有価証券報告書-第99期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/29 9:34
【資料】
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【項目】
165項目

対処すべき課題

当社の2022年度の収支・財務状況は、世界的な燃料価格や卸電力市場価格の高騰等に加え、2022年8月以降、規制料金を含む低圧料金の燃料費調整制度における平均燃料価格が上限価格を超過したことなどにより、電力供給コストが電気料金収入を大きく上回る状態が続き、大幅に悪化した。
このような状況のもと、当社は抜本的な業務効率化と業務変革を目指したカイゼン活動・DX(デジタルトランスフォーメーション)などを通じ、全社を挙げて経営基盤の強化に取り組んできた。
2022年度の連結経常損益は、期中の燃料調達において市場価格よりも割安な調達に努めるなど経営効率化の深掘りに取り組んだものの、燃料価格の上昇や卸電力市場価格の上昇に伴う電力調達費用の増加などにより、前連結会計年度に比べ430億82百万円減の292億51百万円の損失となった。
当社は厳しい収支・財務の状況下においても、経営の健全化を図り、燃料の安定的な調達や電力設備の保全に的確に対応することで電力の安定供給を継続していくため、高圧・特別高圧のお客さまについて2023年4月から電気料金の値上げを実施するとともに、規制部門の小売電気料金の値上げについて経済産業大臣から認可をいただき、6月から低圧自由料金のお客さまも含めた電気料金の値上げを実施した。
<「ほくでんグループ経営ビジョン2030」における利益・財務・環境目標>
項 目2030年度までに目指す目標
連結経常利益第Ⅰフェーズ(泊発電所の再稼働前) :230億円以上/年
第Ⅱフェーズ(泊発電所の全基再稼働後):450億円以上/年
連結自己資本比率15%以上を達成し、さらなる向上を目指す
CO2排出量発電部門からのCO2排出量を2013年度比で50%以上低減(△1,000万t以上/年)

また、脱炭素化に向けた取り組みとして『ほくでんグループ「2050年カーボンニュートラル」を目指して』を公表し、その実現に向けて最大限挑戦していくこととした。「発電部門からのCO2排出ゼロ」を目指すとともに、さまざまな分野で電化の流れを創出する好機と捉え、グループワイドでの収入拡大につなげていく。
さらに、脱炭素化と経済の活性化や持続可能な地域づくりを目指して北海道が推進する「ゼロカーボン北海道」の実現に向け、幅広い連携や協働を実践していく。
[2023年度の取り組み事項]
(1) 経営基盤の強化
① 収入拡大に向けた取り組み
多くのお客さまに「ほくでん」をお選びいただけるよう、電気のご利用状況に合わせた料金プランのご紹介などお客さまのご負担軽減につながる販売活動に取り組んでいく。ご家庭向けには、省エネに資するヒートポンプ機器を暖冷房と給湯に、IHクッキングヒーターをキッチンでご利用いただく「スマート電化」をおすすめしていく。法人のお客さま向けには、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)プランナーとして道内最多の実績を活かし、幅広い業種の建物に対して省エネのコンサルティングを行っていく。
エネルギーに関する課題を解決するサービス(エネルギーソリューションサービス)として、2023年3月に開業した「エスコンフィールドHOKKAIDO」では、エネルギーの調達から運転・保守、管理までを一括して提供するESP(エネルギーサービスプロバイダ)事業を展開している。また、脱炭素化に取り組まれている事業者さまに対して、PPAサービス※などの提供により再生可能エネルギー由来の電気を供給していく。EV(電気自動車)の普及拡大に向けては、2023年2月に集合住宅向けのEV充電スタンドの導入から運用までをワンストップで実施するサービスを開始するなど、取り組みを推進している。加えて、道内に進出する大規模な最先端半導体製造工場と関連企業への対応や、データセンターをはじめとする脱炭素エネルギーを求める道外企業誘致に、迅速かつ的確に取り組んでいく。
※当社が再生可能エネルギー発電設備をお客さま敷地内外に所有・設置し、発電した電力をお客さまへ
供給するサービス(Power Purchase Agreement)
② 効率化・費用低減に向けた取り組み
社長を委員長とする経営基盤強化推進委員会のもとで、抜本的な業務効率化・業務変革を目指し、さらなる深掘りに取り組んでいる。
カイゼン活動では、収入拡大や費用低減の影響が大きい複数の取り組みについて、経営トップの視点を加えた役員指定プロジェクトとして立ち上げ、確実に取り組みを推進する。DXについては、投資対効果が高い案件や業務高度化案件を優先して実施していく。また、調達検討委員会において資機材調達コスト低減等の取り組みを進めている。
燃料価格の変動に対しては、市況の動向を注視し、長期契約・スポット調達の組み合わせや価格決定方式の多様化、デリバティブ取引の活用などにより、価格変動リスクの分散・回避に努めていく。また、自社による発電と電力市場取引による電気の調達を経済合理性の観点から最適に組み合わせることで費用低減を図っていく。
(2) 泊発電所の早期再稼働と安全性向上に向けた取り組み
原子力発電は、燃料供給の安定性、長期的な価格安定性を有するなど、電力の安定供給の確保に資するとともに、技術的に確立した脱炭素電源としてカーボンニュートラルの実現に向けて最大限貢献する重要な基幹電源である。
2022年10月、泊発電所の新規制基準の適合性審査において、「震源を特定せず策定する地震動評価」について「おおむね妥当な検討がなされている」との評価をいただいた。引き続き、早期再稼働の実現に向けてその他の審査項目についても総力を挙げて対応するとともに、審査の状況や当社の取り組み等についても積極的に情報発信していく。
福島第一原子力発電所のような事故を決して起こさないとの強い決意のもと、原子力事故のリスクを一層低減するよう継続的に取り組んでおり、毎年、「泊発電所安全性向上計画」を策定している。新規制基準への適合はもとより、「世界最高水準の安全性」を目指し、不断の努力を重ねるとともに、泊発電所の安全性についてご理解いただけるよう努めていく。
(3) 電力の安定供給確保に向けた取り組み
S+3E(安全性の確保を大前提に、エネルギーの安定供給、経済効率性、環境適合)の観点からバランスの取れた、競争力のある電源構成の構築に取り組むとともに、2050年のカーボンニュートラルを見据えた電源構成の検討を進めていく。
当社及び送配電事業を担う北海道電力ネットワーク株式会社は、2022年7月までに北海道と道内全179市町村の間で「大規模災害時における相互協力に関する基本協定」を締結した。本協定に基づき、各自治体との連携を一層強化し、災害対応力のさらなる向上を図ることで、災害時における停電の早期復旧に向けた体制を整え、グループ一体となって北海道内における電力の安定供給とレジリエンス(災害等に対する回復力・復元力)向上に取り組んでいく。
北海道電力ネットワーク株式会社においては、レジリエンスを強化し、安定供給の確保と再生可能エネルギーの接続拡大を両立する次世代型電力ネットワークの構築に向けて取り組んでいくとともに、北海道と本州を結ぶ長距離海底直流送電に関する国の検討についても、技術的課題などの検討に協力していく。
(4) カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み
発電における脱炭素化に向けては、泊発電所の早期再稼働を目指すとともに、再生可能エネルギー電源の導入拡大を進めている。2023年度は、風力発電事業について道内各地で風況調査を実施し事業化の検討を進めるとともに、森発電所に続く地熱発電事業の展開に向け、京極町において他企業と共同で開発調査を進めていく。
2023年1月、CO2を回収、有効活用、貯留するCCUS(Carbon Capture,Utilization and Storage)の実現に向け、苫小牧エリアにおいて事業拠点や強みを有する企業と共同で検討を開始することとした。
水素の利活用に向けては、苫小牧市において2023年5月に運用を開始した水の電気分解による水素製造装置について、再生可能エネルギー余剰対策としての設備性能評価を行うとともに、寒冷地における運用・保守技術の確立を図り、将来の水素社会の実現に向けた各種検討を進めていく。当社は、道内外の企業と連携し、水素サプライチェーン構築の早期実現、将来的には北海道が国産クリーン水素活用のパイオニアになることを目指していく。
(5) ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組み
ほくでんグループは「人間尊重・地域への寄与・効率的経営」の経営理念のもとで持続的な成長を続けていくために、ESGを重視している。
発電における脱炭素化、電化拡大など需給両面での取り組みにより、カーボンニュートラルの実現に向けて最大限挑戦するとともに、CO2排出量の削減方策など環境関連情報を積極的に開示し、ステークホルダーのみなさまとの対話を推進していく。林業・木材産業の人材育成支援等を目的とした植樹に加え、2023年4月には、「G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合」に合わせ開催された「環境広場ほっかいどう2023」で、ほくでんグループの「2050年カーボンニュートラル」への挑戦や、環境・SDGsの取り組みなどを紹介した。
北海道の未来を担う小学生を対象にSDGs教育の支援を目的とした出前授業を実施しており、今後も地域に密着した支援を積極的に行っていく。また、北海道の発展こそがほくでんグループの事業基盤になるとの認識に立ち、地域課題の克服や経済の発展に向けて自治体や地域の企業と連携する「共創」の取り組みを進めていく。
2023年3月、「ほくでんグループ人権方針」を制定し、事業活動に関わるすべての方々の人権を尊重することを表明した。この方針に基づき、人権尊重の取り組みをさらに推進していく。
また、2023年3月、当社と北海道電力ネットワーク株式会社は、「健康経営優良法人(ホワイト500)」に4年連続で認定された。従業員満足度、エンゲージメントを維持・向上する施策を実施し、誰もが生きがいや働きがいをもって能力を十分に発揮できる環境を確立していく。あわせて、当社の原動力である従業員の能力を最大化するため、多様な背景を持つ従業員がそれぞれの個性や違いを認め合い、個々の特性を活かしていく取り組み(ダイバーシティ&インクルージョン)を進めていく。
2022年6月の株主総会における決議をもって「監査等委員会設置会社」に移行したことにより、重要な業務執行の権限を取締役会から取締役に委任し、意思決定及び業務執行の迅速化とガバナンスのさらなる向上を図っている。コーポレートガバナンスのさらなる充実により、事業環境の変化に的確に対応するとともに、持続的な企業価値の向上に努めていく。
当社は、以上の取り組みを通じて企業価値の向上を図るとともに、北海道の発展と持続可能な社会の実現に貢献していく。
なお、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであるが、将来に関する事項については、有価証券報告書提出日現在において判断したものである。