訂正有価証券報告書-第64期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/07/25 11:01
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業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度の世界経済は、米国や欧州では引き続きゆるやかな景気回復基調が継続し、中国でも一部持ち直しの動きが見られました。また、わが国経済においても、米国大統領選後の円安の下支えもあり、企業収益や個人消費も堅調に推移いたしました。しかしながら米国新政権の政策に対する不安感や、ブレグジット以来顕在化してきた反グローバル化の趨勢によって、先行きの不透明感はますます強まりました。
このような状況下においても当社グループは引き続き売上の拡大と生産コストの低減に取り組み、ユーザーの願いをいち早く実現することを目標に業績の向上に努めてまいりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は、3,596億99百万円となりました。前期の売上高には、前期末に売却した子会社ニプロダイアグノスティクス,Inc.の売上高が148億62百万円含まれていることに加え、当期において円高が伸長したことにより、前期比では1.9%減少しております。利益面におきましては、営業利益は売上原価の減少等により、前期比18.9%増加の287億70百万円となり、経常利益は為替差損の減少等により、前期比58.4%増加の231億66百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は113億46百万円となりました。これは、前期に比べ特別損失が11億44百万円減少したものの、一方では、前期においては、ニプロダイアグノスティクス,Inc.の売却益が140億72百万円あったことから、前期比では42.5%の減少となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
<医療関連事業>国内販売におきましては、昨年4月に診療報酬改定、薬価改定が行われ、市場環境は厳しいものとなりました。そのような状況下で、メディカル営業部門では、注射・輸液関連製品、経腸栄養関連製品、検査関連製品、透析関連製品、バスキュラー関連製品、心臓外科(CVS)関連製品の全分野において堅調に推移し、特に透析関連製品のHDFフィルター、次いで心臓外科関連製品の「植込み型補助人工心臓HeartMateⅡ」、バスキュラー関連製品の薬剤溶出型バルーンカテーテル「SeQuent® Please ドラッグ イルーティング バルーンカテーテル」の売上が大きく伸長しました。他方、医薬営業部門では、後発医薬品使用促進策のもと、更なる市場の拡大が図られ、既存製品の拡大と昨年6月および12月の追補収載品目の売上増により、売上高は堅調に推移しました。しかしながらAG(オーソライズドジェネリック)の先行発売や1品目に数十社がしのぎを削る状況の中、国内市場を取り巻く競争環境は益々熾烈になってきております。当部門では引き続き調剤薬局ならびにDPC病院への販売促進活動を強化するとともに、医薬品卸との連携を通じ、経口剤・外用剤のシェア拡大を図り、注射剤においても一層の情報提供活動に努めてまいります。
海外販売におきましては、ダイアライザをはじめとする主力の透析関連製品およびホスピタル関連製品の販売数量は増加したものの、期中における外国為替市場の円高進行により販売単価が目減りし、また連結子会社であったニプロダイアグノスティクス,Inc.の売却により、結果として前期に比べ、売上は減少しました。今後も、医療現場の要望に迅速に対応するため、海外販売組織網の拡大を継続、直販体制を強化し、販売の拡大に努めてまいります。当期は、オーストリア、エチオピア、ベトナム、中国で新規に拠点を開設したほか、特に注力しているインドでは各州への拠点開設を進め、インド全土をカバーする全16拠点体制といたしました。これらの販売拠点を通じて、より地域に密着したきめ細かなサービスを提供しながら医療現場のニーズに応え、市場プレゼンスを高めてまいりました。
海外新工場(インド・インドネシア・バングラデシュ・中国合肥)においては更なる販売増加に対応するため、確立された品質システムのもとで生産能力の拡大につとめ、所在国および周辺地域を中心に販売を拡大してまいりました。また、本年3月にはベトナムのホーチミン市郊外に医療機器の新工場の設立許可を取得しました。
この結果、当事業の売上高は2,621億98百万円(前期比3.7%減)、セグメント利益(営業利益)は306億38百万円(前期比8.6%増)となりました。
<医薬関連事業>医薬関連事業におきましては、従来の経口剤、注射剤、外用剤の全剤形の受託製造に加え、それぞれの剤形における製剤設計からの開発受託、特に注射剤においてはバイアル、シリンジ、バッグといった包装容器から開発・供給できる特徴を活かした開発受託、ならびに付加価値の向上および差別化を目指したライフサイクルマネジメントの支援など、多様できめ細かな幅広い受託営業に努めてまいりました。また、バイオ医薬品ラインおよび、高生理活性医薬品製造棟といった専用ラインでの受託製造の拡充に注力し、更に海外生産拠点の生産数量増大が寄与した結果、売上高は堅調に推移しました。
また、医薬品包装容器・医薬品調製・投与デバイスに関しましては、ワクチン用ゴム栓、キット製剤用容器はもとより、小容量バッグ、プレフィルドシリンジ(プラスチック・ガラス)等、医療現場における多岐にわたるニーズに対して、当社独自もしくは各製薬メーカーとの共同開発により各々の医薬品に適した容器、投与システムを提供することで順調に推移しました。更に医療費抑制政策のもと、国内外の製薬メーカーとともに、将来のコンビネーション製品化(当社独自の医薬品+医療機器のコラボレーション)、自己注射システム化、剤形・投与経路変更を視野に入れた総合的な医薬品のライフサイクルマネジメントによる協力を行ってまいりました。
この結果、当事業の売上高は691億40百万円(前期比11.0%増)、セグメント利益(営業利益)は141億35百万円(前期比17.2%増)となりました。
<ファーマパッケージング事業>ファーマパッケージング事業におきましては、従来の商材のほか、グローバル化する顧客のニーズおよび新規需要の獲得に向けた学会への参加など学術的な技術営業活動を展開する一方、安定性の高い品質が求められる注射製剤と充填工程に対応した新しい商品・技術開発を国内外において推し進めてまいりました。
国内につきましては、魔法瓶は安定供給に向けた品質改善に取り組むことで売上を拡大させました。バイアル、プレフィルドシリンジは医薬事業部と連携して“One Nipro”を掲げて販売を行うことで売上を伸ばしました。びわこ工場では引き続き徹底した品質向上を図り、新規設備の導入を進め製造環境の最適化を行う一方、ゴム栓工場が完成し平成29年度稼働を目指しております。
海外販売につきましては、売上高は、期中における円高の進行に加え、ブレグジットや米大統領選など、欧米市場における先行き不透明感や、中国市場における政府主導のGMP強化策により製薬会社の淘汰が進むなど、大変厳しい市場環境の中、高付加価値製品の販売拡大を積極的に進めてまいりました。その結果、円高進行による為替換算の影響を除いた売上高は、ほぼ前年並みとなりました。製造面では、滅菌済シリンジやVIALEX®などの高付加価値製品の出荷拡大に加え、各工場において製造工程の自動化、生産効率化による品質の安定と向上、コストダウンを進めてきた結果、収益性の向上を達成しました。
当事業は、医薬用総合包材メーカーとして、引き続き世界各国の医療ニーズに応える先進的商品の開発、市場導入を進めることで事業の拡大を図ってまいります。
この結果、当事業の売上高は283億31百万円(前期比12.0%減)、セグメント損失(営業損失)は13億13百万円(前期は16億18百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。
<その他事業>不動産賃貸による売上高が29百万円(前期比7.0%減)、セグメント損失(営業損失)は10百万円(前期は61百万円のセグメント利益(営業利益))となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当社グループは医療関連、医薬関連、ファーマパッケージングの各事業の積極的な営業活動による現金及び現金同等物の収入と市場からの資金調達等により得た収入で、将来の当社グループ発展へ重点を置いた積極的な手元資金の運用に努めてまいりました。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローが334億72百万円の収入超過(前期比11.8%増)、投資活動によるキャッシュ・フローが663億51百万円の支出超過(前期は165億13百万円の支出超過)、財務活動によるキャッシュ・フローが364億83百万円の収入超過(前期は36億33百万円の支出超過)となり、現金及び現金同等物の期末残高は69百万円増加の1,120億46百万円となりました。