有価証券報告書-第63期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/28 15:02
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138項目

研究開発活動

当社グループは、滋賀県南草津のニプロ・ライフサイエンスサイト内にて、医療機器ならびに医薬品の研究開発を当社が中核となり推進しております。
医療関連事業においては、平成27年4月に人工臓器開発センターから外科関連部門を分離し、整形外科、腹部外科を中心とした外科関連の新商品開発を目的として、第6研究開発部を新設しました。分解吸収性材料の加工技術を活かし、神経再生誘導管、心膜再生補助材などの再生医療を含めた体内埋め込み型医療機器の開発を行ってまいります。
また、慢性疼痛や気分障害などの疾患に対し、薬物に依らない身体に優しい有効な低エネルギー磁気治療器を開発すべく、LFR(生命ゆらぎ共鳴)研究開発センターも同月に新設しました。新しい発想の生体リズムに共鳴する、いわゆる“ゆらぎ”を取り入れた磁気治療器について、製造・販売承認を目指してまいります。
同敷地内の医療研修施設「iMEP(Institute For Medical Practice)」では、研修、講演会、当社製品や開発製品の評価実験および施設見学等にて、年間15,000名を超える方々に利用して頂きました。2年目に入り利用者はさらに増加傾向にあり、利用者である医療従事者の方々の直接の声を受け止め、研究部門での新たな製品開発や改良に速やかに反映させてまいります。
一方、医薬関連事業においては、薬剤費の低減や医療の質の向上に対するニーズに応えるため、あらゆる疾患領域、あらゆる剤形の先発医薬品を対象とし、高品質なジェネリック医薬品の開発を行っております。さらに、患者様にとっての飲みやすさに配慮した口腔内崩壊錠や医療現場での取り扱いやすさに配慮したキット製剤などの付加価値製品の開発にも注力しております。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は102億69百万円であります。
セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。
(1) 医療関連事業
主に当社の総合研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
※細胞治療関連部門
細胞治療分野においては、産学官連携の研究プロジェクトを継続し、細胞医薬品(再生医療等製品)やiPS/ES細胞用の自動培養装置の開発を進めております。
細胞医薬品については、自己の骨髄細胞を脳梗塞や脊髄損傷の再生治療を実用化することを目指し、札幌医科大学とライセンス契約を締結し、早期実用化に向け共同研究開発を推進しております。平成28年2月には「先駆け審査指定制度」にも指定されました。平成28年12月には開発の拠点として、札幌医科大学の隣接地に「再生医療研究開発センター(仮称)」を竣工する予定です。
iPS/ES細胞用の自動培養装置は、来期から研究用として受注生産を開始する予定です。
※医療機器関連部門
輸液関連製品におきまして、ニードルレス接続システムであるセーフタッチ輸液システムで手術室やICUなどにおける多剤投与に最適でポンプにも使用できる「セーフタッチマニホールドP」をラインナップいたしました。また、安全性と廃棄性を考慮したプラスチック製薬液吸引針について従来タイプのプラスチック針と比較して細く短くし、取り扱いやすくした「ニプロプラスチック細径タイプ」の販売を開始いたしました。
透析関連製品においては、血液回路の補液時の泡立ちを防ぐ為に、チャンバー内に横から補液が入るサイクロンチャンバーを開発し販売を開始いたしました。
麻酔関連製品においては、安定したバルーン収縮圧によって、より正確な薬液注入が行える加圧式医薬品注入器シュアフューザーAについて、硬膜外、皮下、静脈への鎮痛薬や局所麻酔薬の投与、特にフルオロウラシルの46時間投与に適している150mLを品種追加いたしました。
※診断薬、検査関連部門
リファンピシン耐性の結核をより迅速簡便に検出できるように改良した遺伝子検査薬「ジェノスカラー・PFP-TBⅡ」を発売いたしました。結核、薬剤耐性、非結核性抗酸菌症の3種類を同時に検出できる「ジェノスカラー・NTM+MDR-TB」は、WHOの推奨を取得いたしました。またLSIメディエンス向けのマグネシウム試薬、総ビリルビン試薬、クレアチンキナーゼ試薬、クレアチンキナーゼアイソザイム試薬の受託生産を開始いたしました。
※薬剤機能容器関連部門
耳鼻科領域における鼓膜再生や脳外科領域における神経固定などに使用されるデバイスで、片手操作でも患部に的確に微量塗布ができる様に設計した生体接着剤用微量滴下セット(高度管理医療機器)について、製造・販売承認を取得いたしました。
安全機構付きプレフィルドシリンジの部材である移注針ユニットの医療機器届出を完了いたしました。バイアル瓶に入った粉末製剤を溶解すること無く、溶解液のみを投与する医療過誤が発生しない様にプレフィルドシリンジと移注針の間に安全機構を付加しております。また、薬液調製時の針刺し事故の防止やコンタミネーションなどの可能性も低減しております。このユニットは、来期に製造販売を開始する予定です。
※循環器・インターベンション関連部門
心臓の冠動脈を起因とする急性心筋梗塞、冠動脈閉塞等のインターベンション治療(PCI Percut Aneous Coronary Intervention)領域の製品として、冠動脈内に起こる血栓性狭窄病変の血栓を吸引し、血流を再開させる為の血栓吸引カテーテル「TVACⅡ」に、現状製品の耐キンク性能を保持したままプロファイルを細径化し、分岐部病変治療の際に用いられる2ワイヤーテクニックと呼ばれる手技にも対応した新製品として「TVACⅡ-KT」を発売いたしました。
また、薬剤バルーン、薬剤ステント等の病変へのデリバリーの際に、狭窄部や屈曲血管を通過させる場合の薬剤剥離や流出を防ぎ、通過性を補助する目的で使用する 迅速交換型(RX)の冠動脈貫通カテーテル「ガイドプラス」の販売を開始いたしました。
平成26年度に販売承認を取得し、臨床での市場評価を開始しておりました狭窄又は閉塞した冠動脈に対して、回転する小型内蔵型カッターで病変部を切削してアテロームを取り込み、体外に取り出すことを目的としたカテーテル「ニプロ DCA(Directional Coronary Atherectomy:方向性冠動脈粥腫切除術に用いられるカテーテル)」について、使用されるドクターのご意見を取り入れ、さらに使い勝手と安全性を向上させる改良を行い、改めて市場導入を開始しております。
末梢血管のインターベンション治療(PPI Percutaneous Peripheral Intervention)領域の製品としては、末梢血管動脈内に起こる狭窄をバルーンの拡張により治療するPTAバルーンカテーテルについて、現行製品よりもバルーンの柔軟性を向上させた「ファイネストリームS」の販売を開始いたしました。また、大腿動脈の分岐部で狭窄病変に選択的にガイドワイヤーを配置するダブルルーメンガイドワイヤーインサーター「SFA Go」について承認を取得いたしました。
※外科関連部門
整形外科、心臓外科、腹部外科等の手術時に使用される外科関連の商品、主に体内埋込型医療機器の開発を進めております。当社独自の分解吸収性材料の加工技術を活かし、神経再生誘導管、心膜再生補助材などの細胞を使用しないタイプの再生医療製品の開発も行っております。
※人工臓器関連部門
心臓手術などに用いる、動圧浮上技術を利用した非接触軸受けにより長期耐久性を有し且つ溶血を低減したディスポーザブルタイプの遠心ポンプと、それを駆動する装置を開発し、平成27年4月に製造承認申請しております。
血液浄化分野では、日本で培ったノウハウを利用して透析液粉末製剤の利点を海外普及させるべく、まずはインド国に適した製剤の販売承認を取得し、販売開始いたしました。また、粉末製剤を定量的かつ簡便に溶解する装置を地域特性に応じた品種を開発し、中南米向け及びインド国向けで各々販売を開始いたしました。
※疼痛治療器関連部門
今年度より新規事業として、慢性疼痛、気分障害などの治療に有用な生体リズムを考慮した磁気治療器の研究開発を進め、試作機の改良を重ねております。
総合研究所は、医療機器全般の研究を一手に担い、高品質なNIPRO製品を生み出す原動力となる様、医療現場のニーズや課題に常に先駆けてアプローチし、付加価値の高い製品を開発、提供することを基本としております。
なお、当事業に係る研究開発費は56億14百万円であります。
(2) 医薬関連事業
主に当社の医薬品研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
※注射剤
通常のバイアル製剤などに加え、医療現場での取り扱いやすさに優れた注射用キット製剤の開発を積極的に進めております。今期は、タゾバクタム・ピペラシリン配合注射剤(先発:大鵬薬品「ゾシン」)のバイアル製剤と液・粉ダブルバッグのキット製剤を上市いたしました。前立腺癌や子宮内膜症などの治療に用いるリュープロレリン酢酸塩のダブルチャンバープレフィルドシリンジ(1箇月製剤)(先発:武田薬品工業「リュープリン」)を既に販売しておりますが、引き続き、リュープロレリン酢酸塩3箇月製剤や開発難易度が高い徐放注射剤などの開発を進めております。
メロペネム注射剤は臨床現場での使用実態を考慮し、先発にはない規格である高用量の1gバイアル及びバッグ製剤を追加発売いたしました。
※経口剤
一般的な経口剤の開発に加え、苦みマスキングした口腔内崩壊(OD)錠や患者の服用性を考慮した経口フィルム製剤等の製剤工夫を施した付加価値製剤の開発も行っております。また、医療現場での識別性向上のため、錠剤に成分名等を印刷するなどの工夫を図った製品の品揃えを充実させております。
※外用剤
当社における初めての海外導出ジェネリック医薬品であるリドカイン塩酸塩パップ剤の製造販売承認取得を来期に予定しております。今後も、低刺激で薄さ、軽さ、粘着性、伸縮性等に優れた貼付剤、海外への導出も念頭において、開発を進めております。
また、コスメディ製薬株式会社とマイクロニードルの共同開発に関する契約を締結いたしました。患者の痛み軽減やより良い効果を発揮する可能性のある「皮膚に貼る注射剤」という今までにない新しい概念の経皮吸収製剤の製品化に向け開発を進めております。
※抗がん剤ジェネリック、バイオ後続品
現在、市場が急速に拡大している抗がん剤および生物学的製剤は、一般的に高薬価であり、医療費削減の観点では低薬価であるジェネリック医薬品やバイオ後続品の必要性が増大しております。これを踏まえ既に多種の抗がん剤を上市しており、今期も新たにジェネリック経口抗がん剤1成分承認を取得いたしました。来期以降も抗がん剤ジェネリックの経口剤・注射剤の開発を進めてまいります。
また、バイオ後続品に関しては、価格および品質面で優れた原薬を持つ企業と連携して、迅速な製品化を目指しております。
今後も、高品質かつ医療現場での安全性に配慮したジェネリック品を安価で提供し、増大する医療費の低減化に寄与すべく、積極的に開発に取り組んでまいります。
なお、当事業に係る研究開発費は46億54百万円であります。