有価証券報告書-第122期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
以下に記載の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
(1)経営の基本方針
① 経営の基本方針
当社は、「経営の基本方針」を取締役会で策定し、以下のとおり定めております。
(注) 当社および当社の連結子会社は「野村」として表示しておりますが、「経営の基本方針」については原文に沿って「野村グループ」として表示しております。
② パーパス
2024年4月、野村は、2025年12月に創立100周年を迎えるにあたり、創業の精神や企業理念を受け継ぎつつ、次の100年につながるグループ経営の基礎となる野村のパーパスを策定しました。
野村は創立以来、金融資本市場の発展に寄与すべく、挑戦を続けてきました。急激に変化し複雑化する環境において、今後も当社の持つ知識やノウハウといった付加価値を提供し、金融資本市場を通じた多様な豊かさを実現していくために、さらなる取組みを進めていきます。「世界と共に挑戦し」には、さまざまなステークホルダーのより良い未来に向けた想いを実現するために、皆様と一緒に歩んでいくこと、当社においてはグループ全体で理想の姿を追求し、挑戦を続けていくことへの決意を込めました。「実現する」という言葉は、「豊かな社会の実現」に向けた野村のより強いコミットメントを示しております。
③ 経営ビジョン
2024年5月、野村は、パーパスに沿った経営戦略を推進することを目的として、2030年度に向けた新経営ビジョン「Reaching for Sustainable Growth」を定めました。
野村は、幅広い金融サービスの提供を通じ、リスクマネーを循環させ、金融資本市場の発展、お客様への最適なソリューションの提供に取り組んでまいります。
(2)経営環境
当期においては、世界経済は全体として回復軌道を維持したものの、米国の関税政策、AI関連セクターへの期待と不安の交錯、日本の政治イベント、イラン情勢などの地政学イベントが市場の大きな変動要因となりました。
米国政府は2025年4月2日、世界各国に対する「相互関税」を発表し、世界的な株価急落を招くとともに、「ドル資産離れ」への警戒を招きました。しかし、翌週には適用の「90日間停止」が打ち出され、市場はV字回復に転じました。なかでもAI関連株については、夏場までの米国株式のけん引役となった一方、秋口以降は過熱への警戒も表れるようになっております。為替市場では、米国の関税政策への警戒から2025年4月に1ドル140円までの円高が進む局面がありましたが、その後は円安基調で推移し、2026年1月以降は変動が大きいながらも152~161円のレンジ内で推移しております。
日本では2025年9月に石破首相が辞任表明し、10月には自民党総裁選を経て高市内閣が発足しました。新政権が「責任ある積極財政」を掲げたなかで、日本市場では株高・金利上昇・円安という傾向が強まりました。さらに、高市首相は2026年1月に衆議院を解散しました。2月に行われた総選挙では自民党が単独で定数の3分の2を超える議席を獲得し、海外投資家の関心を集めました。日本株は、一部の業種に関税の影響が表れたものの、全体としては増益を確保する中で上昇トレンドをたどり、2025年10月には日経平均株価指数が50,000円を突破するなど、史上最高値の更新を重ねております。同指数は2026年4月半ば以降は58,000~71,000円台の高値圏にあります。
この間、金融政策に関しては、米国では雇用にやや減速感が表れたなかでFRB(連邦準備制度理事会)は2025年9月、10月、12月と、3回の利下げを打ち出しました。日本では、米国が発動した関税の影響が大きくないことを見極めたうえで、日本銀行が12月に、2025年1月以来となる利上げを決めております。日本の国債10年利回りは、日本経済のデフレ脱却とそれにともなう利上げの継続を織り込む形で、12月に2%を突破するなど、上昇傾向が強まりました。さらに、2026年2月末以降は中東情勢の不安定化によって原油価格が大きく上昇し、その影響を受けて国債10年利回りも3月末から4月にかけて2.5%に達した後、5月18日には一時2.8%をつけております。
地政学をめぐる動きとしては、2025年6月にイスラエル・米国がイラン核施設を空爆、2026年1月に米国がベネズエラに軍事行動(大統領を拘束)、2026年2月にイスラエル・米国がイランに空爆(最高指導者が死亡)といったイベントが市場の不安定化要因となっております。
(3)対処すべき課題
野村を取り巻く経営環境は大きな変化の只中にあります。引き続き、適正な財務基盤の維持と、資本効率の改善等を通じた経営資源の有効活用を図りながら、機動的に対応してまいります。また、既存ビジネスの拡大とお客様へのさらなる付加価値の提供を目指し、常に新たな取組みも実践します。
① 中長期の優先課題
野村では、グループ全体の持続的成長の実現を追求しており、収益の安定化・多様化、資本効率性を意識した事業ポートフォリオの構築に取り組んでおります。
「野村を今立っている場所とは違うところ、次のステージに進める」という考えのもと、その実現に向けた戦略の1つとして「パブリックに加え、プライベート領域への拡大・強化」を打ち出しました。この戦略に基づき、コアビジネステーマとして、資産管理ビジネスの推進、インベストメント・マネジメント部門およびバンキング部門の強化、ホールセールビジネスにおける成長と安定化に取り組むとともに、デジタルアセットビジネスを含むデジタル金融サービスやサステナブル・ファイナンスを含むサステナビリティ分野等の新領域を開拓・強化してまいりました。また、構造改革を通じた全社的なコスト・コントロールを推進しております。加えて、これらの事業の基盤となるコーポレート機能の高度化・効率化、ガバナンス体制やリスク・マネジメントの強化、人材マネジメント戦略の進化、行動規範・コンプライアンスのより一層の浸透、AI・デジタルを活用したサービス高度化・業務効率化やサイバーセキュリティに関する取組みも推進しております。なお、ビジネスの各部門の取組みについては、「②部門別の課題」もご参照ください。
当社は、2030年度に向けた経営の方向性を示すものとして、経営ビジョン「Reaching for Sustainable Growth」を掲げ、経営定量目標としてROE10~12%+、7,500億円超の税引前当期純利益の達成を目指しております。達成に向けた注力テーマとして、(ⅰ)日本のフランチャイズを活かしたグローバル戦略の深化、(ⅱ)安定収益の飛躍的な成長、(ⅲ)“プラットフォーム”提供戦略の更なる推進に取り組んでまいります。
なお、当社ではPBR(株価純資産倍率)を下図のように分解して整理しております。ROEの絶対水準の最大化は、その主要な要素のひとつです。中長期の優先課題の解決を通じて、企業価値の向上を目指します。

② 部門別の課題
各部門の課題、取組みは以下のとおりです。
[ウェルス・マネジメント部門]
ウェルス・マネジメント部門は、資産管理によるストック型ビジネスへと転換を図ってきた結果、ストック資産が着実に積み上がり、ストック収入が大きく拡大するなど一定の成果が出てきております。日本の家計の金融資産全体に占める有価証券比率の向上に向けて、多様化する資産管理のニーズに応えていくことが課題だと考えておりますが、全国の野村證券株式会社の本支店・営業所やデジタル等の接点を通じて、包括的な資産管理サービスを提供することで、お客様一人ひとりが目指すゴールを共に実現することを目指しております。今後とも、ウェルス・マネジメントビジネスの進化に向けて、パートナー(営業担当者)のスキルアップを継続して図るとともに、野村の総合力を最大限に活用し、幅広い商品・サービスの充実に努めてまいります。
[インベストメント・マネジメント部門]
インベストメント・マネジメント部門は、伝統的資産からオルタナティブ資産までのさまざまなアセットクラスからなる商品・サービスを通じて、幅広い投資家の多様な投資ニーズに対するソリューションを提供しております。お客様の多様な運用ニーズに応える高品質な投資商品を提供することを通じて、社会課題の解決につながる投資の好循環を実現することを目指しております。日本の豊富な個人金融資産と日本政府の資産運用立国実現プランによる政策のあと押し、プライベート資産への投資の成長余地、サステナビリティ関連投資に対する高水準の資金需要と投資家意識の高まりを成長機会として捉えております。報酬率に下方圧力が継続する中、運用力向上、パブリック市場ビジネスにおける運用資産残高拡大と商品やサービスの高付加価値化、オルタナティブ資産など報酬率の高い成長分野における運用基盤の拡充、効率化とコスト・コントロールを戦略課題として取り組んでおります。
2025年12月、当社は、運用資産残高の拡大を実現するとともに、投資運用プラットフォームおよび顧客向けプロダクトの多様化・強化を推進する目的で、Macquarie Group Limitedの米国および欧州におけるパブリック・アセットマネジメント事業にかかる株式を取得しました。
[ホールセール部門]
ホールセール部門においては、お客様のニーズのさらなる高度化やテクノロジーの発展に加えて、不透明なマーケットおよびマクロ環境などが当社のビジネスに影響を及ぼす可能性があります。引き続きお客様へ高度なサービスと付加価値を提供し続けるために、各ビジネスライン、各地域および各部門との連携を強化していくほか、ビジネスの領域を広げて収益の安定を図ります。また、成長の見込まれる分野において、規律ある形で財務リソースを選択的に配分し、生産性を意識した成長を実現するとともに、コストの最適化に注力します。
グローバル・マーケッツでは、徹底したリスク管理のもとでお客様に流動性の提供を継続してまいります。また、日本の強固な事業基盤とグローバル・プロダクトの競争力を活かし、ビジネス・ポートフォリオの多角化やグローバル連携の強化を通じたクロスセルの拡大に取り組むとともに、ストラクチャード・ファイナンス、ソリューション・ビジネス、インターナショナル・ウェルス・マネジメント(海外富裕層ビジネス)およびエクイティ・ビジネスなどの成長分野における収益機会の追求や、マクロ・プロダクトにおけるフロー・ビジネスの強化をさらに推し進めてまいります。
一方、インベストメント・バンキングでは、事業環境の変化にともないお客様のビジネス活動やニーズが変化する中、国内外で業界再編・事業再編に関するアドバイザリーや資金調達に加え、金利・為替ビジネスなどのソリューション・ビジネスをシームレスに提供することを加速させてまいります。日本における強みも活かしてグローバルにアドバイザリー・ビジネスの拡大に注力するとともに、市場ならびにお客様にとって重要なテーマであるサステナビリティ関連のビジネスを引き続き強化しております。またグループワイドな連携を強化し、幅広いサービスやプロダクト、アドバイスをお客様へご提供できるように注力してまいります。
[バンキング部門]
各国におけるインフレの進行、金利環境の変化、資産運用立国の実現に向けた動きの加速といった大きな潮流の中、野村の銀行・信託機能を活用することでより多様かつ質の高いサービスを提供する取組みを強化することが重要であると考え、2025年4月にバンキング部門は設立されました。バンキング部門は、傘下のエンティティである野村信託銀行株式会社とNomura Bank (Luxembourg) S.A.のそれぞれの強みである「プライベート」「オーダーメイド」といった特長を活かし、お客様の資産形成や円滑な資産承継等のさまざまなニーズに応えてまいります。
野村信託銀行株式会社では、2025年5月に勘定系システムの更改を完了し、銀行としての基幹システムの整備・拡充を図りました。また、2026年4月には、野村證券株式会社と野村信託銀行株式会社の双方に口座をお持ちのお客様の口座間で資金を自動振替できる預金スイープサービスを開始、証券口座に銀行機能を付加した金融ハイブリッドサービスの提供によりお客様の利便性向上を図っております。
今後も、「顧客接点」「プロダクト・サービス」「システム」の3つを切り口に戦略の実現を進めてまいります。
[リスク・マネジメント、コンプライアンスなど]
野村では、経営戦略の目的と事業計画を達成するために許容するリスクの種類と水準をリスク・アペタイトとして定め、それをリスク・アペタイト・ステートメントとして文書化しております。そのうえで、事業戦略に合致し、適切な経営判断に資するリスク管理体制を継続的に強化していくことにより、財務の健全性の確保および企業価値の向上に努めております。
野村では、リスク・アペタイト・ステートメントにおいて、三つの防衛線による管理体制のもと、すべての役職員が自らの役割を認識し、能動的にリスク管理に取り組むことを明記しております。またグループ会社を含む役職員への継続的な研修の実施等を通じ、金融のプロフェッショナルとしてリスクに関する知識を深め、リスクを正しく認識・評価し、適切に管理する企業文化、すなわちリスク・カルチャーの醸成に努めております。
コンプライアンスの観点からは、野村がビジネスを展開している各国の法令諸規則を遵守するための管理体制の整備に引き続き取り組むとともに、すべての役職員がより高い倫理観を持って自律的に業務に取り組めるよう社内の制度やルールの見直しを継続的に実施しております。
また野村では、法令諸規則の遵守にとどまらず高い倫理観を持ち、社会から真に信頼される会社を目指し、野村の全役職員が取るべき行動の指針である野村グループ行動規範を定めております。加えて、研修やその他の施策を通して、行動規範に基づく適正な行為(以下「コンダクト」)を推進する取組みを日々進めております。毎年8月実施の「野村『創業理念と企業倫理』の日」においては、全社で過去の不祥事からの教訓を再認識し、再発防止と社会およびお客様からの信頼の維持・獲得に向けて決意を新たにする取組みとして、過去の不祥事を振り返ったうえでの適正なコンダクトの在り方に関するディスカッション等を行うとともに、行動規範を遵守することへの宣誓を行っております。行動規範は2019年12月の策定以降、野村を取り巻く社会・経済情勢の変化やステークホルダーの期待によりよく応えることができるよう、定期的に見直すこととしております。なお、創立100周年に先立ち、2024年に野村のパーパス「金融資本市場の力で、世界と共に挑戦し、豊かな社会を実現する」を策定しました。パーパスの実践を通して「野村グループ企業理念」の実現および、さらなる行動規範の定着を目指しております。
以上の課題に対処し、解決することを通じて、金融資本市場の安定とさらなる発展とともに、野村の持続的な成長に尽力してまいります。
(1)経営の基本方針
① 経営の基本方針
当社は、「経営の基本方針」を取締役会で策定し、以下のとおり定めております。
| [経営目標] 野村グループは、社会からの信頼および株主・顧客をはじめとしたステークホルダーの満足度の向上を通じて企業価値を高めることを経営目標とする。 『グローバル金融サービス・グループ』として国内外の顧客に付加価値の高いソリューションを提供するとともに、当グループに課せられた社会的使命を踏まえて経済の成長や社会の発展に貢献していく。 企業価値の向上にあたっては、経営指標として自己資本利益率(ROE)を用い、ビジネスの持続的な変革を図るものとする。 [グループ経営の基本観] (1)新たな事業領域におけるビジネスの拡大をいち早く実現することにより、自ら新しい成長モデルを構築する。また、的確なコスト・コントロールおよびリスク・マネジメントにより、市場環境に左右されにくい収益構造を実現する。 (2)顧客やマーケットの声に真摯に耳を傾け、ビジネスの可能性を広く捉えながら、金融・資本市場を通じた付加価値の高い問題解決策を顧客に提供し、あらゆる投資に関して最高のサービスを提供する会社を目指す。 (3)法令・諸規則の遵守と適正な企業行動を重視し、日々の業務執行においてコンプライアンスおよびコンダクト・リスク管理を実践する。野村グループ各社は、顧客の利益を尊重し、業務に関する諸規制を遵守する。 (4)経営に対する実効性の高い監督機能の確保および経営の透明性の向上に努める。 (5)事業活動を通じて証券市場の拡大に貢献するとともに、企業市民として、経済・証券に関する教育機会の提供を中心とした社会貢献活動に積極的に取り組む。 |
(注) 当社および当社の連結子会社は「野村」として表示しておりますが、「経営の基本方針」については原文に沿って「野村グループ」として表示しております。
② パーパス
2024年4月、野村は、2025年12月に創立100周年を迎えるにあたり、創業の精神や企業理念を受け継ぎつつ、次の100年につながるグループ経営の基礎となる野村のパーパスを策定しました。
| パーパス 金融資本市場の力で、世界と共に挑戦し、豊かな社会を実現する |
野村は創立以来、金融資本市場の発展に寄与すべく、挑戦を続けてきました。急激に変化し複雑化する環境において、今後も当社の持つ知識やノウハウといった付加価値を提供し、金融資本市場を通じた多様な豊かさを実現していくために、さらなる取組みを進めていきます。「世界と共に挑戦し」には、さまざまなステークホルダーのより良い未来に向けた想いを実現するために、皆様と一緒に歩んでいくこと、当社においてはグループ全体で理想の姿を追求し、挑戦を続けていくことへの決意を込めました。「実現する」という言葉は、「豊かな社会の実現」に向けた野村のより強いコミットメントを示しております。
③ 経営ビジョン
2024年5月、野村は、パーパスに沿った経営戦略を推進することを目的として、2030年度に向けた新経営ビジョン「Reaching for Sustainable Growth」を定めました。
野村は、幅広い金融サービスの提供を通じ、リスクマネーを循環させ、金融資本市場の発展、お客様への最適なソリューションの提供に取り組んでまいります。
(2)経営環境
当期においては、世界経済は全体として回復軌道を維持したものの、米国の関税政策、AI関連セクターへの期待と不安の交錯、日本の政治イベント、イラン情勢などの地政学イベントが市場の大きな変動要因となりました。
米国政府は2025年4月2日、世界各国に対する「相互関税」を発表し、世界的な株価急落を招くとともに、「ドル資産離れ」への警戒を招きました。しかし、翌週には適用の「90日間停止」が打ち出され、市場はV字回復に転じました。なかでもAI関連株については、夏場までの米国株式のけん引役となった一方、秋口以降は過熱への警戒も表れるようになっております。為替市場では、米国の関税政策への警戒から2025年4月に1ドル140円までの円高が進む局面がありましたが、その後は円安基調で推移し、2026年1月以降は変動が大きいながらも152~161円のレンジ内で推移しております。
日本では2025年9月に石破首相が辞任表明し、10月には自民党総裁選を経て高市内閣が発足しました。新政権が「責任ある積極財政」を掲げたなかで、日本市場では株高・金利上昇・円安という傾向が強まりました。さらに、高市首相は2026年1月に衆議院を解散しました。2月に行われた総選挙では自民党が単独で定数の3分の2を超える議席を獲得し、海外投資家の関心を集めました。日本株は、一部の業種に関税の影響が表れたものの、全体としては増益を確保する中で上昇トレンドをたどり、2025年10月には日経平均株価指数が50,000円を突破するなど、史上最高値の更新を重ねております。同指数は2026年4月半ば以降は58,000~71,000円台の高値圏にあります。
この間、金融政策に関しては、米国では雇用にやや減速感が表れたなかでFRB(連邦準備制度理事会)は2025年9月、10月、12月と、3回の利下げを打ち出しました。日本では、米国が発動した関税の影響が大きくないことを見極めたうえで、日本銀行が12月に、2025年1月以来となる利上げを決めております。日本の国債10年利回りは、日本経済のデフレ脱却とそれにともなう利上げの継続を織り込む形で、12月に2%を突破するなど、上昇傾向が強まりました。さらに、2026年2月末以降は中東情勢の不安定化によって原油価格が大きく上昇し、その影響を受けて国債10年利回りも3月末から4月にかけて2.5%に達した後、5月18日には一時2.8%をつけております。
地政学をめぐる動きとしては、2025年6月にイスラエル・米国がイラン核施設を空爆、2026年1月に米国がベネズエラに軍事行動(大統領を拘束)、2026年2月にイスラエル・米国がイランに空爆(最高指導者が死亡)といったイベントが市場の不安定化要因となっております。
(3)対処すべき課題
野村を取り巻く経営環境は大きな変化の只中にあります。引き続き、適正な財務基盤の維持と、資本効率の改善等を通じた経営資源の有効活用を図りながら、機動的に対応してまいります。また、既存ビジネスの拡大とお客様へのさらなる付加価値の提供を目指し、常に新たな取組みも実践します。
① 中長期の優先課題
野村では、グループ全体の持続的成長の実現を追求しており、収益の安定化・多様化、資本効率性を意識した事業ポートフォリオの構築に取り組んでおります。
「野村を今立っている場所とは違うところ、次のステージに進める」という考えのもと、その実現に向けた戦略の1つとして「パブリックに加え、プライベート領域への拡大・強化」を打ち出しました。この戦略に基づき、コアビジネステーマとして、資産管理ビジネスの推進、インベストメント・マネジメント部門およびバンキング部門の強化、ホールセールビジネスにおける成長と安定化に取り組むとともに、デジタルアセットビジネスを含むデジタル金融サービスやサステナブル・ファイナンスを含むサステナビリティ分野等の新領域を開拓・強化してまいりました。また、構造改革を通じた全社的なコスト・コントロールを推進しております。加えて、これらの事業の基盤となるコーポレート機能の高度化・効率化、ガバナンス体制やリスク・マネジメントの強化、人材マネジメント戦略の進化、行動規範・コンプライアンスのより一層の浸透、AI・デジタルを活用したサービス高度化・業務効率化やサイバーセキュリティに関する取組みも推進しております。なお、ビジネスの各部門の取組みについては、「②部門別の課題」もご参照ください。
当社は、2030年度に向けた経営の方向性を示すものとして、経営ビジョン「Reaching for Sustainable Growth」を掲げ、経営定量目標としてROE10~12%+、7,500億円超の税引前当期純利益の達成を目指しております。達成に向けた注力テーマとして、(ⅰ)日本のフランチャイズを活かしたグローバル戦略の深化、(ⅱ)安定収益の飛躍的な成長、(ⅲ)“プラットフォーム”提供戦略の更なる推進に取り組んでまいります。
なお、当社ではPBR(株価純資産倍率)を下図のように分解して整理しております。ROEの絶対水準の最大化は、その主要な要素のひとつです。中長期の優先課題の解決を通じて、企業価値の向上を目指します。

② 部門別の課題
各部門の課題、取組みは以下のとおりです。
[ウェルス・マネジメント部門]
ウェルス・マネジメント部門は、資産管理によるストック型ビジネスへと転換を図ってきた結果、ストック資産が着実に積み上がり、ストック収入が大きく拡大するなど一定の成果が出てきております。日本の家計の金融資産全体に占める有価証券比率の向上に向けて、多様化する資産管理のニーズに応えていくことが課題だと考えておりますが、全国の野村證券株式会社の本支店・営業所やデジタル等の接点を通じて、包括的な資産管理サービスを提供することで、お客様一人ひとりが目指すゴールを共に実現することを目指しております。今後とも、ウェルス・マネジメントビジネスの進化に向けて、パートナー(営業担当者)のスキルアップを継続して図るとともに、野村の総合力を最大限に活用し、幅広い商品・サービスの充実に努めてまいります。
[インベストメント・マネジメント部門]
インベストメント・マネジメント部門は、伝統的資産からオルタナティブ資産までのさまざまなアセットクラスからなる商品・サービスを通じて、幅広い投資家の多様な投資ニーズに対するソリューションを提供しております。お客様の多様な運用ニーズに応える高品質な投資商品を提供することを通じて、社会課題の解決につながる投資の好循環を実現することを目指しております。日本の豊富な個人金融資産と日本政府の資産運用立国実現プランによる政策のあと押し、プライベート資産への投資の成長余地、サステナビリティ関連投資に対する高水準の資金需要と投資家意識の高まりを成長機会として捉えております。報酬率に下方圧力が継続する中、運用力向上、パブリック市場ビジネスにおける運用資産残高拡大と商品やサービスの高付加価値化、オルタナティブ資産など報酬率の高い成長分野における運用基盤の拡充、効率化とコスト・コントロールを戦略課題として取り組んでおります。
2025年12月、当社は、運用資産残高の拡大を実現するとともに、投資運用プラットフォームおよび顧客向けプロダクトの多様化・強化を推進する目的で、Macquarie Group Limitedの米国および欧州におけるパブリック・アセットマネジメント事業にかかる株式を取得しました。
[ホールセール部門]
ホールセール部門においては、お客様のニーズのさらなる高度化やテクノロジーの発展に加えて、不透明なマーケットおよびマクロ環境などが当社のビジネスに影響を及ぼす可能性があります。引き続きお客様へ高度なサービスと付加価値を提供し続けるために、各ビジネスライン、各地域および各部門との連携を強化していくほか、ビジネスの領域を広げて収益の安定を図ります。また、成長の見込まれる分野において、規律ある形で財務リソースを選択的に配分し、生産性を意識した成長を実現するとともに、コストの最適化に注力します。
グローバル・マーケッツでは、徹底したリスク管理のもとでお客様に流動性の提供を継続してまいります。また、日本の強固な事業基盤とグローバル・プロダクトの競争力を活かし、ビジネス・ポートフォリオの多角化やグローバル連携の強化を通じたクロスセルの拡大に取り組むとともに、ストラクチャード・ファイナンス、ソリューション・ビジネス、インターナショナル・ウェルス・マネジメント(海外富裕層ビジネス)およびエクイティ・ビジネスなどの成長分野における収益機会の追求や、マクロ・プロダクトにおけるフロー・ビジネスの強化をさらに推し進めてまいります。
一方、インベストメント・バンキングでは、事業環境の変化にともないお客様のビジネス活動やニーズが変化する中、国内外で業界再編・事業再編に関するアドバイザリーや資金調達に加え、金利・為替ビジネスなどのソリューション・ビジネスをシームレスに提供することを加速させてまいります。日本における強みも活かしてグローバルにアドバイザリー・ビジネスの拡大に注力するとともに、市場ならびにお客様にとって重要なテーマであるサステナビリティ関連のビジネスを引き続き強化しております。またグループワイドな連携を強化し、幅広いサービスやプロダクト、アドバイスをお客様へご提供できるように注力してまいります。
[バンキング部門]
各国におけるインフレの進行、金利環境の変化、資産運用立国の実現に向けた動きの加速といった大きな潮流の中、野村の銀行・信託機能を活用することでより多様かつ質の高いサービスを提供する取組みを強化することが重要であると考え、2025年4月にバンキング部門は設立されました。バンキング部門は、傘下のエンティティである野村信託銀行株式会社とNomura Bank (Luxembourg) S.A.のそれぞれの強みである「プライベート」「オーダーメイド」といった特長を活かし、お客様の資産形成や円滑な資産承継等のさまざまなニーズに応えてまいります。
野村信託銀行株式会社では、2025年5月に勘定系システムの更改を完了し、銀行としての基幹システムの整備・拡充を図りました。また、2026年4月には、野村證券株式会社と野村信託銀行株式会社の双方に口座をお持ちのお客様の口座間で資金を自動振替できる預金スイープサービスを開始、証券口座に銀行機能を付加した金融ハイブリッドサービスの提供によりお客様の利便性向上を図っております。
今後も、「顧客接点」「プロダクト・サービス」「システム」の3つを切り口に戦略の実現を進めてまいります。
[リスク・マネジメント、コンプライアンスなど]
野村では、経営戦略の目的と事業計画を達成するために許容するリスクの種類と水準をリスク・アペタイトとして定め、それをリスク・アペタイト・ステートメントとして文書化しております。そのうえで、事業戦略に合致し、適切な経営判断に資するリスク管理体制を継続的に強化していくことにより、財務の健全性の確保および企業価値の向上に努めております。
野村では、リスク・アペタイト・ステートメントにおいて、三つの防衛線による管理体制のもと、すべての役職員が自らの役割を認識し、能動的にリスク管理に取り組むことを明記しております。またグループ会社を含む役職員への継続的な研修の実施等を通じ、金融のプロフェッショナルとしてリスクに関する知識を深め、リスクを正しく認識・評価し、適切に管理する企業文化、すなわちリスク・カルチャーの醸成に努めております。
コンプライアンスの観点からは、野村がビジネスを展開している各国の法令諸規則を遵守するための管理体制の整備に引き続き取り組むとともに、すべての役職員がより高い倫理観を持って自律的に業務に取り組めるよう社内の制度やルールの見直しを継続的に実施しております。
また野村では、法令諸規則の遵守にとどまらず高い倫理観を持ち、社会から真に信頼される会社を目指し、野村の全役職員が取るべき行動の指針である野村グループ行動規範を定めております。加えて、研修やその他の施策を通して、行動規範に基づく適正な行為(以下「コンダクト」)を推進する取組みを日々進めております。毎年8月実施の「野村『創業理念と企業倫理』の日」においては、全社で過去の不祥事からの教訓を再認識し、再発防止と社会およびお客様からの信頼の維持・獲得に向けて決意を新たにする取組みとして、過去の不祥事を振り返ったうえでの適正なコンダクトの在り方に関するディスカッション等を行うとともに、行動規範を遵守することへの宣誓を行っております。行動規範は2019年12月の策定以降、野村を取り巻く社会・経済情勢の変化やステークホルダーの期待によりよく応えることができるよう、定期的に見直すこととしております。なお、創立100周年に先立ち、2024年に野村のパーパス「金融資本市場の力で、世界と共に挑戦し、豊かな社会を実現する」を策定しました。パーパスの実践を通して「野村グループ企業理念」の実現および、さらなる行動規範の定着を目指しております。
以上の課題に対処し、解決することを通じて、金融資本市場の安定とさらなる発展とともに、野村の持続的な成長に尽力してまいります。