有価証券報告書-第94期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/28 9:39
【資料】
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【項目】
126項目

対処すべき課題

当社は、「ずっと先まで、明るくしたい。」をブランド・メッセージとする「九電グループの思い」のもと、「低廉で良質なエネルギーをお客さまにお届けすることを通じて、お客さまや地域社会の生活や経済活動を支える」ことを使命に、事業活動を進めている。
電力・ガスの小売全面自由化に続き、2020年には送配電部門の法的分離が控えるなど、経営環境が変化する中、当社は、「九州電力グループ中期経営方針」に基づき、原子力発電所の早期再稼働、収支改善対策、小売全面自由化を勝ち抜くための取組みなどに、最大限の努力を傾注してきた。
また、昨年6月には、2021年度までの財務目標を掲げることで、経営姿勢をさらに明確にし、経営革新への取組みを一段と加速させている。
今後も「日本一のエネルギーサービスを提供する企業グループ」を目標として、全力を挙げて以下の取組みを推進し、お客さまから信頼され、選ばれ続ける企業を目指していく。
「九州電力グループ中期経営方針」
○ 2030年のありたい姿
○ ありたい姿に向けた3つの戦略の柱
○ 財務目標
(連結ベース)
項 目目 標
自己資本比率(2021年度)20%程度
経常利益(2017~2021年度平均)1,100億円以上
成長投資(2017~2021年度累計)4,200億円

(注) 財務目標については、2017年6月に公表
(1) 九州のお客さまのエネルギーに関する様々な思いにお応えする
○ 電力の安定供給については、電力設備の着実な保全、設備形成を図り、安全・安定運転を徹底していく。
原子力発電については、経営の最重要課題として、特定重大事故等対処施設の設置などに関する国の審査に、グループ一体となって対応するとともに、更なる安全性向上のための自主的かつ継続的な取組みを進めていく。
また、火力発電については、松浦発電所2号機の開発を着実に進め、競争力と安定性を備えた電源を確保していく。
さらに、再生可能エネルギーについては、地熱や水力などの開発を積極的に進めるとともに、電力の安定供給を前提に、太陽光などの受入れ拡大に努めていく。
これらの取組みを進めるにあたっては、将来の環境変化に柔軟に対応できるよう、各種電源によるバランスの取れた供給体制を構築していく。
○ エネルギーサービスの提供については、「電気をお届けする」会社から多様な「エネルギーサービスを提供する」企業グループを目指し、お客さまのニーズにお応えできる最適なサービスメニューを、グループ一体となってお届けしていく。
具体的には、お客さまとの接点を活かした「顔の見える営業」により、お客さまのライフスタイルにあわせた料金プランや日々の生活のお困りごとを解決する「九電あんしんサポート」、オール電化に加え「きゅうでんガス」などを展開していく。
(2) 九電グループの強みを活かして、成長市場で発展していく
○ 海外電気事業については、本年、世界最大規模の地熱発電所であるインドネシアのサルーラ地熱発電所が全号機営業運転を開始した。今後も、電力需要の増加が見込まれるアジアを中心に電気事業の拡大を図るとともに、米国で建設中のバーズボローガス火力発電事業へ参画するなど、欧米の案件にも取り組んでいく。
さらに、海外コンサルティングについても、海外事業の開発力強化に向け、引き続き、積極的に展開していく。
○ 九州域外における電気事業については、関連会社の株式会社千葉袖ケ浦エナジーが、石炭火力発電所開発に向けた環境影響評価の手続きを着実に進めている。
また、九電みらいエナジー株式会社が実施している関東エリアでの電力販売については、引き続き、他社との提携による営業強化に努めていく。
○ 再生可能エネルギー事業については、地熱や水力を中心に開発を進めるとともに、下関バイオマスエナジー合同会社を設立し、国内最大級の木質専焼のバイオマス発電所の開発を進めるなど、安定供給や環境への影響を考慮しながら国内外で積極的に展開していく。
(3) 強固な事業基盤を築く
○ 事業の基盤となる人づくりについては、競争時代を勝ち抜くことができるよう、組織変革を主導する人材を獲得・育成するとともに、一人ひとりが能力を最大限に発揮するためのダイバーシティ推進の取組みも進めていく。また、「九州電力健康宣言」のもと、従業員の健康保持・増進に取り組んでいく。
さらに、組織づくりについては、急速な事業環境の変化へ迅速・柔軟に対応できる組織・業務運営体制の構築を目指していく。
○ 財務基盤・競争力については、財務目標に定めた自己資本比率などの目標を達成するため、海外電気事業をはじめとする成長事業への投資などによる収益の拡大や、徹底した効率化による競争力強化に取り組むことで、収支の改善、財務基盤の回復を図っていく。

○ 安全・安心の追求については、当社グループの事業に関わるすべての人たちの安全を守り、その先にある安心と信頼につなげるため、「九電グループ安全行動憲章」を制定し、憲章に基づく継続的な教育・訓練などを通じて、当社グループが目指す安全の永続的な理解・浸透を図っていく。
特に、原子力については、自主的・継続的な安全対策に取り組むとともに、地域の皆さまの安心と信頼を高めていくため、分かりやすい情報発信やフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーション活動を継続していく。
○ CSR(企業の社会的責任)経営については、法令遵守はもとより、誠実かつ公正な行動により、社会から信頼される事業運営を徹底していく。
また、迅速で分かりやすい情報発信を徹底し、事業活動の透明性を高めていく。さらに、社会とのコミュニケーション活動を強化し、いただいた声を事業運営に的確に反映するとともに、事業活動や社会貢献活動を通じて地域・社会の課題解決に貢献していく。
本年2月には、再生可能エネルギーの積極的な導入や、「九電みらい財団」による地域と協働した環境保全活動などが評価され、第27回地球環境大賞の「経済産業大臣賞」を受賞しており、これを契機に、一層、環境に配慮した取組みを進めていく。
今後、経営環境が急激に変化する中でも、当社グループが持続的に成長するため、これら3つの戦略の柱の着実な遂行に加え、新たな収益源の獲得を目指した「未来の事業」の取組みを進めていく。
○ グループ全体のイノベーションを推進し、新たな事業やサービスを生み出す「KYUDEN i-PROJECT」に取り組んでおり、本プロジェクトの事業化第一弾として、音声端末との対話による家電操作などを実現するIoTサービスを開始する。
また、本年7月に、本プロジェクトの取組みを加速させるための専任組織である「インキュベーションラボ」を設置し、事業化に向けたスピード感のある検討、有望案件への機動的な人員配置などに取り組んでいく。
当社としては、これらの取組みを通じて、ステークホルダーの皆さまへの価値提供を果たしていく。
(文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したもの)