有価証券報告書-第130期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 14:15
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【項目】
145項目
業績等の概要
(1) 業績
当連結会計年度(以下、「当期」という。)の世界経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19。以下、「感染症」という。)の影響により、期中に大幅に悪化した後、国や地域差はあるものの景気回復に向けた動きが強まりました。欧州経済は感染症変異株の出現や冬季での感染症拡大による主要都市のロックダウンにより大きく落ち込みました。一方で、早期の感染防止策が奏功した中国経済は感染症流行以前の水準まで回復し、米国経済も巣ごもり需要により住宅市場や製造業等が堅調であり、感染拡大が続く中でも株高等を背景に持ち直しました。我が国の経済はGoToキャンペーン等により秋口には一時回復傾向となるも、第3四半期末から当期末にかけて感染が再拡大し一部の地域には緊急事態宣言が発令される等、経済活動は再び抑制されました。
当社グループの海運業を取り巻く市況は、大型ガス船では急騰し、ドライバルク船でも年央以降、堅調に推移しました。しかしながら、ケミカルタンカーや大型原油タンカーでは当期初において市況は一時急騰したものの、その後下落し、低調に推移しました。また、感染症の影響による船員交代の制限等、運航上のリスクが顕在化しました。このような状況の下、当社グループでは、既存契約の有利更改や効率配船への取り組みをはじめとして、運航採算の向上を図りました。不動産業においては商業テナントの営業やイイノホール&カンファレンスセンター等で感染症の影響を受けておりますが、事務所テナントは順調な稼働を継続していることから全体としては安定した収益を確保しました。
以上の結果、売上高は889億16百万円(前期比0.3%減)となりましたが、ケミカルタンカーや大型ガス船の市況が一時的に高騰したことや、前期に飯野ビルディングで発生していた空室には既に新規テナントが入居し満室稼働となっている影響等から、営業利益は68億31百万円(前期比71.8%増)、経常利益は68億10百万円(前期比97.1%増)となりました。また、海外子会社の清算結了に伴う為替換算調整勘定の実現による特別利益を計上したこと等から、親会社株主に帰属する当期純利益は76億55百万円(前期比102.1%増)となりました。
各セグメント別の状況は次の通りです。
①外航海運業
当期の外航海運市況は以下の通りです。
大型原油タンカー市況は、感染症の拡大を受け原油需要が急激に減少したことで、陸上の貯蔵タンクが不足し滞船が増えたことや原油価格の急落により裁定取引が活発化した影響等から、原油の洋上備蓄需要が高まり一時高騰しました。しかしながら、その後はOPECプラスの協調減産が再開されると輸送需要が減退し、感染症拡大の影響も受けて低水準で推移しました。年明けにはサウジアラビアが追加減産を発表し、OPECプラスが減産幅維持を決定したことから市況の低迷が続き、当期末にかけて損益分岐点を下回る水準で推移しました。
ケミカルタンカー市況は、石油タンカーの洋上備蓄の需要増によりケミカルタンカー市場からプロダクトタンカーが退出した影響等で5月以降市況は一時的に高騰しました。その後、欧米やインドを中心とした世界的な景気低迷により輸送需要は夏場以降継続して弱含んでおり、加えてプロダクトタンカー市況の悪化を受けプロダクトタンカーがケミカルタンカー市場に再流入していることも重なり、市況は下落しました。
大型ガス船のうち、LPG船市況は、感染症の影響による世界経済の低迷により当初軟化しましたが、アジアでの堅調な民生用需要及び中国向け石油化学原料需要が増加したことや、入渠船の増加及び主要航路である米国とアジアを繋ぐパナマ運河の混雑等によって船腹需給が引き締まったことにより、年末にかけて高騰しました。しかしながら、年明け以降は米国出しLPGの裁定取引が縮小したことによる輸送需要及び米国から極東向けのLPG輸送量が共に減少したことから、市況は下落しました。LNG船市況は、感染症による需要減の影響で春から夏には低迷したものの、秋から冬にかけては中国経済の回復や寒波による東アジアの電力需要急増に伴い、米国積みを中心にアジア向けLNG輸送が活発化し船腹需給がひっ迫したため一時的に過去最高水準を記録する等、大きく変動しました。
ドライバルク船市況は、感染症の世界的な拡大により当期初より軟調なスタートとなりましたが、いち早く経済活動を再開させた中国向け荷動きが回復に転じたことで、第1四半期終盤から上昇に転じました。その後も、市況は各国で打ち出された景気刺激策により世界的に荷動きが増加したことを受け、堅調に推移しました。さらに中国向けを中心に好調に推移する穀物需要に加え、北半球における冬場の電力需要を背景とした石炭需要の増加、それらに伴う荷積み港、荷揚げ港における滞船もあり、第4四半期において市況が急伸し前年比大幅高で当期末を迎えました。
なお、当期における当社グループの平均為替レートは¥105.79/US$(前期は¥109.13/US$)、船舶燃料油価格についてはC重油380cStの平均価格はUS$269/MT(前期はUS$412/MT)、適合燃料油の平均価格はUS$346/MT(前期はUS$598/MT)となりました。
このような事業環境の下、当社グループの外航海運業の概況は以下の通りとなりました。
大型原油タンカーにおいては、入渠船の影響を完全に避けることはできませんでしたが、第2四半期及び第4四半期に竣工した新造VLCC2隻を含む支配船腹を長期契約に投入する等、安定収益の確保に努めました。
ケミカルタンカーにおいては、当社の基幹航路である中東域から欧州向け及びアジア向けの数量輸送契約に加え、市況高騰時に高運賃のスポット貨物を取り入れる等、安定的に輸送を行い、復航においても北アフリカからの燐酸液やアジア域からのスポット貨物を積極的に取り込むことで収益を確保しました。当社と米国オペレーターとの合弁事業においては、安定的な数量輸送契約に加え効率的なスポット貨物の集荷に取り組み、稼働を維持しました。
大型ガス船においては、LPG船及びLNG船共に、既存の中長期契約を中心に安定収益を確保したことに加え、一部船舶が高騰したLPG船市況を享受し、外航海運業の増益に大きく貢献しました。また、海外顧客と新たに締結した定期用船契約向けに、サステナビリティへの取り組みの一環として、従来の重油のみならずLPGを推進燃料とすることにより温室効果ガスの排出量を削減できるLPG2元燃料主機関を搭載する大型LPG船を2隻発注しました。
ドライバルク船においては、当期中に新たに竣工した専用船が順調に稼働し収益に貢献しました。ポストパナマックス及びハンディ船型を中心とする不定期船部門においては、当期初の感染症拡大により一時市況は低迷しましたが、第2四半期以降市況は回復し、契約貨物への投入を中心に市況上昇を捉えた効率配船に努めた結果、総じて運航収支は改善し採算は堅調に推移しました。
以上の結果、外航海運業の売上高は692億95百万円(前期比1.3%増)、営業利益は24億63百万円(前期比278.1%増)となりました。
②内航・近海海運業
当期の内航・近海海運市況は以下の通りです。
内航ガス輸送の市況は、石油化学ガスやLPG需要が低調に推移したこと等から総じて低迷しました。石油化学ガスはプラントの定期修繕及び感染症拡大に伴う生産品需要の減少の影響により出荷は低調に推移しましたが、業界全体としては底堅いプラント間転送需要及び船員不足に伴う稼働隻数の減少も影響し、船腹需給は均衡して推移しました。LPG需要のうち、プラント間転送需要は底堅く堅調に推移しました。一方、家庭用LPG需要は、第2四半期までは感染症拡大の影響に加えて季節的要因もあり低調に推移しました。第3四半期に入り気温も低下したことから春に比べ持ち直す傾向となりましたが、感染症の再拡大を受け、厳冬期を過ぎると再び需要は低下しました。
近海ガス輸送の市況は、主要貨物であるプロピレン、塩化ビニルモノマーの国内生産量が中国向け輸出関連需要に牽引され、堅調に推移しておりました。中国及び東南アジアのプラントの稼働が定期修繕やトラブルによって低下したことにより夏期以降一時的に市況は軟化しましたが、中国向け輸出需要の回復に伴い再び堅調な推移となりました。また、同じく感染症の影響による輸送需要の鈍化に伴い、当社が主力とする3,500㎥型高圧ガス船の市況も軟化しました。
このような事業環境の下、当社グループの内航・近海海運業の概況は以下の通りとなりました。
内航ガス輸送においては、感染症拡大と季節的要因に伴うLPG需要の低下及び石油化学ガス出荷プラントの定期修繕、並びに生産品需要減による出荷量減少の影響を受けました。また、運航船の入渠等により冬場の稼働減少が発生しましたが、中長期契約に基づく安定的な売上確保と効率配船に取り組みました。
近海ガス輸送においては、感染症拡大によって稼働が減少した影響を完全に避けることはできず、定期用船契約更改時に市況下落の影響を受けました。一方で新規用船者への投入も実現し、安定した貸船収入の維持に努めました。
以上の結果、内航・近海海運業の売上高は85億81百万円(前期比7.2%減)、営業利益は5億5百万円(前期比11.4%減)となりました。
③不動産業
当期の不動産市況は以下の通りです。
都心のオフィスビル賃貸市況は、感染症拡大の影響がオフィス市場にも本格的に現れ下降基調は鮮明になりました。国内企業はリモートワークを拡充し、これまでの増員計画をベースにした増床移転の見直しや固定費削減のための事業所縮小等を行い、オフィス需要が減少したことから賃料は下落が続き、空室率は2015年6月以来、需給が均衡し賃料が反転する目安と言われる5%を上回りました。
貸ホール・貸会議室においては、秋期以降、イベント自粛緩和の動きが見られたものの、多数の競合施設がある中で厳しい顧客獲得競争が続きました。
不動産関連事業のフォトスタジオ事業においては、感染症拡大により広告需要が大幅に減少しました。
英国ロンドンの不動産市況は、事務所テナントではリモ-トワークの普及により既存テナントが自社スぺ-スを転貸する等の動きがみられ、空室率が若干上昇しました。商業テナントでは感染症の拡大を受け厳しい状況となりました。
このような事業環境の下、当社グループの不動産業の概況は以下の通りとなりました。
当社所有ビルにおいては、商業テナントの営業に感染症の影響はあったものの、事務所テナントは堅調な稼働を継続し、安定した収益を維持することができました。
また、当社が参画している日比谷フォートタワーでは、新築建物の工事が順調に進捗し、現在のところ2021年6月末の竣工を予定しております。
当社グループのイイノホール&カンファレンスセンターにおいては、感染症の影響で稼働と収益に大きな影響を受けていますが、10月以降、観客数を減らしながらも配信や収録を利用したイベントが増加傾向となり、1月以降の緊急事態宣言下においても稼働は改善に向かいました。
フォトスタジオ事業を運営する㈱イイノ・メディアプロにおいては、感染症対策を実施し新規顧客を取り込んだものの、広告需要の減少の影響により収益が減少しました。
英国ロンドンの不動産事業においては、賃貸ビルで商業テナントについては感染症の影響はあるものの、事務所テナントは順調に稼働したため、収益を維持することができました。
以上の結果、不動産業の売上高は111億58百万円(前期比4.4%減)、営業利益は38億63百万円(前期比40.2%増)となりました。前期比で売上高が減少したものの営業利益が増加したことは、前期は飯野ビルディングにおいて一部テナントの退去により、原状回復工事を引き受けたことによる売上高の計上があった一方、空室期間が生じたことによる賃料収入の減少等があったためです。
(2)キャッシュ・フローの状況
当期の「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、192億82百万円のプラス(前期は130億79百万円のプラス)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益81億58百万円と減価償却費110億83百万円によるものです。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は229億91百万円のマイナス(前期は148億40百万円のマイナス)となりました。これは主に船舶及び不動産への設備投資を中心とした固定資産の取得による支出308億70百万円が、船舶を中心とした固定資産の売却による収入76億77百万円を上回ったことによるものです。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は28億94百万円のプラス(前期は62億34百万円のプラス)となりました。これは主に長期借入れによる収入297億65百万円及び社債の発行による収入49億70百万円が、長期借入金の返済による支出206億70百万円及び短期借入金の純減額85億43百万円を上回ったことによるものです。
以上の結果、「現金及び現金同等物の当期末残高」は133億1百万円(前期末は142億8百万円)となりました。
生産、受注及び販売の実績
この項目は「業績等の概要(1)業績」の記載に含めて記載しております。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、期末日における資産・負債の報告金額及び報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与える見積り及び仮定設定を行わなければなりません。当社グループ経営陣は、債権の貸倒、棚卸資産、投資、法人税等、財務活動、退職金、偶発事象や訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判定しにくい資産・負債の簿価及び収益・費用の報告金額についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループにおける重要な会計上の見積りに関する情報は、「第5 経理の状況 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご参照下さい。会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は、「第5 経理の状況 注記事項(重要な会計上の見積り)」に含めて記載しております。
(2) 経営成績の分析
① 損益の分析
当期における売上高は、前期比0.3%減の889億16百万円となりました。なお、各セグメントの売上高の概要は、「業績等の概要(1)業績」に記載の通りであります。
営業利益は前期比71.8%増の68億31百万円となりました。なお、各セグメントの営業利益の概要は、「業績等の概要(1)業績」に記載の通りであります。
経常利益は、前期比97.1%増の68億10百万円となりました。これは主に受取配当金や為替差益の増加といった営業外収益の増加と支払利息の減少に伴う営業外費用の減少によるものです。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比102.1%増の76億55百万円となりました。これは主に海外子会社の清算結了に伴う為替換算調整勘定の実現による特別利益を計上したことによるものです。
② 財政状態の分析
当期末の総資産残高は前期末に比べ145億23百万円増加し、2,456億11百万円となりました。これは主に船舶の竣工や投資有価証券の評価額の増加によるものです。
負債残高は前期末に比べ81億16百万円増加し、1,657億76百万円となりました。これは主に公募形式によるグリーンボンド(第2回無担保社債)の発行及び固定資産の取得に伴う設備資金の借入れによるものです。
純資産残高は前期末に比べ64億7百万円増加し、798億35百万円となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益計上に伴う利益剰余金の増加や保有する投資有価証券の株価が上昇したことによるその他有価証券評価差額金の増加によるものです。
以上の結果、当期末の連結自己資本比率は32.5%(前期末は31.7%)となりました。
(3) 流動性及び資金の源泉
① 資金需要
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは当社グループの外航海運業と内航・近海海運業により構成される海運業に関わる運航費、船費、借船料と不動産業に関わる管理費、営繕費等の不動産業費用、各事業についての一般管理費等があります。また、設備資金需要としては船舶投資と不動産投資に加え、情報処理の為の無形固定資産投資等があります。
② 財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用や金融機関からの借入及び社債の発行により資金調達を行っており、運転資金及び設備資金につきましては、国内、海外子会社のものを含め当社において一元管理しております。
当社グループの主要な事業資産である船舶の調達に当たっては、船主からの中長期用船や裸用船のバランスも考慮に入れ、当社グループ全体の有利子負債の削減を図っております。円建て、米ドル建ての借入金を含む当期末の有利子負債残高(リース債務を除く)は1,317億44百万円となりました。
また、資金調達コストの低減に努める一方、過度に金利変動リスクに晒されないよう、設備資金の借入の大部分について金利スワップなどの手段を活用しております。
当社グループは国内2社の格付機関から格付を取得しており、本報告書提出時点において、日本格付研究所:
「BBB+」、格付投資情報センター:「BBB」となっております。また、金融機関には充分な借入枠を有しており、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転、設備資金の調達は今後も可能であると考えております。また、国内金融機関において複数年を含む合計180億円並びにUS$6千万のコミットメントラインを設定しており、流動性の補完にも対応が可能となっております。
③ キャッシュ・フロー
「業績等の概要(2)キャッシュ・フローの状況」をご覧下さい。

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