有価証券報告書-第104期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/28 15:02
【資料】
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【項目】
166項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、『地域住民への生活モデルの提供を通して、地域社会になくてはならない存在であり続けること』を企業の基本理念としており、『「楽しい」「うれしい」「おいしい」の価値創造を通じ、お客様の心を豊かにする暮らしの元気パートナーとして、地域社会と子どもたちや地球の未来に貢献したい』というビジョンのもと、グループ全体のさらなる企業価値向上を目指しております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、成熟した市場環境の中で将来にわたり継続的に企業価値の向上を図るために、セグメント毎の営業利益、売上高営業利益率を重視して事業の成長性と収益性を高め、連結の自己資本当期純利益率(ROE)の向上を目指してまいります。
(3) 経営環境、中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題
2021年7月に、既存事業の再建・磨き上げ、新市場への展開、新事業モデルへの挑戦を軸とする長期事業構想2030および2021年度を初年度とする中期経営計画を公表し、この達成に向けた経営を現在着実に推進しております。そして、お客様とのダイレクトなコミュニケーションによる継続的な強くて深い関係を基に、様々な商品やサービスをパーソナルに提供する「コミュニケーションリテイラー」として、地域とともに成長し続けていきたいと考えています。
[長期事業構想2030]

1.既存事業の再建・磨き上げ
●百貨店事業の再建
コスト構造改革を進めると同時に、デジタルを活用したOMOの推進と、阪神梅田本店建て替え開業、神戸阪急と高槻阪急のリモデルを軌道に乗せることにより、「楽しさNo.1」の百貨店を実現し、グループ収益の柱となる事業体を目指します。
●食品事業の「第二の柱」化
業務の徹底的な見直しと生産性向上への取り組み、イズミヤ・阪急オアシスの業務統合に伴うコスト削減や原価率低減を図ること、また、経営統合した関西スーパーとの相乗効果を図ることで、食品事業を百貨店に次ぐ「第二の柱」として確立していきます。
●商業施設事業運営を着実に
ショッピングセンターとビジネスホテルを中心に、マーケット対応と経営効率化により収益改善を着実に進めます。
2.新市場への展開
2021年4月に開業した寧波阪急事業をまずは地域一番店として確立し、阪急うめだ本店と連携して、寧波・浙江省の富裕層・アッパー層に向けたハイエンドコンテンツ・ジャパンコンテンツの提供や、EC、関連事業を展開していきます。
3.新事業モデルへの挑戦
これまで培ってきた関西の市場と顧客基盤を活かした顧客サービス事業開発にトライします。まずは、食を中心としたオンライン軸のサービスコンテンツ開発や宅配事業の強化、リアル店舗との連携、株式会社ローソンや大阪府などとのアライアンスによるネットワークづくりを通じて、関西エリアでの新たなサービス事業化を目指します。そこで得られた顧客データと開発した機能をプラットフォーム化し、B2Bビジネスに展開することで、新たなグループ収益核事業に育てていきたいと考えています。
4.IT・デジタル化推進によるインフラ整備
コミュニケーションリテイラーの実現を支えるものとして、IT基盤の整備、デジタル技術を活用したOMOスタイルの確立、グループデータ基盤の構築を行うことで、顧客データを活用した新たな関西ドミナント化戦略の展開に備えます。
[中期経営計画]
また、2021年度から2023年度の中期経営計画においては、コロナ禍前の営業利益水準への回復を目標に、以下の項目を重点項目と定め、長期事業構想2030の実現に向けて取り組みを推進します。

[サステナビリティ経営]
さらに、サステナビリティ経営につきましては、2021年4月より「地域社会の健全で持続的な発展に貢献すること」を柱にした3つの重点テーマと2つの基本テーマをグループの「重要課題(マテリアリティ)」と位置づけ取り組みを推進しております。

地域の皆さまとの深いつながりは、当社グループにとって大切な財産です。私たちは各事業での「マーケットシェアNo.1」を目指すとともに「マインドシェアNo.1」のためにいつも地域の皆さまに寄り添い、心を豊かにするパートナーであることを目指します。
そのために、「地域社会の健全で持続的な発展に貢献すること」を取り組みの柱とし、「地域の絆を深める」「地域の子どもたちを育む」「豊かな地域の自然を守り、引き継ぐ」の3つを重点テーマに取り組んでいます。
さらに、環境課題への中期的な取り組みとして、事業活動で発生する環境負荷(CO2排出、フードロス、プラスチック排出等)を低減するための環境マネジメントを推進します。
●温室効果ガス
GHG排出量削減率を2030年30%削減(2019年度比 ※2013年度比48%削減相当)、2050年ネットゼロを目指します。※主要14社対象
●食品リサイクル率(店舗で排出される食品廃棄物のうちリサイクルされる割合)
2030年に70%(2023年60%)を目指します。※ 主要3社対象
[各事業の課題と取り組み]
「百貨店事業」では、グループビジョンを受けて『お客様の暮らしを楽しく 心を豊かに 未来を元気にする 楽しさNo.1百貨店』の実現を目指しております。グループのハブ拠点である阪急本店と2022年4月に建て替えグランドオープンした阪神梅田本店を中心に、リアル店舗を軸にした価値創造とオンラインを活用した顧客コミュニケーション強化により、新しいショッピング体験の提供と事業モデル開発を進めるとともに、競争力強化のため神戸阪急・高槻阪急のリモデルにも着手いたしました。また、2022年度は営業黒字額をさらに拡大しましたが、損益分岐点引下げのため、コスト構造改革を引き続き継続して進めてまいります。
「食品事業」では、営業利益拡大を目指し、主力の食品スーパーの更なる競争力強化と収益向上に取り組んでまいります。従来から取り組んでいるイズミヤ株式会社と株式会社阪急オアシス両社の食品スーパーの運営機能統合を契機とした事業改革をさらに推し進め、マーケット対応力を高めた事業モデルの構築とチェーンオペレーション運営力の再構築、製造と販売の一元的運営による営業力の強化を加速していきます。さらに、2023年4月1日付で両社を合併し、さらなる経営の意思決定の迅速化、事業基盤の強化を図ります。また、2021年12月に経営統合した株式会社関西スーパーマーケットも含めSM事業3社を一元的に運営し、店舗オペレーション、商品政策、決済、物流、プライベートブランド、改装・出店計画、ITデジタル化などの面で相乗効果を図るべく具体的な準備を進めております。
「商業施設事業」では、2020年4月にイズミヤ株式会社より分割した株式会社エイチ・ツー・オー 商業開発(イズミヤSC)が、直営事業縮小とSC化推進により、当初予定より2年前倒しで2021年度に営業黒字化を達成し、2022年度はさらに営業増益を実現しており、今後、収益力をより一層高めるとともに、「地域との絆」を深める活動を推進し、顧客マインドシェア向上を図ります。また、ビジネスホテルを運営する株式会社大井開発では、コロナ禍の逆風の中、ITの活用によるローコスト運営化と営業力強化により2021年度に黒字転換し、2022年度は営業利益を大きく伸長させました。今後アフターコロナを見据えたさらなる収益力向上に努めます。
さらに、関西エリアにおいて多彩な顧客接点を持つ特性を活かし、ITデジタルを活用し、オンラインを軸とした食領域のサービスをはじめとした新たな顧客サービス事業の開発に取り組み、グループ顧客基盤拡大のため新しいビジネス領域に挑戦してまいります。
3年間続いたコロナ禍も収まりを見せ、 社会生活もようやく落ち着きと活気を取り戻しつつある中、中期経営計画に基づく各事業の取り組みでより一層の収益向上を図り、足元のコストコントロールや資産効率化だけでなく、新たな事業展開の準備も同時に進めてまいります。
関西エリアを中心に「地域」に根ざした事業活動とサステナビリティ活動の両輪を回すことで、地域社会や消費者から共感と信頼を得てマインドシェアとマーケットシェアを向上させる、という独自のモデルで経営を推進し、企業価値向上に努めてまいります。