有価証券報告書-第76期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
当社グループは、リスクマネジメントの国際規格であるISO31000及びCOSO-ERMを参照し、リスクマネジメントにかかる枠組みを構築しています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。
1.リスクマネジメント方針
当社グループは、リスクマネジメントを損失の回避・低減にとどまるものではなく、経営方針、経営戦略及び経営計画と一体となって、事業継続性の確保と企業価値の維持向上を図るための経営基盤として位置付けており、取締役会で決定されたトータルリスクマネジメント方針(TRM方針)の下、トータルリスクマネジメント規程に則って、全社的リスクマネジメントを推進しています。
2.リスクマネジメント体制
当社グループは、取締役会の監督の下、経営戦略会議、リスクオーナー、リスク主管部署、ANAホールディングス㈱の組織及びグループ会社が密接に連携し、戦略リスク及び事業リスクを統合的に管理するトータルリスクマネジメント体制を整備しています。
取締役会が、経営によるトータルリスクマネジメント(TRM)の執行を監督する役割・責任を担っており、TRM方針の策定、最重要リスクの選定、リスクオーナー(原則ANAホールディングス㈱の執行役員)及びリスク主管部署の任命、トータルリスクマネジメントの有効性の評価及び改善の指示を行います。
リスクの分析・評価においては、リスク主管部署が重要な役割を担っています。リスク主管部署は、担当するリスクについて、ANAホールディングス㈱の各組織及び各グループ会社の状況も含めて管理(リスクの分析・評価、対応策の構築、管理指標の設定、モニタリング等)を行い、最重要リスクの状況はリスクオーナーに、一般リスクの状況はリスクオーナー会議に報告します。リスクオーナー会議では各リスクの状況が報告されるとともに、他のリスクとの相互影響等についても確認・議論を行います。リスクオーナー会議での議論の内容や検討結果は、ANAホールディングス㈱のリスク担当役員が取りまとめの上で経営戦略会議、取締役会に報告されます。なお、これらの報告及び議論の結果は、主要リスクに対する対応方針の見直しに加え、経営資源の配分、重要施策の優先順位付け及び事業運営上の意思決定に活用しています。
3.リスクマネジメントプロセス
当社グループは、その経営理念・方針を踏まえて策定したTRM方針及びTRM推進計画に基づいてリスクマネジメントを行っています。当社グループのリスクは、後述の通り、戦略リスクと事業リスクに大別され、リスクマネジメントのプロセスも各リスクによって以下の通り異なります。
戦略リスクのマネジメントプロセスについては、取締役会及び経営戦略会議が、中期及び年度経営計画の策定時に、事業環境等を踏まえた戦略リスクの特定、リスクシナリオを踏まえた影響分析を行うとともに、対応策を検討し、KPI(Key Performance Indicators)とKRI(Key Risk Indicators)の整合性を確保した上でモニタリングを行います。
事業リスクのマネジメントプロセスについては、当社グループの主要なリスクを網羅して一覧化したリスクカタログ上の各事業リスクについて、担当のリスク主管部署が定期的にグループ会社の状況も含めて、管理対象リスク項目の特定(洗い替え)、その経営計画・目標への影響度、発生可能性及び既存の対応策に基づいたリスク分析・評価を行うとともに、リスクの発生メカニズム(リスクシナリオ)を踏まえた対応策を講じ、当社グループとしてのリスク許容限界に基づくKRIを管理指標として設定した上でモニタリングを行います。
事業リスクの各リスクの評価は、影響度、発生可能性に基づいて、まず固有リスクの評価を行い、その後リスク対応策を加味して残存リスクの評価を行います。各リスクの評価は定量評価で数値化されるため、異なる性質のリスクを一定の基準に基づいて優先順位付けすることが可能となります。ただし、定量評価では捉え切れない要因もあると考えられるため、定量評価に加えて、定性的な要因による調整を必要に応じて行います。
このように戦略リスク及び事業リスクのマネジメントプロセスを回す中で、リスクカタログ、リスクマネジメントにおける枠組みや手法、リスクマネジメントのプロセス自体の見直しも行い、当社グループのリスクマネジメントの成熟度の向上を図っています。

4.ANAグループのリスク
当社グループが当期末時点で投資家の判断に重要な影響を及ぼし得ると考えるリスクは以下の通りです。なお、以下の内容には将来に関する予測も含まれており、現実と合致しない可能性があるほか、記載されていない他のリスクが当社グループに影響を及ぼす可能性もあります。
当社グループは、経営目標に影響を及ぼす主要なリスクを網羅的に特定し、リスクカタログとして一覧化しています。リスクはその特性から戦略リスクと事業リスクに大別されます。戦略リスクは経営戦略等の経営上の重要な意思決定に伴うリスクで、取締役会及び経営戦略会議において経営計画の策定時に選定されます。事業リスクは日常業務の遂行や事業基盤の維持等に伴うリスクで、経営陣のリスク見解も踏まえ、当該リスクの影響度や発生可能性に基づき、リスク対応策も加味して、定期的に評価を行います。評価の結果、リスクが大きく、経営が重点的に監督・モニタリングすべきものを、戦略リスクとともに最重要リスクとして取締役会で選定します。最重要リスク以外のリスクは一般リスクとしてANAホールディングス㈱及び各グループ会社がリスク主管部署の下で管理を行います。
5.最重要リスク
(1)戦略リスク
政治社会情勢の変化
<要旨>当社グループは、更なる成長機会を求めて国際線事業を拡大してきましたが、ウクライナや中東地域情勢、米中対立、第三極勢力の台頭など、国際情勢は不透明さを増しており、将来に向けて不確実性が存在します。
国際航空輸送は、これまで経済活動のグローバル化を背景に拡大してきましたが、その流れが停滞・逆行、あるいは戦争・紛争等によって平和な環境が毀損された場合には、業務渡航需要の低迷や観光旅行需要の減少等を通じて、当社グループの収入に影響を及ぼす可能性があります。
なお、国際情勢の不安定化は、国際線事業のみならず、インバウンド(訪日外国人観光客)需要の減少等を通じて国内線事業にも影響を及ぼし得るほか、航空輸送コストの増加や航空機が戦争・紛争地域上空の飛行を取り止めて迂回せざるを得ないケース等、その影響が広範に及ぶ可能性があります。
<変化・展望>国際情勢及び経済活動グローバル化の行方については不確実性が増しており、リスクとして管理・対処する必要性が高まっていると考えています。
<対応>当社グループは、国際線事業の展開に際し、航空ネットワーク構築等において、短期的な収益性のみで判断せず、国際情勢リスクにも配慮した展開を進めており、今後も当対応を継続します。また、海外における顧客獲得に際しても、特定国・地域に過度に偏ることがないよう、バランスを考慮して展開しています。
国際情勢については当社グループの各拠点において情報収集に努めており、国際情勢の悪化等によって緊急対応の必要が生じた場合には、航空便の運航計画や運航ルートを柔軟かつ迅速に変更させることで、その影響低減を図っています。
(2)事業リスク
①航空安全:航空法上の事故/重大インシデントに至る可能性が高い事象の発生
<要旨>当社グループは、安全は経営の基盤であり、社会への責務であると位置付けています。安全が毀損・阻害されるような事象が発生した場合には、当社グループに大きな影響を与えます。特に、人的損害が生じた場合には、当社グループへの社会的な信用・信頼を根本から揺るがす可能性があります。
航空事故等によって、人的・物的損害が発生した場合には、その損害賠償責任が生ずる可能性がありますが、安全が毀損・阻害された場合の影響はそれに留まらず、顧客が航空機利用を手控えることで当社グループの収入が減少する、あるいは航空機利用に際して当社グループ以外の便を選択するといった形で、その影響は広範かつ長期に及ぶ可能性があります。
なお、安全の確保に向けて、航空機に製造上の不具合等が発生・発覚した場合には、予防的に当該航空機の運航を中止することがありますが、その場合には、航空機不足に起因して欠航や減便等が発生し、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
<変化・展望>当リスクは、引き続き、当社グループにとって最も重要なリスクであると考えています。
<対応>当社グループは、安全の推進や安全の品質監査を行う専門組織を設置すると共に、安全を堅持するための持続的な「仕組み」を構築し、再発防止型・未然防止型・未来予測型の安全リスクマネジメント、良好事例や当社グループ外事例の活用、SPI(Safety Performance Indicator)による安全の「見える化」と対策の検討・実施など、更なる安全性の向上を追求しています。
同時に、運航乗務員や客室乗務員をはじめ、航空機運航に直接従事する社員に対して初期及び定期的な教育・訓練の実施や、当社グループ社員全員を対象とした安全に関する恒常的な啓発活動も行い、研修施設である「ANAグループ安全教育センター」の活用等を通じて積極的な安全・保安文化の醸成・強化に努めています。また、航空機メーカー等との間でも密接な情報交換や意見交換を行いながら、安全性をはじめとする高品質なオペレーションの実現に取り組んでいます。
②環境
<要旨>航空業界は脱炭素化が困難な「hard to abate」な産業ですが、航空機の運航で発生するCO2の削減は当社グループがマテリアリティとして掲げる重要な責務です。現在、中核となるSAFは依然として高価格かつ供給不足の状態にあり、解消の目処は立っていません。
SAFが今後安定確保できない場合や高額に留まる場合、排出権購入の増加による費用増が生じるほか、コストの運賃転嫁によって鉄道などの他の交通手段に対する競争力が低下するリスクがあります。また、気候変動対策の遅れによる投資家や顧客からの評価低下、炭素税などの環境規制強化によるコスト増大のリスクにも注視しています。
<変化・展望>脱炭素化への対応が国際的に喫緊の課題である中、外部環境の変化や規制の複雑化に対し、より高度で迅速な対応が求められています。当社グループは、市況変動への耐性を高めつつ、環境対策を成長の礎と捉え、当社グループの持続的成長を前向きに追求します。今般、当社グループの「2026-2028年度中期経営戦略」の策定に合わせ、2030年度までにCO2排出量を2019年度比で実質10%以上削減するという中期目標、及び2050年度ネットゼロへ向けたトランジション・シナリオを更新しました。今後も外部環境の変化に応じてリソース配分を機動的に最適化する「ローリング型」の価値創造ロードマップに則り、柔軟かつ着実に戦略を進めていきます。
<対応>目標達成に向け、経済合理性との両立を追求しながら4つの戦略的アプローチを組み合わせて脱炭素化に取り組んでいきます。現状のSAFに関する課題を踏まえ、まずは「運航上の改善・航空機等の技術革新」による直接的なCO2削減を引き続き最優先で推進します。並行して、「SAFの安定供給に向けた官民連携やサプライチェーン構築」「排出権取引制度の適切な活用」「ネガティブエミッション技術の活用」を多角的に進めます。更に、国内外における規制や関連する枠組みづくりへの積極的な提言や、政府支援の獲得、環境コストを適切に運賃等へ反映する仕組みの構築等、ステークホルダーと連携した主体的なリスク管理を強化していきます。なお、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言に沿った情報については、当社グループホームページ
(https://www.ana.co.jp/group/csr/environment/goal/)にて開示しています。
③治安・犯罪:戦争・紛争・テロ・大規模暴動による人的・財産的・機能的被害
<要旨>当社グループは、更なる成長機会を求めて国際線事業を拡大してきており、海外主要都市に定期便を運航しているほか、各就航地を中心に事業所を設け駐在員や現地雇用社員を配置しています。
国際情勢の悪化により、現地に滞在する社員や運航・客室乗務員及び出張者等が一般犯罪のみならず戦争・紛争・内乱・テロ・大規模暴動に巻き込まれるリスクは相対的に高まっており、経済安全保障面におけるサプライチェーンの影響等も含め会社の人的・財産的・機能的被害が生じる可能性があります。
<変化・展望>国際情勢は絶えず変化しており、政治的・経済的不確実性が増しているなか、リスクとして管理・対処する必要性が一層高まっていると考えています。
<対応>当社グループは、平時からの対応として社内連絡体制やマニュアル類の整備、各種訓練やセミナーの実施を行っているほか、リスク事象発生時には速やかな情報収集・共有や安否確認、注意喚起を行うなど、被害の回避や低減に向けた対策を講じています。
④感染症パンデミック
<要旨>当社グループは、新型コロナウイルス感染症によって甚大な影響を受けましたが、将来、大規模な感染症が再び発生した場合には、人的移動の制限・禁止等による需要の激減や更なる感染拡大による役職員の欠勤により、旅客及び貨物の運送を適切に実施することができない等、当社グループに再度大きな影響を及ぼす可能性があります。
<変化・展望>一般的に気候変動(地球温暖化)は感染症リスクを高めると言われており、当リスクへの対処は重要性が高まっていると考えています。
<対応>当社グループは、航空事業を継続できるように、平時から役職員向けのマスク等の備蓄や旅客機に加えて貨物専用機も保有することで、人的移動が減少した状況下でも物的移動に対しては積極的に対応できる体制を構築すると共に、人的移動についても限定された航空需要に対して、最も適切に対応できるようにしています。
⑤システム障害
<要旨>当社グループは、航空輸送サービスを、より高品質で、より効率的に提供すべく、事業運営のシステム化を積極的に推進しており、これらのシステムに障害が発生した場合には、その理由が社内要因(自社要因)、あるいはサイバー攻撃等の社外要因であるかの如何を問わず、事業に与える影響が高まっています。航空機運航関連システムに障害が発生した場合には、航空機の運航が困難になる可能性があるほか、予約・決済・搭乗管理といった関連システムで障害が発生した場合にも、予約の受付や決済、空港における搭乗管理などが不可能となり、実質的に航空輸送サービスを提供することが困難となる可能性があります。
<変化・展望>システムのクラウド化の進展、事業関連のサプライチェーンの接続や連関性増加、あるいは地政学的視点、更には攻撃側のAI活用などサイバー攻撃が増加・巧妙化していることを踏まえれば、システム障害・サイバー攻撃に関するリスクは高まっていると考えています。また、当リスクを予防・低減させることに関する社会的要請も高まっていると考えています。
<対応>当社グループではシステム障害に迅速に対応するために、24時間365日監視を行っております。
また、2024年から発足した当社グループCSIRT(Computer Security Incident Response Team)の構築により、システム障害かサイバーセキュリティ攻撃か不明である時点から対応することを通じて、包括的・多面的なシステム運用体制を構築するとともに、サイバー事案や海外ステークホルダーに対しても非常に速い対応が可能となりました。また、システム全体のアーキテクチャを監督する機能の設置や社員教育の強化やシステム障害発生対応訓練の実施など、ソフト面での対応強化も行っています。
⑥情報セキュリティ
<要旨>当社グループは、顧客組織である「ANAマイレージクラブ」会員の個人情報をはじめ、多くの情報を保持していますが、これらの情報が不正に流出した場合には、損害賠償請求を受けたり、各国政府等から制裁金や課徴金の支払いを命じられたり、あるいは顧客や社会からの信用・信頼が失墜して競争力が低下したりする可能性があります。
<変化・展望>昨今、国内でもサイバー攻撃による情報漏洩事象が頻発しており、情報全般の取り扱いに関する社会的な意識・規範の高まりや、各国政府等によって定められる関連法規の強化などを踏まえれば、当リスクに適切に対処する必要性は一層高まっていると考えています。
<対応>各国法令等に沿って適切な情報管理を行うと共に、コンピュータウィルス対策やメールのセキュリティチェック、不正操作の監視、情報にアクセスできる社員の制限、認証強化、全社員を対象とした情報管理に関する教育・啓発活動等を行っています。また、グループ全体のシステムを対象に継続的な点検を行い、システムの老朽化、脆弱性を早期に検出して対応する等、サイバー攻撃や情報漏洩を未然に防ぐ対応を実施しています。
⑦人権
<要旨>当社グループ内のみならず、委託先や取引先、調達先等を含めて、当社グループ事業に関わる事業領域全体で人権侵害にあたる行為が発生した場合には、当社グループが社会的非難を浴びたり、不買運動の対象となったりする可能性があります。また、海外の一部の国・地域ではサプライチェーン上の人権保護に関わる法制化も進んでいます。委託先等のグループ外も含めて人権侵害にあたる行為が発生した場合には、こうした国・地域等において、当社グループが罰則を課される可能性もあります。更に、業務委託先等を含むサプライヤーで問題が発生し、操業停止等に至った際には、当社グループの事業運営において制約や制限を課される可能性があります。
<変化・展望>日本国内における労働力人口減少への対応、あるいは海外事業の拡大を進める中で当社グループの事業に関わる人的リソースは多様化しており、当リスクに対しては、より多面的に対処する必要性があると考えています。
<対応>当社グループは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」において詳述されている手順に沿い、「ANAグループ人権方針」のもと、人権デューディリジェンスの仕組みを構築しています。サプライチェーン上の人権リスク評価を実施し、必要に応じて、社外関係先や労働者本人に対しても対話等を通じて直接確認・調査を行う等、当リスクの適切な管理に努めています。
更に労働者が直接声を上げる仕組みも整備し、グリーバンスメカニズムによる人権尊重も推進しています。また、社内においても人権に関する社員教育や経営レベルの会議体における定期的なモニター等も実施しています。
⑧自然災害
<要旨>航空輸送は、点と点を空路で結ぶという特性上、運輸・運送システムの中では相対的に自然災害への耐性が強く、一部空港が機能不全に陥った場合でも近隣空港を活用した代替輸送が可能といった利点がありますが、当社グループの事業基盤は首都圏に集中しているため、羽田空港や成田空港が自然災害によって大きな影響を受けた場合には、当社グループの事業運営に関して制約や障害が発生する可能性があります。
<変化・展望>気候変動による風水害の激甚化・頻発化や、甚大な被害発生が想定される大規模災害の発生が懸念されており、当リスクへの対処は重要性が一層高まっていると考えています。
<対応>首都直下地震をはじめ、大規模自然災害が発生した場合でも、早急に運航機能を回復させて公共交通機関としての使命を果たせるよう、オールハザード型の事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)を策定し、事業継続マネジメント(Business Continuity Management:BCM)を推進しています。また、事業運営に不可欠な各種中核機能についてはバックアップ系統を整備し、衛星電話や備蓄品、従業員安否確認システム等を用意すると共に、関係者(空港会社等)とも連携しながら、定期的な防災訓練を実施する等の対応をしています。
⑨人財管理:人員不足・スキル低下
<要旨>当社グループは、日本国内を最大の事業基盤としていますが、今後、日本の人口減少が進むにつれて、当社グループの事業運営に必要な労働力の確保という観点で影響を及ぼす可能性があり、その場合には、人件費単価が増加したり、労働力不足、並びに従業員のスキル・知識不足(乗員・整備・空港(総代理店・委託先含む))等に起因して、事業運営に制約が生じたりする可能性があります。
<変化・展望>当リスクは、今後、顕在化する可能性があると考えています。
<対応>経営戦略の立案等において、人口減少や労働市場等の各種社会的変化の想定を加味・反映させるとともに、労働力の確保、スキル維持向上に関しては、グループ全体での離職率や採用充足率の状況を確認し、適切かつ迅速な対応(エンゲージメント向上施策の実施、通年採用を含めた採用活動強化、空港間の相互応援等)に繋げていきます。
⑩コンプライアンス
1)個人情報保護法
<要旨>当社グループは、顧客組織である「ANAマイレージクラブ」会員の情報など、多くの個人情報を保持していますが、これらの個人情報が必要な安全管理措置が講じられていなかったために流出した、必要な同意を取得せずに第三者に提供された等、違法に取り扱われた場合には、各国政府等から制裁金や課徴金の支払いを命じられたり、損害賠償請求を受けたり、あるいは顧客や社会からの信用・信頼が失墜して競争力が低下したりする可能性があります。
<変化・展望>個人情報全般の取り扱いに関する社会的な意識・規範の高まりや、各国政府等によって定められる関連法規の強化などを踏まえれば、当リスクに適切に対処する必要性は一層高まっていると考えています。
<対応>個人情報の取り扱いにおいては、当社グループにおける「プライバシーガバナンスの基本方針と行動原則」や、当社グループ各社の「プライバシーポリシー」に基づき、日本の個人情報保護法等の各国法令に準拠する形で、細心の注意を払い、保護・管理を徹底しております。また、顧客の個人データを利活用するにあたり、倫理的適切性の観点も踏まえ、プライバシー影響評価、社員への教育・啓発、点検・監査等を実施し、プライバシーを保護する体制や仕組みを継続的に強化しております。
2)競争法
<要旨>当社グループでは、競合事業者と便、路線、運賃、料金、提供座席数などを調整した場合、各国の競争法に違反することが考えられます。これらに抵触した場合、巨額の制裁金(課徴金)が課されるだけでなく、当局による是正命令や事業認可の制限、更には大規模な利用者集団からの損害賠償請求やブランドイメージの著しい失墜などを招き、場合によっては経営基盤を揺るがす事態に発展することが考えられます。
<変化・展望>航空輸送事業の運賃や料金の変動については各国規制当局に注目されています。特にデジタル化によるアルゴリズムを介した調整が「デジタル・カルテル」として注目される一方、脱炭素化(SAF導入等)に向けた企業間連携が、地球環境保護と競争維持の観点から新たな議論を呼んでいます。今後は、航空事業者間の提携が一層進み、従来以上に広範かつ複雑な事業運営が求められる見通しです。
<対応>当社グループにおけるコンプライアンスの徹底においては、グループの競争法コンプライアンスマニュアルに沿って事業を運営しています。具体的には、同業他社との接触に関する承認ルールの運用や、役職員への競争法にかかわる教育を継続的に行っています。また、アライアンスや共同事業においては、事前に必要な独占禁止法適用除外の認可を取得し、認められた範囲にて適切にパートナーとのビジネス活動を遂行していきます。
3)各種業法
<要旨>当社グループは、航空法をはじめとする各事業分野の国内外の関連法令(以下「業法」)を遵守する必要があります。事業活動において万一、内部管理上の問題や外部要因により、これらの業法を遵守できない場合、規制当局から業務改善命令、業務停止命令等の行政処分を受ける可能性があります。このような事態が発生した場合には、当社グループの社会的信用の失墜、事業活動の制限等により、経営及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
<変化・展望>近年、社会情勢の変化や技術革新に伴い、業法の内容は国内外共に複雑化・厳格化する傾向にあり、当リスクに適切に対処する重要性は高まっています。
<対応>当社グループは、業法遵守を経営の最優先事項の一つと位置づけ、リスクの適切な管理に努めています。具体的な対応として、関連法令の制定・改正情報を収集・分析し、社内規程や業務手順書へ迅速に反映する体制を構築しています。また、法令遵守状況を定期的にチェックするほか、役職員に対し、該当する業法に関する継続的な教育・啓発活動等を実施し、グループ全体の法令遵守体制とガバナンスの強化に取り組んでいます。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。
1.リスクマネジメント方針
当社グループは、リスクマネジメントを損失の回避・低減にとどまるものではなく、経営方針、経営戦略及び経営計画と一体となって、事業継続性の確保と企業価値の維持向上を図るための経営基盤として位置付けており、取締役会で決定されたトータルリスクマネジメント方針(TRM方針)の下、トータルリスクマネジメント規程に則って、全社的リスクマネジメントを推進しています。
| 1) 目的 ANAグループは、従業員の自己実現、家族も含めたウェルビーイングを追求するとともに、お客様や株主・投資家等のステークホルダーの期待に応えていくことで、企業価値の維持向上を図る。その実現を目指す上で、経営目標の達成に不確実性を及ぼす全ての要素をグループ経営全体の視点から統合的・包括的・戦略的に把握・評価し、主要なリスクの適切な管理を行う。 2) TRMを推進するための私たちの行動 (1) 安全は他の全てに優先する。 (2) 社会的責任を果たす上でのコンプライアンス遵守を徹底する。 (3) 多様かつグローバルな視点でリスクの脅威と機会の双方を捉え、経営戦略と一体となったリスクマネジメントを推進する。 (4) リスク・要因・対策等の可視化を通じた未然防止、再発防止及び変更管理を確実に行う。 (5) 疑問や気づきをアサーションし、バッドニュース・ファーストで情報を共有する。 (6) 過去や他社から学び、複数のリスクシナリオに基づき、変化するリスクへのレジリエンスを高める。 |
2.リスクマネジメント体制
当社グループは、取締役会の監督の下、経営戦略会議、リスクオーナー、リスク主管部署、ANAホールディングス㈱の組織及びグループ会社が密接に連携し、戦略リスク及び事業リスクを統合的に管理するトータルリスクマネジメント体制を整備しています。
取締役会が、経営によるトータルリスクマネジメント(TRM)の執行を監督する役割・責任を担っており、TRM方針の策定、最重要リスクの選定、リスクオーナー(原則ANAホールディングス㈱の執行役員)及びリスク主管部署の任命、トータルリスクマネジメントの有効性の評価及び改善の指示を行います。
リスクの分析・評価においては、リスク主管部署が重要な役割を担っています。リスク主管部署は、担当するリスクについて、ANAホールディングス㈱の各組織及び各グループ会社の状況も含めて管理(リスクの分析・評価、対応策の構築、管理指標の設定、モニタリング等)を行い、最重要リスクの状況はリスクオーナーに、一般リスクの状況はリスクオーナー会議に報告します。リスクオーナー会議では各リスクの状況が報告されるとともに、他のリスクとの相互影響等についても確認・議論を行います。リスクオーナー会議での議論の内容や検討結果は、ANAホールディングス㈱のリスク担当役員が取りまとめの上で経営戦略会議、取締役会に報告されます。なお、これらの報告及び議論の結果は、主要リスクに対する対応方針の見直しに加え、経営資源の配分、重要施策の優先順位付け及び事業運営上の意思決定に活用しています。
3.リスクマネジメントプロセス当社グループは、その経営理念・方針を踏まえて策定したTRM方針及びTRM推進計画に基づいてリスクマネジメントを行っています。当社グループのリスクは、後述の通り、戦略リスクと事業リスクに大別され、リスクマネジメントのプロセスも各リスクによって以下の通り異なります。
戦略リスクのマネジメントプロセスについては、取締役会及び経営戦略会議が、中期及び年度経営計画の策定時に、事業環境等を踏まえた戦略リスクの特定、リスクシナリオを踏まえた影響分析を行うとともに、対応策を検討し、KPI(Key Performance Indicators)とKRI(Key Risk Indicators)の整合性を確保した上でモニタリングを行います。
事業リスクのマネジメントプロセスについては、当社グループの主要なリスクを網羅して一覧化したリスクカタログ上の各事業リスクについて、担当のリスク主管部署が定期的にグループ会社の状況も含めて、管理対象リスク項目の特定(洗い替え)、その経営計画・目標への影響度、発生可能性及び既存の対応策に基づいたリスク分析・評価を行うとともに、リスクの発生メカニズム(リスクシナリオ)を踏まえた対応策を講じ、当社グループとしてのリスク許容限界に基づくKRIを管理指標として設定した上でモニタリングを行います。
事業リスクの各リスクの評価は、影響度、発生可能性に基づいて、まず固有リスクの評価を行い、その後リスク対応策を加味して残存リスクの評価を行います。各リスクの評価は定量評価で数値化されるため、異なる性質のリスクを一定の基準に基づいて優先順位付けすることが可能となります。ただし、定量評価では捉え切れない要因もあると考えられるため、定量評価に加えて、定性的な要因による調整を必要に応じて行います。
このように戦略リスク及び事業リスクのマネジメントプロセスを回す中で、リスクカタログ、リスクマネジメントにおける枠組みや手法、リスクマネジメントのプロセス自体の見直しも行い、当社グループのリスクマネジメントの成熟度の向上を図っています。

4.ANAグループのリスク
当社グループが当期末時点で投資家の判断に重要な影響を及ぼし得ると考えるリスクは以下の通りです。なお、以下の内容には将来に関する予測も含まれており、現実と合致しない可能性があるほか、記載されていない他のリスクが当社グループに影響を及ぼす可能性もあります。
当社グループは、経営目標に影響を及ぼす主要なリスクを網羅的に特定し、リスクカタログとして一覧化しています。リスクはその特性から戦略リスクと事業リスクに大別されます。戦略リスクは経営戦略等の経営上の重要な意思決定に伴うリスクで、取締役会及び経営戦略会議において経営計画の策定時に選定されます。事業リスクは日常業務の遂行や事業基盤の維持等に伴うリスクで、経営陣のリスク見解も踏まえ、当該リスクの影響度や発生可能性に基づき、リスク対応策も加味して、定期的に評価を行います。評価の結果、リスクが大きく、経営が重点的に監督・モニタリングすべきものを、戦略リスクとともに最重要リスクとして取締役会で選定します。最重要リスク以外のリスクは一般リスクとしてANAホールディングス㈱及び各グループ会社がリスク主管部署の下で管理を行います。
5.最重要リスク(1)戦略リスク
政治社会情勢の変化
<要旨>当社グループは、更なる成長機会を求めて国際線事業を拡大してきましたが、ウクライナや中東地域情勢、米中対立、第三極勢力の台頭など、国際情勢は不透明さを増しており、将来に向けて不確実性が存在します。
国際航空輸送は、これまで経済活動のグローバル化を背景に拡大してきましたが、その流れが停滞・逆行、あるいは戦争・紛争等によって平和な環境が毀損された場合には、業務渡航需要の低迷や観光旅行需要の減少等を通じて、当社グループの収入に影響を及ぼす可能性があります。
なお、国際情勢の不安定化は、国際線事業のみならず、インバウンド(訪日外国人観光客)需要の減少等を通じて国内線事業にも影響を及ぼし得るほか、航空輸送コストの増加や航空機が戦争・紛争地域上空の飛行を取り止めて迂回せざるを得ないケース等、その影響が広範に及ぶ可能性があります。
<変化・展望>国際情勢及び経済活動グローバル化の行方については不確実性が増しており、リスクとして管理・対処する必要性が高まっていると考えています。
<対応>当社グループは、国際線事業の展開に際し、航空ネットワーク構築等において、短期的な収益性のみで判断せず、国際情勢リスクにも配慮した展開を進めており、今後も当対応を継続します。また、海外における顧客獲得に際しても、特定国・地域に過度に偏ることがないよう、バランスを考慮して展開しています。
国際情勢については当社グループの各拠点において情報収集に努めており、国際情勢の悪化等によって緊急対応の必要が生じた場合には、航空便の運航計画や運航ルートを柔軟かつ迅速に変更させることで、その影響低減を図っています。
(2)事業リスク
①航空安全:航空法上の事故/重大インシデントに至る可能性が高い事象の発生
| 固有リスク | 残存リスク | ||
| 影響度: 中 | 発生可能性: 中 | 固有リスク評価: 中 | 残存リスク評価: 小 |
<要旨>当社グループは、安全は経営の基盤であり、社会への責務であると位置付けています。安全が毀損・阻害されるような事象が発生した場合には、当社グループに大きな影響を与えます。特に、人的損害が生じた場合には、当社グループへの社会的な信用・信頼を根本から揺るがす可能性があります。
航空事故等によって、人的・物的損害が発生した場合には、その損害賠償責任が生ずる可能性がありますが、安全が毀損・阻害された場合の影響はそれに留まらず、顧客が航空機利用を手控えることで当社グループの収入が減少する、あるいは航空機利用に際して当社グループ以外の便を選択するといった形で、その影響は広範かつ長期に及ぶ可能性があります。
なお、安全の確保に向けて、航空機に製造上の不具合等が発生・発覚した場合には、予防的に当該航空機の運航を中止することがありますが、その場合には、航空機不足に起因して欠航や減便等が発生し、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
<変化・展望>当リスクは、引き続き、当社グループにとって最も重要なリスクであると考えています。
<対応>当社グループは、安全の推進や安全の品質監査を行う専門組織を設置すると共に、安全を堅持するための持続的な「仕組み」を構築し、再発防止型・未然防止型・未来予測型の安全リスクマネジメント、良好事例や当社グループ外事例の活用、SPI(Safety Performance Indicator)による安全の「見える化」と対策の検討・実施など、更なる安全性の向上を追求しています。
同時に、運航乗務員や客室乗務員をはじめ、航空機運航に直接従事する社員に対して初期及び定期的な教育・訓練の実施や、当社グループ社員全員を対象とした安全に関する恒常的な啓発活動も行い、研修施設である「ANAグループ安全教育センター」の活用等を通じて積極的な安全・保安文化の醸成・強化に努めています。また、航空機メーカー等との間でも密接な情報交換や意見交換を行いながら、安全性をはじめとする高品質なオペレーションの実現に取り組んでいます。
②環境
| 固有リスク | 残存リスク | ||
| 影響度: 大 | 発生可能性: 中 | 固有リスク評価: 中 | 残存リスク評価: 中 |
<要旨>航空業界は脱炭素化が困難な「hard to abate」な産業ですが、航空機の運航で発生するCO2の削減は当社グループがマテリアリティとして掲げる重要な責務です。現在、中核となるSAFは依然として高価格かつ供給不足の状態にあり、解消の目処は立っていません。
SAFが今後安定確保できない場合や高額に留まる場合、排出権購入の増加による費用増が生じるほか、コストの運賃転嫁によって鉄道などの他の交通手段に対する競争力が低下するリスクがあります。また、気候変動対策の遅れによる投資家や顧客からの評価低下、炭素税などの環境規制強化によるコスト増大のリスクにも注視しています。
<変化・展望>脱炭素化への対応が国際的に喫緊の課題である中、外部環境の変化や規制の複雑化に対し、より高度で迅速な対応が求められています。当社グループは、市況変動への耐性を高めつつ、環境対策を成長の礎と捉え、当社グループの持続的成長を前向きに追求します。今般、当社グループの「2026-2028年度中期経営戦略」の策定に合わせ、2030年度までにCO2排出量を2019年度比で実質10%以上削減するという中期目標、及び2050年度ネットゼロへ向けたトランジション・シナリオを更新しました。今後も外部環境の変化に応じてリソース配分を機動的に最適化する「ローリング型」の価値創造ロードマップに則り、柔軟かつ着実に戦略を進めていきます。
<対応>目標達成に向け、経済合理性との両立を追求しながら4つの戦略的アプローチを組み合わせて脱炭素化に取り組んでいきます。現状のSAFに関する課題を踏まえ、まずは「運航上の改善・航空機等の技術革新」による直接的なCO2削減を引き続き最優先で推進します。並行して、「SAFの安定供給に向けた官民連携やサプライチェーン構築」「排出権取引制度の適切な活用」「ネガティブエミッション技術の活用」を多角的に進めます。更に、国内外における規制や関連する枠組みづくりへの積極的な提言や、政府支援の獲得、環境コストを適切に運賃等へ反映する仕組みの構築等、ステークホルダーと連携した主体的なリスク管理を強化していきます。なお、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言に沿った情報については、当社グループホームページ
(https://www.ana.co.jp/group/csr/environment/goal/)にて開示しています。
③治安・犯罪:戦争・紛争・テロ・大規模暴動による人的・財産的・機能的被害
| 固有リスク | 残存リスク | ||
| 影響度: 非常に大 | 発生可能性: 低 | 固有リスク評価: 中 | 残存リスク評価: 小 |
<要旨>当社グループは、更なる成長機会を求めて国際線事業を拡大してきており、海外主要都市に定期便を運航しているほか、各就航地を中心に事業所を設け駐在員や現地雇用社員を配置しています。
国際情勢の悪化により、現地に滞在する社員や運航・客室乗務員及び出張者等が一般犯罪のみならず戦争・紛争・内乱・テロ・大規模暴動に巻き込まれるリスクは相対的に高まっており、経済安全保障面におけるサプライチェーンの影響等も含め会社の人的・財産的・機能的被害が生じる可能性があります。
<変化・展望>国際情勢は絶えず変化しており、政治的・経済的不確実性が増しているなか、リスクとして管理・対処する必要性が一層高まっていると考えています。
<対応>当社グループは、平時からの対応として社内連絡体制やマニュアル類の整備、各種訓練やセミナーの実施を行っているほか、リスク事象発生時には速やかな情報収集・共有や安否確認、注意喚起を行うなど、被害の回避や低減に向けた対策を講じています。
④感染症パンデミック
| 固有リスク | 残存リスク | ||
| 影響度: 非常に大 | 発生可能性: 低 | 固有リスク評価: 中 | 残存リスク評価: 中 |
<要旨>当社グループは、新型コロナウイルス感染症によって甚大な影響を受けましたが、将来、大規模な感染症が再び発生した場合には、人的移動の制限・禁止等による需要の激減や更なる感染拡大による役職員の欠勤により、旅客及び貨物の運送を適切に実施することができない等、当社グループに再度大きな影響を及ぼす可能性があります。
<変化・展望>一般的に気候変動(地球温暖化)は感染症リスクを高めると言われており、当リスクへの対処は重要性が高まっていると考えています。
<対応>当社グループは、航空事業を継続できるように、平時から役職員向けのマスク等の備蓄や旅客機に加えて貨物専用機も保有することで、人的移動が減少した状況下でも物的移動に対しては積極的に対応できる体制を構築すると共に、人的移動についても限定された航空需要に対して、最も適切に対応できるようにしています。
⑤システム障害
| 固有リスク | 残存リスク | ||
| 影響度: 非常に大 | 発生可能性: 高 | 固有リスク評価: 非常に大 | 残存リスク評価: 中 |
<要旨>当社グループは、航空輸送サービスを、より高品質で、より効率的に提供すべく、事業運営のシステム化を積極的に推進しており、これらのシステムに障害が発生した場合には、その理由が社内要因(自社要因)、あるいはサイバー攻撃等の社外要因であるかの如何を問わず、事業に与える影響が高まっています。航空機運航関連システムに障害が発生した場合には、航空機の運航が困難になる可能性があるほか、予約・決済・搭乗管理といった関連システムで障害が発生した場合にも、予約の受付や決済、空港における搭乗管理などが不可能となり、実質的に航空輸送サービスを提供することが困難となる可能性があります。
<変化・展望>システムのクラウド化の進展、事業関連のサプライチェーンの接続や連関性増加、あるいは地政学的視点、更には攻撃側のAI活用などサイバー攻撃が増加・巧妙化していることを踏まえれば、システム障害・サイバー攻撃に関するリスクは高まっていると考えています。また、当リスクを予防・低減させることに関する社会的要請も高まっていると考えています。
<対応>当社グループではシステム障害に迅速に対応するために、24時間365日監視を行っております。
また、2024年から発足した当社グループCSIRT(Computer Security Incident Response Team)の構築により、システム障害かサイバーセキュリティ攻撃か不明である時点から対応することを通じて、包括的・多面的なシステム運用体制を構築するとともに、サイバー事案や海外ステークホルダーに対しても非常に速い対応が可能となりました。また、システム全体のアーキテクチャを監督する機能の設置や社員教育の強化やシステム障害発生対応訓練の実施など、ソフト面での対応強化も行っています。
⑥情報セキュリティ
| 固有リスク | 残存リスク | ||
| 影響度: 非常に大 | 発生可能性: 非常に高 | 固有リスク評価: 非常に大 | 残存リスク評価: 中 |
<要旨>当社グループは、顧客組織である「ANAマイレージクラブ」会員の個人情報をはじめ、多くの情報を保持していますが、これらの情報が不正に流出した場合には、損害賠償請求を受けたり、各国政府等から制裁金や課徴金の支払いを命じられたり、あるいは顧客や社会からの信用・信頼が失墜して競争力が低下したりする可能性があります。
<変化・展望>昨今、国内でもサイバー攻撃による情報漏洩事象が頻発しており、情報全般の取り扱いに関する社会的な意識・規範の高まりや、各国政府等によって定められる関連法規の強化などを踏まえれば、当リスクに適切に対処する必要性は一層高まっていると考えています。
<対応>各国法令等に沿って適切な情報管理を行うと共に、コンピュータウィルス対策やメールのセキュリティチェック、不正操作の監視、情報にアクセスできる社員の制限、認証強化、全社員を対象とした情報管理に関する教育・啓発活動等を行っています。また、グループ全体のシステムを対象に継続的な点検を行い、システムの老朽化、脆弱性を早期に検出して対応する等、サイバー攻撃や情報漏洩を未然に防ぐ対応を実施しています。
⑦人権
| 固有リスク | 残存リスク | ||
| 影響度: 非常に大 | 発生可能性: 低 | 固有リスク評価: 小 | 残存リスク評価: 小 |
<要旨>当社グループ内のみならず、委託先や取引先、調達先等を含めて、当社グループ事業に関わる事業領域全体で人権侵害にあたる行為が発生した場合には、当社グループが社会的非難を浴びたり、不買運動の対象となったりする可能性があります。また、海外の一部の国・地域ではサプライチェーン上の人権保護に関わる法制化も進んでいます。委託先等のグループ外も含めて人権侵害にあたる行為が発生した場合には、こうした国・地域等において、当社グループが罰則を課される可能性もあります。更に、業務委託先等を含むサプライヤーで問題が発生し、操業停止等に至った際には、当社グループの事業運営において制約や制限を課される可能性があります。
<変化・展望>日本国内における労働力人口減少への対応、あるいは海外事業の拡大を進める中で当社グループの事業に関わる人的リソースは多様化しており、当リスクに対しては、より多面的に対処する必要性があると考えています。
<対応>当社グループは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」において詳述されている手順に沿い、「ANAグループ人権方針」のもと、人権デューディリジェンスの仕組みを構築しています。サプライチェーン上の人権リスク評価を実施し、必要に応じて、社外関係先や労働者本人に対しても対話等を通じて直接確認・調査を行う等、当リスクの適切な管理に努めています。
更に労働者が直接声を上げる仕組みも整備し、グリーバンスメカニズムによる人権尊重も推進しています。また、社内においても人権に関する社員教育や経営レベルの会議体における定期的なモニター等も実施しています。
⑧自然災害
| 固有リスク | 残存リスク | ||
| 影響度: 非常に大 | 発生可能性: 中 | 固有リスク評価: 大 | 残存リスク評価: 中 |
<要旨>航空輸送は、点と点を空路で結ぶという特性上、運輸・運送システムの中では相対的に自然災害への耐性が強く、一部空港が機能不全に陥った場合でも近隣空港を活用した代替輸送が可能といった利点がありますが、当社グループの事業基盤は首都圏に集中しているため、羽田空港や成田空港が自然災害によって大きな影響を受けた場合には、当社グループの事業運営に関して制約や障害が発生する可能性があります。
<変化・展望>気候変動による風水害の激甚化・頻発化や、甚大な被害発生が想定される大規模災害の発生が懸念されており、当リスクへの対処は重要性が一層高まっていると考えています。
<対応>首都直下地震をはじめ、大規模自然災害が発生した場合でも、早急に運航機能を回復させて公共交通機関としての使命を果たせるよう、オールハザード型の事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)を策定し、事業継続マネジメント(Business Continuity Management:BCM)を推進しています。また、事業運営に不可欠な各種中核機能についてはバックアップ系統を整備し、衛星電話や備蓄品、従業員安否確認システム等を用意すると共に、関係者(空港会社等)とも連携しながら、定期的な防災訓練を実施する等の対応をしています。
⑨人財管理:人員不足・スキル低下
| 固有リスク | 残存リスク | ||
| 影響度: 非常に大 | 発生可能性: 低 | 固有リスク評価: 中 | 残存リスク評価: 小 |
<要旨>当社グループは、日本国内を最大の事業基盤としていますが、今後、日本の人口減少が進むにつれて、当社グループの事業運営に必要な労働力の確保という観点で影響を及ぼす可能性があり、その場合には、人件費単価が増加したり、労働力不足、並びに従業員のスキル・知識不足(乗員・整備・空港(総代理店・委託先含む))等に起因して、事業運営に制約が生じたりする可能性があります。
<変化・展望>当リスクは、今後、顕在化する可能性があると考えています。
<対応>経営戦略の立案等において、人口減少や労働市場等の各種社会的変化の想定を加味・反映させるとともに、労働力の確保、スキル維持向上に関しては、グループ全体での離職率や採用充足率の状況を確認し、適切かつ迅速な対応(エンゲージメント向上施策の実施、通年採用を含めた採用活動強化、空港間の相互応援等)に繋げていきます。
⑩コンプライアンス
1)個人情報保護法
| 固有リスク | 残存リスク | ||
| 影響度: 非常に大 | 発生可能性: 低 | 固有リスク評価: 小 | 残存リスク評価: 小 |
<要旨>当社グループは、顧客組織である「ANAマイレージクラブ」会員の情報など、多くの個人情報を保持していますが、これらの個人情報が必要な安全管理措置が講じられていなかったために流出した、必要な同意を取得せずに第三者に提供された等、違法に取り扱われた場合には、各国政府等から制裁金や課徴金の支払いを命じられたり、損害賠償請求を受けたり、あるいは顧客や社会からの信用・信頼が失墜して競争力が低下したりする可能性があります。
<変化・展望>個人情報全般の取り扱いに関する社会的な意識・規範の高まりや、各国政府等によって定められる関連法規の強化などを踏まえれば、当リスクに適切に対処する必要性は一層高まっていると考えています。
<対応>個人情報の取り扱いにおいては、当社グループにおける「プライバシーガバナンスの基本方針と行動原則」や、当社グループ各社の「プライバシーポリシー」に基づき、日本の個人情報保護法等の各国法令に準拠する形で、細心の注意を払い、保護・管理を徹底しております。また、顧客の個人データを利活用するにあたり、倫理的適切性の観点も踏まえ、プライバシー影響評価、社員への教育・啓発、点検・監査等を実施し、プライバシーを保護する体制や仕組みを継続的に強化しております。
2)競争法
| 固有リスク | 残存リスク | ||
| 影響度: 非常に大 | 発生可能性: 低 | 固有リスク評価: 小 | 残存リスク評価: 小 |
<要旨>当社グループでは、競合事業者と便、路線、運賃、料金、提供座席数などを調整した場合、各国の競争法に違反することが考えられます。これらに抵触した場合、巨額の制裁金(課徴金)が課されるだけでなく、当局による是正命令や事業認可の制限、更には大規模な利用者集団からの損害賠償請求やブランドイメージの著しい失墜などを招き、場合によっては経営基盤を揺るがす事態に発展することが考えられます。
<変化・展望>航空輸送事業の運賃や料金の変動については各国規制当局に注目されています。特にデジタル化によるアルゴリズムを介した調整が「デジタル・カルテル」として注目される一方、脱炭素化(SAF導入等)に向けた企業間連携が、地球環境保護と競争維持の観点から新たな議論を呼んでいます。今後は、航空事業者間の提携が一層進み、従来以上に広範かつ複雑な事業運営が求められる見通しです。
<対応>当社グループにおけるコンプライアンスの徹底においては、グループの競争法コンプライアンスマニュアルに沿って事業を運営しています。具体的には、同業他社との接触に関する承認ルールの運用や、役職員への競争法にかかわる教育を継続的に行っています。また、アライアンスや共同事業においては、事前に必要な独占禁止法適用除外の認可を取得し、認められた範囲にて適切にパートナーとのビジネス活動を遂行していきます。
3)各種業法
| 固有リスク | 残存リスク | ||
| 影響度: 大 | 発生可能性: 中 | 固有リスク評価: 中 | 残存リスク評価: 小 |
<要旨>当社グループは、航空法をはじめとする各事業分野の国内外の関連法令(以下「業法」)を遵守する必要があります。事業活動において万一、内部管理上の問題や外部要因により、これらの業法を遵守できない場合、規制当局から業務改善命令、業務停止命令等の行政処分を受ける可能性があります。このような事態が発生した場合には、当社グループの社会的信用の失墜、事業活動の制限等により、経営及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
<変化・展望>近年、社会情勢の変化や技術革新に伴い、業法の内容は国内外共に複雑化・厳格化する傾向にあり、当リスクに適切に対処する重要性は高まっています。
<対応>当社グループは、業法遵守を経営の最優先事項の一つと位置づけ、リスクの適切な管理に努めています。具体的な対応として、関連法令の制定・改正情報を収集・分析し、社内規程や業務手順書へ迅速に反映する体制を構築しています。また、法令遵守状況を定期的にチェックするほか、役職員に対し、該当する業法に関する継続的な教育・啓発活動等を実施し、グループ全体の法令遵守体制とガバナンスの強化に取り組んでいます。