有価証券報告書-第51期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/25 11:29
【資料】
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【項目】
172項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、「夢ある未来を、共に創る」という経営理念を掲げるとともに、この経営理念を実現するために、「人を大切にします。」「確かな技術に基づく、最高のサービスを提供します。」「世界と未来を見つめ、成長し続けます。」という3つの約束を掲げております。この経営理念の下で、お客様の、そして社会の抱える様々な課題を、先進のITサービスと斬新なアイディアで解決すると共に、ITを通して新たな価値を生み出し、お客様と社会が求める未来を「共に創る」ことで、未来に向けて成長しつづけることを目指しております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、事業の継続的拡大を通じ、当社企業価値のさらなる向上を目指すという観点から、現時点におきましては、以下を経営の最重要指標として考えております。
a. 「営業利益」及び「EPS」の拡大
b. 「営業利益率」及び「ROE」の向上
(3) 中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
(ⅰ) 中期経営計画の進捗
国内のITサービス市場は緩やかな成長が継続すると想定される一方、企業のIT活用ニーズの多様化、システムの「所有」から「利用」へのパラダイムシフト、慢性的な国内の技術者不足等の市場の状況に対応すべく、ITサービス企業の構造変化が求められております。当社では、こうした市場の変化を積極的な成長機会と捉え、2015年4月より、中期経営計画において以下の3つの基本戦略を推進しております。
・基本戦略
① サービス提供型ビジネスへのシフト
受託開発に代表される労働集約的な従来型のビジネスモデルから、技術者の供給力に依存しない、サービス提供型ビジネスへのシフトを推進しております。これにより国内の技術者不足に対応し、顧客の多様なITニーズに応えるとともに、会社の成長余力を確保し、中期経営計画で目指す高成長、高収益企業の実現に向け取り組んでおります。また、これまでに培った知的財産や、業界固有の業務オペレーションにかかるノウハウを活かした共同利用型や従量課金型のITサービスを提供する等、当社ならではのオリジナリティのある高付加価値サービスの創出や、顧客との長期安定的な関係を通じたビジネス拡大により、市場競争力の向上に努めております。
<サービス例>- 次世代コンタクトセンターと多言語AIチャットボット「Desse」
スマートフォンやWebの普及による電話やメール、SNS等の複数チャネルからの問い合わせに対する円滑なカスタマーサポートを実現する次世代コンタクトセンターに加え、音声認識システムやAI技術を組み合わせた自動回答システムの提供により、あらゆる製品・サービスにおけるユーザーサポートの効率化を実現しております。
- 流通業向けオムニチャネル・サポートサービス「Next Trend」
Web、EC、コンタクトセンターに代表される「オムニチャネルシステム」をはじめ、セールス&マーケティング領域の「分析・計画・施策実行サービス」、CRM、顧客管理等の「データ連携・管理分析基盤」等をトータルサポートしております。
② 時代の変化を捉えた戦略的事業の推進
当社が強みを発揮できる領域や成長産業に対して、その将来性や成長性を見極めながら経営リソースを重点配分し、将来的な中核事業の育成に取り組んでおります。
<車載システム事業>当社は、日系自動車メーカーにおける車載システム開発での豊富な開発実績を有しており、これを活かし、開発の品質や効率を高めるモデルベース開発(MBD)にいち早く着手し、年々事業を拡大しております。これに加え、車載ソフトウェアの標準アーキテクチャ規格である「AUTOSAR(オートザー)」に準拠する、リアルタイムOS搭載の国産車載BSW「QINeS BSW(クインズ ビーエスダブリュー)」を独自開発し、2015年10月より、製品販売及び構築支援サービスの提供を開始しております。当社は、車載システム基盤であるBSWと車載システム開発を支えるMBD支援サービスをフルラインで提供できる企業として、要員体制の拡充と研究開発及び事業投資を推進し、日本の自動車産業の競争力強化に貢献していきます。
③ グローバル展開 第2ステージ
顧客企業の海外進出に伴うIT需要、すなわち、日本企業が、企業活動の場を国内中心としつつも海外に拡大していくという中で発生するITサービス需要(「グレータージャパニーズマーケット」と定義)を取り込むべく、日本流の高い品質基準で支援していくことをグローバル戦略として掲げ、売上高に占めるグローバルビジネスの比率を高めるべく事業推進しております。2018年10月には、ベトナム最大手のIT企業であるFPTコーポレーション(本社:ベトナム ハノイ)とアジア太平洋地域におけるITサービス事業での包括的協働パートナーシップに関する覚書を締結しました。アジア太平洋地域においては当該パートナーシップを通じて、技術者供給能力やサービス領域の拡大を実現し、事業拡大を推進してまいります。
(ⅱ) デジタル変革への対応
昨今のAIやIoTといったデジタル技術の革新を受け、顧客企業においては、従来の業務効率化を目的としたIT投資のみならず、これを活用した事業競争力の強化や、事業モデル変革(デジタルトランスフォーメーション:DX)を企図した攻めのIT投資需要が拡大基調にあります。また、デジタル技術をトリガーに、業界の壁を超えた企業間共創によって、従来の枠組みにとらわれず、新たな事業やサービスを生み出そうとする動きが活発化しております。このような市場変化に対応すべく、当社は、従来からのコア事業の高度化に挑み、DX分野への経営資源シフトを実現させるとともに、同分野における事業基盤を強化し、顧客企業との共創や、新たなサービスやソリューションの展開を通じた顧客への新たな価値提供を目指してまいります。
① ものづくり革新による事業高度化
これまで推進してきた、全社横断的に利用可能な当社独自のソフトウェアエンジニアリング環境の構築と、同環境を用いた「作らない開発」や「構築しないインフラ」への取り組みを加速すべく、2019年4月に「ものづくり革新推進センター」を新設しております。同センターを中心にコア事業の高度化を推進し、更なるコア事業拡大とDX事業への経営資源のシフトを、ともに実現してまいります。
② DX分野の事業基盤強化
当社は2018年11月に「DX事業化委員会」を設立し、DX分野における戦略立案や事業化を推進しております。これに加え、2019年4月にデジタル技術や技術活用知見の拡大、デジタル人材増強等のDX事業基盤強化を担う専任組織「DXセンター」を新設しております。同センターをDX事業推進の中核組織と位置付け、デジタル技術を活用した顧客のビジネスモデルやビジネスプロセス変革の支援や、当社の知的財産を活かした新たなサービスやソリューション開発、また、顧客や、親会社である住友商事㈱との共創による新たな事業創出に取り組んでまいります。
③ Plug and Playとのパートナーシップ契約の締結
当社グループ全体の既存サービスや技術領域の深化・拡大を目的に、2018年11月に、スタートアップを大手企業とともに支援していく世界トップレベルのグローバル・ベンチャーキャピタル/アクセラレーターであるPlug and Play(本社:米国シリコンバレー)とのパートナーシップ契約を締結しております。Plug and Play米国本社からの知見や情報を得るとともに、主にDX分野における事業機会の創出を目指してまいります。
(ⅲ) 人材育成と働く環境の整備
国内のITサービス市場の変化とともに求められるIT人材の質は多様化し、従来の課題解決型人材に加え、顧客企業のイノベーションを支援する、また、顧客とともに新たな価値創出に挑む、いわゆる価値創造型人材への需要の高まりが予想されます。当社では、市場変化に応じた人材育成施策を実施していくことに加え、一人ひとりの社員が能力と個性を発揮し、いきいきと働くことで、お客様へ提供する付加価値が増大し、その結果としての当社の好業績や成長がステークホルダーの皆様への利益還元となる好循環を生むと考えております。そのため、社員が能力発揮しやすい、働く環境の整備に力を注いでおります。
その一つとして、残業時間の低減や有給休暇の取得促進、自宅等での勤務を推進する「リモートワーク」等を中心にした働き方改革や、健康経営に取り組んでおります。また、働き方改革においては、仕事と育児・介護の両立支援や、副業・兼業制度の導入、社員一人ひとりのキャリア形成支援をサポートする制度の整備・拡充、年齢や性別、障がいの有無や国籍等を問わずに働ける環境の整備等にも活動の範囲を広げ、継続的に推進しております。
これらの取り組み及びその成果が評価され、経済産業省が主催する「100選プライム」において、全社的かつ継続的なダイバーシティ経営に取り組む企業として選定されております。また、日本経済新聞社「日経Smart Work大賞2019」にて人材活用力部門賞、及び厚生労働省主催のテレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)にて、特別奨励賞を受賞いたしました。加えて、経済産業省と東京証券取引所が共同主催する「健康経営銘柄」及び「なでしこ銘柄」へ5年連続で選定される等、各方面からの評価をいただいております。