有価証券報告書-第96期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 11:22
【資料】
PDFをみる
【項目】
189項目

対処すべき課題

(1)経営環境及び経営方針等
当社グループを取り巻く経営環境は、省エネルギーの進展等により国内エネルギー需要の減少傾向が続くなか、電力・ガスの小売全面自由化による競争が一層激化するなど、引き続き厳しい状況にある。当社グループは、2017年5月に公表した「新々・総合特別事業計画(第三次計画)」(新々・総特)に基づき、福島への責任を貫徹するとともに、非連続の経営改革をやり遂げ、企業価値の向上を実現していく。(http://www.meti.go.jp/press/2017/05/20170518004/20170518004-1.pdf)
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
新々・総特のとおり、賠償・廃炉に必要な資金を確保しつつ、2026年度以内に連結経常利益で3,000億円/年超、2027年度以降には4,500億円規模の利益水準を達成することを目指す。
(3)経営環境及び対処すべき課題等
小売事業の競争激化や原子力発電所の長期停止に加え、自然災害の激甚化・広域化に伴う防災・電力レジリエンスの強化、再生可能エネルギーの大量導入等による電源の分散化、さらには世界的な脱炭素・SDGsへの意識の高まり、ESG投資の拡大に伴う地球温暖化対策への要請など、事業環境や社会的要請は大きく変化している。
当社グループは一丸となって、これらの経営課題に対し柔軟かつ迅速に対処し、福島への責任の貫徹と収益力・企業価値の向上を実現していく。新型コロナウイルス感染症対策については、社会機能の維持に関わる事業者として、電力の供給や発電所の運営等に影響が及ばないよう、事業継続計画等に基づき適切に対応していく。
①当年度の施策
[ホールディングス]
<福島事業>イ.福島復興に向けた取り組み
当社は、被害者の方々に寄り添い、個別のご事情をお伺いしながら賠償をすすめ、当年度末までに累計9兆4,836億円をお支払いした。
本年3月の双葉町、大熊町及び富岡町の一部における避難指示の解除やJR常磐線の全線運転再開など、地域の復興が着実にすすむなか、線量測定のほか、除草、清掃・片付け、地域イベントの運営への協力などを行い、当年度末までに国や自治体による除染等への協力人数は累計39.6万人、復興推進活動への派遣人数は累計51.5万人となった。
また、引き続き、風評被害の払拭に向け、「発見!ふくしま」キャンペーンを展開し、首都圏の小売店や飲食店におけるフェアの開催、LINEやグルメ情報誌による情報発信などを通じて首都圏の消費者の方々に福島県産品の品質の良さをお伝えするとともに、小売店や飲食店における福島県産品のお取り扱いの拡大などに取り組んできた。
ロ.福島第一原子力発電所の廃炉
陸側遮水壁やサブドレン等の対策に加え、建屋屋根の補修や敷地舗装等の重層的な対策を実施し、汚染水の発生量を着実に低減したほか、建屋内に滞留する汚染水の浄化や作業環境の改善などをすすめてきた。
使用済燃料プールからの燃料取り出しについては、3号機において取り出し作業を開始した。また、地元企業のご協力のもと1・2号機の排気筒の解体をすすめたほか、燃料デブリの取り出しに向けた装置の開発など、廃炉プロジェクトを着実に推進してきた。
加えて、2018年に富岡町に開館した廃炉資料館の展示や発電所構内への視察受け入れ、情報誌の配布などを通じた廃炉の現状等に関する情報発信に引き続き取り組み、昨年12月に廃炉資料館への来館者は累計5万人を超えた。
また、昨年12月に改訂された中長期ロードマップの工程目標等を達成するため、本年3月、作業プロセスを具体化した「廃炉中長期実行プラン2020」を策定した。
<経済事業>ハ.柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けた取り組み
柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向け、引き続き新規制基準適合性審査に真摯に対応するとともに、安全を最優先に耐震補強や内部溢水対策などの安全対策工事を着実にすすめてきた。
また、社外への情報発信をより正確かつ迅速に行うため、IT技術を活用した業務プロセスの抜本的な見直しや当番体制の強化、継続的な訓練を実施した。さらに、地域の声を傾聴し、社会の目線で考える意識を高めることを目的として、柏崎市及び刈羽村の各戸訪問に発電所員全員で取り組んだ。
このほか、緊急時の対応については、多様なシナリオを用いた訓練を重ねることにより対応能力の強化をはかるとともに、昨年11月に行われた新潟県の原子力防災訓練においては、県への情報連絡や参加された住民の方々の避難支援、スクリーニング等の実施など、関係機関との相互連携の確認や防災技術の習熟に努めた。
ニ.持続的な成長の実現に向けた取り組み
脱炭素への意識の高まりなどにより事業環境が大きく変化するなか、当社グループの持続的な成長の実現に向け、「みらい経営委員会」での議論を踏まえて重点的に経営資源を配分する事業領域を定めるなど、グループ全体の事業ポートフォリオの再構築に取り組んできた。
また、電力会社とメーカーの垣根を越えた原子力発電事業の共同事業化の検討に関して、昨年8月に基本合意書を締結したほか、昨年10月には、中部電力株式会社と共同で、電動車両の充電インフラの整備等をすすめる会社を設立するなど、他社との協業・連携を推進してきた。
加えて、本年3月、世界最大の洋上風力発電事業者であるオーステッド社とともに、銚子沖洋上風力プロジェクトの推進に向けた会社を設立したほか、本年4月には、再生可能エネルギー発電事業を分社化するなど、再生可能エネルギーの主力電源化をめざした取り組みを加速してきた。
[フュエル&パワー]
イ.包括的アライアンスの完成
昨年4月、株式会社JERAへの既存火力発電事業等の統合が完了し、燃料上流・調達から発電、電力・ガスの販売にいたる一貫したバリューチェーンを確立した。
統合後の株式会社JERAは、国内LNG基地の一体運用などによる国内火力発電事業のコスト競争力の強化や、同社の強みを最大限に活かした新たな収益源の創出など、統合シナジーの早期発現に向けた取り組みをすすめている。
東京電力フュエル&パワー株式会社は、株式会社JERAの自律的かつ迅速な事業運営を尊重しながら、中部電力株式会社とともに、株主として事業計画策定への関与や事業計画の進捗に対するモニタリング、経営層との意見交換・助言を実施するなど、適切なガバナンスを行ってきた。
ロ.株式会社JERAの取り組み
株式会社JERAにおいては、事業統合の完了にあわせて、国内外の環境変化に的確に対応するため、組織体制を事業開発、最適化、O&Mの機能別に再編し、各機能の強化をはかるとともに、全体最適の実現に向けた取り組みをすすめてきた。
具体的には、保有する国内火力発電所のすべてにJERA式O&Mを導入し、さらなるコスト削減をはかったほか、スポットや短期のLNG取引に関する事業をEDFトレーディング社との共同出資会社に統合し、LNG取引やLNGポートフォリオの最適化を実施するなど、LNGバリューチェーンの高度化・効率化をすすめた。
加えて、台湾において出資参画している洋上風力発電プロジェクトの一つが昨年12月に商業運転を開始するなど、国・地域別のニーズにあった事業開発に取り組んできた。
[パワーグリッド]
イ.安定供給と託送原価低減の両立
電力供給の信頼度を確保したうえで、国際的にも遜色のない低廉な託送原価水準の実現をめざし、効率的でサステナブルな事業運営に取り組んできた。具体的には、カイゼン活動で磨き込んだ技術・技能やデジタル技術の活用により設備保全の省力化・自動化をはかるとともに、取引先との協働による調達改革に取り組むなど、バリューチェーンの最適化をすすめてきた。
昨年9月に襲来した令和元年房総半島台風への対応については、関係者の方々のご協力のもと、東京電力グループの総力をあげて停電の復旧に取り組んだ。また、東京電力ホールディングスが設置した社外有識者をアドバイザーとした検証委員会において、被害の発生原因や広報を含む復旧対応の検証、課題の抽出などを行い、今後の自然災害に備え、短期的・中期的に対応すべき事項を取りまとめた。
ロ.事業領域の拡大に向けた取り組み
地域や社会のみなさまの課題の解決につながる新たな価値の提供をめざして、送配電事業を支える電力設備や事業運営で培った技術・知見等を活用するとともに、他社や自治体等との連携をはかることにより、事業領域の拡大に取り組んできた。
具体的には、スマートメーター等を通じて得られるデータと他社や自治体等が保有するデータを組み合わせることによる新たなサービスの提供について検討をすすめたほか、本年3月には、電力設備の上空などを活用した全国共通のドローン航路プラットフォームを構築するための事業体を他社と共同で設立した。
また、グループ会社を通じて東南アジアのマイクログリッド事業へ出資参画し、国内で培った技術力をもとに事業開発をすすめるとともに、新事業の創出や人財育成にも取り組んできた。
[エナジーパートナー]
イ.成長領域の拡大に向けた取り組み
成長領域(ガス販売、新サービス、従来のサービスエリア外での電力販売)について、売上高4,500億円という目標達成に向け、全力で取り組みをすすめてきた。
ガス販売については、ご家庭のお客さま向けに電気・ガスのセット販売を推進するとともに、日本瓦斯株式会社などのアライアンス・パートナーを通じた販売拡大に努め、本年3月、ガス契約軒数が200万軒を突破した。
また、新サービスについては、エネルギー関連設備の設計・施工・保守などをワンストップで行うサービスの受注拡大などに取り組んできた。
従来のサービスエリア外での電力販売については、子会社であるテプコカスタマーサービス株式会社を通じた営業活動の強化をはかったことなどから、販売電力量(連結)は前年度に比べ13.2%増の126億kWhとなった。
これらの取り組みの結果、成長領域における当年度の売上高は、目標を上回る4,758億円となった。
ロ.多様なニーズにお応えするサービスの拡充
お客さまの多様なニーズにお応えしていくため、ご家庭向け電気料金メニューの提供エリアを順次拡大し、昨年11月には沖縄県を除く全国のお客さまに当社グループの電気をご利用いただけるようになった。
また、単に電気を販売することにとどまらず、新しい価値を提供するサービスの拡充にも取り組んできた。
具体的には、森ビル株式会社と共同で設立した会社を通じて虎ノ門地区の再開発エリアにおけるエネルギー供給事業を開始し、独自の配電網や最新鋭の自家発電システムなどを活用した防災性の高いエネルギーネットワークの構築等を実現した。さらに、再生可能エネルギーの利用に関するサービスとして、CO2を排出しない水力発電を活用した電気料金メニューの販売拡大をはかったほか、お客さまの工場と離れた場所に設置した太陽光発電の電気を融通し自家消費する新しいエネルギーサービス事業などを実施してきた。
(ご参考)
・再生可能エネルギーの主力電源化に向けて
本年4月1日、東京電力リニューアブルパワー株式会社が東京電力ホールディングス株式会社の再生可能エネルギー発電事業を承継し、再生可能エネルギー専業会社として第一歩を踏み出した。
世界的な脱炭素の流れを大きなビジネスチャンスととらえ、国内外における再生可能エネルギー発電の新規開発をすすめることにより、再生可能エネルギーの主力電源化をめざしていく。また、再生可能エネルギーの普及を通じて、クリーンでサステナブルな脱炭素社会の実現と地域に根差した産業の発展に貢献していく。
②優先的に対処すべき課題
[ホールディングス]
<福島事業>イ.「3つの誓い」に基づく賠償と復興に向けた取り組み
避難指示の解除等に伴い、被害者の方々の状況にさまざまな変化が生じていることを踏まえ、個別のご事情をより丁寧にお伺いするとともに真摯に対応し、引き続き「3つの誓い」に基づく迅速かつ適切な賠償を実施していく。
また、国や自治体などによる事業・生業の再建、まち機能の回復・活性化に貢献していくほか、帰還環境や生活環境の整備、帰還困難区域の復興に向けた取り組みにも人的・技術的協力を行っていく。
加えて、「風評被害に対する行動計画」に基づき、引き続き、イベントの開催やSNS等による情報発信を通じて福島県産品の品質の良さをお伝えするほか、小売店、飲食店等における福島県産品のお取り扱いの維持・拡大をはかるなど、福島県産品の流通のさらなる促進に取り組んでいく。
ロ.地域と共生した福島第一原子力発電所の廃炉の貫徹
長期にわたる廃炉の貫徹に向け、「廃炉中長期実行プラン2020」のもと、プロジェクト管理と現場・現物を踏まえた安全・品質管理の一層の機能強化をはかり、安全・着実かつ計画的に廃炉作業をすすめていく。
汚染水対策については、引き続き、重層的な対策を実施し、汚染水発生量のさらなる低減をめざすとともに、建屋内に滞留する汚染水の処理をすすめていく。多核種除去設備等処理水の扱いについては、引き続き、放射性物質の低減策や風評被害対策等について具体的にわかりやすくご説明するなど、地元をはじめとした関係者のみなさまの理解醸成に努めるとともに、今後、国から示される方向性を踏まえ、適切に対応していく。
使用済燃料プールからの燃料取り出しについては、2020年度内の3号機の取り出し完了に加え、2031年までに全号機の取り出し完了をめざしていく。また、2021年からの2号機の燃料デブリの試験的取り出し開始に向け、格納容器内部の調査や作業工程の具体化、取り出し装置の詳細設計等を行うとともに、1号機、3号機の燃料デブリ取り出しの準備をすすめていく。
加えて、「復興と廃炉の両立」を推進するため、本年3月に公表した「復興と廃炉の両立に向けた福島の皆さまとのお約束」のもと、オープンで透明なプロセスによる地元企業の廃炉事業への参画拡大や地元の人財育成、雇用の創出等に取り組み、地域と共生した廃炉の貫徹をめざしていく。
<経済事業>ハ.原子力発電事業の取り組み
脱炭素社会への対応や電力供給のレジリエンス強化などの観点から原子力発電の重要性が増すなか、当社は、福島第一原子力発電所の事故の反省と教訓を踏まえた「原子力安全改革プラン」に基づく安全改革を強力にすすめていく。また、厳しい自己評価のもと、本社と発電所が一体となり現場・現物を重視した安全・品質の向上や、情報の受け手の視点に立った「伝える」から「伝わる」への情報伝達の改善などをはかっていく。
柏崎刈羽原子力発電所については、再稼働に向け、安全対策工事を着実にすすめ、早期の工事完了をめざすとともに、新たな検査制度の開始を踏まえ、世界的なリスク管理手法の導入など自主的な安全性向上の取り組みをさらに活性化させていく。また、新潟県が策定した広域避難計画の実効性を高めるため、県との調整のもと、要員や資機材の提供など最大限の協力を行うほか、地域のみなさまの信頼やご理解が得られるよう、対話活動の充実をはかり、透明性をもって地域との共生・共創をすすめていく。
東通原子力発電所については、建設工事再開に向け、本格的な地質調査等を実施するとともに、他社との共同事業化の枠組みのなかで実現をめざしていく。また、地域に根差した積極的な情報発信や対話活動に努めることに加え、事業の環境や基盤の整備等を通じて、地域への貢献や協働等に取り組んでいく。
福島第二原子力発電所については、安全を最優先に全号機の廃止措置をすすめるとともに、福島第一原子力発電所の廃炉作業とあわせ、技術要員を確保・育成するほか、地元企業の参画等をはかっていく。
ニ.当社グループの事業戦略と収益力向上への取り組み
お客さまや社会からの要請やニーズが多様化するなか、地域に根差した事業活動を通じて、地域の特性を踏まえたお客さまのニーズをくみ取り、「脱炭素」や「防災」を軸とした新たな提供価値を見いだすとともに、事業の選択・集中等を大胆かつ迅速に実行することにより、ビジネスモデルの転換をはかっていく。
また、中長期的に利益を拡大し企業価値を向上させるため、再生可能エネルギー事業領域、モビリティ電化事業領域、データ・通信事業領域、海外事業領域などの領域において、オープンイノベーションをすすめながら、新たな事業を開発・展開していく。
こうした企業活動の転換を実現するため、社員一人ひとりがお客さまのために変革を恐れず挑戦する新たな企業文化を確立するとともに、非連続の経営改革を牽引する人財の確保・育成や組織・経営基盤の整備などを行っていく。さらに、デジタル技術の活用により、質の高いサービスの提供や業務プロセスの刷新に加え、ビジネスモデルや企業文化の変革にも取り組むなど、デジタルトランスフォーメーション(DX)を積極的に推進していく。
[リニューアブルパワー]
当面の主力事業である国内水力発電事業については、リパワリング工事による発電所の近代化・効率化、カイゼン活動を通じた作業停止期間の短縮、デジタル技術とデータの活用によるトラブルの未然防止などにより発電電力量をさらに増加させるとともに、揚水発電設備の強みである蓄電・調整力を活用し、収益性を向上していく。また、海外水力発電事業については、長年の国内水力発電事業で培った設計・建設、O&Mなどに関する技術力・ノウハウに加え、ベトナムやジョージアにおける事業開発実績なども活用し、開発ポテンシャルが高い国や地域において事業開発を推進していく。
洋上風力発電事業については、これまでの銚子沖での実証試験と実証機の商用化を通じて得た建設やO&Mの知見に加え、オーステッド社との共同開発を通じて得られるノウハウを活用して、海外を含めた地点開発や事業展開をすすめていく。
また、さらなる再生可能エネルギー発電事業の拡大に向けて、グリーンボンドの発行等による資金調達をはかるとともに、地熱、浮体式洋上風力発電等による再生可能エネルギー電源の多様化を検討していく。
これらの取り組みを通じて国内外に再生可能エネルギーを普及させ、クリーンでサステナブルな脱炭素社会の実現と地域に根差した産業の発展に貢献していく。
[フュエル&パワー]
株式会社JERAは、燃料上流・調達から発電、電力・ガスの卸販売にいたる一連のバリューチェーンにおいて、各事業領域の成長をはかるとともに、電源ポートフォリオの最適化や一体的かつ適切な経営管理などを行うことにより、競争力が高いエネルギー調達を実現し、お客さまに付加価値の高いエネルギーを安定的にお届けしていく。加えて、海外を中心として、LNGの調達から発電までを一体的に開発する事業(Gas to Power事業)や、再生可能エネルギーを含むIPP事業など、同社の強みを活かした戦略的な事業を実施することにより、企業価値を高めるとともに、環境に優しい社会の実現に貢献していく。
東京電力フュエル&パワー株式会社は、気候変動の緩和に向けた取り組みに対する要請の高まりや世界的な経済成長の鈍化に加え、新型コロナウイルスの影響による資源価格の変動など、株式会社JERAを取り巻く事業環境が急激に変化していることを踏まえ、同社の事業計画の策定への関与と事業計画の進捗へのモニタリングを一層強化していく。また、取締役会やトップ会談などにおける質の高いコミュニケーションを通じた適切なガバナンスを実施することにより、統合によるシナジーの早期発現を促すとともに、株式会社JERAの継続的な企業価値の向上をはかっていく。
[パワーグリッド]
自然災害が激甚化・広域化するなか、安定的かつ低廉な電力供給を支え続けるという使命を果たすため、デジタル技術の積極的活用や電力供給手段の多様化、電力業界内での技術・技能の共通化や設備仕様の統一、さらには国・自治体を含めた関係者との連携・協働の強化などをはかるとともに、計画的・効率的な設備の更新・革新を推進することにより、送配電ネットワークの健全性を維持しつつ強靭性を高めていく。
また、蓄電池などお客さまが有するエネルギーリソースの有効利用や、既存系統を最大限に活用した効率的な系統連系へのさらなる取り組みなどにより、再生可能エネルギー等の多様な電源を早期・多量に接続するための環境を整備し、脱炭素社会に向けた動きをリードしていく。加えて、電動車両やデータセンターの普及などの電化の促進により設備効率の向上をはかるほか、ドローンやスマートメーター等を活用した災害復旧の取り組みを地域とともにすすめるなど、新たな価値の創造に挑戦していく。さらには、人財、設備、データという面的に広がる経営資源を活用して地域・社会の方々と密にコミュニケーションをはかり、ニーズにお応えするプラットフォームの構築やサービスの拡充に取り組むことにより事業領域を拡大していく。
これらの取り組みにより経験やノウハウ、実績を蓄積し、グローバルトップレベルの送配電ネットワーク事業者としての地位を確立するとともに、それをもとに海外の送配電事業に参画するなど、さらなる成長を追求していく。
[エナジーパートナー]
国内のエネルギー需要が減少傾向にあるなか、価格競争の激化により、依然として厳しい経営環境が続いている。こうした状況を打開するため、変化し続けるお客さまのニーズをとらえた新たな価値をサービスとして提供していく取り組みを一層加速させ、お客さまに選んでいただける企業となることをめざしていく。具体的には、近年における自然災害の激甚化・広域化や世界的な脱炭素の潮流、働き方改革の推進等の社会変化などを背景としたお客さまのエネルギーに対する多様なニーズを丁寧にお伺いし、「安心」や「再エネ」、「省エネ」、「省力化」を提供価値の中心に据えた質の高いサービスを提供していく。
法人分野においては、「省エネ」、「省力化」等の価値の提供として、空調・熱源設備に加え、受変電設備や非常用発電設備、蓄電池などを含めたユーティリティ設備全体のエネルギーサービスなどを展開していく。また、環境へ配慮されるお客さまに対しては、「再エネ」の価値の提供として、当社グループの再生可能エネルギーやグリーン電力証書を組み合わせた提案などを幅広く行っていく。
ご家庭分野においては、電気・ガス・水回りの不具合に対して24時間対応するサービスを広く提供するとともに、災害時の備えとしても有効な太陽光発電や蓄電池、電動車両等を含めた電化を積極的に提案することなどにより、「安心」で快適なくらしの実現に貢献していく。
(注) 本項においては、将来に関する事項が含まれているが、当該事項は提出日現在において判断したものである。