訂正有価証券報告書-第61期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

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2014/07/29 11:44
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138項目

研究開発活動

当社グループは、滋賀県南草津のニプロ・ライフサイエンスサイト内にて、医療機器ならびに医薬品の研究開発を当社が中核となり推進しております。
医療関連事業においては、同敷地内に医療従事者向け研修施設「iMEP(institute For Medical Practice)」の今秋オープンを控えており、医療従事者の方々に医療機器の使用に関わる研修を受講して頂く中で、直接の声を受け止めて、研究開発に速やかに反映させ、また新たな製品開発や改良に結びつけていく体制を構築してまいります。また、治験部門と申請部門を統合したCRセンターを同研究所内に設立し、薬事申請手続きの一層のスピード化と真にグローバルな総合医療メーカーとして躍進を目指す中で、それに相応しいクオリティーを更に確実のものとするべく注力しております。
一方、医薬関連事業においては、薬剤費の低減や医療の質の向上に対するニーズに応えるため、あらゆる疾患領域、あらゆる剤形の先発医薬品を対象とし、高品質なジェネリック医薬品の開発を行っております。さらに、医療現場での取り扱いやすさに配慮したキット製剤や、患者にとっての飲みやすさに配慮した口腔内崩壊錠などの高付加価値製品の開発にも注力しております。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は78億90百万円であります。
セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。
(1) 医療関連事業
主に当社の総合研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
※細胞デバイス関連部門
再生医療分野においては、産学官連携の研究プロジェクトにも参画し、細胞医薬品やiPS細胞用の自動培養装置の開発を進めております。細胞医薬品については、自己の骨髄細胞を脳梗塞や脊髄損傷の再生治療に用いる医薬品として実用化することを目指しております。これらの疾患においては、多くの場合運動機能の麻痺などの後遺症が残りやすく、また現状、有効な治療法がないことから、早期の実用化が期待されています。iPS細胞用の自動培養装置については、昨年度、プロトタイプの培養評価を複数の研究施設で実施しました。この評価結果を踏まえ、量産機の開発を進めてまいります。
※医療機器関連部門
安全タイプの輸液関連製品では、欧州向けにウイングタイプとポート付きウイングタイプの2品種の針刺し事故防止機構付き動静脈用留置針を発売いたしました。また、一般針と針刺し事故防止プロテクターを組み合わせた汎用タイプの安全針(セーフタッチニードル)も欧州にて発売いたしました。安全タイプの翼状針として、現行の針刺し事故防止機構付きPSVを更に小型化と薄型化を合わせて行い、使いやすさと安全性を追求したセーフタッチPSV miniを発売いたしました。脂肪乳剤や油性成分、界面活性剤およびエタノールなどの溶解補助剤を含む医薬品で発生する薬剤クラックへの対応として、耐薬品性に優れた材料を採用することで幅広い医薬品に対応した安全性の高い液流路調整用の三方活栓を発売いたしました。また、同じく耐薬品性に加え、小型で肌に優しい形状などの特長を合わせ持つ延長チューブを発売いたしました。透析関連製品では、安全性の高い新規材料を採用した上に、安全性に加えガンマ線滅菌による回路の着色を抑え血液の視認性を向上させたガンマ線滅菌血液回路を発売いたしました。
※診断薬、検査関連部門
結核治療薬として広く使用されているイソニアジドが効かなくなる薬剤耐性結核を、迅速簡便に検出できる遺伝子検査薬「ジェノスカラー・INH TB」を今期発売いたしました。イソニアジドは遺伝子の変異箇所が多く、遺伝子検査では6割程度しか検出できませんでしたが、新規に耐性に関与する遺伝子を見出し、約9割検出できるようにしました。また、急速進行性糸球体腎炎の検査薬として、再発時の検出感度をより高めた「ネフロスカラー・Capture PR3 ANC」を発売いたしました。更に、糖尿病患者が自ら血糖測定する為の測定具として、世界最小の「TRUEpico」を発売いたしました。
※薬剤機能容器関連部門
子宮内膜症や子宮筋腫の婦人科疾患や前立腺癌などの疾病に使用される『リュープロレリン酢酸塩注射用キット』を開発し、ジェネリック医薬品として日本で初めて承認され、2月から発売を開始いたしました。バイパス付きガラスバレル、金属針、特殊形状ガスケット、プラスチック部材を使用したダブルチャンバープレフィルドシリンジの構成で、先発品よりもコンパクトで機能性に優れる商品となっております。薬剤も弊社医薬品研究所で開発しており、部材及び薬剤も含め、全ての開発・製造をニプログループ内で実施しております。シリンジバレルにCOP(シクロオレフィンポリマー)樹脂を用いたプレフィルドシリンジを開発し、8月から発売開始いたしました。このシリンジバレルは、高透明性、低溶出性、低吸着性、耐薬品性といった特徴がある高付加価値容器になっております。
※循環器・インターベンション関連部門
心臓の冠動脈を起因とする急性心筋梗塞、冠動脈閉塞等のインターベンション治療(PCI PercutAneous Coronary Intervention)領域の製品として、冠動脈内に起こる狭窄をバルーンの拡張により治療するPTCAバルーンカテーテルにおきまして、石灰化病変の拡張やステント留置後の後拡張に用いられる国内最高保証耐圧(RBP24atm)のPTCAカテーテル(販売名CELSUS)の製造販売承認を今期取得いたしました。また、狭窄又は閉塞した冠動脈に対して、回転する小型内蔵型カッターで病変部を切削してアテロームを取り込み、体外に取り出すことを目的としたカテーテル「ニプロ DCA(Directional Coronary Atherectomy:方向性冠動脈粥腫切除術に用いられるカテーテル)」につきましても、製造販売承認を取得いたしました。末梢血管のインターベンション治療(PPI Percutaneous Peripheral Intervention) 領域の製品としては、透析シャントを含む末梢血管の血栓性閉塞病変の血栓を吸引し、血流を再開させるための血栓吸引カテーテル「E-VAC」を今期発売いたしました。また、末梢血管動脈内に起こる狭窄をバルーンの拡張により治療するPTAバルーンカテーテルについて、内シャフトをタングステン編組チューブとし、従来製品より柔軟でかつプッシャビリティーに優れた「ファイネストリームGR」も発売を開始いたしました。
※人工臓器関連部門
心臓手術中に用いられるデバイスで、肺の代用として血液から二酸化炭素を除去し、酸素を取り込む効率の良い人工肺と、出血した血液のろ過回収、血液中の気泡除去、体内血液量の調整などを行うための操作性に優れた静脈リザーバーをセットにした静脈リザーバー付膜型人工肺について、今期CEマークを取得し、ヨーロッパ諸国及び対象国に発売を開始いたしました。また、日本国内向けとしては、新規材料となる生体適合性コーティング製品を薬事申請し、同材料を用いて先行認証申請していた静脈リザーバーにつきましては認証を取得し、近日中に発売見込みとなっております。更に心臓手術中に体外循環回路内で発生した血栓や気泡を除去するための動脈フィルターにつきましても認証を取得し、発売を準備しております。
総合研究所は、医療機器全般の研究を一手に担い、高品質なNIPRO製品を生み出す原動力となるよう、医療現場のニーズや課題に常に独自の視点からアプローチし、付加価値の高い製品を開発、提供することを基本としております。
なお、当事業に係る研究開発費は41億40百万円であります。
(2) 医薬関連事業
主に当社の医薬品研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
※注射剤:キット製剤など
医療現場での取り扱いやすさに優れた注射用キット製剤の開発を積極的に進めております。今期は、前立腺癌や子宮内膜症などのホルモン治療に用いるリュープロレリン酢酸塩のダブルチャンバープレフィルドシリンジ(1箇月製剤)(先発:武田薬品工業「リュープリン」)の販売を開始しました。引き続き、リュープロレリン酢酸塩3箇月製剤や高難度の徐放注射剤の開発を進めております。その他、薬液が予め希釈された状態でバッグに充填されているプレミクストバッグ製剤や、液・粉ダブルバッグ製剤などの開発も行っております。
※経口剤:OD錠など
一般的な経口剤の開発に加え、製剤工夫を施した高付加価値製剤の開発も行っております。その一例として、水なしでの服用が可能な口腔内崩壊錠(Orally Disintegrating Tablets、OD錠)を開発しております。今期発売のアレルギー性疾患用薬であるフェキソフェナジンOD錠(先発:サノフィ「アレグラ」)は、当社の微粒子コーティング技術を駆使し、主薬の苦味の低減を図っております。また、徐放カプセル製剤であるアンブロキソール塩酸塩製剤のOD錠化にも成功し、来期に販売を開始する予定であります。
※外用剤
消炎鎮痛剤ロキソプロフェンナトリウム(先発:第一三共「ロキソニン」)のテープ、パップ及びゲル剤について、今期、販売を開始しました。また、リドカイン塩酸塩のパップ剤のジェネリック品の米国FDAへの製造承認申請を行いました。今後も、薄さ、軽さ、粘着性、伸縮性等に優れたテープ剤やパップ剤について、海外への上市も念頭に置いて、開発を進めてまいります。
※抗がん剤ジェネリック、バイオ後続品
現在、市場が急速に拡大している抗がん剤及び生物学的製剤は、一般に高薬価であり、低薬価となるジェネリック品の参入が望まれています。そのような中、今期、抗がん剤ジェネリックの注射剤3成分及び経口剤1成分、計4成分の販売を開始しました。また、生物学的製剤のジェネリックにあたるバイオ後続品に関しては、価格及び品質面で優れた原薬あるいは製剤を持つ企業と連携して、迅速な製品化を目指しており、既に抗体医薬1品目について非臨床試験前の状態にあります。今後も、高品質かつ医療現場での安全性に配慮したジェネリック品を安価で提供し、高騰する薬剤費の低減化に寄与すべく、積極的に開発に取り組んでまいります。
なお、当事業に係る研究開発費は37億50百万円であります。