有価証券報告書-第153期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「安全で最適なサービス、公正な事業活動、変革への飽くなきチャレンジ、人間性の尊重」を重要な価値観と考え、海運業を母体とする総合物流企業グループとしてグローバルに事業を展開しています。また、人々の生活を支えるインフラとしての社会的使命を認識し、安全・安心な世界の物流を支えると同時に、脱炭素化・低炭素化の実現に向けた取組みなどを進めてまいります。当社グループが社会とともに持続的に発展していくためのサステナビリティ経営を強化し、事業戦略と組織横断の機能戦略を全社一体となって推進してまいります。
(2)中期的な会社の経営戦略
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、世界の人々の価値観や行動様式は大きく変わりました。カーボンニュートラルに向けた対応の加速など環境問題への取組みや、デジタル技術の活用などの従来からの課題も、その重要性が高まっています。
当社グループは、このような事業環境の変化に柔軟に対応し、サステナブルな成長を可能とするため、中長期の経営方針を策定しました。経営戦略として「自営事業の4本柱を磨き上げる」ことや「新たな事業領域への挑戦」など新たに5つの事業戦略を立てたことに加えて、サステナビリティ経営への取組みを強化することで、企業価値を向上させ、全てのステークホルダーに選ばれ続ける会社を目指します。また、企業価値向上のために設定した「安全・品質、環境・技術、ガバナンス、グループ経営、人材、財務体質、DX、業務効率化」による8つの全社横断テーマを梃子にして、事業戦略と、組織横断の機能戦略を全社一体となって推進してまいります。一方で、コロナ禍を巡る状況など、様々な不確実性が事業環境に大きな影響を及ぼすことから、経営計画自体も毎年見直していくローリングプランとしています。5年先の2025年、そして10年先の2030年を見据えた経営計画を立て、達成に向けた施策を年次で発表してまいります。
目標とする経営指標については、中期的・長期的な観点においてそれぞれ以下のとおり設定しました。
中期的な水準を2020年代半ばまでに達成すべく具体的な施策を実行し、進捗を見ながら策を練り、2030年度の目標達成へ向けて着実に取り組んでまいります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 事業戦略
◆ 自営事業の4本柱を磨き上げる
ドライバルク、エネルギー資源、自動車船、物流・近海内航の4本柱を以下の取組みなどによって磨き上げます。
a 顧客への提案力強化
b 成長市場における拠点強化
c 船隊規模適正化の推進
d データ活用による安全・安心な高品質サービスの一層の向上
e 徹底した配船効率の追求
◆ 新たな事業領域への挑戦
当社の知見を生かし信頼できるパートナーと共同で以下のような成長分野に注力します。
a 再生可能エネルギー分野
b 新エネルギー輸送需要
c 小型LNG船輸送
d LNG供給船等周辺事業
e 脱炭素・低炭素関連技術の活用
f DXを活用した新たな価値の提供
◆ アジアを中心に海外展開を加速
a 成長市場のアジアを中心としたグローバルな事業展開の進展
b 当社グループのネットワーク活用、グローバルなパートナーとの協業
◆ コンテナ船事業は主要事業部門として株主の立場からOCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.
(以下、「ONE社」という。)へのサポートを継続
◆ 継続的な財務基盤の拡充
② サステナビリティ経営の推進
◆ 脱炭素とサステナビリティ経営への取組み
脱炭素・低炭素の目標を更に強力に推進させる社内組織を創設し、これらの具体的な目標を達成するための取組みを進めています。新たな社会インフラの整備の役割、顧客への付加価値、自社船舶燃料の代替を脱炭素・低炭素のポイントとして、これまでの安全・品質・環境の取組みに加えて、新技術の研究開発にも力を入れていきます。
◆ 環境マネジメント推進の取組み体制
サステナビリティ経営を促進していくため、2021年4月に、以下3つの部署を設立しました。社内の関係組織や関係会社と連携して、より多角的・体系的に事業活動を通じて環境保全を図りつつ、経済・社会の持続的な発展に貢献し、企業価値の向上に努めてまいります。
・サステナビリティ推進・IR・広報グループ
・GHG削減戦略グループ
・カーボンニュートラル推進グループ
これらのグループで協力して環境関連の取組みを推進し、また、既存の環境推進グループ、燃料グループ、及び先進技術グループとも連携をとり、取組みを強化して進めてまいります。
◆ カーボンニュートラル社会実現のための環境投資
脱炭素・低炭素に向けて、1,000億円規模の投資を予定しています。
環境関連の技術開発や船上の設備、低炭素に資する新事業、代替燃料焚き船舶の建造などが主な計画ですが、これに加えて、投資に対するインターナルカーボンプライシングを考慮した評価方法の運用開始により、低炭素投資の促進などの取組みも随時進めていきます。
◆ 当社サステナビリティ経営の具体的取組み
当社は創業以来、海運を中核とする総合物流企業として国際的な社会インフラを担ってきましたが、人々の生活や経済を支えるライフラインとしての使命を果たすには、経営にサステナビリティ(環境・社会・経済の持続可能性)を重視する視点が欠かせません。そこで、2020年度はサステナビリティ推進体制の強化に向けた種々の取組みを実施しました。
まず、サステナビリティを経営に組み込む、という会社としての意思を明確に表明するために、2020年4月に国連グローバル・コンパクトに署名し、参加企業として登録されました。
また、同じく2020年4月には、安全運航・環境対応を含めた高品質物流サービスの強化を推進し、競争力を更に強化することを目的とした社長執行役員直下の部門横断組織として、「安全環境支援技術プロジェクトチーム」と「代替燃料プロジェクトチーム」を組成しました。
更に、サステナビリティ経営の更なる推進・強化を目的として、2021年4月以降の部署の新設・改編及び委員会組織の改編を決定しました。
具体的には、まず、サステナビリティ推進の実務を担う部署として、「サステナビリティ推進・IR・広報グループ」、「GHG削減戦略グループ」及び「カーボンニュートラル推進グループ」を新設しました。「サステナビリティ推進・IR・広報グループ」は、従来のCSR・IR・広報機能を統合し、サステナビリティ経営の推進主体として、社内外のステークホルダーとのコミュニケーションを促進します。「GHG削減戦略グループ」は、次世代環境船舶戦略を技術面で統括することを目的として設置されたもので、アンモニア、水素といった新燃料対応、電気推進(EV)、CCS(二酸化炭素回収・貯留)やメタネーションといったGHG 削減技術の研究・実現に取り組むとともに、実用段階にあるLNG 燃料船の導入を推進します。「カーボンニュートラル推進グループ」は、洋上風力を含む再生エネルギー関連事業、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)事業、燃料転換(LNG バリューチェーン)事業、排出権取引など、カーボンニュートラル事業を推進します。これらの新設組織と、既存の「環境推進グループ」、「燃料グループ」及び「先進技術グループ」を合わせ、新たな推進体制のもとでサステナビリティの取組みを強化してまいります。
また、サステナビリティを司るガバナンス体制として、社長執行役員を委員長とする「サステナビリティ経営推進委員会」を、従来の「社会・環境委員会」を発展的に改組する形で発足させることとしました。更に、その下部組織として、従来の「CSR専門委員会」を「サステナビリティ専門委員会」に改組し、既存の「環境専門委員会」と合わせ、企業価値向上に資する方向性を討議し、内外への発信施策を策定する体制を整備することになりました。併せて、2020年4月に組成された「代替燃料プロジェクトチーム」については、加速度を付けた取組みとするために、「代替燃料プロジェクト委員会」に改組することも決定しました。
◆ 安全・環境・品質の取組み
当社グループは重大海難事故ゼロの維持を命題として、『統合船舶運航・性能管理システム“K-IMS”』の開発・導入やエネルギーマネジメントシステムの構築等により、世界トップクラスの安全運航の維持に取り組んでいます。
また、当社グループは事業活動が地球環境に負荷を与えることを自覚し、それを最小限にするべく、環境憲章にその決意を掲げ、これに基づく環境マネジメントシステムにより、具体的な環境保全活動並びに数値目標を定め、その達成状況を基に改善を図っていくなど、環境保全のための様々な取組みを行っています。例えば、省エネ型荷役機器導入や燃料節減によるCO2排出量削減、運航船のバラスト水管理のための処理装置の搭載、SOxスクラバーの搭載や低硫黄燃料使用によるSOx排出量削減、NOx排出低減のための排ガス再循環装置搭載などの環境保全対策を実施しています。これらの取組みが評価され、2020年にはCDP2020気候変動で5年連続Aリストに選定され、また『サプライヤー・エンゲージメント・リーダー・ボード』にも3年連続で選定されました。また、事業以外でも当社遊休地を利用した里山保全活動など環境保護活動を積極的に実施しています。
2015年3月に様々な環境問題に取り組むべく環境指針『“K”LINE 環境ビジョン2050』を策定しましたが、5年の歳月が経過し改めて当社の環境における重要課題と目標を見直し、2020年に新たな『“K”LINE 環境ビジョン2050』を公表いたしました。
新たな環境ビジョンではシナリオ分析の結果を踏まえて取り組むべき課題及び目標の一部を見直すとともに、目標を「脱炭素化」、「環境影響の限りないゼロ化」の2軸で再整理しました。特に「脱炭素化」に向けては、①次世代型環境対応LNG燃料焚き自動車専用船“CENTURY HIGHWAY GREEN”の竣工、②LNG燃料供給事業の開始、③風力を利用した自動カイトシステム“Seawing”の実装化など取組みを進めているものもございますが、更なる「脱炭素化」への取組みを一層進めてまいります。
また、SBTイニシアチブ(Science Based Target Initiative)の認証を取得している「2030年までにCO2排出量25%削減(2011年比)」達成を測る指標として、国内外主要連結グループ会社の燃料消費や電気使用量などの環境負荷データを、環境データ集計システムを通じて収集・集計し、当社ホームページに掲載しています。2020年において当社グループの事業に伴う温室効果ガスの排出量は、スコープ1(化石燃料の使用に伴う直接的な排出)9,202,613トン、スコープ2(供給を受けた電力等による間接的な排出)21,780トン、スコープ3(スコープ1・2を除くその他の間接的排出)1,219,525トンという結果となりました。今後も、グループ全体の環境負荷を把握すると同時に、グループ各社での自主的な取組みを促し、必要に応じて追加施策を実施すべく、環境パフォーマンスの見える化に取り組んでまいります。更に、年間の実績データは、第三者機関によるデータ精査と認証を受けた上で社外へ開示しステークホルダーからの評価を次の施策に生かしながら、継続的な改善を図ってまいります。
また、2017年6月に当社グループ全体で環境マネジメントを推進するための体制「DRIVE GREEN NETWORK(DGN)」を構築し、運用を開始いたしました。これは、当社グループ全体で日常業務の中に環境の課題を見出し取り組むことで、グループ全体として持続可能な社会の実現を目指しています。DGNは段階的に当社グループ全体への導入を進めており、2020年には大部分の国内外グループ会社の加入が完了いたしました。
◆ コーポレートガバナンス体制の強化
グループ価値を高める戦略実施に際して最も重要となるガバナンス体制の整備に関して、当社はユニット統括制の導入による業務執行責任体制のより一層の明確化・強化や重要方針の決定に向けた取締役会モニタリング体制の強化等を実行してきました。リスクマネジメントでは、危機管理委員会とその下部組織(コンプライアンス委員会・安全運航推進委員会・経営リスク委員会・災害対策委員会)がグループのリスク管理にあたり、重要な投資については、投資委員会がその審議にあたる体制としています。
(4)コンプライアンスの徹底
当社は、公正取引委員会による立入検査を受けて以降、外部専門家の協力を得て、各種コンプライアンス強化策を策定・実施していますが、これらの強化策を今後もより一層推進することにより、再発の防止に努めてまいります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。
当社グループは、「安全で最適なサービス、公正な事業活動、変革への飽くなきチャレンジ、人間性の尊重」を重要な価値観と考え、海運業を母体とする総合物流企業グループとしてグローバルに事業を展開しています。また、人々の生活を支えるインフラとしての社会的使命を認識し、安全・安心な世界の物流を支えると同時に、脱炭素化・低炭素化の実現に向けた取組みなどを進めてまいります。当社グループが社会とともに持続的に発展していくためのサステナビリティ経営を強化し、事業戦略と組織横断の機能戦略を全社一体となって推進してまいります。
(2)中期的な会社の経営戦略
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、世界の人々の価値観や行動様式は大きく変わりました。カーボンニュートラルに向けた対応の加速など環境問題への取組みや、デジタル技術の活用などの従来からの課題も、その重要性が高まっています。
当社グループは、このような事業環境の変化に柔軟に対応し、サステナブルな成長を可能とするため、中長期の経営方針を策定しました。経営戦略として「自営事業の4本柱を磨き上げる」ことや「新たな事業領域への挑戦」など新たに5つの事業戦略を立てたことに加えて、サステナビリティ経営への取組みを強化することで、企業価値を向上させ、全てのステークホルダーに選ばれ続ける会社を目指します。また、企業価値向上のために設定した「安全・品質、環境・技術、ガバナンス、グループ経営、人材、財務体質、DX、業務効率化」による8つの全社横断テーマを梃子にして、事業戦略と、組織横断の機能戦略を全社一体となって推進してまいります。一方で、コロナ禍を巡る状況など、様々な不確実性が事業環境に大きな影響を及ぼすことから、経営計画自体も毎年見直していくローリングプランとしています。5年先の2025年、そして10年先の2030年を見据えた経営計画を立て、達成に向けた施策を年次で発表してまいります。
目標とする経営指標については、中期的・長期的な観点においてそれぞれ以下のとおり設定しました。
2020年代半ば | ~2030年度 | |
経常利益 | 300億円 | 500億円 |
自己資本 | 3,000億円 | 4,000億円 |
自己資本比率 | 30%以上 | 40%以上 |
ROE | 10%以上 |
中期的な水準を2020年代半ばまでに達成すべく具体的な施策を実行し、進捗を見ながら策を練り、2030年度の目標達成へ向けて着実に取り組んでまいります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 事業戦略
◆ 自営事業の4本柱を磨き上げる
ドライバルク、エネルギー資源、自動車船、物流・近海内航の4本柱を以下の取組みなどによって磨き上げます。
a 顧客への提案力強化
b 成長市場における拠点強化
c 船隊規模適正化の推進
d データ活用による安全・安心な高品質サービスの一層の向上
e 徹底した配船効率の追求
◆ 新たな事業領域への挑戦
当社の知見を生かし信頼できるパートナーと共同で以下のような成長分野に注力します。
a 再生可能エネルギー分野
b 新エネルギー輸送需要
c 小型LNG船輸送
d LNG供給船等周辺事業
e 脱炭素・低炭素関連技術の活用
f DXを活用した新たな価値の提供
◆ アジアを中心に海外展開を加速
a 成長市場のアジアを中心としたグローバルな事業展開の進展
b 当社グループのネットワーク活用、グローバルなパートナーとの協業
◆ コンテナ船事業は主要事業部門として株主の立場からOCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.
(以下、「ONE社」という。)へのサポートを継続
◆ 継続的な財務基盤の拡充
② サステナビリティ経営の推進
◆ 脱炭素とサステナビリティ経営への取組み
脱炭素・低炭素の目標を更に強力に推進させる社内組織を創設し、これらの具体的な目標を達成するための取組みを進めています。新たな社会インフラの整備の役割、顧客への付加価値、自社船舶燃料の代替を脱炭素・低炭素のポイントとして、これまでの安全・品質・環境の取組みに加えて、新技術の研究開発にも力を入れていきます。
◆ 環境マネジメント推進の取組み体制
サステナビリティ経営を促進していくため、2021年4月に、以下3つの部署を設立しました。社内の関係組織や関係会社と連携して、より多角的・体系的に事業活動を通じて環境保全を図りつつ、経済・社会の持続的な発展に貢献し、企業価値の向上に努めてまいります。
・サステナビリティ推進・IR・広報グループ
・GHG削減戦略グループ
・カーボンニュートラル推進グループ
これらのグループで協力して環境関連の取組みを推進し、また、既存の環境推進グループ、燃料グループ、及び先進技術グループとも連携をとり、取組みを強化して進めてまいります。
◆ カーボンニュートラル社会実現のための環境投資
脱炭素・低炭素に向けて、1,000億円規模の投資を予定しています。
環境関連の技術開発や船上の設備、低炭素に資する新事業、代替燃料焚き船舶の建造などが主な計画ですが、これに加えて、投資に対するインターナルカーボンプライシングを考慮した評価方法の運用開始により、低炭素投資の促進などの取組みも随時進めていきます。
◆ 当社サステナビリティ経営の具体的取組み
当社は創業以来、海運を中核とする総合物流企業として国際的な社会インフラを担ってきましたが、人々の生活や経済を支えるライフラインとしての使命を果たすには、経営にサステナビリティ(環境・社会・経済の持続可能性)を重視する視点が欠かせません。そこで、2020年度はサステナビリティ推進体制の強化に向けた種々の取組みを実施しました。
まず、サステナビリティを経営に組み込む、という会社としての意思を明確に表明するために、2020年4月に国連グローバル・コンパクトに署名し、参加企業として登録されました。
また、同じく2020年4月には、安全運航・環境対応を含めた高品質物流サービスの強化を推進し、競争力を更に強化することを目的とした社長執行役員直下の部門横断組織として、「安全環境支援技術プロジェクトチーム」と「代替燃料プロジェクトチーム」を組成しました。
更に、サステナビリティ経営の更なる推進・強化を目的として、2021年4月以降の部署の新設・改編及び委員会組織の改編を決定しました。
具体的には、まず、サステナビリティ推進の実務を担う部署として、「サステナビリティ推進・IR・広報グループ」、「GHG削減戦略グループ」及び「カーボンニュートラル推進グループ」を新設しました。「サステナビリティ推進・IR・広報グループ」は、従来のCSR・IR・広報機能を統合し、サステナビリティ経営の推進主体として、社内外のステークホルダーとのコミュニケーションを促進します。「GHG削減戦略グループ」は、次世代環境船舶戦略を技術面で統括することを目的として設置されたもので、アンモニア、水素といった新燃料対応、電気推進(EV)、CCS(二酸化炭素回収・貯留)やメタネーションといったGHG 削減技術の研究・実現に取り組むとともに、実用段階にあるLNG 燃料船の導入を推進します。「カーボンニュートラル推進グループ」は、洋上風力を含む再生エネルギー関連事業、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)事業、燃料転換(LNG バリューチェーン)事業、排出権取引など、カーボンニュートラル事業を推進します。これらの新設組織と、既存の「環境推進グループ」、「燃料グループ」及び「先進技術グループ」を合わせ、新たな推進体制のもとでサステナビリティの取組みを強化してまいります。
また、サステナビリティを司るガバナンス体制として、社長執行役員を委員長とする「サステナビリティ経営推進委員会」を、従来の「社会・環境委員会」を発展的に改組する形で発足させることとしました。更に、その下部組織として、従来の「CSR専門委員会」を「サステナビリティ専門委員会」に改組し、既存の「環境専門委員会」と合わせ、企業価値向上に資する方向性を討議し、内外への発信施策を策定する体制を整備することになりました。併せて、2020年4月に組成された「代替燃料プロジェクトチーム」については、加速度を付けた取組みとするために、「代替燃料プロジェクト委員会」に改組することも決定しました。
◆ 安全・環境・品質の取組み
当社グループは重大海難事故ゼロの維持を命題として、『統合船舶運航・性能管理システム“K-IMS”』の開発・導入やエネルギーマネジメントシステムの構築等により、世界トップクラスの安全運航の維持に取り組んでいます。
また、当社グループは事業活動が地球環境に負荷を与えることを自覚し、それを最小限にするべく、環境憲章にその決意を掲げ、これに基づく環境マネジメントシステムにより、具体的な環境保全活動並びに数値目標を定め、その達成状況を基に改善を図っていくなど、環境保全のための様々な取組みを行っています。例えば、省エネ型荷役機器導入や燃料節減によるCO2排出量削減、運航船のバラスト水管理のための処理装置の搭載、SOxスクラバーの搭載や低硫黄燃料使用によるSOx排出量削減、NOx排出低減のための排ガス再循環装置搭載などの環境保全対策を実施しています。これらの取組みが評価され、2020年にはCDP2020気候変動で5年連続Aリストに選定され、また『サプライヤー・エンゲージメント・リーダー・ボード』にも3年連続で選定されました。また、事業以外でも当社遊休地を利用した里山保全活動など環境保護活動を積極的に実施しています。
2015年3月に様々な環境問題に取り組むべく環境指針『“K”LINE 環境ビジョン2050』を策定しましたが、5年の歳月が経過し改めて当社の環境における重要課題と目標を見直し、2020年に新たな『“K”LINE 環境ビジョン2050』を公表いたしました。
新たな環境ビジョンではシナリオ分析の結果を踏まえて取り組むべき課題及び目標の一部を見直すとともに、目標を「脱炭素化」、「環境影響の限りないゼロ化」の2軸で再整理しました。特に「脱炭素化」に向けては、①次世代型環境対応LNG燃料焚き自動車専用船“CENTURY HIGHWAY GREEN”の竣工、②LNG燃料供給事業の開始、③風力を利用した自動カイトシステム“Seawing”の実装化など取組みを進めているものもございますが、更なる「脱炭素化」への取組みを一層進めてまいります。
また、SBTイニシアチブ(Science Based Target Initiative)の認証を取得している「2030年までにCO2排出量25%削減(2011年比)」達成を測る指標として、国内外主要連結グループ会社の燃料消費や電気使用量などの環境負荷データを、環境データ集計システムを通じて収集・集計し、当社ホームページに掲載しています。2020年において当社グループの事業に伴う温室効果ガスの排出量は、スコープ1(化石燃料の使用に伴う直接的な排出)9,202,613トン、スコープ2(供給を受けた電力等による間接的な排出)21,780トン、スコープ3(スコープ1・2を除くその他の間接的排出)1,219,525トンという結果となりました。今後も、グループ全体の環境負荷を把握すると同時に、グループ各社での自主的な取組みを促し、必要に応じて追加施策を実施すべく、環境パフォーマンスの見える化に取り組んでまいります。更に、年間の実績データは、第三者機関によるデータ精査と認証を受けた上で社外へ開示しステークホルダーからの評価を次の施策に生かしながら、継続的な改善を図ってまいります。
また、2017年6月に当社グループ全体で環境マネジメントを推進するための体制「DRIVE GREEN NETWORK(DGN)」を構築し、運用を開始いたしました。これは、当社グループ全体で日常業務の中に環境の課題を見出し取り組むことで、グループ全体として持続可能な社会の実現を目指しています。DGNは段階的に当社グループ全体への導入を進めており、2020年には大部分の国内外グループ会社の加入が完了いたしました。
◆ コーポレートガバナンス体制の強化
グループ価値を高める戦略実施に際して最も重要となるガバナンス体制の整備に関して、当社はユニット統括制の導入による業務執行責任体制のより一層の明確化・強化や重要方針の決定に向けた取締役会モニタリング体制の強化等を実行してきました。リスクマネジメントでは、危機管理委員会とその下部組織(コンプライアンス委員会・安全運航推進委員会・経営リスク委員会・災害対策委員会)がグループのリスク管理にあたり、重要な投資については、投資委員会がその審議にあたる体制としています。
(4)コンプライアンスの徹底
当社は、公正取引委員会による立入検査を受けて以降、外部専門家の協力を得て、各種コンプライアンス強化策を策定・実施していますが、これらの強化策を今後もより一層推進することにより、再発の防止に努めてまいります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。