有価証券報告書-第56期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/18 15:29
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169項目

対処すべき課題

当社グループは、「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」という基本理念のもと、技術革新が速く活発なエレクトロニクス産業のなかで、半導体製造装置及びFPD製造装置のリーディングサプライヤーとして、ビジネスを積極的に展開しております。
① 経営方針
当社グループは、技術専門商社からスタートし、開発製造機能を持つメーカーへの移行、グローバルな販売・サポート体制の構築など、事業環境の変化をいち早く捉え、その変化に素早く応えることにより、世界の市場に高い付加価値を持つ製品・サービスを提供してまいりました。また、当社は、半導体製造装置やその関連分野を中心に、技術革新が新たな価値を生み、高付加価値かつ高収益を期待できる事業領域において、独創的な技術で時代をリードすることを通じて成長を続けてきました。
当社の原動力は、業界のリーディングカンパニーとして育んだ豊かな技術力、確かな技術サービスに基づく顧客からの信頼、そして環境変化に柔軟かつ迅速に対応できる社員と、そのチャレンジ精神です。
今後も技術革新による価値創出が見込まれるエレクトロニクス技術を基盤とした成長分野において、当社の持つ最先端技術を活かして事業を推進しワールドクラスの高収益企業を目指してまいります。
② ビジョン
当社グループは、「革新的な技術力と、多様なテクノロジーを融合する独創的な提案力で、半導体とFPD産業に高い付加価値と利益を生み出す真のグローバルカンパニー」を目指しております。
③ 事業環境
社会では、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)に加え、人工知能(AI)の普及や、次世代高速通信規格である5G対応の準備が着々と進み、これらに伴う新たなビジネスモデルやライフスタイルの展開が期待されています。さまざまな産業への利用をはじめ、スマートハウスやスマートシティー、近い将来に期待される自動車の自動運転、遠隔手術などの医療への応用等、数限りない用途が挙げられますが、これらのアプリケーションを可能とする技術を支えるのはまさに半導体です。またFPDの分野においても中小型パネルの需要拡大に加えて、大画面化や高解像度化、有機ELの薄くフレキシブルなデザイン性を活かした応用領域に拡がりを見せています。
このように半導体やFPDは、人々の暮らしをより便利で豊かにする、未来の社会インフラの中核を担うものとして新たな成長段階に入りました。
同時に、さらなる記憶容量の増大、通信速度の高速化、高信頼性、低消費電力化などのあらゆる面での技術革新が求められています。最先端の半導体は10万分の1ミリメートル(10ナノメートル)以下の領域での究極の微細化技術により加工されておりますが、微細化技術以外にも、新材料や新構造などの多岐にわたる新技術によって半導体の進化と用途の拡がりが期待でき、それを実現する私たち製造装置メーカーの付加価値と成長可能性は、より一層高まっております。
④ 中長期的な成長に向けた取り組み
東京エレクトロンは「メーカー」であり、ベストプロダクト、ベストサービスを継続的に追求します。
・将来顧客が必要とする最先端技術製品や世界一の性能を持つ製品を競合他社より常に一歩先行して創出し、最良の技術サービスを提供することを目指します。
・ベストプロダクトの創出に向け、当社が得意とする分野、蓄積された技術、経営ノウハウが活きる分野でビジネスを展開します。
・当社の経験知、技術ノウハウを次世代製品にスピーディーに反映することで、常に競合他社より性能で一歩先行します。
前述のような事業環境を受け、半導体の市場規模は、2030年には現在の倍以上となる1兆米ドルに到達すると予想されています。その一方で、半導体技術の高度化と多様化が進むなか、製造装置メーカーへの技術要求レベルや役割は飛躍的に高まっています。当社は、最先端の技術ニーズに応える世界でも有数の経営資源をもつ企業であり、今後もその技術力を磨き続け、高い付加価値を提供することで顧客からの信頼をさらに深めていきます。
この実現に向け、技術革新を推進する顧客と2、3世代先の中長期技術ロードマップを共有し、装置・技術評価活動のさらなる早期着手を図ります。これにより、量産展開初期より、装置の稼働率最大化を実現し、顧客満足度の向上とサポートリソースの効率化の両立を図るとともに、この効率化によるリソースを次世代装置の開発投資や、顧客のサイトにおける評価の推進に充当します。そして、顧客が将来必要とする装置や性能に対し、より合致した次世代製品の継続創出を高い確率で実現するよう取り組みます。
また、当社がこれまで出荷した業界で最多となる69,000台の半導体製造装置をもとに、パーツ販売、装置のアップグレードや高度なフィールドソリューションの提供につなげ、収益拡大を図ります。
このような取り組みをメモリ、ロジック、IoT関連半導体の各顧客と実行し、またビジョンにある革新的な技術力と多様なテクノロジーを融合する独創的な提案力で高い付加価値と利益をより一層追求するため、従来のBU(ビジネスユニット)組織に加え、コーポレートの営業・マーケティング機能の拡充を目的に、カスタマーコラボレーショングループ、コーポレートイノベーション本部を2018年7月に設置しました。
FPD製造装置につきましても、中長期のロードマップを共有し、付加価値が高く、当社の技術、ノウハウが活かされる領域でベストプロダクト、ベストサービスを追求し、さらなる利益の創出に努めます。
⑤ 人材に関する取り組み
当社グループの発展は、社員一人ひとりの創造性・積極性・柔軟性及び情熱と責任感がその基盤となっています。当社は、社員自身の意欲と自己啓発を重視するとともに能力開発のための種々の教育の場を提供します。そして、適材適所の人材配置をおこない、公正な能力評価をおこなうことにより、社員が能力を最大限仕事に発揮できる環境を作ります。こうした方針のもと、社員が躍動する夢と活力のある会社を目指し、グローバル共通の人事制度を導入しております。
また、当社の持続的成長を支える次世代の経営執行を担う人材を育成するため、TELサクセッションプランに基づき、後継候補者群に対する育成状況について指名委員会が分析、精査のうえ、取締役会に報告し、取締役会は後継候補者育成プランが十分な時間と資源をかけておこなわれるよう適切に監督しております。
⑥ 環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する取り組み
当社は、半導体製造装置及びFPD製造装置のリーディングカンパニーとして、高品質の製品やサービスの継続的な提供を通じ、より高い利益をあげて経済価値を高めるとともに、持続可能な社会の発展に貢献し社会価値を高めることで経営基盤を強化し、企業価値の向上を図ります。
環境・社会・ガバナンス(ESG)の側面では、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に対応した活動テーマを設定し、事業活動を通じて産業や社会の課題解決と発展に寄与し、ステークホルダーとの信頼関係の構築に努めます。
とくに環境面においては、当社の事業所や提供する製品のエネルギー消費低減に取り組むとともに、半導体そのものの低消費電力化に貢献する革新的な製造技術の提供に取り組んでいます。
⑦ 資本政策
当社グループは、資本政策の基本方針について次のように考えております。
成長投資に必要な資金を確保し、積極的な株主還元に継続的に取り組み、中長期的成長の視点をもって、適切なバランスシート・マネジメントに努めてまいります。具体的には、営業利益率、資産効率をさらに高め、キャッシュフローの拡大に努めることで、持続的な成長を目指し、ROE(自己資本利益率)向上など高資本効率を追求します。
当社の配当政策は業績連動型を基本とし、親会社株主に帰属する当期純利益に対する配当性向50%を目処とします。また、自己株式の取得については、機動的に実施を検討します。
以上の様々な取り組みを通じて、当社グループの掲げるビジョンを実現してまいります。
⑧ 目標とする経営指標
当社グループは、2019年5月27日に財務モデルを改定いたしました。売上高2兆円、営業利益率30%以上を目指すモデルを新たに追加するとともに、ROEは30%以上を目指すものとし、実現時期を5年以内としております。
なお、当社グループが示す財務モデルは、将来の売上高規模の予想ではなく、売上高規模ごとに目指すべき経営の効率性を示したものであります。これらの財務モデルの実現を通して、当社グループはワールドクラスの営業利益率とROEを目指してまいります。
売上高15,000億円17,000億円20,000億円
営業利益率26.5%28.0%30.0%以上
ROE(自己資本利益率)30.0%以上

また、文中の将来に関する記述は、本「有価証券報告書」提出日現在において入手可能な情報をもとに、当社グループが合理的であると判断した一定の前提に基づいており、当社グループとしてその実現を約束する趣旨のものではありません。