有価証券報告書-第62期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/26 15:23
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【項目】
136項目

研究開発活動

当社グループは、滋賀県南草津のニプロ・ライフサイエンスサイト内にて、医療機器ならびに医薬品の研究開発を当社が中核となり推進しております。
医療関連事業においては、同敷地内に医療研修施設「iMEP(Institute For Medical Practice)」が平成26年10月8日にオープンし、医療従事者の方々向けに医療における課題解決・能力向上の為の研修や講演会、医療機器の使用に関する研修を多数開催しております。この研修や講演会を通して、受講者である医療従事者の方々の直接の声を受け止め、研究部門での新たな製品開発や改良に速やかに反映させてまいります。
一方、医薬関連事業においては、薬剤費の低減や医療の質の向上に対するニーズに応えるため、あらゆる疾患領域、あらゆる剤形の先発医薬品を対象とし、高品質なジェネリック医薬品の開発を行っております。さらに、患者にとっての飲みやすさに配慮した口腔内崩壊錠や医療現場での取り扱いやすさに配慮したキット製剤などの付加価値製品の開発にも注力しております。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は86億45百万円であります。
セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。
(1) 医療関連事業
主に当社の総合研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
※細胞治療関連部門
細胞治療分野においては、産学官連携の研究プロジェクトを継続し、細胞医薬品(再生医療等製品)やiPS/ES細胞用の自動培養装置の開発を進めております。細胞医薬品においては、自己の骨髄細胞を脳梗塞や脊髄損傷の再生治療で実用化することを目指し、札幌医科大学とライセンス契約を締結しました。札幌医科大学では脳梗塞と脊髄損傷に対する医師主導治験が実施されていますが、これらの疾患においては、多くの場合運動機能の麻痺などの後遺症が残りやすく、また現状では有効な治療法がないことから、早期の実用化が期待されています。当社はその実用化に必要な設備等の開発を札幌医科大学と共同で進め、早期実用化を推進しております。
iPS/ES細胞用の自動培養装置については、前期に行った多施設の研究機関での評価をもとに、更なる装置の改良を進め、来期から研究用として受注生産を開始する予定でございます。
※医療機器関連部門
輸液関連製品においては、セーフタッチ輸液システムの品種追加として輸液ならびに医薬品の間接投与に使用する多連マニホールドの販売を開始いたしました。また、高浸透圧の輸液を、直ちに希釈して血管壁に静脈炎等を起さないようにするための逆流防止機能付きPICC(抹消静脈挿入中心静脈カテーテル)および静脈イントロデューサーキットの販売を開始いたしました。透析関連製品においては、血液回路からシリンジ採血した検体において注射針を介さず真空採血管に移駐するシリンジ移駐ホルダー「シュアホルダー」の販売を開始いたしました。麻酔関連製品においては、気管内チューブの生息、損傷を防止するニプロバイトブロックB-BOCのLサイズをラインナップいたしました。
※診断薬、検査関連部門
躁うつ病の治療薬として広く使用されている炭酸リチウム製剤の血中濃度を測定できる検査薬をより安定化させて使いやすく改良した「エスパ・LiⅡ」を発売いたしました。また、栄養状態や味覚障害のマーカーとして注目されている亜鉛検査薬についても抗凝固剤の影響を受けないように改良した「エスパ・ZnⅡ」を発売いたしました。更に、ピラジナミド耐性の結核を迅速簡便に検出できる遺伝子検査薬「ジェノスカラー・PZA TB」をタイにて発売いたしました。今後、タイ以外でも発売を予定しております。他に、糖尿病のマーカーであるヘモグロビンA1cを一滴の血液で迅速簡便に測定できる「Quo-Lab」を発売いたしました。
※薬剤機能容器関連部門
血液製剤用調製デバイス「セパジェクト」を販売開始いたしました。特徴としては、調製用デバイスの特徴である調製操作の簡略化、針刺し事故の防止、異物混入や菌汚染の防止に加えて、薬剤調製時に泡立ちやすい製剤を溶解後にデバイスのボタンを押すことで消泡する機能を付加いたしました。
また、定量採取スポイトを販売開始いたしました。キャップをつまんで離す操作で、定量が採取可能なスポイトとなっており、目盛りを読んだり、液滴の回数カウントが不要になりました。
生理食塩水や透析用ヘパリンなどのロックバレル用プレフィルドシリンジにオーバーキャップを付加いたしました。トップキャップのみでは外し難いとの情報から、外しやすくする為に、また外した後のリキャップを考えて汚染防止になる様に、トップキャップの開口部が汚染部に接触し難くなる設計にしております。
※循環器・インターベンション関連部門
心臓の冠動脈を起因とする急性心筋梗塞、冠動脈閉塞等のインターベンション治療(PCI Percut Aneous Coronary Intervention)領域の製品として、冠動脈内に起こる狭窄をバルーンの拡張により治療するPTCAバルーンカテーテルにおきまして、石灰化病変の拡張やステント留置後の後拡張に用いられる国内最高保証耐圧(RBP24atm)のPTCAカテーテル(販売名CELSUS)を販売開始いたしました。
また、CELSUSよりもバルーンの肉厚を薄く成形することによって病変通過性を向上させ、より複雑病変への適応性を高めたマルチユース高耐圧型PTCA(RBP20atm)カテーテルにつきましても、販売承認を取得いたしました。また、前期に承認申請を取得いたしました狭窄又は閉塞した冠動脈に対して、回転する小型内蔵型カッターで病変部を切削してアテロームを取り込み、体外に取り出すことを目的としたカテーテル「ニプロ DCA(Directional Coronary Atherectomy:方向性冠動脈粥腫切除術に用いられるカテーテル)」の市場導入を開始しております。末梢血管のインターベンション治療(PPI Percutaneous Peripheral Intervention) 領域の製品としては、透析シャントを含む末梢血管の血栓性閉塞病変の血栓を吸引し、血流を再開させるための血栓吸引カテーテル「E-VAC」に、下肢の血管によりアプローチしやすいロングタイプの製品を追加で販売開始いたしました。
また、末梢血管動脈内に起こる狭窄をバルーンの拡張により治療するPTAバルーンカテーテルについて、現行製品よりもバルーンの柔軟性を向上させた「ファイネストリームS」の販売承認を取得いたしました。
※人工臓器関連部門
心臓手術中に用いられるデバイスで、肺の代用として血液から二酸化炭素を除去し、酸素を取り込む効率の良い人工肺と、出血した血液のろ過回収、血液中の気泡除去、体内血液量の調整などを行うための操作性に優れた静脈リザーバーをセットにした静脈リザーバー付膜型人工肺につきまして、日本国内では新規材料となる生体適合性コーティングを施した製品の薬事承認を平成27年1月に取得し販売準備を進めております。なお、同材料を用いて認証を取得した静脈リザーバーにつきましては、平成26年10月に発売を開始し、好評を得ております。また新生児用途で特別に設計した超小型の静脈リザーバー付き膜型人工肺は、平成26年7月にブラジル国内製造販売承認を取得し、現在販売準備を進めております。
血液浄化分野では、日本で培ったノウハウを利用して透析液粉末製剤の利点を海外普及させるべく、まずはインド国内に適した製剤の販売承認を取得し、来期の発売に向けて準備を進めております。
また、整形外科、腹部外科を中心に外科関連の新商品開発を目的として、分解吸収性材料の加工技術を活かし、神経再生誘導管、心膜再生補助材などの再生医療を含めた体内埋め込み型医療機器の開発を行っております。
総合研究所は、医療機器全般の研究を一手に担い、高品質なNIPRO製品を生み出す原動力となる様、医療現場のニーズや課題に常に独自の視点からアプローチし、付加価値の高い製品を開発、提供することを基本としております。
なお、当事業に係る研究開発費は50億95百万円であります。
(2) 医薬関連事業
主に当社の医薬品研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
※注射剤
医療現場での取り扱いやすさに優れた注射用キット製剤の開発を積極的に進めております。前期は、前立腺癌や子宮内膜症などのホルモン治療に用いるリュープロレリン酢酸塩のダブルチャンバープレフィルドシリンジ(1箇月製剤)(先発:武田薬品工業「リュープリン」)の販売を開始しました。引き続き、リュープロレリン酢酸塩3箇月製剤や高難度の徐放注射剤の開発を進めております。その他、薬液が予め希釈された状態で充填されているプレミクスト製剤や、液・粉ダブルバッグ製剤などの開発も行っております。
※経口剤
一般的な経口剤の開発に加え、製剤工夫を施した付加価値製剤の開発も行っております。また、医療現場での識別性向上のため、錠剤印刷が対応可能な製剤化をしており、製品名を印刷した錠剤の品揃えを図っております。
※外用剤
ヘパリン類似性物質(先発:マルホ「ヒルドイド」)のクリーム、ローションおよびスプレー剤について、今期、販売を開始いたしました。また、初めての海外導出ジェネリック医薬品であるリドカイン塩酸塩のパップ剤の製造承認申請が米国FDAで受理されました。
今後も、低刺激で薄さ、軽さ、粘着性、伸縮性等に優れた外用剤、海外への上市も念頭において、開発を進めてまいります。
※抗がん剤ジェネリック、バイオ後続品
現在、市場が急速に拡大している抗がん剤および生物学的製剤は、一般に高薬価であり、低薬価であるジェネリック医薬品やバイオ後続品の必要性が増しております。その対応として、今期、抗がん剤ジェネリックの注射剤1成分および経口剤1成分、計2成分の販売を開始しました。また、来期は、通常のジェネリック経口剤1成分以外に、患者の負担軽減を目的に開発した付加価値製剤である注射剤1成分を販売予定としております。
また、バイオ後続品に関しては、価格および品質面で優れた原薬を持つ企業と連携して、迅速な製品化を目指しております。
今後も、高品質かつ医療現場での安全性に配慮したジェネリック品を安価で提供し、増大する医療費の低減化に寄与すべく、積極的に開発に取り組んでまいります。
なお、当事業に係る研究開発費は35億50百万円であります。