有価証券報告書-第55期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/19 15:15
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【項目】
122項目

対処すべき課題

当社グループは、「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」という基本理念のもと、技術革新の激しいエレクトロニクス産業のなかで、半導体及びFPD製造装置のリーディングサプライヤーとして、ビジネスを積極的に展開しております。
① 経営方針
当社グループは、技術専門商社からスタートし、開発製造機能を持つメーカーへの移行、グローバルな販売・サポート体制の構築など、環境の変化をいち早く捉え、その変化に素早く対応していくことにより、世界の市場に高い付加価値を持つ製品・サービスを提供してまいりました。また、当社は、半導体製造装置やその関連分野などの、技術革新が新たな価値を生み、かつ高収益を期待できる事業分野において、独創的な技術で時代をリードすることを通じて成長を続けてきました。
当社の原動力は、創業時から継承してきた徹底した顧客第一主義、技術革新を実現できる高い技術力、そして環境変化に柔軟かつ迅速に対応できる社員のチャレンジ精神です。
今後も技術革新による価値創出が見込まれるエレクトロニクス技術を基盤とした成長分野において、当社で培った最先端技術を応用して事業創出に取り組み、ワールドクラスの高収益企業を目指してまいります。
② 中期ビジョン
当社グループは、革新的な技術力と、多様なテクノロジーを融合する独創的な提案力で、半導体産業とFPD産業に高い付加価値と利益を生み出す真のグローバルカンパニーを目指しております。
中期ビジョン実現のための施策
市場環境
IoTの進展によりインターネットにつながるモノの数は2020年には現在の倍近い300億台を突破し、データ通信量も年率24%平均で成長すると予想されています。これにともない、ビッグデータという概念や仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)などのアプリケーションが登場しています。これに人工知能(AI)が加わりビジネスモデルやライフスタイルの展開が期待されています。また、既に広く普及している電子商取引やシェアリングエコノミーに加え、さらには医療、自動運転など、様々な展開が見込まれます。加えて、今年の後半からは次世代通信規格(5G)の基地局建設も予定されており、IoT、ビッグデータ時代に向けてのインフラが整備されつつあります。これら社会の進化を支える主役はまさに半導体です。
半導体デバイスに期待される大容量、高速、高信頼性、高度センシング技術、そして低消費電力の実現のため、半導体製造装置にも究極の加工精度が求められ、新しい構造や材料、新メモリなど次世代デバイスへの対応が期待されています。PCや携帯電話という個別製品に牽引される以前の市場モデルとは異なり、半導体製造装置市場は、サーバやネットワーク上にあるビッグデータを中心とした新たな社会を支えるべく、需要と技術革新の両面で一段上の成長フェーズに入ったと考えています。また、ディスプレイ装置市場においても、大型化、高解像度化、有機ELの普及が市場を牽引しており、これにともなうデザイン性、応用領域の広がりなど、技術の変化とともに事業機会が拡大しています。
顧客の状況
デバイスに期待される技術要求レベルの高度化を背景に、製造装置メーカーである当社グループへの顧客からの期待はますます高まりをみせています。市場をリードする顧客からは、3世代先までの開発計画の共有や、開発初期からの協業により、要求性能を踏まえた開発を行うことが求められています。また、顧客の傍で開発を行うことにより、開発から量産までの開発期間短縮が期待されています。加えて、生産コスト低減のため、以下が顧客の重要な関心事項となっています。
・装置を長く使用するためのアップグレードの実施
・装置の稼働率、究極の加工精度実現に向けた人工知能(AI)やビッグデータを活用したモデルの構築
ビジネス戦略
一段上の成長フェーズにより顧客の要求が高まりをみせるなか、当社グループは、一層の価値創出を図り、業界におけるグローバルリーディングカンパニーを目指しておりますが、以下3つの強化項目を念頭に、強固な成長基盤の構築に努める所存です。
3つの強化項目
・製品競争力強化・・・付加価値の高い次世代製品の創出
・顧客対応力強化・・・顧客にとって当社が唯一無二の戦略的パートナーとなる
・生産性向上・・・経営効率向上の継続的な追求

製品競争力強化には、付加価値の高い次世代製品の継続的な創出が不可欠です。製造装置の開発においては、開発初期からの最先端の技術を持つ顧客との協業により、最も効率的なマーケティングが実現できることに加え、早い段階で顧客工程への装置採用を受けられることや、最終段階での顧客仕様織り込みによる設計変更回避、また、エンジニアの評価時間確保と開発期間短縮が実現できます。次世代デバイスに対する当社グループが取り組むべき課題を明確化し、顧客に対する提案力、対応力を強化することで、顧客との連携を深め、唯一無二の戦略的パートナーとしての位置づけを確保するよう努めます。
また、シンガポール・東南アジア地域におけるビジネスに関しましては、これまで当社は、HERMES-Epitek Singapore社を代理店とする事業形態としておりましたが、顧客サポート体制をより一層充実させるため、同地域における装置セールスサポート、パーツセールス及びサービス業務を当社現地法人が継承し、顧客に対する直接取引を行う体制に変更いたしました。従来以上にスピーディできめ細やかな顧客サポートを実現することで、顧客満足のさらなる向上に取り組んでまいります。
他方、当社グループ内のIT基盤を整備し、ヒト・モノ・カネのリソースや事業進捗の一元管理を進めておりますが、これによりリソースの重複や無駄を排除し、生産性の向上を図ります。また、常に選択と集中を続け、経営リソースの重点配分分野を継続的に見直し、利益率向上につなげてまいります。
市場規模拡大及びシェア向上のための設備投資としては、投資対効果を慎重に精査した上で、実施してまいります。当連結会計年度に実施または決定した主な設備投資としましては、以下のとおりです。市場が拡大しているエッチング装置の製造・開発を担う東京エレクトロン宮城㈱におきまして、リードタイム短縮による生産能力拡大のため、物流棟を建設しました。また、同社は、技術開発力強化のため、開発棟の建設に着工しております。加えて、市場成長が見込まれる成膜装置の製造・開発を担う東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ㈱におきましては、山梨事業所(藤井地区)及び東北事業所内に新棟(生産棟)を建設することを決定しました。これらの設備投資の実施により、市場の需要に迅速に対応してまいります。
環境マネジメント
2015年、国連で2030年に向けた社会の維持発展のための持続可能な開発目標(SDGs)がグローバルな開発目標として採択されました。当社グループは、環境や省エネルギーに向けた世界的な取り組みも踏まえて製品戦略を決定し、環境インパクトを低減する製品、技術の創出を強化することにより、環境対応で時代に先行してまいります。
人材に対する取り組み
当社グループはグローバルに事業展開しており、海外売上高比率は8割を超えています。そのようなグローバルな市場で事業を展開し、グローバルリーディングカンパニーを目指すには、何よりも人材が重要であると考えています。当社グループのコアとなる人材を維持・獲得し、フェアに評価し、自らの成長を促すことができる、グローバル人事制度を導入しております。
③ 資本政策
上述の経営戦略や事業戦略を踏まえ、資本政策の基本方針について、当社グループは次のように考えております。
資本効率についての考え方
成長投資に必要な資金を確保し、積極的な株主還元に継続的に取り組み、中長期的成長の視点をもって、適切なバランスシート・マネジメントに努めてまいります。具体的には、営業利益率、資産効率をさらに高め、キャッシュ・フローの拡大に努め、ROE(自己資本利益率)の向上を図ります。
株主還元策
当社の配当政策は業績連動型を基本とし、親会社株主に帰属する当期純利益に対する配当性向50%を目処とします。ただし、1株当たりの年間配当金は150円を下回らないこととします。なお、2期連続で当期利益を生まなかった場合は、配当金の見直しを検討します。
また、自己株式の取得については、機動的に実施を検討します。
以上の様々な取り組みを通じて、当社グループは、革新的な技術力と多様なテクノロジーを融合する独創的な提案力で、半導体産業とFPD産業に高い付加価値を生み出してまいります。
④ 目標とする経営指標
当社グループは、2018年5月29日に新たな中期経営計画を策定いたしました。2021年3月期を想定した新財務モデルは以下のとおりです。
半導体前工程製造装置
市場規模
550億米ドル620億米ドル
売上高15,000億円17,000億円
営業利益率26.5%28%
ROE(自己資本利益率)30%~35%

また、文中の将来に関する事項は、本「有価証券報告書」提出日現在において当社グループが判断したものであります。