有価証券報告書-第24期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 9:05
【資料】
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【項目】
139項目

有報資料

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営の基本方針
当社は平成8年の創業時に、MVNO事業モデルという新たな通信事業の在り方を考案し、安全・安心にデータを運ぶ(通信する)ことを自らの使命として事業を展開して参りました。当社は、この使命を遂行するため、以下の方法によるセキュアかつ信頼できる通信の開発及び提供に注力する方針です。
① 情報を運ぶための通信網の構築及び運用
通信網の構築・運用には、当社が創業時から提唱・実践しているMVNO事業モデルを採用しています。MVNO事業モデルには、①既存の通信事業者の通信網を活用するため巨額投資が不要である、②複数の通信事業者の通信網を活用することで、二重、三重に信頼性を高めた通信を提供ことが可能である、③海外の通信事業者の通信網を活用することでグローバルな事業展開が可能である、などの利点があります。
② セキュアなプラットフォームの構築及び運用
セキュアなプラットフォームの構築及び運用には、隔離された通信経路の確立と通信内容の暗号化が根幹となります。当社は、ICチップとしての側面を持つSIMを活用し、鍵生成ロジックや電子証明書等を搭載することで、現在インターネットで広く利用されているSSL/TLS等の暗号化通信方式の弱点を克服した、セキュアな通信を提供します。
(2)経営環境及び経営戦略
当社は、平成28年1月、格安SIM事業者から、パートナー企業に安全・安心な通信に基づくモバイル・ソリューションを提供するイネイブラー事業者に転換する新事業戦略を策定し、現在この戦略に沿って事業を遂行しています。MVNO事業者は令和元年12月末日時点で1,092社に達し、その多くが格安SIMという単一セグメントに集中することで、MVNO業界は過当競争の状況になっています。しかしながら、このような経営環境においても、MVNO事業モデルには、上記(1)①に記載したとおり、多くの利点があります。当社はこの利点を活かして差別化したサービスを開発し、強力なパートナー企業と共にお客様に提案していきます。
また、当社は、SIMの認証基盤を発展させることで、上記(1)②のプラットフォームを、インターネットで安全・安心な金融取引を行うことができるプラットフォーム、FPoS(FinTech Platform over SIM、エフポス)として開発しました。FPoSについては、平成30年に金融庁の支援のもとで実証実験が行われ、平成31年1月に金融庁が公表した実験結果において、金融庁の監督指針に準拠していることが示されています。
FPoSは、スマートフォンで安全に送金や取引を行うなど、金融取引全般に活用することができるほか、実印と同様の効力がある電子署名をスマートフォンでできるようにするもので、行政、医療、教育、小売等の様々な分野で活用することができるものです。当社は、各分野のパートナー企業とともに、事業展開を図っていく戦略です。
当社は、以上の経営方針・経営戦略に基づいた取組みを積極的に進め、その結果としての売上拡大及び収益化の実現を目指しています。現時点では、当社の売上の大部分は格安SIMによるものですが、FPoSを活用したイネイブラー事業者として他にはない機能を持つSIM商品等の提供を行うことで、より幅広いMVNO事業者に対して多様な通信及びプラットフォームを提供していきます。
(3)対処すべき課題
当社は、上記の経営方針・経営戦略等を踏まえ、以下の点を優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題として認識しています。
① 公正な競争環境の確保のための取組み
当社は、創業以来、利用者のニーズに合った多様なサービスの提供を可能とし、電気通信事業をさらに成長・発展させることのできる事業モデルとして、MVNO事業を提唱しており、MVNO事業が成立した後は、MNOとMVNOとの間で公正な競争環境を確保するための取組みを進めています。公正な競争環境の確保は、MVNOが本来の目的を果たして成長するための最大の課題であり、将来にわたり、長期的に取り組むべきものと認識しています。
競争環境のうち、携帯電話の販売手法については、令和元年10月に改正電気通信事業法が施行され、高額なキャッシュバックの提供等のMNOによる行き過ぎた囲い込みに一定の歯止めがかかるようになりました。また、MVNOがMNOから調達するデータ通信サービスの接続料については、従来はMNOにおける過年度の「実績原価」に基づいて算出されていましたが、令和2年度に適用される接続料からは当年度の原価を合理的に予測した「将来原価」に基づいて算出されることとなりました。このように、MNOとMVNOの間の競争環境は改善が進みつつあります。
一方、MVNOがMNOから調達する音声通話サービスの卸料金は10年前から据え置かれたままとなっており、MNOから高額の卸料金で音声通話サービスを調達するMVNOは、音声通話定額サービスを提供するMNOと競争することのできない状況が続いています。当社は、長年にわたり、この問題の是正をNTTドコモに申し入れてきましたが、協議は不調に終わり、令和元年11月に総務大臣裁定を申請しました。総務大臣裁定において当社の主張が認められた場合には、音声通話サービスの競争環境も大きく改善します。
② MVNO事業モデルの進化による黒字化の達成
当社は5期連続で損失を計上しており、早期に安定的な黒字化を達成することは喫緊の課題です。そのため、公正な競争環境の確保のための取組みを進めつつ、MVNO事業の本来の役割に立ち返ってその事業モデルを進化させることに取り組んでいます。
まず、SIM事業の月額課金商品については、実際に使用した分だけお支払いいただく料金プランに一定の評価をいただいています。当連結会計年度の後半以降は、改正電気通信事業法の施行による短期的な影響として、携帯電話事業者のキャッシュバックを目的とする新規利用者が減少したことで売上成長が鈍化しましたが、引き続き、利用者の利便性の向上に着目し、MNOとの差別化を図ることのできる商品の拡充に取組みます。
SIM事業のプリペイド商品については、政府のインバウンド推進政策を受け、訪日旅行者向けの商品が順調な売上成長を続けてきました。当連結会計年度の第4四半期以降は、新型コロナウイルスの影響で売上が大幅に減少し、従前のレベルに回復するには相当の時間を要することが想定されますが、引き続き、在日旅行者向けの商品など、MNOとの差別化を図ることのできる商品の拡充に取組みます。
なお、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務及び在宅学習が広がり、テレワーク向け商品の需要が高まっています。当社は、機動的にサービス設計及び商品調達ができる強みを生かし、この分野の開拓を進める計画です。
また、MSP事業については、決済代行事業者向けクレジットカード情報非保持化支援サービスやモバイル専用線を用いたソリューション・サービスの提供を推進していきます。MSP事業には、改正電気通信事業法や新型コロナウイルスの感染拡大による影響はなく、むしろ、インターネットの活用が進み、セキュリティへの要請が高まるにつれ、商機は拡大するものと想定されます。当社は、引き続き、この分野の開拓を進めます。
③ 早期黒字化とのバランスを考慮した戦略的な取組み
当社は、早期の安定的な黒字化を目指す一方で、イネイブラー事業者として成長するための戦略的な取組みとして、FinTechプラットフォーム事業及びローカル基地局によるソリューション事業に注力しています。
まず、FinTechプラットフォーム事業に関しては、金融庁の「FinTech実証実験ハブ」を活用して平成30年8月から10月にかけて実証実験を行ったほか、平成30年11月にはサービス提供主体となるmy FinTech株式会社を、令和2年1月にはFinTechプラットフォームの肝となるサブSIMの開発及び供給を担うセキュアID株式会社を設立しました。現在は、電子認証局の構築準備や銀行システムとの接続検証を行い、FinTechプラットフォームの商用化に向けた準備を進めています。
また、ローカル基地局によるソリューション事業に関しては、日本においては周波数幅等の制約により現時点では十分な品質のサービスを提供することが難しいため、米国のCBRS(市民ブロードバンドサービス)の商用化を先行させ、米国で得た知見を日本の事業に活用する予定です。
これらの戦略的な取組みを断念すれば、早期の黒字化の実現は容易になりますが、それでは、当社がイネイブラー事業者として成長することができません。従って、当社は、早期黒字化とのバランスを取りながら、これらの戦略的な取組みを進めていく必要があります。当社マネジメントには、同様の課題に取り組んだ経験を持つ者が多く、着実に対処していけるものと考えています。
④ 優秀な人材の確保及び育成
当社がイネイブラー事業者として成長するための戦略的な取組みには、多種多様な調査や企画、さらに技術開発や事業開発が必要であり、これを担うことができる人材の確保及び育成が極めて重要となります。例えば、FinTechプラットフォーム事業に関して言えば、金融業界に関する法律、制度、経営課題、技術課題等、顧客の事業領域に対する一定の知見が必要です。当社グループは、そのために優秀な人材の採用を進めるとともに、採用した人材に会社の優先順位に応じた多様な業務を担当させることによって、様々なノウハウや技術を身に付けさせています。当社が直面する課題は前例のないもので、既に知識や経験のある企業がどこかに存在するわけではありません。一方、当社には、MVNO事業モデルを定着させるに至るまでに、法制度の活用、携帯事業者との交渉やネットワーク構築などを通じて培った経験とノウハウがあるため、これらを活用して人材を育成し、戦略的な取組みを推進していきます。
⑤ 技術開発及び設備投資等の先行投資資金の確保
財務上の課題としては、安定的な通期黒字化を実現するまでの技術開発及び設備投資等の先行投資のための資金の確保が挙げられます。当社は、平成28年1月の新事業戦略の策定後、同戦略を実現するための資金を確保する手段として、平成28年7月に日本通信株式会社第3回新株予約権(第三者割当て)を、平成30年3月に日本通信株式会社第4回新株予約権(第三者割当て)を、いずれもクレディ・スイス証券株式会社を割当先として発行しており、これらの新株予約権が行使されたことにより、これまでに3,704百万円の資金を調達しました。さらに、当社は、令和2年4月にクレディ・スイス証券株式会社を割当先として日本通信株式会社第5回新株予約権(第三者割当て)を発行しました。当社は、割当先が同新株予約権を行使する時期及び数量をコントロールすることができるため、当社の資金ニーズに応じ、株式価値の希薄化に配慮した柔軟な資金調達を実現することが可能です。
当社は、上記のような課題に取り組みながら、安全・安心な通信及びプラットフォームを提供する事業者として成長していく計画です。

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