有価証券報告書-第21期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/29 11:03
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有報資料

(1) 経営方針・経営戦略等
今日、私たちの周囲には当然のようにデジタル情報があふれていますが、デジタル情報が私たちに届くまでには、様々な過程があります。例えば、ビデオカメラやボイスレコーダなどで情報をデジタル化して取り込む過程(入力)、有機ELディスプレイなどにデジタル情報を映し出す過程(出力)、パソコンなどでデジタル情報を加工及び計算する過程(演算)、加工及び計算されたデジタル情報をハードディスクや光学ディスクなどに蓄積する過程(記録)、そして、携帯網や光ファイバーなど無線及び有線で情報を伝送する過程(通信)が挙げられます。
当社が創業した1996年は、第3世代移動通信システム(以下、「3G方式」という)の国際標準化が本格化しようとしている時期でした。3G方式は、従来より高速なデジタル情報通信が可能となるばかりでなく、世界中どこでも使用することができ、また、一つの無線ネットワークを複数のネットワーク事業者が共用して使用することもできる方式です。当社は、3G方式により、無線ネットワークを借りてデジタル情報を伝送することの応用分野の広さとその事業機会の大きさに着目し、デジタル情報をグローバルにマネージして伝送することに大きな可能性と役割を見出したのです。
今や、レコードはデジタル化によってCDになり、音楽のストリーミング配信としてデジタル化されたコンテンツに変容を遂げました。通信機器の進化と通信技術の発展は、多くの分野で同様の変容を促し、現在では、ラジオ、テレビ、フィルム、レコード、書籍などの媒体ごとに分かれていた情報はすべてデジタル化されたコンテンツとなり、さらには、クレジットカードや預金残高等の機密性の高い金融情報もデジタル化され、重要なコンテンツのひとつとなっています。デジタル化によってあらゆる情報が0(ゼロ)と1(イチ)、即ちビットに置き換えられると、コンテンツの配信に媒体による制約はなくなります。こうして各分野の垣根は消滅し、異業種参入による市場競争の活性化も相俟って、社会のデジタル化はさらに急速に進展していきます。
当社は、安全で信頼性の高い情報通信を提供することを会社の使命として、今後も、デジタル情報を伝送する役割でデジタル化した社会の一翼を担っていく方針です。
当社は、この経営方針に基づいて、①どのような形でネットワークを調達し、②どのような形でビジネスを展開するかについて、以下の経営戦略を策定しています。
①ネットワークの調達
安全で信頼性の高い情報通信を提供するには、なるべく広いカバレッジを確保し、また、信頼性の高い通信を提供するために複数のネットワークを用意する必要があります。これらを実現するには、多額の設備投資と長期の準備期間を要しますが、携帯事業者から設備を借り受けて運用する事業モデル(以下、「MVNO事業モデル」という)では、自らは基地局等の大規模設備を持たず、大規模設備を有する携帯事業者からネットワークを借り受ける業態であるため、設備投資にかかるコスト及び時間を大幅に低減させることができます。また、複数の携帯事業者と接続することで、冗長性を確保することもできます。
一般的に、設備を借り受けて運用する場合のデメリットとして、長期的な視点ではコストメリットを欠くこと、また、カスタマイズする余地が限られることで差別化が図れないこと等が挙げられますが、当社が推進するMVNO事業モデルでは、電気通信事業法に基づく相互接続の制度を活用することで、調達コストの経済合理性とサービスの自由度を確保し、これらのデメリットの最小化を図っています。
②ビジネスの展開
当社は、MVNO事業を推進しますが、当社が直接顧客に販売するのではなく、パートナー企業に通信サービスを提供する、黒子(イネイブラー)としての役割に徹する方針です。あらゆる業界にまたがるデジタル情報通信を提供するには、各業界に精通したパートナーの顧客基盤を活用することが不可欠であるためです。
当社では、イネイブラー事業者として、コンシューマ向けに格安SIMを販売しようとするMVNOに対しては格安SIMを、高度なセキュリティを必要とするATM向けのソリューションを要求する金融機関に対しては無線による閉域ネットワークを提供するなど、パートナー企業の要望に合わせた商品及びサービスの提案に取り組んでいます。
近年は、半導体が非常に安価になった結果、センサーとして大量に供給される環境が整い、IoTの発展に大きく寄与しています。IoTにおいては、センサーからクラウドに情報を伝送する需要を背景に通信の商機は拡大しており、当社は、イネイブラーとしてIoT分野においても積極的にビジネスを展開する方針です。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
客観的な指標を設定するには、過去の実績や統計が蓄積され、将来における事業環境をある程度予測できる必要がありますが、当社が転換したイネイブラー事業は新しい事業領域であり、十分な前提情報が存在しないため、現時点では客観的な指標は設定しておりません。
なお、当社は現在、上記(1)の経営戦略に基づき、当社が調達したネットワークのメリットを活用し、あらゆる事業分野で競争力を発揮することのできる商品及びサービスの企画、開発に注力しています。
具体的には、複数の携帯事業者からのネットワークの調達と、そのメリットを十分に享受するための機器(ルータ)の開発、およびMVNO本来のサービスを具現化するための自社SIMの開発ですが、このうち前二者はすでに実現しています。2017年3月にソフトバンク網によるサービス提供を開始し、同時期にデュアル・ネットワーク・ルータの提供を開始しましたので、エリアカバレッジと冗長性を備えたネットワークを実現しました。また、安全かつ信頼性の高い通信を実現する上で土台となるのは認証基盤です。当社は、SIMのICチップに書き込まれている認証情報を使用して通信サービスを提供していますが、この基盤を更に強化するとともに、併せて、自社SIMの開発に取り組んでまいります。
(3) 経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題
①経営環境
当社が創業時から提唱していたMVNO事業モデルは、20年の歳月を経て、ようやく日本市場に定着しました。また、このことと密接に関連して、2016年5月に施行された改正電気通信事業法及び関連法令では、電気通信事業の公正な競争を促進するためにMVNOの参入を促進し事業展開の迅速化を図ることが明示され、基地局等の設備を持つ携帯事業者がMVNOに貸し出すべき機能や貸し出す際の接続ルールの制度化が実現しました。
現在の当社を取り巻くこのような事業環境は、従前の、MVNO事業モデル自体が認知されていなかった時期や相互接続を求めて総務大臣裁定を申し立てていた時期、さらにはごく最近までの、携帯網との相互接続は認められたもののMVNOが提供できる通信サービスに制約があり、価格以外に差別化要素を講じる余地がなかった時期には考えられなかったもので、かつての課題を一つずつ解決・解消した結果として得られたものです。
他方で、2016年の割賦販売法改正や2016年及び2017年の銀行法改正などにより、FinTech企業が決済代行業や銀行業に参入する環境が整備されるなど、業種・業態を問わず、デジタル情報を伝える役割は益々重要になっています。
当社は現在、自ら提唱してきたMVNO事業モデルの真価を問われる時期を迎えています。
②事業上及び財務上の対処すべき課題
上記の経営環境のもと、当社は2016年1月に新事業戦略を策定し、従来のMVNO事業者としての役割から、他のMVNO事業者やメーカー、金融機関等のパートナーにモバイル・ソリューションを提供するイネイブラー事業者に転換する方針を決定しました。当社にとって当面の対処すべき課題は、MVNO事業者からイネイブラー事業者への転換を確実に実行するとともに、その移行をスムーズに実現することです。
そのための事業上の課題として、1)携帯事業者との接続等の交渉、2)他のMVNOや法人パートナーとのパートナーシップの構築、3)当社自身の技術基盤の整備の3つがあります。
一つ目は、イネイブラー事業者として、パートナー企業が求める通信サービスを提供するための携帯網を調達するという課題です。イネイブラー事業を展開するには、格安SIM事業を提供するパートナーに対しては格安SIMを、企業向けソリューション事業を展開するパートナー企業にはソリューション・プラットフォームを提供することが求められます。当社は、このような需要に対応するため、格安SIMの販売において強力な商材であるソフトバンク網の調達を実現しましたが、ソフトバンクとの交渉が難航し、サービスの提供開始は、当初予定していた2016年6月から2017年3月まで遅れる結果となりました。現在は、従前と比べてMVNO事業が法制度上認められるようになったとはいえ、携帯事業者にとって競合相手として認識されていることに変わりはなく、携帯事業者との交渉は容易なものではありません。当社は、高度なソリューション・プラットフォームを整備するために、携帯事業者の加入者情報管理装置(HLR/HSS)を接続する交渉を進めており、引き続き、注力してまいります。
二つ目は、イネイブラー事業者として、他のMVNOや法人パートナーとパートナーシップを構築するという課題です。イネイブラー事業として業容を拡大することができるか否かは、これらのパートナーシップの成否にかかっています。当社は、イネイブラー事業者への転換を確実に実行するため、公共機関や企業向けのソリューション事業を手掛ける企業とのパートナーシップの構築にあたっています。併せて、イネイブラー事業者への移行をスムーズに実現するため、現時点において当社の売上の過半を占める格安SIM事業のパートナー企業の開拓も優先して進めています。
三つ目は、イネイブラー事業者として、他のMVNOや法人パートナーから選んでいただける、競争力のあるソリューション・プラットフォームを提供するための技術基盤を備えるという課題です。これには、セキュアかつ信頼できるネットワークサービスを提供するという通信事業者としての基本技術が最も重要ですが、同時に、他のMVNOや法人パートナーの需要に対応する応用力も必要となります。
上記の課題に対処するうえで最も重要な点は、人材です。当社グループの事業はノウハウや技術等がコアであるため、それらを持つ人材が重要な鍵となります。当社グループは、そのためのヒューマンリソース戦略として、クルーシステムを実践しています。クルーシステムは、当社が考案・構築した事業遂行モデルで、一人一人の人材(クルー)が会社の優先順位に応じた多様な業務を担当することによって、様々なノウハウや技術を身に付けていく仕組みです。当社が直面している上記の課題は、一様に、変化する環境への対応が求められるものですが、クルーシステムは硬直的な分業システムではなく、それ自体、変化に対応する仕組みを備えており、比較的短期間で多様な職務のスキルや経験を幅広く積むことも、一定の職務に専念してより深くスキルや経験を積むことのいずれも可能なものとなっています。当社が直面する課題は前例のないもので、既に知識や経験のある企業がどこかに存在するわけではありません。一方、当社には、MVNO事業モデルを定着させるに至るまでに、法制度の活用、携帯事業者との交渉やネットワーク構築などを通じて培った経験とノウハウがあり、これは、当社のみが持ちうるものです。
また、財務上の課題としては、安定的な通期黒字化を実現するまでの設備投資資金の確保が挙げられますが、当社は、新事業戦略の策定後、同戦略を実現するための資金を確保する手段として、2016年7月にクレディ・スイス証券株式会社を引受人として日本通信株式会社第3回新株予約権(第三者割当て)を発行しています。当社は、割当先が同新株予約権を行使する時期及び数量についてコントロールすることができるため、当社の資金ニーズに合わせて、かつ株式価値の希薄化に配慮して柔軟な資金調達を実現することが可能です。
当社は、人材面においては、引き続きクルーシステムを事業遂行基盤として、経験やノウハウを一層高めてまいります。また、財務面においては、必要に応じて上記新株予約権を活用して、当社が直面する課題に取り組んでいく方針です。

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