有価証券報告書-第166期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/26 13:08
【資料】
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【項目】
72項目

対処すべき課題

(1)経営の基本方針
当社グループは、2013年3月に完了したAegis Group plc(以下、「イージス社」。2013年3月26日付でDentsu Aegis Network Ltd.に商号変更。商号変更後の同社を指す場合は、以下「電通イージス・ネットワーク社」)買収により、本格的なグローバル・ネットワークへと変貌を遂げました。これを機に、2013年度を初年度とする中期経営計画「Dentsu 2017 and Beyond」を策定いたしました。
近年、さまざまな技術革新が進展し、消費者の行動様式が様変わりする中、多くの企業において、それぞれのマーケティング活動における個々の施策を有機的に結び付けなければ、十分な成果を上げることが困難になりつつあります。こうしたマーケティング・コンバージェンスが進展する中、当社グループは、あらゆる顧客の企業価値向上に貢献する、世界で最も先端的なグローバル・ネットワークへの進化を目指してまいります。
この基本方針のもと、現行の中期経営計画では、以下に掲げる4つの戦略骨子を定めました。
・ グローバルでのポートフォリオ多極化
・ デジタル領域の進化と拡大
・ ビジネスプロセスの革新と収益性の向上
・ コア・コンピタンスである日本市場での更なる事業基盤強化
(2)目標とする経営指標
2017年度の数値目標を以下のとおり設定いたしました。
・ 売上総利益のオーガニック成長率 3~5%(年平均成長率)
・ 売上総利益に占める海外事業構成比 55%以上
・ 売上総利益に占めるデジタル領域構成比 35%以上
・ 調整後オペレーティング・マージン 20%以上
(注)調整後オペレーティング・マージン=調整後営業利益÷売上総利益
なお、当期から従来の日本基準に替えてIFRSを適用しております。これに伴い、オペレーティング・マージンについては、従来の「のれん等償却前営業利益」に替えて、「調整後営業利益」をもとに算出することといたしました。目標数値については変更しておりません。
また、2015年度から当社および決算日が12月31日以外の子会社の決算日を12月31日に変更する予定です。したがって、2015年12月期は、当社および決算日が12月31日以外の子会社は2015年4月1日から2015年12月31日までの9ヶ月決算、決算日が12月31日の子会社は従前どおり2015年1月1日から2015年12月31日までの12ヶ月決算となる予定です。
(3)会社が対処すべき課題と経営戦略
①グローバルでのポートフォリオ多極化
当期における海外事業の売上総利益のオーガニック成長率は10.3%と、前期に引き続き競合他社を上回る成果を達成することができました。これにより売上総利益に占める海外事業構成比は、前期より4.0ポイント上昇し、50.7%となりました。
この力強い成長の背景には、
・当社グループにおける海外事業独自のビジネスモデル「One P&L」によって、各グループ会社が、共通の事業目標を掲げ、シームレスな連携を実現し、優位性の高い統合的なクライアント・サービスを提供できていること
・これに基づき、異なる機能を有する各グループ会社が協力、連携し、一丸となってクライアントのニーズに対応したサービスをワンストップで提供することにより、既存クライアントからのビジネス拡大に加え、新規アカウント獲得が堅調に進んでいることがあると考えています。
今後も、当社とイージス社がこれまでに築いてきた顧客基盤を足がかりに、デジタル領域やスポーツ・コンテンツ・ビジネスでの強みをグローバル展開すると同時に、M&Aの活用によって全世界において競争力を有するグローバル・ネットワークの整備、拡充に努めてまいります。
②デジタル領域の進化と拡大
当期の日本におけるデジタル領域の売上総利益は、前期比12%増と二桁成長を続けています。
海外においては、当期もさまざまなデジタル領域でのM&Aを実施しました。通年で行ったM&Aのうち、約半数の11件がデジタル領域におけるものでした。近年、デジタル領域の成長を加速させているのが、プログラマティック・トレーディングです。プログラマティック・トレーディングとは、さまざまなデータに基づき、広告主のニーズに応じ、ユーザーの関心度に合わせて、種々のメディアの広告枠を自動的に買い付ける取引方式です。当社グループでも、海外においてこの領域の事業を手掛けるAMNETは、当期の売上高が前期に比べ倍増いたしました。M&Aと内部成長の結果、海外事業のデジタル比率は、前期から2ポイント増加し、43%となっております。
これにより、当社グループ全体でのデジタル比率は、2017年度目標の35%に向けて、前期から3ポイント上昇し、30%に達しております。
デジタル領域においては、今後もM&Aを積極的に活用し、ケーパビリティとサービス品質の向上に努めてまいります。
③ビジネスプロセスの革新と収益性の向上
当期の調整後オペレーティング・マージンは、前期を下回る計画を立てておりました。これは、海外事業において、ITとファイナンス分野のサービス向上を目的としたインフラの強化、シェアードサービス導入に向けた先行投資を進めるためです。この海外事業におけるインフラ強化に向けた一連の投資は、費用の大きな上振れもなく、当初の予定通り順調に進行しました。
また、国内事業においても、原価低減に向けた取り組みが着実に進行しており、継続的なコスト・コントロールの成果もあり、国内事業の調整後オペレーティング・マージンは23.9%と、前期比0.2ポイント改善させることができました。
国内・海外ともにトップラインの成長を図ると同時に、中期経営計画の目標の一つとして定める「調整後オペレーティング・マージン20%以上」の恒常的な実現に向けて、引き続き業務効率の改善とコスト・コントロールに取り組み、グループ全体の収益性を高めてまいります。
④コア・コンピタンスである日本市場での更なる事業基盤強化
当社グループの最大の強みは、日本における強固な事業基盤であることに変わりありません。当期の国内事業は、消費税増税後の消費の落ち込みや増税前の駆け込み需要の反動減が懸念される中、前期の高い伸びにもかかわらず、プラス成長を達成しました。
日本においてもマーケティング・コンバージェンスは一層進展しております。当社グループは、こうした環境変化を踏まえ、既にCRM、ビジネス・インテリジェンス、ECといった領域においても、ケーパビリティの強化を図っております。
こうした領域におけるビジネスの一層の拡大と、プロモーションやクリエーティブ領域でのさらなるサービス品質の向上、さらには、マスメディア・ビジネスにおける競争力を一層強化し、クライアントの成功を多面的に支援する「パートナー」へ進化するべく、より多様な領域において、課題解決力と収益創出力を高めてまいる所存です。
また、当社は、昨年、一般財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会から、同組織委員会のマーケティング専任代理店として指名されました。これにより当社は、マーケティングプランの策定やスポンサーセールスなどを支援しております。スポンサーセールスについては、当期中に9社のゴールドスポンサーが決定するなど、順調に進んでおり、引き続き、同組織委員会のマーケティング・パートナーとして、その務めを果たしてまいります。
日本においては、好調な企業業績や賃金上昇、雇用改善を背景に、少しずつ個人消費の回復の兆しが見えてまいりました。こうした経済環境も追い風に、市場の伸びを上回る成長を実現していきたいと考えております。
⑤グローバル・ネットワークとしてのCSR活動の推進
当社グループは、2013年にCSRの国際規格であるISO26000をベースに、全世界の電通グループの経営者および従業員が社会的な責任を果たすための行動内容を示すCSR基本理念「電通グループ行動憲章」を制定しました。そして当憲章のもと、コーポレート・ガバナンス、人権の尊重、労働環境の整備、環境保全、公正な事業慣行、消費者課題の解決、コミュニティ発展への寄与の「7つの重点領域」を基本フレームにCSR活動に取り組んでいます。
また、国際的な枠組みでの活動を視野に入れて2009年から参加している国連グローバル・コンパクトでは、ジャパン・ネットワーク幹事社の一翼を担い、他業種のメンバー企業とともにグローバルな視点から社会課題の抽出・検討などの活動を進めています。
当期は、イージス社が2010年に発表した中期CSR計画「Future Proof」をグローバル規模で継続的に展開する電通イージス・ネットワーク社との連携を深め、チャリティー・プログラムや環境負荷低減の取り組みなど共同で活動を展開しました。
今後は、グローバル・ネットワーク全体でCSR課題に対してより高い意識の向上を図るとともに共通のCSR中期計画を策定し、コミュニケーション領域におけるグローバル・リーディンググループとして、サステナブルな社会の実現を目指し、事業領域と自主的な活動の双方において、より積極的なCSR活動を推進していきます。
個別活動の詳細については「電通CSRレポート」(http://www.dentsu.co.jp/csr)をご参照ください。