有価証券報告書-第160期(2024/04/01-2025/03/31)
②戦略
[重要度の評価基準]
1年間に発生する収益・費用における財務影響の評価基準を基に重要度を3段階(大・中・小)で設定しています。
大=100億円以上、中=10億円以上~100億円未満、小=10億円未満
[発現時期]
短期(~2026年)、中期(2027年~2030年)、長期(2031年~)


2024年3月期に実施したシナリオ分析では、ヤマト運輸株式会社を対象とし、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)の情報*1などをもとに下記2つのシナリオを想定しました。
抽出したリスクの中でも炭素税導入や異常気象・災害が収益・費用について大きな影響を与える可能性があることを認識し、以下の分析・事業インパクト評価を実施しました。
●評価を実施した項目
ⅰ.炭素税導入による財務影響
ⅱ.異常気象・災害による収益の減少や施設・設備の修理費用増加の財務影響
ⅲ.洪水による収益の減少や施設・設備の被害による財務影響
●詳細
ⅰ.炭素税導入による財務影響評価
炭素税が本格導入された際の精算に関わる2030年、2050年の事業インパクトを算出しました。2030年は炭素税価格を140ドル/t、2050年は250ドル/tと想定し費用増加影響を試算した結果、2030年には157億円、2050年には281億円と算出しました。
ⅱ.異常気象・災害による収益の減少や施設・設備の修理費用増加の財務影響評価
台風の激甚化や線状降水帯による豪雨など異常気象による収益の減少や施設・設備の修理費用*3について事業インパクトを試算した結果、2030年には19億円、2050年には38億円と算出しました。
ⅲ.洪水による収益の減少や施設・設備の被害の財務影響評価
ハザードマップやAQUEDUCT*4などを使用した洪水の浸水深予測に基づき、国土交通省「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き」にて示されている浸水深別被害率を使用して営業停止による損失額ならびに施設・設備の資産損害額について事業インパクトを試算しました。
その結果、4℃シナリオ(RCP8.5)における100年に1度の確率で発生する洪水(浸水深)による営業停止損失額と資産損害額の年間影響は、2030年には4億円、2050年には4.3億円と算出しました。
[分析に用いた要件]
・5つの気候モデル*5の平均値を採用
・空間解像度1kmで当該拠点を含む周辺も含めた3km四方の平均値を採用
・ハザードマップ上で浸水の可能性がある拠点を含む49拠点を調査
ⅰ.炭素税導入
ヤマトグループは、温室効果ガス(GHG)排出量削減に向け2050年自社排出実質ゼロの高い目標を掲げて取り組んでいます。
イ.2030年の目標値を2021年3月期比48%削減と掲げ、実現に向けて主な施策として2030年までに低炭素車両(主にEV)23,500台の導入や太陽光発電設備810基の設置などを計画しています。これにより、取り組まなかった場合と比較して、2030年には74億円の削減効果があると試算しています。
ロ.2050年に向けて、カートリッジ式EVを含む低炭素車両の導入や、ヤマトグループの拠点に設置した太陽光発電設備および地域の発電事業者の再生可能エネルギー由来電力の使用率を高めるなど、他の施策も強化することで自社排出実質ゼロを達成した場合、炭素税の財務影響は解消すると想定しています。
ハ.低炭素化に向けた設備投資が積極的に行われることを目指し、インターナルカーボンプライシングの導入を検討しています。
ⅱ.異常気象・災害による収益の減少や施設・設備の修理費用の増加
ヤマトグループでは、ハザードマップを活用した出店やBCPマニュアルの定期的な更新に加え、社内やパートナーへの気候変動に適応する情報の発信を検討しています。今後、レジリエンスを高める再生可能エネルギーやカートリッジ式EVの利用モデルの実証を行っていきます。
さらに発生場所や発生規模の想定を高めるなど、前提条件を加えながら事業インパクトを再評価することで、対応策の検討を継続します。
ⅲ.消費者・顧客の環境意識の高まりを機会に捉えた取組み
ヤマトグループは、「2050年温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロ(自社排出)」に向けて、EVの導入やヤマトグループの拠点や地域の発電事業者の再生可能エネルギー由来電力の調達など、温室効果ガス(GHG)排出量削減を推進するとともに、お客様が保有する在庫や生産活動の最適化に向けて、より環境負荷の少ないサプライチェーンを構築するため、国際規格ISO 14083:2023に準拠したGHG排出量可視化ツールの開発など、法人顧客への新たな提供価値の創出に取り組んでいます。2025年3月期には、「宅急便」「宅急便コンパクト」「EAZY」(宅配便3商品)を対象とした「カーボンニュートラリティ宣言」を実施しました。本宣言は、2023年3月期に続き、2024年3月期(2023年4月~2024年3月)において、国際規格ISO 14068-1:2023に準拠したカーボンニュートラリティを達成したことを示すとともに、今後も事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)自社排出量の削減に向けて継続的に取り組むことにより、2050年までの宅配便3商品のカーボンニュートラリティ実現をコミットメントしたものです。なお、本宣言は第三者機関であるBSIグループジャパン株式会社の検証を受けています。ヤマトグループは、このような気候変動に配慮した輸送サービスの提供を通じて、個人および法人顧客のさらなる利用促進につなげていきます。
また、環境課題を解決するビジネスモデルの創出を通じて、経済価値を生み出す取組みを推進します。2025年3月期は、ラストマイル領域で培った商用EV導入・活用の知見を活かした「EVライフサイクルサービス」の提供開始、また、お客様の脱炭素化に向けて再生可能エネルギー由来電力などを提供するヤマトエナジーマネジメント株式会社の設立、物流効率化に向けた共同輸配送のオープンプラットフォームを提供するSustainable Shared Transport株式会社の事業開始など、新たな事業を立ち上げました。これらの取組みを通じて、ヤマトグループの利益成長と社会・物流業界全体のサステナビリティへの貢献に取り組んでいきます。
| STEP1 | リスク重要度の評価 |
[重要度の評価基準]
1年間に発生する収益・費用における財務影響の評価基準を基に重要度を3段階(大・中・小)で設定しています。
大=100億円以上、中=10億円以上~100億円未満、小=10億円未満
[発現時期]
短期(~2026年)、中期(2027年~2030年)、長期(2031年~)


| STEP2 | シナリオ群の定義 |
2024年3月期に実施したシナリオ分析では、ヤマト運輸株式会社を対象とし、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)の情報*1などをもとに下記2つのシナリオを想定しました。
| ⅰ.1.5℃シナリオ*2 | :規制強化や燃料・電力の価格上昇に加えて炭素排出低減に対応するコストが必要になる一方で、サステナブルが製品の競争力につながる社会 |
| ⅱ.4℃シナリオ | :従来型の経営が継続されるが、各所での自然災害等に対応するためのコストが必要となる社会 |
| *1 | IPCC…RCP8.5 |
| IEA …Net Zero Emissions by 2050 Scenario、Sustainable Development Scenario、Stated Policies Scenarioなど | |
| *2 | 1.5℃でシナリオがない項目は2℃シナリオを参照 |
| STEP3 | 事業インパクト評価 |
抽出したリスクの中でも炭素税導入や異常気象・災害が収益・費用について大きな影響を与える可能性があることを認識し、以下の分析・事業インパクト評価を実施しました。
●評価を実施した項目
ⅰ.炭素税導入による財務影響
ⅱ.異常気象・災害による収益の減少や施設・設備の修理費用増加の財務影響
ⅲ.洪水による収益の減少や施設・設備の被害による財務影響
●詳細
ⅰ.炭素税導入による財務影響評価
炭素税が本格導入された際の精算に関わる2030年、2050年の事業インパクトを算出しました。2030年は炭素税価格を140ドル/t、2050年は250ドル/tと想定し費用増加影響を試算した結果、2030年には157億円、2050年には281億円と算出しました。
ⅱ.異常気象・災害による収益の減少や施設・設備の修理費用増加の財務影響評価
台風の激甚化や線状降水帯による豪雨など異常気象による収益の減少や施設・設備の修理費用*3について事業インパクトを試算した結果、2030年には19億円、2050年には38億円と算出しました。
| *3 | 過去に発生した災害を参考に試算 |
ⅲ.洪水による収益の減少や施設・設備の被害の財務影響評価
ハザードマップやAQUEDUCT*4などを使用した洪水の浸水深予測に基づき、国土交通省「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き」にて示されている浸水深別被害率を使用して営業停止による損失額ならびに施設・設備の資産損害額について事業インパクトを試算しました。
その結果、4℃シナリオ(RCP8.5)における100年に1度の確率で発生する洪水(浸水深)による営業停止損失額と資産損害額の年間影響は、2030年には4億円、2050年には4.3億円と算出しました。
[分析に用いた要件]
・5つの気候モデル*5の平均値を採用
・空間解像度1kmで当該拠点を含む周辺も含めた3km四方の平均値を採用
・ハザードマップ上で浸水の可能性がある拠点を含む49拠点を調査
| *4 | 世界資源研究所(WRI)が開発したリスク評価ツールAQUEDUCT(アキダクト) |
| *5 | GFDL-ESM2M(米国海洋大気庁)、HadGEM2-ES(英国気候研究機関)、IPSL-CM5A-LR(仏国気候研究機関)、MIROC-ESM-CHEM(東京大学など)、NorESM1-M(ノルウェー気候研究機関) |
| STEP4 | 対応策の方向性 |
ⅰ.炭素税導入
ヤマトグループは、温室効果ガス(GHG)排出量削減に向け2050年自社排出実質ゼロの高い目標を掲げて取り組んでいます。
イ.2030年の目標値を2021年3月期比48%削減と掲げ、実現に向けて主な施策として2030年までに低炭素車両(主にEV)23,500台の導入や太陽光発電設備810基の設置などを計画しています。これにより、取り組まなかった場合と比較して、2030年には74億円の削減効果があると試算しています。
ロ.2050年に向けて、カートリッジ式EVを含む低炭素車両の導入や、ヤマトグループの拠点に設置した太陽光発電設備および地域の発電事業者の再生可能エネルギー由来電力の使用率を高めるなど、他の施策も強化することで自社排出実質ゼロを達成した場合、炭素税の財務影響は解消すると想定しています。
ハ.低炭素化に向けた設備投資が積極的に行われることを目指し、インターナルカーボンプライシングの導入を検討しています。
ⅱ.異常気象・災害による収益の減少や施設・設備の修理費用の増加
ヤマトグループでは、ハザードマップを活用した出店やBCPマニュアルの定期的な更新に加え、社内やパートナーへの気候変動に適応する情報の発信を検討しています。今後、レジリエンスを高める再生可能エネルギーやカートリッジ式EVの利用モデルの実証を行っていきます。
さらに発生場所や発生規模の想定を高めるなど、前提条件を加えながら事業インパクトを再評価することで、対応策の検討を継続します。
ⅲ.消費者・顧客の環境意識の高まりを機会に捉えた取組み
ヤマトグループは、「2050年温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロ(自社排出)」に向けて、EVの導入やヤマトグループの拠点や地域の発電事業者の再生可能エネルギー由来電力の調達など、温室効果ガス(GHG)排出量削減を推進するとともに、お客様が保有する在庫や生産活動の最適化に向けて、より環境負荷の少ないサプライチェーンを構築するため、国際規格ISO 14083:2023に準拠したGHG排出量可視化ツールの開発など、法人顧客への新たな提供価値の創出に取り組んでいます。2025年3月期には、「宅急便」「宅急便コンパクト」「EAZY」(宅配便3商品)を対象とした「カーボンニュートラリティ宣言」を実施しました。本宣言は、2023年3月期に続き、2024年3月期(2023年4月~2024年3月)において、国際規格ISO 14068-1:2023に準拠したカーボンニュートラリティを達成したことを示すとともに、今後も事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)自社排出量の削減に向けて継続的に取り組むことにより、2050年までの宅配便3商品のカーボンニュートラリティ実現をコミットメントしたものです。なお、本宣言は第三者機関であるBSIグループジャパン株式会社の検証を受けています。ヤマトグループは、このような気候変動に配慮した輸送サービスの提供を通じて、個人および法人顧客のさらなる利用促進につなげていきます。
また、環境課題を解決するビジネスモデルの創出を通じて、経済価値を生み出す取組みを推進します。2025年3月期は、ラストマイル領域で培った商用EV導入・活用の知見を活かした「EVライフサイクルサービス」の提供開始、また、お客様の脱炭素化に向けて再生可能エネルギー由来電力などを提供するヤマトエナジーマネジメント株式会社の設立、物流効率化に向けた共同輸配送のオープンプラットフォームを提供するSustainable Shared Transport株式会社の事業開始など、新たな事業を立ち上げました。これらの取組みを通じて、ヤマトグループの利益成長と社会・物流業界全体のサステナビリティへの貢献に取り組んでいきます。