有価証券報告書-第65期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/27 15:08
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研究開発活動

当社グループは、滋賀県南草津のニプロ・ライフサイエンスサイト内にて、医療機器ならびに医薬品の研究開発業務を当社が中核となり推進しております。
医療関連事業においては、新設いたしました再生医療研究開発センターを中心に脳梗塞・脊髄損傷用細胞デバイスの、生産システムの確立や、安定供給の技術がいよいよ最終段階となり、製品実現に向けてカウントダウンが始まりました。また、新規整形外科分野では、ネクスメッドインターナショナル株式会社の製造子会社に、日本のニーズを取り入れた早期製品導入を目的に、研究員を派遣し共同研究を開始いたしました。また、内視鏡製造販売会社の株式会社町田製作所を子会社化し、成長著しい内視鏡市場向けの製品開発を、今後進めてまいります。また、医療研修施設「iMEP(Institute For Medical Practice)」では、研修内容をブラッシュアップし、利用者のニーズに叶う内容へと充実させるとともに、利用者である医療従事者の方々の直接の声を受け止め、研究部門での新たな開発や改良に速やかに反映させてまいります。
一方、医薬関連事業においては、薬剤費の低減や医療の質の向上に対するニーズに応えるため、あらゆる疾患領域、あらゆる剤形の先発医薬品を対象とし、高品質なジェネリック医薬品の開発を行っております。さらに、患者様にとって飲みやすさに配慮した口腔内崩壊錠や医療現場での取り扱いやすさに配慮したキット製剤などの付加価値製品の開発にも注力しております。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は161億13百万円であります。
セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。
(1) 医療関連事業
主に当社の総合研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
※細胞治療関連部門
細胞治療分野においては、産学官連携の研究プロジェクトを継続し、細胞医薬品(再生医療等製品)の開発を進めております。
細胞医薬品については、自己の骨髄細胞を脳梗塞や脊髄損傷の再生治療を実用化することを目指し、札幌医科大学とライセンス契約を締結し、早期実用化に向け再生医療研究センターを中心に共同研究開発を推進しており、脳梗塞や脊髄損傷の再生治療の実用化拠点として活用してまいります。
※医療機器関連部門
輸液関連製品においては、カテーテルを上腕静脈から上大静脈まで挿入し留置する上腕PICC法で使用できるニプロPICCキット(末梢静脈挿入式中心静脈用カテーテルイントロデューサーキット)を平成29年12月より販売を開始いたしました。カテーテルの先端スリットバルブがあることにより注入、閉鎖、吸引が可能で材質には血管に優しいシリコーンを採用し、2本のアラミド繊維で補強し、カテーテル離脱の発生リスクを低減しました。
検査関連製品においては、血糖自己測定などの微量採血するための採血用穿刺器具ニプロセーフタッチ®ライトショットと穿刺針ニプロセーフタッチ®ランセットの販売を平成29年8月より開始いたしました。特徴としては針刺し防止機能と再使用防止機能を付与し、持ちやすいペン型で穿刺深さを5段階で調節ができ、ランセット廃棄時には後端に設置している廃棄ボタンを押すことにより、針付近に触れること無く安全に廃棄できます。
※診断薬、検査関連部門
第2世代の薬剤耐性結核診断薬の製造販売承認を日本およびインドネシアにおいて取得しました。菌数が少ない喀痰からも簡便に検出できるようになり、東南アジアを中心に海外への販売展開を行う予定です。また急速進行性糸球体腎炎診断薬(ANCA)の製造販売承認を取得しました。
酵素センターでは、グリシンオキシダーゼ、3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、新規ビリルビンオキシダーゼを開発し、販売開始しました。
※薬剤機能容器関連部門
ダブルチャンバープレフィルドシリンジ(D-PFS)に安全機構である針ガードNPを装備しました。針ガードNPは薬剤を患者さんに投与後、医療従事者が誤穿刺しないように金属針を安全に簡便にカバーできるデバイスです。このD-PFSは前立腺がんや子宮内膜症治療に用いられるリュープロレリンに使用されており、この針ガードNPを装備した製品を平成29年6月より販売開始しました。
新型ハーフキットの開発が完了いたしました。旧型ハーフキットと比較し、バイアル瓶の斜め刺し防止機構の追加やバイアル瓶離脱時の針戻りによる液漏れ防止機構追加、ボトルの透明性と耐熱性の向上等を図った新型のハーフキットです。平成30年6月頃より販売開始予定です。
抗癌剤曝露防止デバイスの開発がほぼ完成いたしました。抗癌剤の溶解から投与に至るまでに使用される4種のデバイス(バッグアクセス、バイアルアクセス、シリンジコネクタ、ロックコネクタ)で、接続・離脱時に漏れない工夫をしています。平成30年度に発売開始予定です。
※循環器・インターベンション関連部門
心臓の冠動脈を起因とする急性心筋梗塞、冠動脈閉塞等のインターベンション治療(PCI Percut Aneous Coronary Intervention)領域の製品として、狭窄病変を治療するバルーンカテーテル、薬剤コーティングステントの病変到達性を補助する迅速交換型(RX)の冠動脈貫通カテーテル「ガイドプラス」につきまして、他社製品に比べて優れた遠位病変へのデリバリー性能を保持しつつも、通過デバイス(ステントやIVUS(血管内超音波)カテーテル)の適合性を広げる内径拡大の改良を行った「ガイドプラスⅡ」の製造販売承認を取得しました。今後、販売に向けて製造を開始いたします。
また、狭窄病変の治療の際に、末梢血管への血栓、デブリスの飛散によるno-flow slow-flowを防止する血栓捕捉カテーテル「フィルトラップ」につきまして、病変末梢へのデリバリー性、ステントを通過してのフィルター回収性について、より操作性を向上した製品「フィルトラップⅡ」の開発が完了し、平成30年度中に発売予定です。
末梢血管のインターベンション治療(PPI Percutaneous Peripheral Intervention)領域の製品としては、腸骨動脈の分岐部で対側アプローチにて治療を行う際に用いられるガイディングシースカテーテル「CROSSROADS」について販売を開始しました。
また、血管インターベンション治療の技術を内視鏡的消化管治療デバイスに応用し、食道癌や食道癌治療後の食道狭窄による食物の通過障害を内視鏡的に治療する為の食道拡張用バルーンカテーテル「E-dive」につきまして販売を開始しました。
※外科関連部門
整形外科、心臓外科、腹部外科等の手術時に使用される外科関連の商品、主に体内埋込型医療機器の開発を進めております。当社独自の分解吸収性材料の加工技術を活かし、神経再生誘導管、心膜再生補助材などの細胞を使用しないタイプの再生医療製品の開発も行っております。神経再生誘導管につきましては、平成29年度に全国販売を開始いたしました。整形外科をはじめ、上記各分野において低侵襲外科手術に対応した製品の開発を行っております。今後は内視鏡分野における開発も関連会社と共に取り組んでまいります。
※人工臓器関連部門
平成29年10月に、30日使用を目的した体外設置型連続流補助人工心臓システムの治験を開始いたしました。平成30年度の治験終了、平成31年度の薬事申請を予定しております。また、平成30年2月に専用部品を必要とせず、血液が流れるチューブに取り付けるだけでヘマトクリットおよび酸素飽和度を測定可能となる、画期的な体外循環用の酸素飽和度センサーの一般販売を開始いたしました。
引き続き、成人開心術用、小児用の開発を推進しており、製品ラインナップの充実を計画しております。
血液浄化分野におきましては、急性腎障害の長時間体外循環治療用血液濾過器として、抗血栓性に優れ生体安全性の高い持続緩徐式血液濾過器の製造販売承認申請を行いました。近々に承認取得の予定であります。
※疼痛治療器関連部門
平成27年度に、生命揺らぎ共鳴(Life-Fluctuation-Resonance: LFR)研究開発センターを開設し、難治性疼痛、気分障害、認知症などを対象に、新しい発想の生体リズムを考慮した電気・磁気式治療器の研究開発を進めております。また、このような高次神経機能障害に対し、選択的神経の障害を識別することと合わせ、しばしば併発するストレスや自律神経系変調などを総合的に鑑別診断する、定量的感覚検査モニタ装置の開発を産学連携事業として進めております。
さらに、平成30年4月からは子会社化が予定されている㈱脳機能研究所および大学、ベンチャー企業とも連携し、上記の揺らぎ関連治療器および3次元脳機能モニタ装置の他、非侵襲・動的細胞観察装置等の開発を促進し、販売準備を進めてまいります。
総合研究所は、医療機器全般の研究を一手に担い、高品質なNIPRO製品を生み出す原動力となる様、医療現場のニーズや課題に常に先駆けてアプローチし、付加価値の高い製品を開発、提供することを基本としております。
なお、当事業に係る研究開発費は81億89百万円であります。
(2) 医薬関連事業
主に当社の医薬品研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
※注射剤
通常のバイアル製剤、バッグ製剤などに加え、医療現場での利便性向上を企図したキット製剤の開発も積極的に進めております。前立腺癌や閉経前乳癌などの治療に用いるリュープロレリン酢酸塩のダブルチャンバー型のプレフィルドシリンジ(1箇月製剤)(先発:「リュープリン」武田薬品工業)を既に販売しておりますが、この様な開発難易度が高い徐放性注射剤などの分野に注力して、開発を進めております。
なお、今期は点滴用バッグ製剤のジェネリック医薬品を1品目上市し、1品目の製剤販売承認を取得しました。
※経口剤
一般的な経口剤(錠剤、顆粒剤など)に加え、苦みを抑制し、水なしで服用できる口腔内崩壊錠(OD錠)やODフィルム製剤などの付加価値製剤の開発も行っております。一方、医療現場での利便性を高めるため、錠剤に成分名などを印刷する事や個包装、アルミピロー包装などの包装仕様にも工夫を凝らした製品も提供しております。
なお、今期はオーソライズド・ジェネリック4品目を含め、10成分38品目のジェネリック医薬品を上市しました。また、ODフィルム製剤1品目を含め、4成分8品目の製造販売承認を取得しました。
※外用剤
外用液剤や貼付剤など数品目のジェネリック医薬品の開発を進めております。
また、「皮膚に貼る注射剤」という今までにない新しい概念の経皮吸収製剤であるマイクロニドール製剤の開発に取り組んでおり、新たに治験薬製造ラインを立ち上げました。
なお、今期は1成分2剤形(ゲル・クリーム)の外用剤を上市しました。
※バイオ後続品
わが国において、急速に市場拡大しているバイオ医薬品ですが、一般的に高薬価で、医療費削減の観点から、より低薬価であるバイオ後続品の必要性が増大しています。これを踏まえ、品質等が先発と同等であり、価格的優位性を持つバイオ原薬企業と連携し、製品開発を目指しております。
今後も、高品質、低価格のジェネリック医薬品を安定供給することで、増加する医療費の低減化に寄与するため、積極的にジェネリック医薬品の開発を進めてまいります。
なお、当事業に係る研究開発費は79億24百万円であります。