有価証券報告書-第57期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/23 15:14
【資料】
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【項目】
166項目

対処すべき課題

当社グループは、「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」という基本理念のもと、技術革新が速く活発なエレクトロニクス産業の中で、半導体製造装置及びFPD製造装置のリーディングサプライヤーとして、ビジネスを積極的に展開しております。
① 経営方針
当社グループは、技術専門商社からスタートし、開発製造機能をもつメーカーへの移行、グローバルな販売・サポート体制の構築など、事業環境の変化をいち早く捉え、その変化に素早く応えることにより、世界の市場に高い付加価値をもつ製品・サービスを提供してまいりました。また、当社は、半導体製造装置やその関連分野を中心に、技術革新が新たな価値を生み、高付加価値かつ高収益を期待できる事業領域において、独創的な技術で時代をリードすることを通じて成長を続けてきました。
当社の原動力は、業界のリーディングカンパニーとして育んだ豊かな技術力、確かな技術サービスに基づく顧客からの信頼、そして環境変化に柔軟かつ迅速に対応できる社員と、そのチャレンジ精神です。
今後も技術革新による価値創出が見込まれるエレクトロニクス技術を基盤とした成長分野において、当社のもつ最先端技術を活かして事業を推進し、ワールドクラスの高収益企業を目指してまいります。
② ビジョン
当社グループは、「革新的な技術力と、多様なテクノロジーを融合する独創的な提案力で、半導体とFPD産業に高い付加価値と利益を生み出す真のグローバルカンパニー」を目指しております。
③ 事業環境
IoT(Internet of Things)、次世代通信規格(5G)、人工知能(AI)などの普及に伴うビッグデータ時代への移行が加速しています。また、昨今、テレワーク、オンライン授業、遠隔医療などの積極的な利用が進み、データ通信量は世界中で拡大基調にあります。ビッグデータ時代には、大量かつ多様な半導体の需要が高まることに加え、さらに高い性能の半導体が求められます。大容量、高速、高信頼性、そして低消費電力など、半導体の技術革新への要求と用途はますます拡大していきます。トランジスタの誕生から約70年が経ち、半導体デバイス市場は2018年に4,688億ドルという規模まで拡大しましたが、2030年には、1兆ドルを超えると予想されています。データ社会への移行が加速するなか、半導体は、いわば第4次産業革命の「コメ」として、中心的役割を担っていきます。また、フラットパネルディスプレイにおいても、デザインの先進性はもとより、サイズの大型化、高精細化、材質の変化に伴う、より薄くフレキシブルな形状の実現など、半導体と同様、その用途は拡大しております。
今後も半導体及びフラットパネルディスプレイの技術革新は止まることはなく、当社グループが参入する両事業は、夢のある社会の発展に向け重要性が増すとともに、さらに大きく成長し拡大していくものと予想しております。
④ 中長期的な成長を見据えた取り組み
前述のような将来の成長ポテンシャルを踏まえ、2019年5月に中期経営計画を策定しました。向こう5年以内で、市場規模別に売上高、営業利益率、自己資本利益率(ROE)の関係を示す目指すべき財務モデルを定めたもので、売上高2兆円、営業利益率30%以上、ROE30%以上、というモデルをその中核目標に掲げました。この目標を実現すべく、「メーカー」である当社グループは、引き続きベストプロダクト、ベストサービスを追求してまいります。
・将来顧客が必要とする最先端技術製品や世界一の性能をもつ製品を競合他社より常に一歩先行して創出し、最良の技術サービスを提供することを目指します。
・ベストプロダクトの創出に向け、当社が得意とする分野、蓄積された技術、経営ノウハウが活きる分野でビジネスを展開します。
・世界をリードする技術革新力を維持向上させるため、中期経営計画で公表しているとおり、3年間で約4,000億円の研究開発費を投入することとしております。将来の成長を見据え、強い財務基盤を活かした積極的な投資を継続してまいります。
・サービスの分野につきましても、当社がこれまで出荷した業界最多となる72,000台以上の半導体・FPD製造装置をもとに、パーツ販売、装置のアップグレード改造、装置の稼働率向上や顧客が生産するデバイスの歩留まり向上など、高度なフィールドソリューションの提供を通じ、アフターマーケットにおける収益拡大を図ります。加えて、やがて10万台以上となる装置サポートに備え、遠隔保守などのスマートカスタマーサポートや装置の稼働データやAIの活用などによる予知保全など、高効率、高付加価値サービスの構築にも注力してまいります。
■ 人材に関する取り組み
「企業の成長は人。社員は価値創造の源泉」という考えのもと、会社の将来に対する期待と夢がもてる中期目標の設定、その達成に向けた成長投資に伴う様々な活動やキャリア機会、成果に見合う競争力のある公正な報酬、社員と経営層の積極的な対話を通じ、社員のやる気と会社へのエンゲージメントを重視した夢と活力のある会社の維持向上に努めております。
当社は、社員自身の意欲と自己啓発を重視し、能力開発のための種々の教育の場を提供するとともに、適材適所の人材配置と公正な能力評価をおこなうことにより、社員が仕事に能力を最大限発揮できる環境を整えております。また、社員が躍動する夢と活力のある会社を目指し、グローバル共通の人事制度を導入しております。加えて、エンゲージメント・サーベイを定期的に実施し、社員の働きがいや意欲の向上につなげており、本年1月には、外部機関より公表された「仕事にやりがいを感じる企業ランキング」(※)で、当社は精密機器業界の中で第一位の評価を得ることができました。
また、当社の持続的成長を支える次世代の経営執行を担う人材を育成するため、「TELサクセッションプラン」に基づき後継候補者の育成をおこなっております。指名委員会はその育成状況を分析、精査の上、取締役会に報告するとともに、取締役会は後継候補者育成プランが適切に実行されるよう監督しております。
(※)グローバルウェイ社が2020年1月に発表
■ 環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する取り組み
当社は、半導体製造装置及びFPD製造装置のリーディングカンパニーとして、高性能・高品質の製品やサービスの継続的な提供を通じ、より高い利益をあげて経済価値を高めるとともに、持続可能な社会の発展に貢献し社会価値を高めることで経営基盤を強化し、企業価値の向上を図ります。
環境・社会・ガバナンス(ESG)の側面では、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に対応した活動テーマを設定し、事業活動を通じて産業や社会の課題解決と発展に寄与し、ステークホルダーとの信頼関係の構築に努めます。
とりわけ環境面においては、具体的なターゲットとして2030年に向けた「環境中期目標」を設定しました。これは、当社製品におけるウェーハ1枚当たりのCO2排出量を2013年比で30%削減すること、及び当社の各事業所におけるCO2総排出量を2018年比で20%削減するというものです。例えば、装置サイズの縮小は、顧客の量産ラインの省スペース化の実現によるエネルギー効率向上でウェーハ1枚当たりのCO2排出量を削減するとともに、トラックや航空機輸送、梱包などのロジスティクス、また当社事業所における工場の製造スペースや倉庫スペースの効率化により、CO2排出量削減に直結するものです。持続可能で豊かな社会の発展のため、こうした事業活動を通じた環境負荷低減の実現に、グループ全体で積極的に取り組んでまいります。
昨今、世界は新型コロナウイルス感染症の脅威に打ち勝つため、様々な対策に取り組んでいます。このような状況の中、当社は、半導体が通信や医療などにおいて重要な役割を果たすという認識のもと、これからも最先端の半導体製造技術と確かなサービスを持続的に提供していくことで、夢のある社会の発展に貢献してまいります。
⑤ 資本政策
当社グループの資本政策は、成長投資に必要な資金を確保し、積極的な株主還元に継続的に取り組み、中長期的成長の視点をもって、適切なバランスシート・マネジメントに努めることを基本としております。具体的には、営業利益率、資産効率をさらに高め、キャッシュ・フローの拡大に努めることで、持続的な成長を目指し、ROE向上など高い資本効率を追求します。
当社の配当政策につきましては、業績連動型を基本とし、親会社株主に帰属する当期純利益に対する配当性向50%を目処とします。また、自己株式の取得については、機動的に実施を検討することとしております。こうした方針のもと、当事業年度においては、年間配当588円とし、自己株式取得約1,500億円を実施しました。
当社グループは、以上のような取り組みを実行することで中期経営計画を達成し、さらなる持続的成長と企業価値の向上を通じて、世の中になくてはならない会社として、「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」という基本理念の実現を目指してまいります。
⑥ 目標とする経営指標
当社グループは、2019年5月27日に財務モデルを改定いたしました。売上高2兆円、営業利益率30%以上を目指すモデルを新たに追加するとともに、ROEは30%以上を目指すものとし、実現時期を5年以内としております。
なお、当社グループが示す財務モデルは、将来の売上高規模の予想ではなく、売上高規模ごとに目指すべき経営の効率性を示したものであります。これらの財務モデルの実現を通して、当社グループはワールドクラスの営業利益率とROEを目指してまいります。
売上高15,000億円17,000億円20,000億円
営業利益率26.5%28.0%30.0%以上
ROE(自己資本利益率)30.0%以上

なお、文中の将来に関する記述は、本有価証券報告書の提出日現在において入手可能な情報をもとに、当社グループが合理的であると判断した一定の前提に基づいており、当社グループとしてその実現を約束する趣旨のものではありません。