有価証券報告書-第95期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/27 16:40
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対処すべき課題

当社グループは、「ずっと先まで、明るくしたい。」をブランド・メッセージとする「九電グループの思い」のもと、「低廉で良質なエネルギーをお客さまにお届けすることを通じて、お客さまや地域社会の生活や経済活動を支える」ことを使命に、事業活動を進めている。
昨今の経営環境は、2016年4月の電力小売全面自由化、2017年4月のガス小売全面自由化が開始されたことに加え、2020年4月には送配電部門の分社化(法的分離)が予定されているなど、大きな転換期にある。
世界に目を向けると、経済・社会・環境問題などの地球規模の社会的課題の解決を通じて、全ての人々にとって、より良い世界・未来を創り、次世代につなげていこうというESGやSDGsの意識が高まっており、これらを実現するため、企業への期待も大きくなっている。
また、国内においては、人口減少や少子高齢化の進行に加え、都市部への一極集中により、社会的・経済的な地域格差が拡大するなど、様々な社会的課題が深刻化しつつある。
こうした中、九州が保有するポテンシャルを活かした地域・社会の持続的発展に向けて、当社グループがどういった貢献ができるかを示し、地域とともに発展・成長していくという私たちの姿勢を発信するため、本年6月に「九電グループ経営ビジョン2030」を策定した。
今後、この経営ビジョンのもと、全力を挙げて以下の取組みを推進し、お客さまから信頼され、選ばれ続ける企業グループを目指していく。
「九電グループ経営ビジョン2030」
○ 2030年のありたい姿

○ ありたい姿実現に向けた戦略

○ 経営目標

(参考)⦅九州電力グループ中期経営方針で定めた財務目標(2017年6月公表)⦆
(連結ベース)
項 目目 標
自己資本比率(2021年度)20%程度
経常利益(2017~2021年度平均)1,100億円以上
成長投資(2017~2021年度累計)4,200億円

(1) エネルギーサービス事業の進化
低炭素で持続可能な社会の実現に挑戦し、より豊かで、より快適な生活をお届けする
○ 環境に優しいエネルギーを低廉かつ安定的にお届けし続ける。
「低廉で良質なエネルギーを安定してお客さまにお届けする」という変わらぬ使命を永続的に持ち続け、グループ一体となって、エネルギーの安定供給の責任を果たすとともに、S+3Eの観点から、最適なエネルギーミックスを追求する。
再生可能エネルギーについては、地熱や水力などの開発を積極的に進めるとともに、下関バイオマスエナジー合同会社を設立し、国内最大級の木質専焼バイオマス発電所の開発を進めるなど、安定供給や環境への影響を考慮しながら国内外で積極的に展開していく。
原子力発電については、安全を大前提として、最大限活用するとともに、経営の最重要課題として、特定重大事故等対処施設などの早期完成に向けて、引き続き最大限の努力を傾注するなど、原子力諸課題(安全・安心の追求、使用済燃料貯蔵対策、廃止措置など)に真摯に向き合い、解決していく。
火力発電については、本年12月営業運転開始予定の松浦発電所2号機の開発を着実に進め、競争力と安定性を備えた電源を確保していく。
また、ESGの視点を重視し、環境にやさしく、利便性に優れた電気の良さや価値を、より多くのお客さまに感じていただくために、あらゆる分野で電化を推進し、九州の低炭素化を図る。
○ エネルギー情勢やお客さまニーズの多様化など、環境変化を先取りし、エネルギーサービスを進化させる。
本年4月には、4基の原子力発電所が再稼働したことと経営効率化の取組状況を反映して、電気料金を値下げするとともに、お客さまのニーズを捉えた「すくすく赤ちゃんプラン」、「IJUターン応援プラン」の2つの料金プランを創設した。今後も、お客さまにお選びいただけるよう、お客さまとの接点を重視した「顔の見える営業」を展開するとともに、低廉な電気料金や魅力ある料金プランの提供など、エネルギーサービスの充実を図ることにより、競争力の強化に取り組む。
九州域外における電気事業については、域外での電力販売による収益拡大に向け、安定・安価な電源確保を目的に、千葉県袖ケ浦市における火力発電所の開発について、引き続き、事業性を考慮した検討を進めていく。また、九電みらいエナジー株式会社が実施している関東エリアでの電力販売についても、他社との提携を含め営業強化に努めていく。
海外電気事業については、昨年5月、世界最大規模の地熱発電所であるインドネシアのサルーラ地熱発電所が全号機営業運転を開始した。また、昨年5月に米国のクリーンエナジーガス火力、昨年8月に米国のサウスフィールドエナジーガス火力発電事業、本年5月にタイのエレクトリシティ・ジェネレーティング・パブリック・カンパニー社の経営に参画した。今後も、参画事業に関するリスク管理機能を強化するとともに、電力需要の増加が見込まれるアジアでの開発案件に加え、早期に収益貢献を果たせる欧米案件にも積極的に取り組んでいく。
送配電事業については、一層の公平性・透明性・中立性を確保しつつ、保全・運用業務の効率化・高度化などにより、安定供給とコスト低減の両立を実現する。また、電力の安定供給のために実施している太陽光などの出力制御については、出力制御量の最小化に向け、これまでにシステムを開発することにより、九州から本州への再エネ送電可能量拡大に取り組んだ。今後も、再エネの普及や効率的な設備運用を目指し、ネットワーク技術の高度化を推進する。
(2) 持続可能なコミュニティの共創
九州各県の地場企業として、新たな事業・サービスによる市場の創出を通じて、地域・社会とともに発展していく
○ 地域・社会の課題解決に向けて、挑戦者としてあらゆることに取り組むという姿勢の下、当社グループの強みを活かせる「ICTサービス」、「都市開発・まちづくり」、「インフラサービス」を中心に取り組む。
「都市開発・まちづくり」については、当社は他企業とコンソーシアムを組み、昨年12月に福岡市青果市場跡地活用事業における事業者に正式選定された。また、「インフラサービス」についても、民間委託が進む空港運営事業に取り組んでおり、本年4月から福岡空港の運営事業を開始したほか、熊本空港でも来年4月からの事業開始に向けて準備を進めるなど、当社グループの強みを活かした事業を展開していく。
また、「ビジネスサポート」や「ライフサポート」にも取り組みつつ、地域特性を踏まえ、「観光関連」や「一次産業関連」などの領域にも挑戦し、九州の更なる成長・活性化に向けてグループ一体となって新たな市場の創出に取り組む。
○ 取組みにあたっては、デジタルトランスフォーメーションを進めるとともに、他企業とのアライアンスを積極的に推進することで、外部の知見を取り入れ、新たな価値を創造する。
(3) 経営基盤の強化
経営を支える基盤の強化を図り、グループ一体となって挑戦し、成長し続ける
○ 安全・健康・ダイバーシティを重視した組織風土をつくる。
安全については、当社グループの事業に関わるすべての人たちの安全を守り、その先にある安心と信頼につなげるため、「九電グループ安全行動憲章」を制定しており、憲章に基づく継続的な教育・訓練などを通じて、当社グループが目指す安全の永続的な徹底を図っていく。特に、原子力については、自主的・継続的な安全対策に取り組むとともに、地域の皆さまの安心と信頼を高めていくため、分かりやすい情報発信やフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーション活動を継続していく。また、本年2月に廃止を決定した玄海原子力発電所2号機についても、今後、1号機と併せて、地域の皆さまとのコミュニケーションを密にしながら、安全を最優先に廃止措置を進めていく。
健康については、「九州電力健康宣言」のもと、従業員の健康保持・増進の取組みを進めるとともに、より一層の労働環境の整備を行い、労働生産性・働きがいの向上に向けた働き方改革に全社を挙げて取り組んでいく。
事業の基盤となる人づくりについては、一人ひとりが能力を最大限に発揮するためのダイバーシティ推進の取組みを進めるとともに、オープンなマインドセットを持ったプロフェショナルな人材を育成する。
○ 働きがいのある職場を永続的に追求する。
風通しの良い組織・風土づくり、日常業務の改善・改革、デジタルトランスフォーメーションなどにより、創造的で付加価値の高い業務を行い、それぞれのライフスタイルにあった働き方で、やりがいを持って活き活きと働くことができる職場を追求する。
○ ステークホルダーからの信頼向上に継続的に取り組む。
当社グループの持続的成長と企業価値の向上に向け、様々な事業活動を行う上での基盤となるコーポレート・ガバナンスの体制構築・強化に継続的に取り組むとともに、CSR(企業の社会的責任)経営と迅速で分かりやすい情報発信を徹底していく。さらに、国際社会全体の「持続可能な開発目標」であるSDGsをはじめ、社会から解決を求められている課題について、九州地域の交流人口拡大につながる地域活性化への貢献や、九州の豊かな自然を守る環境活動の実施などに、当社グループの経営資源を活用し、積極的に取り組んでいく。
また、組織づくりについては、社会のニーズや経営環境変化に迅速・柔軟に対応できる組織・業務運営体制の構築を目指していく。
加えて、株主価値向上に向け、財務体質を改善し、株主還元の更なる充実に取り組むとともに、ビジネスパートナーとの強固な信頼関係をベースにグループ一体となって事業を推進する。
当社グループとしては、これらの取組みを通じて、ステークホルダーの皆さまへの価値提供を果たしていく。
(文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したもの)