有価証券報告書-第96期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 9:27
【資料】
PDFをみる
【項目】
167項目

対処すべき課題

当社においては、電力の安定供給の確保に努めながら、営業活動の強化、「総合エネルギー企業」として多様なサービスの提供を通じた収入拡大、カイゼン活動等を通じた一層の生産性向上に取り組んできた。しかし、泊発電所の停止が長期化していることに加え、競争の激化などにより、厳しい経営環境が続いている。
2019年度の連結経常利益については、高圧検針日変更による影響や償却方法の変更などによる減価償却費の減少などはあったが、水力発電量の減少による燃料費の増加や、安定供給に万全を期すための設備経年化への対応などによる修繕費の増加に加え、法的分離や収入拡大のための基盤整備費用の支出などもあり、326億円となった。
本年4月に送配電部門を北海道電力ネットワーク株式会社として分社化し、大きな転換点を迎えるなか、今後の経営環境の変化に着実に対応していくため、「ほくでんグループ経営ビジョン2030」を取りまとめた。
ほくでんグループは、「人間尊重・地域への寄与・効率的経営」の経営理念のもと、ESG(環境・社会・ガバナンス)をこれまで以上に重視し、北海道の経済やお客さまの暮らしを支え、事業の持続的な成長と持続可能な社会の実現に努める。
<「ほくでんグループ経営ビジョン2030」における主な経営目標>
項目2030年度までに目指す経営目標
連結経常利益第Ⅰフェーズ(泊発電所の再稼働前) :230億円以上/年
第Ⅱフェーズ(泊発電所の全基再稼働後):450億円以上/年
連結自己資本比率15%以上を達成し、さらなる向上を目指す

[2020年度の取り組み事項]
(1) 経営基盤の強化
① 収入拡大に向けた取り組み
北海道内の電力小売においては、新電力との競争など事業環境が厳しさを増すなか、お客さまに当社を選択いただけるよう引き続き積極的な営業活動を展開していく。
ご家庭向けには、「エネとくポイントプラン」などの料金プランをおすすめするとともに、会員制Webサービス「ほくでんエネモール」や家族見守りサービス等の付加価値サービスのさらなる充実に取り組む。多様化するお客さまの要望にスピード感を持って応えるため、昨年9月に設立した北海道電力コクリエーション株式会社とともにさまざまな事業者とのアライアンスに取り組む。
また、本年3月から開始した首都圏におけるご家庭向けの電力販売にも取り組んでいく。さらに、「スマート電化」をはじめとする高効率電化機器による省エネ・省CO2で快適な暮らしをお客さまに提案し、電力需要の拡大を図る。
法人のお客さまには、お客さまのご使用状況に応じた料金プランの提案のほか、法人向けの電化提案、省エネ診断サービス等のソリューション営業を強化し、当社を選択いただけるよう取り組みをさらに進める。
ガス供給事業については、タンクローリーによるLNG供給に加え、都市ガス事業への早期参入に向けた検討を進め、2030年度までに10万t以上/年の供給を目指す。また、エスコンフィールドHOKKAIDOなどにおいて、エネルギーの調達から運転・保守、最適エネルギー管理までを一括して提供するESP(エネルギー・サービス・プロバイダー)事業を展開するなど、「総合エネルギー企業」として多様なニーズに応え、「エネルギーのことならほくでん」とのお客さまの信頼を獲得していく。新たに道内外における再生可能エネルギー発電事業や、地域における課題解決にも取り組む。
② 費用低減に向けた取り組み
北電グループ経営基盤強化推進委員会のもと、グループ一体となって資機材調達コストの低減や「カイゼン活動」の取り組みを拡大し、抜本的な効率化・コスト低減の取り組みをさらに加速させていくとともに、従業員の意識改革と一層の生産性向上を目指す。電源の競争力の確保に加え、CO2排出削減も見据えて、石狩湾新港発電所(LNG火力)2号機の建設や経年化の進んでいる火力発電所の廃止の検討などを進める。また、IoTなど新技術の活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みの推進などにより、設備保守の高度化・効率化や設備関連費用の低減につなげる。
(2) 泊発電所の早期再稼働と安全性向上
当社は、泊発電所を供給の安定性や収支・財務、環境面などに寄与する重要な基幹電源と考え、安全の確保を大前提に早期再稼働の実現に向けて新規制基準適合性審査への対応を進めている。目下の最優先課題である敷地内断層の活動性評価については、昨年11月に泊発電所において行われた原子力規制委員会による現地調査及びそれ以降にいただいたコメントに対し、できるだけ早く審査会合等で説明していく。また、残る課題についても、原子力規制委員会の理解を得られるよう総力をあげて取り組んでいく。
福島第一原子力発電所のような事故を決して起こさないとの強い決意のもと、原子力のリスクを一層低減させるため、「泊発電所安全性向上計画」を策定している。新規制基準への適合はもとより、「世界最高水準の安全性」を目指し、不断の努力を重ねるとともに、北海道のみなさまに泊発電所の安全性をご理解いただけるよう努めていく。
(3) 電力の安定供給確保に向けた取り組み
当社においては、S+3E(安全性の確保を大前提に、エネルギーの安定供給、経済効率性、環境適合)の観点から、バランスの取れた電源構成の構築に取り組んでいく。本年4月に送配電部門が分社化した「北海道電力ネットワーク株式会社」は、今後も中立性、公平性を保ちながら北海道における電力の安定供給を担っていく。それぞれの役割をしっかりと果たし、お客さまのもとへ低廉で良質な電気を、安全かつ安定的に供給していく。
また、平成30年北海道胆振東部地震後の北海道全域停電の教訓を忘れることなく、安定供給の確保とレジリエンス(災害等に対する回復力・復元力)の向上に向けた対策を着実に実施していく。
(4) ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組み
低炭素社会の実現に向けて、2030年度までにグループ発電部門からのCO2排出量を2013年度比で半減以上とすることを目指し、泊発電所の早期再稼働や再生可能エネルギー発電の拡大、LNG火力発電所の活用などを進める。再生可能エネルギーに関しては、2030年度までに30万kW以上の増加を目指し、メキシコや釧路・岩見沢における太陽光発電事業への参画を決定した。地域の林産資源を活用したバイオマス発電事業にも参画しており、昨年5月に下川町で発電所の運転を開始したほか、当別町においては当社が出資している北海道バイオマス株式会社が、新たな発電設備の建設を開始した。また、株式会社グリーンパワーインベストメントとの連携協定に基づく石狩湾における洋上風力発電事業などを進めている。
経営環境が大きく変化するなかで、当社が変わらぬ使命を果たしていくための一番の原動力は人であると考え、「カイゼン活動」による業務効率化や、適正な労働時間管理、休暇取得推進を通じた「働き方改革」を進め、健康の保持・増進や従業員の働きがいの向上を図る。また、人材の多様化や女性活躍推進などを通じて、従業員の能力を最大限に発揮できる職場づくりを進める。
また、「ほくでんグループの成長は北海道の発展とともにある」との認識に立ち、地域の課題の克服や経済の活性化に向けた「共創」の取り組みを進めていく。北海道エアポートグループの事業へ参画するほか、地方自治体、他企業、大学などとの連携によるオープンイノベーションを積極的に推進し、新技術・知見を活用した新たなビジネスにつなげていく。
コンプライアンスのさらなる徹底を図るため、不断の取り組みを進め、信頼の醸成にも努める。「コーポレートガバナンス・コード」の趣旨に則り、ステークホルダーのみなさまに適時・適切な情報開示を行うとともに、透明・公正かつ迅速果断な意思決定を支えるコーポレートガバナンスのさらなる充実を図る。
新型コロナウイルス感染症の影響が拡大するなか、「電力」という重要な社会基盤を預る事業者として、道民のみなさまに安心して電気をお使いいただくため、感染防止に取り組むとともに体制を整備し、グループ一丸となって事業継続に万全を期していく。
当社は以上の取り組みを進め、今後も持続的な企業価値の向上を図っていく。
なお、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものである。