有価証券報告書

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2023/06/23 16:24
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対処すべき課題

1. 「中期経営戦略2024 MC Shared Value(共創価値)の創出」
三菱商事は、2022年5月に、2022年度から始まる3ヵ年の新しい経営の指針として、「中期経営戦略2024 MC Shared Value(共創価値)の創出」を策定・公表しました。
当社を取り巻く経営環境は、地政学リスクの高まりにより不確実性が高まっています。また、グローバルサプライチェーンの再構築、デジタル化、脱炭素という多様化・複雑化する社会・産業のニーズに対し、先見性をもった対応が求められています。
このような経営環境において、あらゆる産業知見とグローバルネットワークを駆使したインテリジェンスを有機的に「つなげ」・「つながる」ことで、当社ならではの総合力を強化していく経営方針を、今回の「中期経営戦略2024」として纏めました。
(1)中期経営戦略2024で目指すこと
三菱商事グループの総合力強化による社会課題の解決を通じて、スケールのあるMC Shared Value(共創価値)を継続的に創出することを目指します。

(2)定量目標と株主還元
■定量目標
収益基盤の維持・拡大とともに、Energy Transformation(EX)関連やDigital Transformation(DX)関連・成長分野への投資などを通じて、着実に成長し2024年度に8,000億円の当期純利益(当社の所有者に帰属)とROE二桁水準の維持・向上を目指します。
■株主還元
持続的な利益成長に応じて増配を行う累進配当を基本とし、財務規律の下で機動的に自己株式取得を実施する方針とします。総還元性向は30~40%を目処(2023年度、2024年度は40%程度を目処)とし、財務健全性、配当の安定成長、株主還元に対する市場期待の3つのバランスがとれた還元政策を実施します。
■キャッシュフロー・資本配分
企業価値向上に向けて、財務規律を維持しつつ、キャッシュフローを投資と株主還元に適切に配分します。
併せて、開示の拡充や対話を通じて、ステークホルダーからの当社事業に対する信頼性を一層高めることで、資本コストの低減を図ります。
■投資計画・事業ポートフォリオ
「中期経営戦略2024」期間で、3兆円規模の投資を計画し、EX関連分野への投資を加速します。
同時に、収益基盤の維持・拡大とDX・成長分野への投資も着実に促進します。
(3)「つなげ」・「つながる」ことによる三菱商事グループの総合力を最大化
■成長戦略 [トランスフォーメーションを主導し、成長につなげる]
・EX戦略:EXバリューチェーン全体を俯瞰し、パートナーと共に、カーボンニュートラル社会への移行・産業競争力向上に貢献していきます。
・DX戦略:DX機能を全社横断的に展開し、産業・企業・コミュニティをつなぐことで、社会全体の生産性向上と持続可能な価値創造に貢献していきます。これを推進するために、今回、新たにDX戦略推進組織として「産業DX部門」を新設しました。
・未来創造:再エネなどの地域エネルギー資源の積極的な開発を通じて自給率を少しでも高めていくとともに、カーボンニュートラル新産業の創出、地域課題の解決を通じた魅力ある街づくりをテーマとして、パートナーや自治体の皆様と共に、未来創造の実現に貢献していきます。
■経営管理 [規律ある成長で未来へつなぐ]
自律的なグループ経営の強化を促す経営管理メカニズムを構築し、事業環境の変化に対応した循環型成長モデルへの取組みを加速することで、資本効率の維持・向上を図り、財務健全性を維持します。
■推進メカニズム [多様なインテリジェンスをつなぐ]
「産業DX部門」、「次世代エネルギー部門」の新設に加え、外部環境への対応力を更に強化すべく「グローバルインテリジェンス委員会(GI委員会)」を新設しました。産業横断的な全社戦略を討議・立案するMC Shared Value会議(MCSV会議)に、GI委員会の分析を反映することで、営業グループの推進力と業界を超えた連携を強化していきます。
■人事施策 [多彩・多才なヒトをつなぎ、活気に満ちた組織へ]
多様性を活かす企業風土づくりやダイナミックな人材シフト・登用などを通じて、「イキイキ・ワクワク、活気あふれる人材と組織」を実現し、人的資本の価値最大化を目指します。
■サステナビリティ施策 [多様なステークホルダーとつながり、社会から信頼され続ける存在へ]
当社が事業活動を通じて取り組む重要な社会課題を「マテリアリティ」として再定義し、取組みの指針とします。温室効果ガス(GHG)削減目標の達成に向け、各事業を気候変動の移行リスク・機会に応じて分類の上モニタリングするなど、様々な施策を通じて事業の低・脱炭素化を推進します。
サステナビリティ施策に関しては「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」もご参照ください。
2. 「中期経営戦略2024」成長戦略の進捗
当連結会計年度は「中期経営戦略2024」の成長戦略として、EX戦略の再生可能エネルギーや銅事業への取り組みを中心に、DX戦略、未来創造においても着実に推進しました。翌連結会計年度についても、投資規律を維持し案件を厳選して取り組むことでこれら成長戦略の具体化を加速してまいります。

3. 当連結会計年度のセグメント別の事業環境と翌連結会計年度以降の見通し
① 天然ガスグループ
当連結会計年度は、LNG関連事業における受取配当金及び持分利益の増加、北米シェールガス事業の持分利益増加などにより、前連結会計年度と比較して増益となりました。
2022年の世界のLNG需要は主にロシア・ウクライナ情勢の影響で欧州の需要が急増したものの、供給側の制約から前年比約0.2億トン増の約4.0億トンに留まりました。LNGは、世界のエネルギー需要増や他の化石燃料と比較して相対的に環境負荷が低い点などを背景に中長期的にもアジアの新興国を中心に需要増が見込まれており、引き続き成長が見込まれる事業領域と考えています。なお、当連結会計年度のアジアのLNGスポット価格は、ロシア・ウクライナ情勢の影響等により乱高下しましたが、世界的な暖冬によりLNG輸入各国の在庫レベルも高水準で推移しており、当連結会計年度末時点では百万Btu(英国熱量単位)当たり10米ドル台前半で推移しています。原油価格(Brent)もロシア・ウクライナ情勢や不安定な世界経済の影響等で価格が大きく変動しましたが、当連結会計年度末時点では約80米ドル/バレルにて推移しています。
翌連結会計年度以降は、LNGスポット価格・原油価格ともに経済情勢や天候に伴う需要増減、ロシア・ウクライナ情勢の長期化を含む地政学リスクなどによって価格が上下するボラティリティの高い展開が続くと認識しています。なお、LNG・原油の価格変動が当グループの業績に影響を及ぼすまでにはタイムラグがあるため、価格変動が直ちに業績に反映されるとは限りません。
② 総合素材グループ
当連結会計年度は、北米樹脂建材事業や鉄鋼製品事業の持分利益増加、また海外事業投資先に関する投資の減損などに伴う一過性損失の反動などにより、前連結会計年度と比較して増益となりました。当グループの主要対面業界である自動車・モビリティ、建設・インフラ分野向けの素材の需要が総じて底堅く推移したことに加え、ロシア・ウクライナ情勢などの影響を受けて市況が高値圏で推移したこと、また円安などによるものです。
翌連結会計年度以降も、素材需要・市況は底堅く推移していく想定ですが、金利上昇、サプライチェーンの混乱などが素材産業に与える影響は不透明な状況です。加えて、素材産業では低・脱炭素化への対応、地政学リスクを踏まえた原料・製品の安定調達・供給などが喫緊の課題となっています。これらの新たな課題を素材産業に貢献する機会と捉え、デジタル技術による素材流通の効率化・強靭化や、自動車・モビリティの軽量化・電動化を支える機能素材事業への参画、環境負荷を低減する素材再循環への取り組みなどを推進していきます。
③ 石油・化学ソリューショングループ
当連結会計年度は、石化製品市況の低迷に伴う石油化学製造事業における減益要因があった一方で、化学関連トレーディング事業、次世代燃料・石油関連事業の好調維持に加え、一過性損益の反動増もあり、前連結会計年度と比較して増益となりました。
当連結会計年度の商品市況は、原油価格(Brent)、化学品ともに、値動きが大きく推移しました。前半はロシア・ウクライナ情勢の継続を受け価格が高騰した一方、後半は中国におけるゼロコロナ政策による需要鈍化懸念などを受け、下落基調となりました。今後もロシア・ウクライナ情勢の長期化懸念や産油国を取り巻く環境変化、ポストコロナにおける需要回復の動向など不確実性の高い状況が当面続くものと予想されますが、事業環境の変化を見極めながら、中核事業の強化に取り組んでまいります。また、低・脱炭素、循環型社会の流れは不可逆的である中、業界の課題解決に資する製品リサイクル、バイオ・カーボンリサイクルなどの新規事業開発にも取り組んでまいります。なお、翌連結会計年度より、次世代燃料・石油事業を次世代エネルギー部門に移管することに伴い、化学ソリューショングループに改称します。
④ 金属資源グループ
当グループの中核事業の1つである豪州原料炭事業においては、ロシア・ウクライナ情勢によるエネルギー価格高騰や各国金融当局の利上げによる世界経済への下方圧力、中国におけるゼロコロナ政策の継続により粗鋼生産が伸び悩み、主要な需要国で原料炭需要が低調に推移した一方、主要生産地である豪州・北米での悪天候や一部炭鉱での設備故障などによる供給障害が需要の落ち込みを上回り、当連結会計年度後半にかけて市況が高水準で推移した結果、前連結会計年度と比較して増益となりました。
もう1つの主力事業である銅については、引続き需要が堅調ながら、ケジャベコ等の新規大規模鉱山の生産開始により一定程度需給が緩和される見通しとなったこと、また、欧米諸国による利上げとそれに伴う世界の景気後退懸念が強まったことを受け、市況は前連結会計年度に比べて下落しました。
翌連結会計年度以降、原料炭事業においては、ラニーニャ現象の終息により豪州での悪天候の懸念が後退するなど主要生産地からの供給が増加すると見込まれる一方、主要需要国であるインドや中国での粗鋼生産増に伴い需要も一定程度回復する可能性があると考えています。
銅については、引続き電化関連分野を中心に需要の伸長が期待される一方、新規銅鉱山からの生産量増加も見込まれることから、需給環境は当連結会計年度と同様の水準を維持する見通しです。上場商品である銅の市況は需給要因に加え、欧米諸国の金融市場の不透明さ、中国の政治・経済動向、ロシア・ウクライナ情勢等の影響を受けることから、当面振れ幅が大きく推移する見込みです。
なお、金属資源全般の中長期的な需要は、新興国を中心とする世界経済の成長や、脱炭素・電化を背景とした再エネ・EV化の進展により、底堅く推移する見通しです。
⑤ 産業インフラグループ
当連結会計年度は、前連結会計年度に計上した千代田化工建設株式会社の顧客との係争に伴う一過性損失や同社宛投資に関する無形資産の減損、その他エネルギーインフラ関連事業会社における固定資産の減損の反動増が主因となり、前連結会計年度と比較して増益となりました。また、昨年度からの売船による一般商船運航隻数の減少等が影響して減益となった船舶事業以外は、上記一過性要因を除いた基礎的利益も各事業で堅調に増加しています。
翌連結会計年度は、金利上昇の影響やその他エネルギーインフラ関連事業における持分損益の減少等により、当連結会計年度に比べ一時的に純利益が減少する見込みとなっているものの、引き続きインフラ、船舶、宇宙航空機、産業機械の各分野において、デジタル技術の活用や脱炭素社会への移行に伴う新たな需要の喚起が見込まれます。各産業のニーズに応えるサービスやソリューションを提供し、既存事業を更に成長させるとともに、隣接する業界との新規事業開発も積極的に推進することで、お客様と共に持続的な成長の実現を目指していきます。
⑥ 自動車・モビリティグループ
当連結会計年度は、三菱自動車工業株式会社の持分利益の増加及び当社取扱いの主力であるタイ・インドネシアをはじめとした各市場における持分利益の増加を受け、前連結会計年度と比較して増益となりました。自動車市場は、新型コロナウイルス禍が続く中で半導体をはじめとする部品供給制約や船腹不足による車両供給への影響、また地政学リスクの影響等、厳しい事業環境にありましたが、当社が強固な顧客基盤を持つアセアン地域を中心に、デジタルマーケティングなどのオンライン施策と従来のオフライン施策とを組み合わせ、車両販売の拡大に努めました。
翌連結会計年度は、新型コロナウイルス禍や半導体をはじめとする部品供給制約等の沈静化に伴う競争環境の激化、地政学リスク影響の継続、また電動化の更なる進展等、引き続き不透明な自動車市場が予想されます。当社は既存のタイ・インドネシア事業を含むアセアン・新興市場を軸に、自動車バリューチェーン事業の更なる機能強化と拡張を目指すとともに、業界構造が大きく変化する中、長年培ってきた当社の強固なビジネス・顧客基盤や地域密着型の強みを活かして総合モビリティサービス事業にも積極的に取り組みます。
⑦ 食品産業グループ
当連結会計年度は、海外事業における一過性損失を計上したことなどから、前連結会計年度と比較して減益となりました。事業環境はロシア・ウクライナ情勢に起因する世界的な食糧価格や原燃料費の高騰に加え、急激な円安進行によるコスト上昇が国内の食品加工・製造事業の収益を圧迫するなど厳しい状況にありました。一方で、Cermaq社を中心としたグループ各社において生産効率化や収益力向上策などを推進した結果、水産・穀物・食品化学事業などで好調な結果となり、基礎収益力は向上しました。
翌連結会計年度においても、食糧価格や原燃料費の高騰により食品加工・製造事業の収益は引き続き圧迫される見通しですが、グループ全体における基礎収益力底上げのための積極的なDX推進による生産効率化や収益力向上策等に加え、社会・環境課題の解決にも継続して取り組みます。また、地政学リスクの顕在化や食料安保ニーズの高まり等の環境変化を事業機会と捉え、循環型成長モデルを追求することで、サステナブルな成長と食の安定調達を実現し、社会の持続可能な発展へ貢献して参ります。
⑧ コンシューマー産業グループ
当連結会計年度は、ゼロコロナ政策に基づき中国では厳格な行動制限が課され、現地コンビニエンスストア事業の業績が悪化しましたが、新型コロナウイルス感染症の鎮静化に伴い国内の人流が回復し、また従来から取り組んできた販促や品ぞろえ拡充、コスト削減等の施策効果が表れ、コンビニエンスストア事業、食品卸事業などで業績が改善、当グループの当期純利益は、前連結会計年度と比較して増益となりました。
当グループは、リテイル、アパレル、ヘルスケア、食品流通・物流の各領域において、人口減少や高齢化といったマクロトレンドに起因する社会課題解決を図るとともに、リアルとデジタルの融合を通じて、生活者に対する新たな消費体験の提供に取り組んで参ります。慢性的な人手不足や2024年問題等により、対面業界において人件費・物流費といったコスト増が進む中、2022年に設立した倉庫DX事業会社や、デジタルマーケティングへの取組等を通じ、効率化と新たな需要の創造を推進し、サプライチェーンを持続可能な形へ変革することで、安定的な収益拡大を目指します。
⑨ 電力ソリューショングループ
当連結会計年度は、前連結会計年度末からのロシア・ウクライナ情勢に伴う地政学リスクの顕在化により、ガス・電力価格が大きく変動し、特に欧州の電力事業においては機動的な需給調整を行うことで収益への影響を限定しながら安定供給を果たしました。また、発電・送電の上流事業では長期契約に基づく安定収益モデルのため、市況変動の影響は軽微となった一方、一部の市場連動型モデルでは収益性が向上、さらには発電資産等の売却益の増加などにより、前連結会計年度と比較して増益となりました。
脱炭素社会への移行が急速に進む市場環境下、再エネの事業機会は拡大方向にあります。洋上風力の成長が見込まれる日本や、Enecoをプラットフォームに持つ欧州に加えて、米州等でも再エネ事業の更なる拡大を図ります。 川上(供給側)から川下(需要側)までの再エネを起点とした電力バリューチェーンを構築し、次世代燃料として期待されるグリーン水素事業を含め、EX戦略実現に向けた取り組みを推進していきます。
⑩ 複合都市開発グループ
当連結会計年度は、不動産運用会社である三菱商事・ユービーエス・リアルティ株式会社の持分売却に伴う一過性の利益に加え、国内不動産市場での物件売却益増加や、昨年度計上した航空機リース関連減損の反動などにより、前連結会計年度と比較して増益となりました。
米国の利上げに端を発した金利コストの上昇や金融市場の不安定化により、不動産関連では歴史的高水準であった米国における取引量の減少、企業投資関連では一部ファンドの評価損といった事象も発生しましたが、国内の不動産収益やリース事業等の伸長により、グループ全体としての影響は軽微となりました。また、新型コロナウイルス禍の影響を大きく受けた空港事業も、旅客数は着実に回復に向かっています。
翌連結会計年度以降は、引き続き世界的な利上げの影響や金融市場の動向を注視する必要はあるものの、電子商取引の拡大やクラウドの普及を背景とした物流施設やデータセンターなど当グループの事業に対する需要は増加しており、持続的な市場拡大が見込まれています。当グループでは、主要事業である不動産・都市開発、インフラ、金融事業を強化・拡張していくとともに、都市化や低環境負荷といった社会・環境ニーズに応え、付加価値が高く規模感のある街づくりの推進を通じ、社会・地域課題の解決を目指していきます。
4. 個別重要案件
当連結会計年度における重要な個別案件については、「3 事業等のリスク 2.主要なリスクの概要 ⑤事業投資リスク」内の(重要な投資案件)をご参照ください。