有価証券報告書-第129期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
業績等の概要
(1) 業績
当連結会計年度(以下、「当期」という)の世界経済は、米国の通商政策や各国経済の低迷により総じて減速基調で推移し、当期末にかけて新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、「感染症」という)の世界的な拡大で減速傾向がさらに強まりました。米国では、中国との通商問題の緩和や個人消費の増加等から景気は緩やかな回復基調にありましたが、感染症の影響により下振れのリスクが高まりました。欧州では、独国の製造業の落ち込みや英国のEU離脱問題を巡る混乱に加えて、感染症の影響から景気は急速に減速しました。中国では、感染症の影響で経済活動が大幅に縮小し、景気は顕著に減速しました。
わが国経済は、雇用・所得の環境改善が続いていましたが、当期末にかけて感染症の影響により大幅に落ち込みを見せ、先行き不透明な状況となりました。
当社グループの海運業を取り巻く市況は、オイルタンカーや大型ガスキャリアでは堅調に推移しました。しかしながら、ドライバルクキャリアでは感染症の影響もあり、当期末にかけて不透明感が強まりました。このような状況の下、当社グループでは、既存契約の有利更改への取り組みをはじめとして、効率配船及び運航採算の向上を図りました。不動産業においては、一部事務所テナントの移転に伴い空室が生じていた飯野ビルディングで、新規テナントの入居が開始される等、収益は改善に向かいました。
以上の結果、売上高は891億79百万円(前期比5.1%増)となりました。外航海運業においては増益となったものの、内航・近海海運業及び不動産業においては減益となったため、営業利益は39億76百万円(前期比16.8%減)、経常利益は34億55百万円(前期比26.5%減)となりました。また、売船市場の動向を見極め老齢船の処分を行い、固定資産売却益(特別利益)を計上したこと等から親会社株主に帰属する当期純利益は37億88百万円(前期比19.1%減)となりました。
各セグメント別の状況は次の通りです。
①外航海運業
当期の外航海運市況は以下の通りです。
オイルタンカー市況は、当期初においては製油所の定期修繕に伴う需要の落ち込み等の影響で低迷していましたが、夏場以降、サウジアラビア石油施設への攻撃による被災及び米国によるイラン産原油の輸送に従事した中国船社への制裁等により高騰しました。冬場にかけても、需要期入りやSOx規制対応に伴う船腹供給の引き締まり等から市況は高い水準で推移しました。当期末には感染症の影響で原油需要低下により一時市況は落ち込んだものの、OPECプラスの協調減産体制の決裂、サウジアラビアの増産への方針変更により原油価格が急落した影響で洋上備蓄需要が高まったこと等から市況は再び高騰しました。
ケミカルタンカー市況は、中東域での地政学的リスクや世界経済の減速の影響等により低調に推移していましたが、秋口よりオイルタンカー市況の上昇やSOx規制対応のための燃料油の切り替えに伴う燃料コストの上昇に引きずられる形で市況も上昇した影響等により回復基調となりました。しかしながら、当期末には感染症の影響等により荷動きが減少し、市況は若干弱含みました。
大型ガスキャリアのうち、LPGキャリア市況は、夏場以降、米国からアジア向け裁定取引の活発化や、季節的要因による滞船等により船腹需給が引き締まったこと等から上昇しました。当期末にかけ輸送需要の減少により市況が弱含む場面はあったものの、燃料費下落の影響もあり、市況は概ね好調に推移しました。LNGキャリア市況は、一部軟調な局面があったものの、夏場および冬場のエネルギー需要期に例年通り輸送需要が見られ、概ね堅調に推移しました。
ドライバルクキャリア市況は、貿易摩擦やブラジルの鉱山ダム事故等の影響が前年から継続し、軟調な幕開けとなりました。夏場から秋口にかけては、南米出し鉄鉱石や穀物の荷動きが増加し、一旦市況は好転しましたが、SOx規制発効を前に冬場以降から再び下落しました。更にはアジアでの旧正月による減速に加え、感染症の影響による経済活動の縮小もあり、市況が低迷する中で当期末を迎えました。
なお、当期における当社グループの平均為替レートは¥109.13/US$(前期は¥110.67/US$)、船舶燃料油価格についてはC重油380cStの平均価格はUS$412/MT(前期はUS$430/MT)、適合燃料油の平均価格はUS$598/MT(前期は使用せず)となりました。
このような事業環境の下、当社グループの外航海運業の概況は以下の通りとなりました。
オイルタンカーにおいては、支配船腹を引き続き長期契約に投入しておりましたが、第1四半期中に入渠船があった影響等から損益は悪化しました。また、当期末には当社初のSOxスクラバーを搭載したVLCCが竣工しました。
ケミカルタンカーにおいては、当社の基幹航路である中東域から欧州向け及びアジア向けの数量輸送契約に加え、北アフリカからの燐酸液やスポット貨物を積極的に取り込むことにより稼働の維持に努めました。当社と米国オペレーターとの合弁事業においても、既存船から燃費の良い船への代替を進め、数量輸送契約やスポット貨物の集荷により効率的な配船に努めました。また、サステナビリティへの取り組みとして、従来の重油のみならず、メタノールを推進燃料とすることが可能な当社初の2元燃料主機関搭載船が竣工し、長期契約に投入されました。
大型ガスキャリアにおいては、LPGキャリア及びLNGキャリア共に既存の中長期契約へ継続投入することで安定収益を確保したことに加え、LPGキャリアの一部が好市況を享受しました。
ドライバルクキャリアにおいては、石炭専用船とチップ専用船については順調に稼働しました。ポストパナマックス船については、市況上昇のタイミングを捉えた配船や数量輸送契約に投入し採算改善に努め、ハンディ船については、短期貸船により市況エクスポージャーの低減も図りつつ、契約貨物を中心に効率配船に努めました。その結果、ポストパナマックス船及びハンディ船では運航採算は市況と比較し堅調に推移しましたが、市況悪化の影響を完全に避けることはできませんでした。
以上の結果、外航海運業の売上高は683億91百万円(前期比5.4%増)、営業利益は6億51百万円(前期比11.8%増)となりました。
②内航・近海海運業
当期の内航・近海海運市況は以下の通りです。
内航ガス輸送の市況は、夏場のLPG不需要期及び暖冬の影響で出荷は低調に推移したものの、製油所間転送需要は底堅く、堅調に推移しました。石油化学ガスもプラントの定期修繕及び設備検査等に伴い出荷は低調に推移しましたが、業界全体として修繕期間中の洋上ストレージ需要及び船員不足に伴う稼働隻数の減少も影響し、船腹需給は均衡して推移しました。
近海ガス輸送の市況は、主要貨物であるプロピレン、塩化ビニルモノマーの国内生産量がプラントの定期修繕等に伴い低調であったため、軟調に推移しました。また、5,000㎥型高圧ガス船において余剰が生じたため、当社が主力とする3,500㎥型高圧ガス船の市況も軟化しました。
このような事業環境の下、当社グループの内航・近海海運業の概況は以下の通りとなりました。
内航ガス輸送においては、LPGの季節的要因による輸送量減少と石油化学ガス出荷プラントの定期修繕及び設備検査等による出荷量減少の影響を受けましたが、中長期契約に基づく安定的な売上確保と効率配船の実施に努めました。しかしながら、当期に入渠工事が重なった影響により減益となりました。
近海ガス輸送においては東南アジアの荷動きが軟調で市況下落の影響はありましたが、定期用船契約を締結していることで、安定した貸船料収入を維持することができました。
以上の結果、内航・近海海運業の売上高は92億44百万円(前期比1.9%減)、営業利益は5億70百万円(前期比38.5%減)となりました。
③不動産業
当期の不動産市況は以下の通りです。
都心のオフィスビル賃貸市況は、企業の人員拡大等への対応に伴うオフィス拡張、統合移転需要により新築及び築年数の経過していない大規模ビルを中心に入居スペースの減少が進み、既存ビルを含めた全体の空室率は低下したこと等から上昇傾向で推移しました。
貸ホール・貸会議室においては、多数の競合施設がある中、厳しい顧客獲得競争が続きました。
不動産関連事業のフォトスタジオ事業においては、広告需要が引き続き堅調に推移しました。
このような事業環境の下、当社グループの不動産業の概況は以下の通りとなりました。
賃貸ビルにおいては、飯野ビルディングで一部事務所テナントの移転に伴い空室期間が生じましたが、その後の好調なオフィスビル賃貸市況を反映し、新規テナントの誘致に成功しました。一方、この移転時にLED照明の入替工事などを実施し、設備更新費用も増加したこと等から、同ビルは総じて減益となりました。その他の各所有ビルにおいては順調な稼働を維持しました。また、新橋田村町地区市街地再開発事業では、新築建物の鉄骨建方工事に着手しており、現在のところ2021年6月末の竣工を予定しています。
当社グループのイイノホール&カンファレンスセンターにおいては、催事の積極的な誘致と映像設備の更新により高稼働を維持していましたが、当期末において、感染症の影響による催事自粛要請により稼働に著しい影響を受けました。
フォトスタジオ事業を運営する㈱イイノ・メディアプロにおいては、主力のスタジオ部門の稼働が堅調に推移し、安定した収益を確保しました。
また、当社は次世代ビジネスへの取組みの一環として、連結子会社を2020年1月に設立の上、2020年3月に英国ロンドンのオフィスビルを取得しました。なお、同社財務諸表の当社連結財務諸表への反映は、翌第1四半期連結会計期間からとなります。
以上の結果、不動産業の売上高は116億67百万円(前期比9.4%増)、営業利益は27億55百万円(前期比15.8%減)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当期の「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、130億79百万円のプラス(前期は145億49百万円のプラス)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益41億93百万円と減価償却費97億40百万円によるものです。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は148億40百万円のマイナス(前期は212億2百万円のマイナス)となりました。これは主に船舶及び不動産への設備投資を中心とした固定資産の取得による支出177億11百万円が、船舶を中心とした固定資産の売却による収入22億25百万円を上回ったことによるものです。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は62億34百万円のプラス(前期は58億26百万円のプラス)となりました。これは主に長期借入れによる収入330億28百万円が、長期借入金の返済による支出226億90百万円を上回ったことによるものです。
以上の結果、「現金及び現金同等物の当期末残高」は142億8百万円(前期末は98億26百万円)となりました。
尚、現金及び預金のうち約52億円は、決算日を12月31日とする連結子会社2社における固定資産の取得に伴い2020年3月に支出しております。これらの取得資産は翌第1四半期連結会計期間において有形固定資産として計上する予定です。
生産、受注及び販売の実績
この項目は「業績等の概要(1)業績」の記載に含めて記載しております。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積もりに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、期末日における資産・負債の報告金額及び報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与える見積り及び仮定設定を行わなければなりません。当社グループ経営陣は、債権の貸倒、棚卸資産、投資、法人税等、財務活動、退職金、偶発事象や訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判定しにくい資産・負債の簿価及び収益・費用の報告金額についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、連結財務諸表作成において固定資産の減損判定における将来キャッシュ・フローの見積りが、特に重要であると考えております。これらの見積りは減損の認識判定及び減損損失計上金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。減損判定における将来キャッシュ・フローの見積りは、中期経営計画等に基づいており、第三者における評価を活用するとともに、一般に入手可能な市場情報を考慮に入れています。会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響は、「第5 経理の状況 注記事項(追加情報)」に含めて記載しております。
(2) 経営成績の分析
① 損益の分析
当期における売上高は、前期比5.1%増の891億79百万円となりました。なお、各セグメントの売上高の概要は、「業績等の概要(1)業績」に記載の通りであります。
営業利益は前期比16.8%減の39億76百万円となりました。なお、各セグメントの営業利益の概要は、「業績等の概要(1)業績」に記載の通りであります。
経常利益は、前期比26.5%減の34億55百万円となりました。これは主に受取配当金や為替差益の減少といった営業外収益の減少によるものです。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比19.1%減の37億88百万円となりました。これは主に老齢船の処分に伴い計上した固定資産売却益によるものです。
② 財政状態の分析
当期末の総資産残高は前期末に比べ86億52百万円増加し、2,310億88百万円となりました。これは主に船舶の竣工による増加や現金及び預金の増加によるものです。
負債残高は前期末に比べ83億1百万円増加し、1,576億60百万円となりました。これは主に借入金の増加によるものです。
純資産残高は前期末に比べ3億51百万円増加し、734億28百万円となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益計上に伴う利益剰余金の増加によるものです。
以上の結果、当期末の連結自己資本比率は31.7%(前期末は32.8%)となりました。
(3) 流動性及び資金の源泉
① 資金需要
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは当社グループの外航海運業と内航・近海海運業により構成される海運業に関わる運航費、船費、借船料と不動産業に関わる管理費、営繕費等の不動産業費用、各事業についての一般管理費等があります。また、設備資金需要としては船舶投資と不動産投資に加え、情報処理の為の無形固定資産投資等があります。
② 財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入により資金調達を行っており、運転資金及び設備資金につきましては、国内、海外子会社のものを含め当社において一元管理しております。
当社グループの主要な事業資産である船舶の調達に当たっては、船主からの中長期用船や裸用船のバランスも考慮に入れ、当社グループ全体の有利子負債の削減を図っております。円建て、米ドル建ての借入金を含む当期末の有利子負債残高(リース債務を除く)は1,263億27百万円となりました。
また、資金調達コストの低減に努める一方、過度に金利変動リスクに晒されないよう、設備資金の借入の大部分について金利スワップなどの手段を活用しております。
当社グループは国内2社の格付機関から格付を取得しており、本報告書提出時点において、日本格付研究所:
「BBB+」、格付投資情報センター:「BBB」となっております。また、金融機関には充分な借入枠を有しており、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転、設備資金の調達は今後も可能であると考えております。また、国内金融機関において複数年を含む合計180億円並びにUS$6千万のコミットメントラインを設定しており、流動性の補完にも対応が可能となっております。
③ キャッシュ・フロー
「業績等の概要(2)キャッシュ・フローの状況」をご覧下さい。
(1) 業績
当連結会計年度(以下、「当期」という)の世界経済は、米国の通商政策や各国経済の低迷により総じて減速基調で推移し、当期末にかけて新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、「感染症」という)の世界的な拡大で減速傾向がさらに強まりました。米国では、中国との通商問題の緩和や個人消費の増加等から景気は緩やかな回復基調にありましたが、感染症の影響により下振れのリスクが高まりました。欧州では、独国の製造業の落ち込みや英国のEU離脱問題を巡る混乱に加えて、感染症の影響から景気は急速に減速しました。中国では、感染症の影響で経済活動が大幅に縮小し、景気は顕著に減速しました。
わが国経済は、雇用・所得の環境改善が続いていましたが、当期末にかけて感染症の影響により大幅に落ち込みを見せ、先行き不透明な状況となりました。
当社グループの海運業を取り巻く市況は、オイルタンカーや大型ガスキャリアでは堅調に推移しました。しかしながら、ドライバルクキャリアでは感染症の影響もあり、当期末にかけて不透明感が強まりました。このような状況の下、当社グループでは、既存契約の有利更改への取り組みをはじめとして、効率配船及び運航採算の向上を図りました。不動産業においては、一部事務所テナントの移転に伴い空室が生じていた飯野ビルディングで、新規テナントの入居が開始される等、収益は改善に向かいました。
以上の結果、売上高は891億79百万円(前期比5.1%増)となりました。外航海運業においては増益となったものの、内航・近海海運業及び不動産業においては減益となったため、営業利益は39億76百万円(前期比16.8%減)、経常利益は34億55百万円(前期比26.5%減)となりました。また、売船市場の動向を見極め老齢船の処分を行い、固定資産売却益(特別利益)を計上したこと等から親会社株主に帰属する当期純利益は37億88百万円(前期比19.1%減)となりました。
各セグメント別の状況は次の通りです。
①外航海運業
当期の外航海運市況は以下の通りです。
オイルタンカー市況は、当期初においては製油所の定期修繕に伴う需要の落ち込み等の影響で低迷していましたが、夏場以降、サウジアラビア石油施設への攻撃による被災及び米国によるイラン産原油の輸送に従事した中国船社への制裁等により高騰しました。冬場にかけても、需要期入りやSOx規制対応に伴う船腹供給の引き締まり等から市況は高い水準で推移しました。当期末には感染症の影響で原油需要低下により一時市況は落ち込んだものの、OPECプラスの協調減産体制の決裂、サウジアラビアの増産への方針変更により原油価格が急落した影響で洋上備蓄需要が高まったこと等から市況は再び高騰しました。
ケミカルタンカー市況は、中東域での地政学的リスクや世界経済の減速の影響等により低調に推移していましたが、秋口よりオイルタンカー市況の上昇やSOx規制対応のための燃料油の切り替えに伴う燃料コストの上昇に引きずられる形で市況も上昇した影響等により回復基調となりました。しかしながら、当期末には感染症の影響等により荷動きが減少し、市況は若干弱含みました。
大型ガスキャリアのうち、LPGキャリア市況は、夏場以降、米国からアジア向け裁定取引の活発化や、季節的要因による滞船等により船腹需給が引き締まったこと等から上昇しました。当期末にかけ輸送需要の減少により市況が弱含む場面はあったものの、燃料費下落の影響もあり、市況は概ね好調に推移しました。LNGキャリア市況は、一部軟調な局面があったものの、夏場および冬場のエネルギー需要期に例年通り輸送需要が見られ、概ね堅調に推移しました。
ドライバルクキャリア市況は、貿易摩擦やブラジルの鉱山ダム事故等の影響が前年から継続し、軟調な幕開けとなりました。夏場から秋口にかけては、南米出し鉄鉱石や穀物の荷動きが増加し、一旦市況は好転しましたが、SOx規制発効を前に冬場以降から再び下落しました。更にはアジアでの旧正月による減速に加え、感染症の影響による経済活動の縮小もあり、市況が低迷する中で当期末を迎えました。
なお、当期における当社グループの平均為替レートは¥109.13/US$(前期は¥110.67/US$)、船舶燃料油価格についてはC重油380cStの平均価格はUS$412/MT(前期はUS$430/MT)、適合燃料油の平均価格はUS$598/MT(前期は使用せず)となりました。
このような事業環境の下、当社グループの外航海運業の概況は以下の通りとなりました。
オイルタンカーにおいては、支配船腹を引き続き長期契約に投入しておりましたが、第1四半期中に入渠船があった影響等から損益は悪化しました。また、当期末には当社初のSOxスクラバーを搭載したVLCCが竣工しました。
ケミカルタンカーにおいては、当社の基幹航路である中東域から欧州向け及びアジア向けの数量輸送契約に加え、北アフリカからの燐酸液やスポット貨物を積極的に取り込むことにより稼働の維持に努めました。当社と米国オペレーターとの合弁事業においても、既存船から燃費の良い船への代替を進め、数量輸送契約やスポット貨物の集荷により効率的な配船に努めました。また、サステナビリティへの取り組みとして、従来の重油のみならず、メタノールを推進燃料とすることが可能な当社初の2元燃料主機関搭載船が竣工し、長期契約に投入されました。
大型ガスキャリアにおいては、LPGキャリア及びLNGキャリア共に既存の中長期契約へ継続投入することで安定収益を確保したことに加え、LPGキャリアの一部が好市況を享受しました。
ドライバルクキャリアにおいては、石炭専用船とチップ専用船については順調に稼働しました。ポストパナマックス船については、市況上昇のタイミングを捉えた配船や数量輸送契約に投入し採算改善に努め、ハンディ船については、短期貸船により市況エクスポージャーの低減も図りつつ、契約貨物を中心に効率配船に努めました。その結果、ポストパナマックス船及びハンディ船では運航採算は市況と比較し堅調に推移しましたが、市況悪化の影響を完全に避けることはできませんでした。
以上の結果、外航海運業の売上高は683億91百万円(前期比5.4%増)、営業利益は6億51百万円(前期比11.8%増)となりました。
②内航・近海海運業
当期の内航・近海海運市況は以下の通りです。
内航ガス輸送の市況は、夏場のLPG不需要期及び暖冬の影響で出荷は低調に推移したものの、製油所間転送需要は底堅く、堅調に推移しました。石油化学ガスもプラントの定期修繕及び設備検査等に伴い出荷は低調に推移しましたが、業界全体として修繕期間中の洋上ストレージ需要及び船員不足に伴う稼働隻数の減少も影響し、船腹需給は均衡して推移しました。
近海ガス輸送の市況は、主要貨物であるプロピレン、塩化ビニルモノマーの国内生産量がプラントの定期修繕等に伴い低調であったため、軟調に推移しました。また、5,000㎥型高圧ガス船において余剰が生じたため、当社が主力とする3,500㎥型高圧ガス船の市況も軟化しました。
このような事業環境の下、当社グループの内航・近海海運業の概況は以下の通りとなりました。
内航ガス輸送においては、LPGの季節的要因による輸送量減少と石油化学ガス出荷プラントの定期修繕及び設備検査等による出荷量減少の影響を受けましたが、中長期契約に基づく安定的な売上確保と効率配船の実施に努めました。しかしながら、当期に入渠工事が重なった影響により減益となりました。
近海ガス輸送においては東南アジアの荷動きが軟調で市況下落の影響はありましたが、定期用船契約を締結していることで、安定した貸船料収入を維持することができました。
以上の結果、内航・近海海運業の売上高は92億44百万円(前期比1.9%減)、営業利益は5億70百万円(前期比38.5%減)となりました。
③不動産業
当期の不動産市況は以下の通りです。
都心のオフィスビル賃貸市況は、企業の人員拡大等への対応に伴うオフィス拡張、統合移転需要により新築及び築年数の経過していない大規模ビルを中心に入居スペースの減少が進み、既存ビルを含めた全体の空室率は低下したこと等から上昇傾向で推移しました。
貸ホール・貸会議室においては、多数の競合施設がある中、厳しい顧客獲得競争が続きました。
不動産関連事業のフォトスタジオ事業においては、広告需要が引き続き堅調に推移しました。
このような事業環境の下、当社グループの不動産業の概況は以下の通りとなりました。
賃貸ビルにおいては、飯野ビルディングで一部事務所テナントの移転に伴い空室期間が生じましたが、その後の好調なオフィスビル賃貸市況を反映し、新規テナントの誘致に成功しました。一方、この移転時にLED照明の入替工事などを実施し、設備更新費用も増加したこと等から、同ビルは総じて減益となりました。その他の各所有ビルにおいては順調な稼働を維持しました。また、新橋田村町地区市街地再開発事業では、新築建物の鉄骨建方工事に着手しており、現在のところ2021年6月末の竣工を予定しています。
当社グループのイイノホール&カンファレンスセンターにおいては、催事の積極的な誘致と映像設備の更新により高稼働を維持していましたが、当期末において、感染症の影響による催事自粛要請により稼働に著しい影響を受けました。
フォトスタジオ事業を運営する㈱イイノ・メディアプロにおいては、主力のスタジオ部門の稼働が堅調に推移し、安定した収益を確保しました。
また、当社は次世代ビジネスへの取組みの一環として、連結子会社を2020年1月に設立の上、2020年3月に英国ロンドンのオフィスビルを取得しました。なお、同社財務諸表の当社連結財務諸表への反映は、翌第1四半期連結会計期間からとなります。
以上の結果、不動産業の売上高は116億67百万円(前期比9.4%増)、営業利益は27億55百万円(前期比15.8%減)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当期の「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、130億79百万円のプラス(前期は145億49百万円のプラス)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益41億93百万円と減価償却費97億40百万円によるものです。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は148億40百万円のマイナス(前期は212億2百万円のマイナス)となりました。これは主に船舶及び不動産への設備投資を中心とした固定資産の取得による支出177億11百万円が、船舶を中心とした固定資産の売却による収入22億25百万円を上回ったことによるものです。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は62億34百万円のプラス(前期は58億26百万円のプラス)となりました。これは主に長期借入れによる収入330億28百万円が、長期借入金の返済による支出226億90百万円を上回ったことによるものです。
以上の結果、「現金及び現金同等物の当期末残高」は142億8百万円(前期末は98億26百万円)となりました。
尚、現金及び預金のうち約52億円は、決算日を12月31日とする連結子会社2社における固定資産の取得に伴い2020年3月に支出しております。これらの取得資産は翌第1四半期連結会計期間において有形固定資産として計上する予定です。
生産、受注及び販売の実績
この項目は「業績等の概要(1)業績」の記載に含めて記載しております。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積もりに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、期末日における資産・負債の報告金額及び報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与える見積り及び仮定設定を行わなければなりません。当社グループ経営陣は、債権の貸倒、棚卸資産、投資、法人税等、財務活動、退職金、偶発事象や訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判定しにくい資産・負債の簿価及び収益・費用の報告金額についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、連結財務諸表作成において固定資産の減損判定における将来キャッシュ・フローの見積りが、特に重要であると考えております。これらの見積りは減損の認識判定及び減損損失計上金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。減損判定における将来キャッシュ・フローの見積りは、中期経営計画等に基づいており、第三者における評価を活用するとともに、一般に入手可能な市場情報を考慮に入れています。会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響は、「第5 経理の状況 注記事項(追加情報)」に含めて記載しております。
(2) 経営成績の分析
① 損益の分析
当期における売上高は、前期比5.1%増の891億79百万円となりました。なお、各セグメントの売上高の概要は、「業績等の概要(1)業績」に記載の通りであります。
営業利益は前期比16.8%減の39億76百万円となりました。なお、各セグメントの営業利益の概要は、「業績等の概要(1)業績」に記載の通りであります。
経常利益は、前期比26.5%減の34億55百万円となりました。これは主に受取配当金や為替差益の減少といった営業外収益の減少によるものです。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比19.1%減の37億88百万円となりました。これは主に老齢船の処分に伴い計上した固定資産売却益によるものです。
② 財政状態の分析
当期末の総資産残高は前期末に比べ86億52百万円増加し、2,310億88百万円となりました。これは主に船舶の竣工による増加や現金及び預金の増加によるものです。
負債残高は前期末に比べ83億1百万円増加し、1,576億60百万円となりました。これは主に借入金の増加によるものです。
純資産残高は前期末に比べ3億51百万円増加し、734億28百万円となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益計上に伴う利益剰余金の増加によるものです。
以上の結果、当期末の連結自己資本比率は31.7%(前期末は32.8%)となりました。
(3) 流動性及び資金の源泉
① 資金需要
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは当社グループの外航海運業と内航・近海海運業により構成される海運業に関わる運航費、船費、借船料と不動産業に関わる管理費、営繕費等の不動産業費用、各事業についての一般管理費等があります。また、設備資金需要としては船舶投資と不動産投資に加え、情報処理の為の無形固定資産投資等があります。
② 財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入により資金調達を行っており、運転資金及び設備資金につきましては、国内、海外子会社のものを含め当社において一元管理しております。
当社グループの主要な事業資産である船舶の調達に当たっては、船主からの中長期用船や裸用船のバランスも考慮に入れ、当社グループ全体の有利子負債の削減を図っております。円建て、米ドル建ての借入金を含む当期末の有利子負債残高(リース債務を除く)は1,263億27百万円となりました。
また、資金調達コストの低減に努める一方、過度に金利変動リスクに晒されないよう、設備資金の借入の大部分について金利スワップなどの手段を活用しております。
当社グループは国内2社の格付機関から格付を取得しており、本報告書提出時点において、日本格付研究所:
「BBB+」、格付投資情報センター:「BBB」となっております。また、金融機関には充分な借入枠を有しており、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転、設備資金の調達は今後も可能であると考えております。また、国内金融機関において複数年を含む合計180億円並びにUS$6千万のコミットメントラインを設定しており、流動性の補完にも対応が可能となっております。
③ キャッシュ・フロー
「業績等の概要(2)キャッシュ・フローの状況」をご覧下さい。