有価証券報告書-第144期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/25 15:13
【資料】
PDFをみる
【項目】
153項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
2023年3月31日に行われた株式会社テスパックとの企業結合について、前連結会計年度において暫定的な会計処理を行っておりましたが、当連結会計年度に確定したため、前連結会計年度との比較・分析にあたっては、暫定的な会計処理の確定による見直し後の金額を用いております。
当連結会計年度における世界経済は、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の激化など地政学的リスクの高まりを起因とするエネルギー価格や原材料価格の高騰による世界的なインフレが景気を押し下げ、また、中国経済が低迷する等、先行き不透明な状況となりました。
わが国経済は、新型コロナウイルス感染症の分類見直しにより経済活動の再開による内需の回復など、景気は緩やかな持ち直しの動きとなりましたが、円安進行による消費者物価の上昇により消費者マインドが低下しました。
物流業界におきましては、燃料価格等の継続的なコスト増加、労働力不足等に伴う人件費の上昇、物流業界の2024年問題から派生する物流の諸問題の発現に加えて、一部の製造業での生産調整により物流量が減少するなど、厳しい経営環境が続きました。
このような事業環境のもと、当社グループは第7次中期経営計画「Let’s TRY!2024 」の2年度目として、自ら能動的に行動する「自身にTRY!」、挑戦する風土を創って、分かち合う「組織でTRY!」、社会に応える・つなげる「社会へTRY!」の3つのTRY!に取組み、施策展開を行ってまいりました。
具体的には、滋賀県大津市において新たな物流拠点となる滋賀支店大津営業所を2023年6月に開設し、また、豊通ペットリサイクルシステムズ株式会社の物流取扱量の拡大に継続して取り組みました。さらに、大型機械や精密機械の運搬・設置等をおこなう機工(輸送付随業務等)の取扱いを拡充いたしました。加えて、2023年1月に子会社化しました株式会社テスパックとのシナジー効果による梱包業のさらなる強化にも注力いたしました。
併せて汎用業務の集約を目的とした事務センターの拠点集約を進めるとともに、現場作業のデジタル化、業務の効率化、業務品質の向上に継続して取り組んでおります。
さらに、環境に配慮したグリーン経営の推進に取り組むとともに、サステナビリティ基本方針に基づき、サステナビリティ委員会及びサステナビリティ推進委員会の活動などを通じて持続的な成長と企業価値向上を目指し、サステナビリティを巡る課題に具体的に取り組んでおります。
また、京都ハンナリーズ(プロバスケットボールチーム)への協賛継続や2023年7月にSDGs私募債を発行するなどの地域社会との関わりを重視した事業運営や、2024年1月に発生した能登半島地震の際にはエッセンシャルワーカーとしての機能を発揮いたしました。
これらの結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
(財政状態)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1,857,178千円増の58,016,268千円となりました。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ914,132千円減の12,414,902千円となりました。
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ2,771,311千円増の45,601,365千円となりました。
(経営成績)
当連結会計年度の営業収益は26,512,364千円(前年同期比2.5%増)、営業利益は1,934,257千円(前年同期比8.3%減)、経常利益は2,229,804千円(前年同期比8.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,698,179千円(前年同期比0.6%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
国内物流事業におきましては、営業収益は21,322,055千円(前年同期比1.7%増)、セグメント利益は2,211,715千円(前年同期比0.5%減)となりました。
国際貨物事業におきましては、営業収益は5,025,453千円(前年同期比6.1%増)、セグメント利益は479,033千円(前年同期比4.0%減)となりました。
不動産賃貸事業におきましては、営業収益は357,363千円(前年同期比増減なし)、セグメント利益は151,909千円(前年同期比14.1%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ328,393千円(6.7%)増加し、当連結会計年度末には5,251,334千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、資金は2,841,244千円の増加(前期は4,079,408千円の増加)となりました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益2,510,788千円、減価償却費1,860,874千円であります。また、主な減少要因は、投資有価証券売却損益306,870千円、法人税等の支払額900,356千円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、資金は1,345,875千円の減少(前期は3,233,082千円の減少)となりました。主な増加要因は、投資有価証券の売却による収入556,271千円、定期預金の払戻による収入516,200千円であります。また、主な減少要因は、有形固定資産の取得による支出1,856,291千円、資金運用の一環となる投資有価証券の取得による支出412,457千円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、資金は1,167,077千円の減少(前期は350,585千円の増加)となりました。主な増加要因は、長期借入れによる収入180,000千円であります。また、主な減少要因は、長期借入金の返済による支出709,246千円、配当金の支払額550,352千円であります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの主たる事業は、倉庫業を中心とした総合物流業であり、役務の提供を主体とする事業の性格上、生産、受注及び販売の実績を区分して把握することは困難であります。
これに代えて、当連結会計年度におけるセグメントごとの営業収益及び主要業務の取扱高等を示すと、次のとおりであります。
a.セグメントごとの営業収益
セグメントの名称当連結会計年度
(2023年4月1日~2024年3月31日)
前年同期比(%)
国内物流事業(千円)21,322,0551.7
(内訳)
倉庫業(千円)7,508,1383.2
運送業(千円)13,621,4080.9
国際貨物事業(千円)5,025,4536.1
(内訳)
通関業(千円)2,997,664△5.9
梱包業(千円)2,027,78830.9
不動産賃貸事業(千円)357,363-
合計(千円)26,704,8722.5

(注)1.上記の営業収益にはセグメント間の内部営業収益192,508千円を含んでおります。
2.国内物流事業の内訳の「倉庫業」、「運送業」及び国際貨物事業の内訳の「通関業」、「梱包業」は、セグメント間の内部営業収益を含まない外部顧客に対する営業収益の額を記載しております。
b.セグメントごとの主要業務の取扱高等
セグメントの名称当連結会計年度
(2023年4月1日~2024年3月31日)
前年同期比(%)
国内物流事業
倉庫業保管残高
(数量・月末平均)
308千トン1.4
入庫高1,429千トン△5.8
出庫高1,432千トン△3.5
貨物回転率
(数量・月末平均)
38.6%△6.1
運送業運送取扱高2,176千トン2.3
国際貨物事業輸出入取扱高593千トン△11.9
梱包取扱高126千m310.2

(注)1.倉庫業の入出庫及び保管残高、貨物回転率は、自社倉庫及び再寄託先を含めた残高に基づくものであります。
(年間入庫高+年間出庫高)×1
2.貨物回転率=2×100
月末保管残高年間合計
3.当連結会計年度から、国際貨物事業の梱包取扱高に㈱テスパックの取扱高を含めております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態
前連結会計年度
(2023年3月31日)
当連結会計年度
(2024年3月31日)
前連結会計年度比
(%)
流動資産(千円)14,063,54213,650,653△2.9
固定資産(千円)42,095,54644,365,6145.4
流動負債(千円)7,882,9166,745,423△14.4
固定負債(千円)5,446,1185,669,4794.1
純 資 産(千円)42,830,05345,601,3656.5

流動資産の減少要因は、現金及び預金が180,706千円、営業未収入金が319,569千円、それぞれ減少したこと等によるものです。
固定資産の増加要因は、建設仮勘定が滋賀支店大津営業所完成による本勘定への振替などにより2,254,555千円減少しましたが、建物及び構築物が滋賀支店大津営業所新設などにより1,994,450千円、株価の上昇により、投資有価証券が政策保有株式の縮減を進めているものの株価の上昇などにより2,262,576千円増加したこと等によるものです。
流動負債の減少要因は、支払手形及び営業未払金が233,865千円、未払法人税等が140,926千円、その他に含まれております未払金が327,582千円、未払消費税等が408,324千円、それぞれ減少したこと等によるものです。
固定負債の増加要因は、長期借入金が新規借入があったものの返済の進行により519,938千円減少しましたが、繰延税金負債が株価の上昇などにより702,570千円増加したこと等によるものです。
以上の結果、1株当たりの純資産額は2,386.86円と前連結会計年度2,242.32円に比し、144.54円増加し、自己資本比率は78.1%と前連結会計年度75.8%に比し2.3ポイント増加しました。
財政状態につきましては、資産のさらなる有効活用を図り、一層の利益を生み出すことがこれからの大きな経営の課題と考えております。今後も収益性の高い貨物へのシフトや資産をより有効に活用することに努めてまいります。
b.経営成績
前連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
当連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
前連結会計年度比
(%)
営業収益 (千円)25,869,46226,512,3642.5
営業利益 (千円)2,108,9781,934,257△8.3
経常利益 (千円)2,434,6302,229,804△8.4
親会社株主に帰属する当期純利益(千円)1,708,0591,698,179△0.6

営業収益の増加要因は、国内物流事業で351,838千円(そのうち倉庫業で229,691千円、運送業で122,146千円)、国際貨物事業で291,063千円、それぞれ増加したことによるものです。
営業利益の減少要因は、国内物流事業で115,398千円、国際貨物事業で19,803千円、不動産賃貸事業で24,993千円、それぞれ減少したことによるものです。
経常利益の減少要因は、営業利益が174,721千円、営業外収益の受取配当金が7,119千円、それぞれ減少したことに加え、営業外費用の支払利息が9,955千円増加したこと等によるものです。
親会社株主に帰属する当期純利益の減少要因は、経常利益が204,825千円減少、特別利益の投資有価証券売却益が73,345千円、それぞれ減少したこと等によるものでありますが、特別損失の固定資産除却損が解体工事費用の減少等により115,889千円減少したことに加え、前連結会計年度に特別損失に計上した投資有価証券評価損99,999千円がなくなったことなどにより、前連結会計年度比0.6%の減少に留まりました。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(国内物流事業)
倉庫業におきましては、取扱い貨物量の減少により自社倉庫及び再寄託先も含めた入出庫高は前期に比し減少しましたが、月末平均保管残高が前期に比し増加したことにより保管料が増加したことに加え、豊通ペットリサイクルシステムズ株式会社関連の荷役作業料が増加しました。また、料金価格の適正化交渉にも努めた結果、倉庫業の営業収益は増加しました。
運送業におきましては、保管貨物の荷動きが弱いものの、豊通ペットリサイクルシステムズ株式会社の本格稼働に合わせた物流取扱いや、機工(輸送付随業務等)の新たな取組みにより、取扱数量は通期で2,176千トンと前期に比し2.3%の増加となり、運送業の営業収益は増加しました。
以上の結果、国内物流事業の営業収益は増加しましたが、滋賀支店大津営業所開設に係る費用や再寄託貨物が増加したことによる外注費用が増加したことなどからセグメント利益は減少しました。
(国際貨物事業)
通関業におきましては、輸入及び輸出の取扱数量は、中国をはじめとした世界経済の低迷による取扱数量の減少により、593千トンと前期に比し11.9%の減少となりました。また、梱包業の取扱数量については、新たに子会社となりました株式会社テスパックの取扱高が加わったこともあり、126千㎥と前期に比し10.2%の増加となりました。
以上の結果、国際貨物事業の営業収益は増加しましたが、海上運賃の下落や梱包資材価格の上昇などの要因からセグメント利益は減少しました。
(不動産賃貸事業)
不動産賃貸事業におきましては、京都梅小路地区宿泊施設などの物流用途不動産以外の不動産賃貸を行っておりますが、当連結会計年度中に対象不動産の変更はありません。
以上の結果、不動産賃貸事業の営業収益に増減はありませんが、新たに費用として固定資産税等が発生したことからセグメント利益は減少しました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度のキャッシュ・フロー状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの運転資金は、自己資金及び金融機関からの短期借入を基本とし、設備投資等資金につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。
今後の資金需要のうち、主なものは、運転資金の他、事業用地取得、物流施設建築・改修等の設備投資等であります。これらの資金についても、基本方針に基づき、負債と資本のバランスに配慮しつつ、必要に応じて金融機関からの借入を実施する等、必要な資金を調達してまいります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、過去の実績や現時点における客観的情報、将来の計画事項等を合理的・総合的に判断し会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果につきましては、見積り特有の不確実性により、これらの見積りと異なる可能性があります。なお、当社グループが採用している重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
⑤ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
第7次中期経営計画「Let’TRY! 2024 」の2年度目となる2023年度の達成状況は以下のとおりであります。
2023年度の連結業績予想数値につきましては、貨物の取扱量が伸び悩んだことに加え、滋賀支店大津営業所の開設一時費用や減価償却費が増加したこと、燃料・動力費の高止まりや外注費用の継続的な増加等の影響もあり、以下の表のとおり修正しております。
営業収益は修正後予想比237百万円(0.9%)減となりましたが、営業利益は修正後予想比34百万円(1.8%)増となり、営業利益率は修正後予想値7.1%を0.2ポイント上回る7.3%となりました。経常利益は計画比29百万円(1.4%)増となりました。また、ROIC(投下資本利益率)については4.3%となりました。
指標当連結会計年度
(2023年度)
実績
2023年度第7次中期経営計画
(2022年度~2024年度)
最終年度
当 初
予想数値
修 正 後
予想数値
当 初
目標値
修正後
目標値
営業収益26,512百万円27,500百万円26,750百万円29,000百万円27,500百万円
営業利益1,934百万円2,300百万円1,900百万円2,440百万円2,050百万円
経常利益2,229百万円2,580百万円2,200百万円2,720百万円2,350百万円
営業利益率7.3%8.4%7.1%8.4%7.5%
経常利益率8.4%9.4%8.2%9.4%8.5%
ROIC
(投下資本利益率)
4.3%--5.0%4.5%

※ROIC:(営業利益+受取利息・配当)÷(純資産+有利子負債)
以上の結果を踏まえて、営業収益については、各施策を遂行した成果などにより前期を上回ることが出来ましたが、修正後計画を達成できませんでした。営業利益及び経常利益につきましては、それぞれ前期を下回ったものの修正後計画を上回りました。
しかしながら、ROEは依然として資本コストのレンジ付近に留まっている状況と認識しており、今後につきましては、引き続き第7次中期経営計画「Let’s TRY ! 2024 」の様々な施策に取組み、新設した滋賀支店大津営業所の取引拡大、リサイクル樹脂関連ビジネス・機工部隊の拡大等により収益力を高めていくとともに、資本コストを意識した経営を行っていくことで、企業価値向上に努めてまいります。