有価証券報告書-第20期(2024/04/01-2025/03/31)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度は、国内において雇用や所得が改善する一方、原材料価格や燃料価格の上昇、為替の変動による物価上昇等が個人消費に影響しました。また、世界情勢における様々な動きにより、国内外とも景気の先行きについては不透明な状況が継続しました。
このような環境の中、バンダイナムコグループは2022年4月からグループの最上位概念となる「パーパス“Fun for All into the Future”」と新ロゴマークの導入を行うとともに、3カ年の中期計画をスタートしました。中期計画においては、「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと、バンダイナムコグループが中長期で目指す姿に向け、世界中のIPファン、あらゆるパートナー、グループ従業員、そして社会と常に向き合い、広く、深く、複雑につながる存在を目指し「Connect with Fans」を中期ビジョンに掲げ、重点戦略として「IP軸戦略」「人材戦略」「サステナビリティ」を推進しました。重点戦略の推進を通じ、IP(Intellectual Property:キャラクター等の知的財産)の世界観や特性を活かし、最適なタイミングで、最適な商品・サービスとして提供することでIP価値の最大化をはかる「IP軸戦略」をさらに進化させるとともに、「IP軸戦略」のグローバル展開を強化し、ALL BANDAI NAMCOでの一体感と総合力を高めるための取組みを推進しました。
当連結会計年度につきましては、IP軸戦略を核に各地域や事業を横断・連携しALL BANDAI NAMCOで一体となった取組みを強化しました。事業面では、デジタル事業及びトイホビー事業の業績が、利益率の高い商品・サービスのヒット等により大きく伸長したほか、IPプロデュース事業とアミューズメント事業も好調に推移し、全ての事業が前年同期比で増収増益となりました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高1,241,513百万円(前期比18.2%増)、営業利益180,229百万円(前期比98.7%増)、経常利益186,470百万円(前期比79.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益129,301百万円(前期比27.4%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
[デジタル事業]
デジタル事業では、ネットワークコンテンツにおいて、「DRAGON BALL」シリーズや「ONE PIECE」等の主力アプリタイトルがユーザーに向けた継続的な施策により国内外で引き続き安定的に推移したほか、新作アプリタイトル「学園アイドルマスター」が好調に推移しました。家庭用ゲームにおいては、「ELDEN RING」の大型ダウンロードコンテンツ「ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE」や新作タイトル「ドラゴンボール Sparking! ZERO」がワールドワイドでヒットしたほか、「ELDEN RING」のリピート販売が好調に推移しました。また、2025年4月からの中期計画に向けて、クオリティを重視したファンの期待に応えるタイトル開発を目指し、バランスの取れた最適なタイトルポートフォリオの構築、開発体制の強化に取り組みました。
この結果、デジタル事業における売上高は455,633百万円(前期比22.3%増)、セグメント利益は68,527百万円(前期比995.1%増)となりました。
[トイホビー事業]
トイホビー事業では、映像配信の普及等によってグローバル市場における日本IPの人気が拡大していることを受け、国内外で展開カテゴリーの拡大、リアルイベントや店舗によるタッチポイントの拡大、生産体制の強化等をはかったことにより、引き続き好調に推移しました。具体的には、ガンプラ(ガンダムシリーズのプラモデル)やコレクターズフィギュア、一番くじ(キャラクターくじ)等のハイターゲット(大人)層向けの商品が、販売・マーケティングや商品ラインナップの強化により好調に推移しました。また、「ONE PIECE」や「DRAGON BALL」シリーズのトレーディングカードゲーム等のカード商材、ガシャポン(カプセルトイ)、菓子・食品等が商品ラインナップやターゲット層、展開地域の拡大に加え、顧客とのタッチポイントの強化等により業績に貢献しました。今後もトイホビー事業においては、引き続きグローバル展開の拡大と、拡大を支える生産体制や販売網等の強化を推進します。
この結果、トイホビー事業における売上高は596,933百万円(前期比17.1%増)、セグメント利益は102,202百万円(前期比29.9%増)となりました。
[IPプロデュース事業]
IPプロデュース事業では、ガンダムシリーズ劇場公開作品の中で歴代No.1となった「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」や、「ブルーロック」の新作劇場作品の興行収入が業績に貢献しました。また、ガンダムシリーズや「ブルーロック」をはじめ、「ラブライブ!」シリーズ、「転生したらスライムだった件」等のグローバル展開や映像配信、ライセンスビジネスが好調に推移しました。さらに、リアルなエンターテインメント需要の高まりに伴い、ライブイベントやパッケージの販売等が好調に推移しました。IPプロデュース事業では、今後も映像や音楽を通じIP軸戦略の核となる良質なIPの創出を強化します。
この結果、IPプロデュース事業における売上高は90,738百万円(前期比10.0%増)、セグメント利益は11,778百万円(前期比17.2%増)となりました。
[アミューズメント事業]
アミューズメント事業では、国内アミューズメント施設の既存店売上高が前年同期比で105.3%となりました。また、「バンダイナムコ Cross Store」や「ガシャポンのデパート」のようなグループの商品・サービスと連携したバンダイナムコならではの施設やアクティビティ施設が好調に推移しました。業務用ゲームにおいては、新製品や定番機器の販売等が安定的に推移しました。アミューズメント事業においては、グループの商品・サービスの認知を拡大するためのファンとのタッチポイントの役割をさらに強化するとともに、燃料価格の上昇等の外部環境の変化も踏まえ、引き続き効率化に取り組みます。
この結果、アミューズメント事業における売上高は141,485百万円(前期比18.2%増)、セグメント利益は8,438百万円(前期比23.3%増)となりました。
[その他事業]
その他事業では、グループ各社へ向けた物流事業、その他管理業務等を行っている会社から構成されており、これらのグループサポート関連業務における効率的な運営に取り組んでおります。
その他事業における売上高は36,224百万円(前期比11.9%増)、セグメント利益は1,671百万円(前期比69.2%増)となりました。
財政状態は、次のとおりであります。
当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ130,798百万円増加し1,102,636百万円となりました。これは主に仕掛品が15,163百万円減少したものの、現金及び預金が66,592百万円、投資有価証券が57,222百万円、有形固定資産が20,491百万円増加したことによるものです。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ37,405百万円増加し309,420百万円となりました。これは主に未払法人税等が17,523百万円、未払金が増加したこと等により流動負債のその他が15,202百万円増加したことによるものです。
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ93,392百万円増加し793,216百万円となりました。これは主に自己株式の取得により35,000百万円減少したものの、利益剰余金が89,384百万円、その他有価証券評価差額金が36,189百万円増加したことによるものです。なお、自己株式の消却を実施したことに伴い資本剰余金及び自己株式はそれぞれ9,942百万円減少しております。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の72.0%から71.9%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末と比べ49,696百万円増加し、360,960百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は187,337百万円(前期比110.7%増)となりました。これは法人税等の支払額38,030百万円(前期は44,132百万円)等の資金の減少要因がありましたが、税金等調整前当期純利益が184,122百万円(前期は146,640百万円)、減価償却費が40,216百万円(前期は38,364百万円)となったことにより、全体としては資金が増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は62,004百万円(前期は10,136百万円の獲得)となりました。これは主に有形・無形固定資産の取得による支出が42,437百万円(前期は34,909百万円)であったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は77,347百万円(前期比2.8%増)となりました。これは主に配当金の支払額が39,918百万円(前期は45,998百万円)、自己株式の取得による支出が35,000百万円(前期は17,240百万円)であったことによるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.上記金額は製造原価によって表示しております。
2.上記金額には商品化権使用料が含まれております。
3.上記金額はセグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)上記金額はセグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.上記金額はセグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
2.「その他」の区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであります。
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(注)販売実績が総販売実績の100分の10未満の相手先については記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。また、経営者の問題認識、今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
中期計画の成果と課題について
当社グループは、2022年4月からグループの最上位概念となる「パーパス“Fun for All into the Future”」と新ロゴマークの導入を行うとともに、3カ年の中期計画をスタートしました。中期計画においては、「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと、当社グループが中長期で目指す姿に向け、世界中のIPファン、あらゆるパートナー、株主、グループ従業員、そして社会と常に向き合い、広く、深く、複雑につながる存在を目指し「Connect with Fans」を中期ビジョンに掲げ、重点戦略として「IP軸戦略」「人材戦略」「サステナビリティ」を推進しました。重点戦略の推進を通じ、IPの世界観や特性を活かし、最適なタイミングで、最適な商品・サービスとして提供することでIP価値の最大化をはかる「IP軸戦略」をさらに進化させるとともに、「IP軸戦略」のグローバル展開を強化し、ALL BANDAI NAMCOでの一体感と総合力を高めるための取組みを推進しました。
本中期計画期間においては、IP軸戦略を、ALL BANDAI NAMCOで一体となり、ワールドワイドで事業や地域を横断した取組みを推進したことにより、定番IP商品・サービスや、各事業の主力カテゴリーの売上が伸長したほか、北米や中国を中心にグローバル展開の拡大をはかりました。また、グループ各社のデータの接続と集約を行うデータユニバース構想を推進し、複数事業においてデータの活用にも着手しました。一方で、新規IP創出や新規事業への挑戦、各事業の拡大及び事業を支えるコーポレート機能を担う人材の採用・育成については、2025年4月からの中期計画において、一層強化する必要があると考えています(「人材戦略」及び「サステナビリティ」については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください)。
中期計画に基づいた様々な取組みを推進した結果、中期計画最終年度の2025年3月期においては、中期計画策定当初に掲げた計数目標 連結売上高1兆1,000億円 連結営業利益1,250億円 ROE12%以上に対し、連結売上高1兆2,415億円、連結営業利益1,802億円、ROE17.3%となり、全てにおいて目標を上回る実績となりました。また、中期計画期間中の平均営業利益は1,291億円となり、2018年4月からの前中期計画期間中の平均営業利益824億円に対し、大きく伸長することができました。当社グループでは、2025年4月からの中期計画においても、環境変化やヒット商品・サービスの有無に影響されづらい収益基盤を厚くすることを目指します。
新たな中期計画の策定について
当連結会計年度においては、2022年4月からの中期計画の成果と課題を踏まえ、中長期での持続的な成長を目指し、新たな中期計画の策定に取り組みました(中期計画の詳細については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題」をご参照ください)。そして、中期計画を推進するにあたり、財務基盤やガバナンス体制、グループ従業員が新たなことにチャレンジできる成長環境の構築等の強固な経営基盤の強化と、IP価値最大化の推進を目的に、当社の取締役体制やユニット体制等の変更を行うことを決定しました。また、当社グループに対するステークホルダーからの理解促進を目的に、中長期での企業価値向上と長期利益の創造に向けた資本政策に関する考え方を開示しました。


協業・アライアンスを推進する「CW360」の設置について
中長期ビジョン「Connect with Fans」を掲げる2025年4月からの中期計画において、成長投資を含めた外部パートナーとの協業・アライアンスをさらに推進するため、“360度全方位のFansとつながっていきたい”という想いをこめて当社内に新たな部署「CW360」を新設しました。「CW360」においては、グループ全体の視点で、外部パートナーと様々な形でつながり、さらに新たな領域と各事業が接続することで事業の成長を後押しし、グループの長期的な成長につなげていくことを目指してまいります。また、「CW360」による、外部パートナーとのプロジェクトや協業等の機会を、次世代を担う人材育成の場としても活用していきます。
株主還元について
当社は、経営を取り巻く環境や成長に向けた戦略投資に関する方針を踏まえ、様々な角度から検討を行った結果、2025年4月よりスタートした中期計画において、株主還元に関する基本方針を一部変更することとしました。
<新たな株主還元に関する基本方針>当社グループの競争力を一層強化するとともに、株主への適正な利益還元を経営の重要施策と位置づけ、総還元性向50%以上を基本方針とする。
・DOE(純資産配当率)3.60%を下限とし、長期的に安定的な配当を実施する。
・資本コストを意識し、適宜自己株式の取得を実施する。
当連結会計年度の期末配当金は、新たな基本方針を適用し、ベース配当11円に業績連動配当49円を加え、1株当たり60円となります。また、2024年12月10日に1株当たり11円の中間配当を実施しておりますので、年間配当金は1株当たり71円となります。さらには、保有資産の有効活用により資本効率の向上をはかるとともに、環境変化に対応し株主還元を含めた機動的な資本政策を実行することを目的に、当第4四半期連結会計期間に自己株式の取得を行いました。取得した自己株式の総数は7,056,300株、取得価額の総額は34,999,814,138円となり、配当及び本自己株式取得を踏まえた総還元性向は62.7%となります。なお、当社では、2025年4月30日付で保有する全自己株式のうち10,000,000株の消却を行っております。当社グループでは、中長期での持続的な成長に向け、より強固な基盤をつくり、最大の財産であるグループ社員、多彩な事業が自由闊達に挑戦できる環境を整備してまいります。
財政状態につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、主として内部資金により充当することとしており、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は360,960百万円となっております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
翌連結会計年度のキャッシュ・フローの見通しにつきましては、営業活動で得られるキャッシュ・フローは、当連結会計年度に比べ営業利益の減少及び法人税等の支払いの増加が見込まれるため、当連結会計年度を下回る見込みであります。また、投資活動により使用するキャッシュ・フローについては、当連結会計年度に比べ設備投資等の資金需要の減少が見込まれるため、当連結会計年度より下回ることを見込んでおります。さらに、財務活動により使用するキャッシュ・フローについては、当連結会計年度に比べ配当金の支払いの増加が見込まれるものの、自己株式の取得を実施した当連結会計年度より下回ることを見込んでおります。翌連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高については、営業活動で得られるキャッシュ・フローが、投資活動及び財務活動により使用するキャッシュ・フローを上回ることが見込まれるため、当連結会計年度末に比べて増加となる見込みであります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度は、国内において雇用や所得が改善する一方、原材料価格や燃料価格の上昇、為替の変動による物価上昇等が個人消費に影響しました。また、世界情勢における様々な動きにより、国内外とも景気の先行きについては不透明な状況が継続しました。
このような環境の中、バンダイナムコグループは2022年4月からグループの最上位概念となる「パーパス“Fun for All into the Future”」と新ロゴマークの導入を行うとともに、3カ年の中期計画をスタートしました。中期計画においては、「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと、バンダイナムコグループが中長期で目指す姿に向け、世界中のIPファン、あらゆるパートナー、グループ従業員、そして社会と常に向き合い、広く、深く、複雑につながる存在を目指し「Connect with Fans」を中期ビジョンに掲げ、重点戦略として「IP軸戦略」「人材戦略」「サステナビリティ」を推進しました。重点戦略の推進を通じ、IP(Intellectual Property:キャラクター等の知的財産)の世界観や特性を活かし、最適なタイミングで、最適な商品・サービスとして提供することでIP価値の最大化をはかる「IP軸戦略」をさらに進化させるとともに、「IP軸戦略」のグローバル展開を強化し、ALL BANDAI NAMCOでの一体感と総合力を高めるための取組みを推進しました。
当連結会計年度につきましては、IP軸戦略を核に各地域や事業を横断・連携しALL BANDAI NAMCOで一体となった取組みを強化しました。事業面では、デジタル事業及びトイホビー事業の業績が、利益率の高い商品・サービスのヒット等により大きく伸長したほか、IPプロデュース事業とアミューズメント事業も好調に推移し、全ての事業が前年同期比で増収増益となりました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高1,241,513百万円(前期比18.2%増)、営業利益180,229百万円(前期比98.7%増)、経常利益186,470百万円(前期比79.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益129,301百万円(前期比27.4%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
[デジタル事業]
デジタル事業では、ネットワークコンテンツにおいて、「DRAGON BALL」シリーズや「ONE PIECE」等の主力アプリタイトルがユーザーに向けた継続的な施策により国内外で引き続き安定的に推移したほか、新作アプリタイトル「学園アイドルマスター」が好調に推移しました。家庭用ゲームにおいては、「ELDEN RING」の大型ダウンロードコンテンツ「ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE」や新作タイトル「ドラゴンボール Sparking! ZERO」がワールドワイドでヒットしたほか、「ELDEN RING」のリピート販売が好調に推移しました。また、2025年4月からの中期計画に向けて、クオリティを重視したファンの期待に応えるタイトル開発を目指し、バランスの取れた最適なタイトルポートフォリオの構築、開発体制の強化に取り組みました。
この結果、デジタル事業における売上高は455,633百万円(前期比22.3%増)、セグメント利益は68,527百万円(前期比995.1%増)となりました。
[トイホビー事業]
トイホビー事業では、映像配信の普及等によってグローバル市場における日本IPの人気が拡大していることを受け、国内外で展開カテゴリーの拡大、リアルイベントや店舗によるタッチポイントの拡大、生産体制の強化等をはかったことにより、引き続き好調に推移しました。具体的には、ガンプラ(ガンダムシリーズのプラモデル)やコレクターズフィギュア、一番くじ(キャラクターくじ)等のハイターゲット(大人)層向けの商品が、販売・マーケティングや商品ラインナップの強化により好調に推移しました。また、「ONE PIECE」や「DRAGON BALL」シリーズのトレーディングカードゲーム等のカード商材、ガシャポン(カプセルトイ)、菓子・食品等が商品ラインナップやターゲット層、展開地域の拡大に加え、顧客とのタッチポイントの強化等により業績に貢献しました。今後もトイホビー事業においては、引き続きグローバル展開の拡大と、拡大を支える生産体制や販売網等の強化を推進します。
この結果、トイホビー事業における売上高は596,933百万円(前期比17.1%増)、セグメント利益は102,202百万円(前期比29.9%増)となりました。
[IPプロデュース事業]
IPプロデュース事業では、ガンダムシリーズ劇場公開作品の中で歴代No.1となった「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」や、「ブルーロック」の新作劇場作品の興行収入が業績に貢献しました。また、ガンダムシリーズや「ブルーロック」をはじめ、「ラブライブ!」シリーズ、「転生したらスライムだった件」等のグローバル展開や映像配信、ライセンスビジネスが好調に推移しました。さらに、リアルなエンターテインメント需要の高まりに伴い、ライブイベントやパッケージの販売等が好調に推移しました。IPプロデュース事業では、今後も映像や音楽を通じIP軸戦略の核となる良質なIPの創出を強化します。
この結果、IPプロデュース事業における売上高は90,738百万円(前期比10.0%増)、セグメント利益は11,778百万円(前期比17.2%増)となりました。
[アミューズメント事業]
アミューズメント事業では、国内アミューズメント施設の既存店売上高が前年同期比で105.3%となりました。また、「バンダイナムコ Cross Store」や「ガシャポンのデパート」のようなグループの商品・サービスと連携したバンダイナムコならではの施設やアクティビティ施設が好調に推移しました。業務用ゲームにおいては、新製品や定番機器の販売等が安定的に推移しました。アミューズメント事業においては、グループの商品・サービスの認知を拡大するためのファンとのタッチポイントの役割をさらに強化するとともに、燃料価格の上昇等の外部環境の変化も踏まえ、引き続き効率化に取り組みます。
この結果、アミューズメント事業における売上高は141,485百万円(前期比18.2%増)、セグメント利益は8,438百万円(前期比23.3%増)となりました。
[その他事業]
その他事業では、グループ各社へ向けた物流事業、その他管理業務等を行っている会社から構成されており、これらのグループサポート関連業務における効率的な運営に取り組んでおります。
その他事業における売上高は36,224百万円(前期比11.9%増)、セグメント利益は1,671百万円(前期比69.2%増)となりました。
財政状態は、次のとおりであります。
当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ130,798百万円増加し1,102,636百万円となりました。これは主に仕掛品が15,163百万円減少したものの、現金及び預金が66,592百万円、投資有価証券が57,222百万円、有形固定資産が20,491百万円増加したことによるものです。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ37,405百万円増加し309,420百万円となりました。これは主に未払法人税等が17,523百万円、未払金が増加したこと等により流動負債のその他が15,202百万円増加したことによるものです。
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ93,392百万円増加し793,216百万円となりました。これは主に自己株式の取得により35,000百万円減少したものの、利益剰余金が89,384百万円、その他有価証券評価差額金が36,189百万円増加したことによるものです。なお、自己株式の消却を実施したことに伴い資本剰余金及び自己株式はそれぞれ9,942百万円減少しております。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の72.0%から71.9%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 増減額 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー (百万円) | 88,906 | 187,337 | 98,430 |
投資活動によるキャッシュ・フロー (百万円) | 10,136 | △62,004 | △72,140 |
財務活動によるキャッシュ・フロー (百万円) | △75,237 | △77,347 | △2,109 |
現金及び現金同等物の期末残高 (百万円) | 311,264 | 360,960 | 49,696 |
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末と比べ49,696百万円増加し、360,960百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は187,337百万円(前期比110.7%増)となりました。これは法人税等の支払額38,030百万円(前期は44,132百万円)等の資金の減少要因がありましたが、税金等調整前当期純利益が184,122百万円(前期は146,640百万円)、減価償却費が40,216百万円(前期は38,364百万円)となったことにより、全体としては資金が増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は62,004百万円(前期は10,136百万円の獲得)となりました。これは主に有形・無形固定資産の取得による支出が42,437百万円(前期は34,909百万円)であったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は77,347百万円(前期比2.8%増)となりました。これは主に配当金の支払額が39,918百万円(前期は45,998百万円)、自己株式の取得による支出が35,000百万円(前期は17,240百万円)であったことによるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前年同期比(%) |
デジタル事業 | 78,522 | △11.7 |
トイホビー事業 | 35,993 | 18.0 |
IPプロデュース事業 | 37,831 | 48.1 |
アミューズメント事業 | 16,577 | 69.7 |
合計 | 168,924 | 9.2 |
(注)1.上記金額は製造原価によって表示しております。
2.上記金額には商品化権使用料が含まれております。
3.上記金額はセグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前年同期比(%) | 受注残高(百万円) | 前年同期比(%) |
デジタル事業 | 8,845 | △20.3 | 2,174 | △48.6 |
トイホビー事業 | 53,800 | 11.2 | 20,054 | 7.3 |
IPプロデュース事業 | 1,550 | 10.6 | 3,442 | 8.8 |
アミューズメント事業 | 114 | △86.0 | 114 | △62.3 |
合計 | 64,311 | 4.2 | 25,786 | △2.3 |
(注)上記金額はセグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
デジタル事業 | 450,088 | 22.9 |
トイホビー事業 | 574,837 | 17.0 |
IPプロデュース事業 | 75,615 | 10.5 |
アミューズメント事業 | 134,324 | 13.2 |
その他 (注)2 | 6,647 | 13.6 |
合計 | 1,241,513 | 18.2 |
(注)1.上記金額はセグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
2.「その他」の区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであります。
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
Apple Inc. | 108,143 | 10.30 | - | - |
(注)販売実績が総販売実績の100分の10未満の相手先については記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。また、経営者の問題認識、今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
中期計画の成果と課題について
当社グループは、2022年4月からグループの最上位概念となる「パーパス“Fun for All into the Future”」と新ロゴマークの導入を行うとともに、3カ年の中期計画をスタートしました。中期計画においては、「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと、当社グループが中長期で目指す姿に向け、世界中のIPファン、あらゆるパートナー、株主、グループ従業員、そして社会と常に向き合い、広く、深く、複雑につながる存在を目指し「Connect with Fans」を中期ビジョンに掲げ、重点戦略として「IP軸戦略」「人材戦略」「サステナビリティ」を推進しました。重点戦略の推進を通じ、IPの世界観や特性を活かし、最適なタイミングで、最適な商品・サービスとして提供することでIP価値の最大化をはかる「IP軸戦略」をさらに進化させるとともに、「IP軸戦略」のグローバル展開を強化し、ALL BANDAI NAMCOでの一体感と総合力を高めるための取組みを推進しました。
本中期計画期間においては、IP軸戦略を、ALL BANDAI NAMCOで一体となり、ワールドワイドで事業や地域を横断した取組みを推進したことにより、定番IP商品・サービスや、各事業の主力カテゴリーの売上が伸長したほか、北米や中国を中心にグローバル展開の拡大をはかりました。また、グループ各社のデータの接続と集約を行うデータユニバース構想を推進し、複数事業においてデータの活用にも着手しました。一方で、新規IP創出や新規事業への挑戦、各事業の拡大及び事業を支えるコーポレート機能を担う人材の採用・育成については、2025年4月からの中期計画において、一層強化する必要があると考えています(「人材戦略」及び「サステナビリティ」については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください)。
中期計画に基づいた様々な取組みを推進した結果、中期計画最終年度の2025年3月期においては、中期計画策定当初に掲げた計数目標 連結売上高1兆1,000億円 連結営業利益1,250億円 ROE12%以上に対し、連結売上高1兆2,415億円、連結営業利益1,802億円、ROE17.3%となり、全てにおいて目標を上回る実績となりました。また、中期計画期間中の平均営業利益は1,291億円となり、2018年4月からの前中期計画期間中の平均営業利益824億円に対し、大きく伸長することができました。当社グループでは、2025年4月からの中期計画においても、環境変化やヒット商品・サービスの有無に影響されづらい収益基盤を厚くすることを目指します。
新たな中期計画の策定について
当連結会計年度においては、2022年4月からの中期計画の成果と課題を踏まえ、中長期での持続的な成長を目指し、新たな中期計画の策定に取り組みました(中期計画の詳細については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題」をご参照ください)。そして、中期計画を推進するにあたり、財務基盤やガバナンス体制、グループ従業員が新たなことにチャレンジできる成長環境の構築等の強固な経営基盤の強化と、IP価値最大化の推進を目的に、当社の取締役体制やユニット体制等の変更を行うことを決定しました。また、当社グループに対するステークホルダーからの理解促進を目的に、中長期での企業価値向上と長期利益の創造に向けた資本政策に関する考え方を開示しました。


協業・アライアンスを推進する「CW360」の設置について
中長期ビジョン「Connect with Fans」を掲げる2025年4月からの中期計画において、成長投資を含めた外部パートナーとの協業・アライアンスをさらに推進するため、“360度全方位のFansとつながっていきたい”という想いをこめて当社内に新たな部署「CW360」を新設しました。「CW360」においては、グループ全体の視点で、外部パートナーと様々な形でつながり、さらに新たな領域と各事業が接続することで事業の成長を後押しし、グループの長期的な成長につなげていくことを目指してまいります。また、「CW360」による、外部パートナーとのプロジェクトや協業等の機会を、次世代を担う人材育成の場としても活用していきます。
株主還元について
当社は、経営を取り巻く環境や成長に向けた戦略投資に関する方針を踏まえ、様々な角度から検討を行った結果、2025年4月よりスタートした中期計画において、株主還元に関する基本方針を一部変更することとしました。
<新たな株主還元に関する基本方針>当社グループの競争力を一層強化するとともに、株主への適正な利益還元を経営の重要施策と位置づけ、総還元性向50%以上を基本方針とする。
・DOE(純資産配当率)3.60%を下限とし、長期的に安定的な配当を実施する。
・資本コストを意識し、適宜自己株式の取得を実施する。
当連結会計年度の期末配当金は、新たな基本方針を適用し、ベース配当11円に業績連動配当49円を加え、1株当たり60円となります。また、2024年12月10日に1株当たり11円の中間配当を実施しておりますので、年間配当金は1株当たり71円となります。さらには、保有資産の有効活用により資本効率の向上をはかるとともに、環境変化に対応し株主還元を含めた機動的な資本政策を実行することを目的に、当第4四半期連結会計期間に自己株式の取得を行いました。取得した自己株式の総数は7,056,300株、取得価額の総額は34,999,814,138円となり、配当及び本自己株式取得を踏まえた総還元性向は62.7%となります。なお、当社では、2025年4月30日付で保有する全自己株式のうち10,000,000株の消却を行っております。当社グループでは、中長期での持続的な成長に向け、より強固な基盤をつくり、最大の財産であるグループ社員、多彩な事業が自由闊達に挑戦できる環境を整備してまいります。
財政状態につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、主として内部資金により充当することとしており、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は360,960百万円となっております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
翌連結会計年度のキャッシュ・フローの見通しにつきましては、営業活動で得られるキャッシュ・フローは、当連結会計年度に比べ営業利益の減少及び法人税等の支払いの増加が見込まれるため、当連結会計年度を下回る見込みであります。また、投資活動により使用するキャッシュ・フローについては、当連結会計年度に比べ設備投資等の資金需要の減少が見込まれるため、当連結会計年度より下回ることを見込んでおります。さらに、財務活動により使用するキャッシュ・フローについては、当連結会計年度に比べ配当金の支払いの増加が見込まれるものの、自己株式の取得を実施した当連結会計年度より下回ることを見込んでおります。翌連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高については、営業活動で得られるキャッシュ・フローが、投資活動及び財務活動により使用するキャッシュ・フローを上回ることが見込まれるため、当連結会計年度末に比べて増加となる見込みであります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。