、人権や労働慣行に配慮したものづくりを進めてまいります。
3)品質コンプライアンスの強化
当社グループでは、2018年より業務リスクを統括する「グループリスクマネジメント委員会」に品質コンプライアンス委員会を設置し、品質に係るコンプライアンスリスクについて取り組んでまいりました。また、同委員会を通じ「グループ品質行動憲章」を策定し、ものづくり全プロセスにおいてコンプライアンス遵守の徹底に取り組んでおります。
2020年度以降については、あらたに設置した「サステナビリティ委員会」が同委員会を管理及び統括することにより、業務リスクに加えESG・SDGs視点での品質に係るコンプライアンスリスクに取り組む体制としてまいります。
本中期経営計画における事業別の戦略としましては、
1)時計事業
「時を通して新たな価値と体験を創造する」を事業スローガンに掲げ、時計本来の機能や価値を超えた商品や魅力あふれるサービスの提供を目指してまいります。
これまで進めてきたシチズンブランドを核にしたマルチブランド戦略の成果発現に加え、今後成長が見込まれるスマートウオッチや機械式、高級品を中長期的に育成し製品領域の拡大を行ってまいります。また、デジタル技術の活用によるデジタルマーケティングの推進や製造革新によるムーブメント及び完成品のコスト力強化も図ってまいります。
2)工作機械事業
世界最先端の生産革新ソリューションを創造し「新・モノづくり企業」のポジションを確立するために、現状の経営資源を最大限に効率化させる生産革新の実現及び今後期待される新興国市場を中心として既存事業の更なる競争力強化を推進してまいります。また、IoTに対応したソリューション事業の拡充も目指してまいります。
3)デバイス事業及びその他事業
デバイス事業は、市場変化に合わせた製品の選択と集中と生産拠点の集約による収益力改善及び当社の強みを最大限に活かせる領域において事業拡大を図り確固たる競争優位を確立してまいります。当社グループの強みである小型金属加工技術を活かした自動車部品事業は、当社のコア技術である組立・研削技術等を活用した高付加価値製品の拡大を図り、小型化、薄型化、高耐久化が要求されるLEDやスイッチ事業は製品の選択と集中を行い、生産拠点の集約による収益力の改善及び強みを活した新規事業の創出を目指してまいります。
また、その他事業では、当社グループの強みをしっかりと見極め、事業と製品における選択と集中を行い、生産効率の向上や合理化による安定的な利益確保を目指してまいります。
本中期経営計画の達成に向けて、以上の取組み・戦略を推進してまいります。
(3) 経営環境
当社を取り巻く経営環境として、中核事業である時計事業において、主に以下の環境変化を認識しております。
1)デジタル表示式のスマートウオッチ市場の拡大に伴う米国におけるファッションウオッチを中心とした時計市場 の縮小
2)アナログクオーツムーブメント市場の縮小
3)中国や米国などでのEコマース流通の急速な成長と実店舗流通の不振
4)高価格帯を中心とした機械式時計の堅調な需要
5)足元での新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響による消費の落ち込み
当社は、以上のような経営環境変化の影響を受け、業績下振れリスクが高まっていることを認識し、中核事業である時計事業における課題について優先的に取り組んでまいります。
なお、時計以外の事業につきましては、様々な事業環境の変化、足元の新型コロナウイルスの影響などの下振れリスクを注視しつつ、「シチズングループ中期経営計画2021」の取組みを継続してまいります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社の時計事業における収益の柱であったムーブメント事業は、デジタル表示式のスマートウオッチ市場の拡大に伴う、アナログクオーツウオッチ市場の縮小といった経営環境の変化により、収益の確保が難しい状況になってきております。今後、時計事業については、ムーブメント事業に過度に依存せず、シチズンブランドを核とした完成品事業での収益拡大を目指し、以下の4つの課題について優先的に取り組んでまいります。
1)ムーブメント事業の再構築
ムーブメント事業の収益改善に向けて、アナログクオーツムーブメントの生産規模を適正化し、需要に見合った製造体制を再構築してまいります。また、ムーブメントの生産革新に加え、キャリバー統廃合等の合理化を推進し、コスト削減を追求してまいります。さらに、堅調な機械式ムーブメント需要の獲得に向けて、需要に応じた価格戦略を展開することにより、安定的な収益基盤を確立してまいります。
2)Eco-Driveを軸としたシチズンブランドの強化
「Eco-Drive」は、光発電によって時計を駆動させる当社のコア技術であり、1996年には腕時計として初めて「エコマーク商品」に認定されるなど、これまでもその取組みは評価されてきました。今後、グローバルブランドとして展開しているプロフェッショナルスポーツウオッチ「PROMASTER」とエシカルウオッチ「CITIZEN L」の更なる拡大を図るほか、国内主要ブランドとしての地位を築く「ATTESA」と「xC」については、国内市場の更なる強化とアジア市場への拡販を進めてまいります。
3)EC販売及びデジタルマーケティングの強化
新型コロナウイルスの感染拡大も相まって、実店舗流通への依存からの脱却とEC販売の強化は喫緊かつ重要な課題です。当社は、今後、既存のEC販売の促進に加え、米国市場で先行している直販ECプラットフォームの構築を国内市場においても迅速に進めることでEC販売の強化を図ってまいります。また、現在展開している「Riiiver」、「FTS(ファイン・チューニング・サービス)」、「AIウオッチレコメンドサービス」といったデジタルマーケティングについても、今後さらに強化し、新規顧客の開拓やオムニチャネル化の促進による収益拡大につなげてまいります。
4)重点地域戦略
当社は、これまで日本及び北米市場を重点市場としておりましたが、今後の成長が見込まれるアジア市場、特に中国市場を再び成長軌道に乗せるべく、若年層向けの商品の拡充やEC販売の拡大を進めてまいります。また、北米市場においては、利益体質への転換に向けて、構造改革による販売管理費の適正化を図るとともに、これまで以上にEC販売の拡大に注力してまいります。