訂正有価証券報告書-第64期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/07/25 11:01
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138項目

研究開発活動

当社グループは、滋賀県南草津のニプロ・ライフサイエンスサイト内にて、医療機器ならびに医薬品の研究開発を当社が中核となり推進しております。
医療関連事業においては、札幌医科大学と共同開発している脳梗塞・脊髄損傷に対する再生医療の実用化を加速する為、細胞デバイスの開発を行っている第1研究開発部とは別に再生医療研究開発センターを平成28年4月に新設いたしました。また、生産・開発の拠点として札幌医科大学の隣接地にセンターを新設し、同年12月に竣工式を執り行いました。
ユニチカ株式会社から譲渡された酵素事業を拡充し、より充実した開発と生産を行う為、平成28年7月に酵素センターを新設いたしました。主に臨床診断薬用原料として使用される酵素製品および酵素関連製品の安定生産と新規開発を行ってまいります。
整形外科製品では、平成29年1月に子会社化したネクスメッドインターナショナル株式会社とのシナジー効果を活かして、さらなる開発・販売を推し進めてまいります。
ニプロ・ライフサイエンスサイト内の医療研修施設「iMEP(Institute For Medical Practice)」では、研修、講演会、当社製品勉強会や開発製品の評価実験および施設見学等にて、平成28年度にはおよそ2万名の方々に利用して頂きました。今後は、研修内容をさらに充実させるとともに、利用者である医療従事者の方々の直接の声を受け止め、研究部門での新たな製品開発や改良に速やかに反映させてまいります。
一方、医薬関連事業においては、薬剤費の低減や医療の質の向上に対するニーズに応えるため、あらゆる疾患領域、あらゆる剤形の先発医薬品を対象とし、高品質なジェネリック医薬品の開発を行っております。さらに、患者様にとって飲みやすさに配慮した口腔内崩壊錠や医療現場での取り扱いやすさに配慮したキット製剤などの付加価値製品の開発にも注力しております。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は115億17百万円であります。
セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。
(1) 医療関連事業
主に当社の総合研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
※細胞治療関連部門
細胞治療分野においては、産学官連携の研究プロジェクトを継続し、細胞医薬品(再生医療等製品)やiPS/ES細胞用の自動培養装置の開発を進めております。
細胞医薬品については、自己の骨髄細胞を脳梗塞や脊髄損傷の再生治療を実用化することを目指し、札幌医科大学とライセンス契約を締結し、早期実用化に向け共同研究開発を推進しております。平成28年2月には「先駆け審査指定制度」にも指定されました。平成28年12月には開発の拠点として、札幌医科大学の隣接地に「再生医療研究開発センター」を竣工いたしました。今後、脳梗塞や脊髄損傷の再生治療の実用化拠点として活用してまいります。
iPS/ES細胞用の自動培養装置は、平成28年4月より研究用として受注生産を開始しました。
※医療機器関連部門
輸液関連製品においては、高カロリー輸液などの際に、輸液中に含まれる細菌、微粒子、気泡等を除去する為に専用ポンプ(ニプロキャリカポンプ)へ装着して使用するフィルター付きニプロCPチャンバーセットに、ニードルレス輸液システムであるセーフタッチ混注ポートとセーフタッチ三方活栓を追加し、末端コネクターには薬剤クラックが発生しないポリプロピレンコネクターを使用した製品をラインナップいたしました。
また、医療現場のニーズを製品化すべく、大学病院看護部と共同で、吸引器等の排液チューブに接続ができ、蓋を閉じることで排液チューブからの液だれが防げるニプロ廃液チューブキャップを開発し、販売を開始しました。
透析関連製品においては、誤穿刺防止機構付き透析用留置針であるセーフタッチカニューラに逆流を防止する止血弁を組み込み、透析を一時中断する為に血液回路から外した際に、自動的に逆止弁が作動するシールタッチカニューラの薬事手続きが完了し、上市に向けて準備を開始いたしました。
※診断薬、検査関連部門
結核、薬剤耐性、非結核性抗酸菌症の3種類を同時に検出できる「ジェノスカラー・NTM+MDR-TB」について、CEマークを取得いたしました。
また、酵素センターでは、研究用試薬として尿毒素であるインドキシル硫酸の測定試薬(酵素法)を開発し、発売いたしました。
※薬剤機能容器関連部門
安全機構付きプレフィルドシリンジを平成29年1月に販売開始いたしました。バイアル瓶に入った粉末製剤を溶解すること無く、溶解液のみを投与する医療過誤が発生しない様にプレフィルドシリンジと移注針の間に安全機構を付加しております。また、薬液調製時の針刺し事故の防止やコンタミネーションなどの可能性も低減しております。
ダブルチャンバープレフィルドシリンジ(D-PFS)の針ガードNPの医療機器届出は、平成29年4月に完了を予定しております。前立腺がんや子宮内膜症治療に使用されるリュープロレリンのプレフィルドシリンジに投与後の金属針をカバーする誤穿刺防止の針ガードを組み込んだ製品を平成29年5月より製造開始の予定です。
新型ハーフキットの試作品開発が完了し、現在量産化を進めております。バイアル瓶の斜め刺し防止機構の追加やバイアル瓶離脱時の針戻りによる液漏れ防止機構追加、ボトルの透明性と耐熱性の向上等を図った新型のハーフキットとなり、平成29年度中に現行品との切り替えを予定しております。
※循環器・インターベンション関連部門
心臓の冠動脈を起因とする急性心筋梗塞、冠動脈閉塞等のインターベンション治療(PCI Percut Aneous Coronary Intervention)領域の製品として当社が販売しているドラッグイルーティングバルーンにつきまして、平成28年は小血管病変への治療に適応拡大がなされました。これら薬剤コーティングされた治療デバイスは、病変到達までの薬剤保持が大変重要であり、狭窄部や屈曲血管を通過させる際の薬剤剥離や流出が問題となります。これらの問題を防ぎ、通過性を補助する目的で使用する迅速交換型(RX)の冠動脈貫通カテーテル「ガイドプラス」につきまして、平成27年に販売を開始し、市場では競合製品より遠位の病変へのデリバリー性が良いことが高く評価されております。平成28年は市場からの要望により、接続部の構造をさらに見直し、より耐久性について信頼性を向上させた改良品の販売を開始いたしました。
また、狭窄病変の治療の際に、末梢血管への血栓、デブリスの飛散によるno-flow slow-flowを防止する血栓捕捉カテーテルにつきまして、病変末梢へのデリバリー性、ステントを通過してのフィルター回収性について、より操作性を向上した製品「フィルトラップLP」の販売を開始いたしました。
末梢血管のインターベンション治療(PPI Percutaneous Peripheral Intervention)領域の製品としては、腸骨動脈の分岐部で対側アプローチにて治療を行う際に用いられるガイディングシースカテーテル「CROSSROAD」について製造販売の承認申請を行い、近々に承認取得の予定であります。
※外科関連部門
整形外科、心臓外科、腹部外科等の手術時に使用される外科関連の商品、主に体内埋込型医療機器の開発を進めております。当社独自の分解吸収性材料の加工技術を活かし、神経再生誘導管、心膜再生補助材などの細胞を使用しないタイプの再生医療製品の開発も行っております。神経再生誘導管につきましては、平成28年度に製造販売承認を取得し、販売を開始いたしました。整形外科をはじめ、上記各分野において今後主流となる低侵襲外科手術に対応した製品の開発を行っております。
※人工臓器関連部門
平成28年11月に、専用部品を必要とせず、内部を血液が流れるチューブに取り付けるだけでヘマトクリットおよび酸素飽和度を測定可能な画期的な酸素飽和度センサーの製造販売承認を取得しました。
また、心臓手術などに用いる動圧浮上型遠心ポンプおよびその駆動装置の製造販売承認を取得し、近日中の販売を目指して準備しております。引き続き、製品ラインナップを揃える様に開発を推進しております。
血液浄化分野におきましては、インド市場向けに現地ニーズを満たし、かつ従来モデルよりさらに安価な透析液粉末製剤溶解装置を開発し、販売準備を進めております。
※疼痛治療器関連部門
平成27年度からの新規事業として、慢性疼痛、気分障害、認知症などの治療に有効な生体リズムを考慮した磁気式、電気式治療器の研究開発を進めております。治療効果の評価に用いる脳機能モニタの開発も同時に進めており、これら試作機の改良が終了し、初発の製品化を進めております。
総合研究所は、医療機器全般の研究を一手に担い、高品質なNIPRO製品を生み出す原動力となる様、医療現場のニーズや課題に常に先駆けてアプローチし、付加価値の高い製品を開発、提供することを基本としております。
なお、当事業に係る研究開発費は59億69百万円であります。
(2) 医薬関連事業
主に当社の医薬品研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
※注射剤
通常のバイアル製剤、バッグ製剤などに加え、医療現場での使用性向上を企図した注射用キット製剤の開発を積極的に進めております。前立腺癌や子宮内膜症などの治療に用いるリュープロレリン酢酸塩のダブルチャンバープレフィルドシリンジ(1箇月製剤)(先発:武田薬品工業「リュープリン」)を既に販売しておりますが、引き続き、開発難易度が高い徐放注射剤などの開発を進めております。
※経口剤
一般的な経口剤の開発に加え、苦みマスキングした口腔内崩壊(OD)錠や患者の服用性を考慮した経口フィルム製剤等の製剤工夫を施した付加価値製剤の開発も行っております。また、医療現場での識別性向上のため、錠剤に成分名等を印刷するなどの工夫を図った製品の品揃えを充実させております。
なお、今期はモンテルカスト錠、オランザピン錠/OD錠/細粒など6成分11品目を上市いたしました。
※外用剤
当社における初めての海外導出ジェネリック医薬品であるリドカイン塩酸塩パップ剤の製造販売を来期に予定しております。今後も、低刺激で薄さ、軽さ、粘着性、伸縮性等に優れた貼付剤、海外への導出も念頭において、開発を進めてまいります。
また、「皮膚に貼る注射剤」という今までにない新しい経皮吸収製剤として、マイクロニードルの開発を進めており、新たに治験薬製造ラインを導入し、来期に稼働を予定しております。
※バイオ後続品
現在、市場が急速に拡大している生物学的製剤は、一般的に高薬価であり、医療費削減の観点ではバイオ後続品の必要性がますます増大しております。これを踏まえ、価格および品質面で優れたバイオ原薬を持つ企業と連携して、着実な製品化を目指しております。
今後も、高品質かつ医療現場での安全性に配慮したジェネリック品を安価で提供し、増大する医療費の低減化に寄与すべく、積極的に開発に取り組んでまいります。
なお、当事業に係る研究開発費は55億48百万円であります。