有価証券報告書-第56期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/20 15:01
【資料】
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【項目】
142項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 当社を取り巻く事業環境と対処すべき課題
国内のITサービス市場は、生成AIやブロックチェーン、クラウドコンピューティング、モバイルテクノロジーをはじめとする急速なテクノロジーの進化、データ分析技術の進化に伴うデータ活用の重要性の増加、データ流出やサイバー攻撃などのセキュリティリスクの増加など、企業のIT戦略、IT投資に質的変化が生じ、ビジネスとITの関係は一層密接になっております。
ITサービス企業は、これらの環境を踏まえ、常に新しい技術を取り込み、自社製品・サービスの継続的な提供価値の向上、革新的な製品・サービスの創出が求められております。また、事業環境の変化が加速し、先を見通すことが難しい「不確実な時代」に持続的に成長していくためには、事業分野、事業モデルの再構築による自己変革が重要となります。
このような事業環境の変化の中、当社は経営理念「夢ある未来を、共に創る」に立ち返り、「サステナビリティ経営」を実践していく上で、優先的に取り組む領域を決めて共有するために「マテリアリティ(重要課題)」を策定し、当該方向性を踏まえた2030年の目指す姿としてグランドデザイン2030を策定しました。このグランドデザイン2030の実現に向け2023年4月に第二期の計画となる「中期経営計画(FY2023-FY2025)」を発表いたしました。
<マテリアリティ>当社グループの事業と当社グループならではの強み、社会へ対して果たすべき役割から、以下7つのマテリアリティを策定しております。
・社会課題解決を通じた持続的な事業成長・持続的な成長を支える基盤
・豊かな未来社会の創造・地球環境への貢献
・安心・安全な社会の提供・多様なプロフェッショナルの活躍
・いきいきと活躍できる社会の実現・健全なバリューチェーンの確立
・透明性の高いガバナンスの実践


<グランドデザイン2030>グランドデザイン2030では、お客様やパートナーと共に社会課題の解決に貢献するビジネスを創り出すことによって、「2030年共創ITカンパニー」の実現を目指しています。
目指す姿の実現に向けて、当社グループの本質的な企業力を向上するべく、経済価値と社会価値、人的資本価値等の非財務要素を包含した企業価値である“総合的企業価値”の飛躍的な向上を図るとともに、従来とは非連続な価値創出を前提に社会課題の解決をリードする一流の会社を目指すことを意図する「売上高1兆円への挑戦」を掲げ、具体的な実現へのステップである中期経営計画に取り組んでいます。

<中期経営計画>中期経営計画(FY2023-FY2025)は、グランドデザイン2030の実現に向けた第二期の中期経営計画として位置付けており、事業分野・事業モデルの再構築を進め、当社グループ発で新たな価値を提供する領域に積極的に取り組むことに加えて、収益性・生産性の高い事業モデルへのシフトを進めます。また、社員の能力を最大限に発揮できる業務環境の整備や事業分野・事業モデルの選択・構築を行うことで、社員一人ひとりの市場価値の最大化に取り組んでいきます。それらの推進に向けた具体的な取り組みをグループ基本戦略として取りまとめています。
<グループ基本戦略>“総合的企業価値”の飛躍的な向上に向け、
・お客様や社会に対して、新たな価値を提供し続けるため、事業分野、事業モデルを再構築する
・社員の成長が会社の成長ドライバーと認識し、社員一人ひとりの市場価値を常に最大化する

(基本戦略1)事業シフトを断行~3つのシフト~
① 顧客市場 - 成長力ある事業領域へのシフト
② 提供価値 - 高付加価値分野へのシフト
③ 事業モデル- 高生産性モデルへのシフト
(基本戦略2)成長市場において、市場をリードする事業を推進
(基本戦略3)社会との共創による「次世代デジタル事業」を創出
(経営基盤強化)
① 技術ドリブン推進
② 人材価値最大化
③ 共感経営の推進
(成長投資)
3年間で1,000億円規模の積極的な投資を実行
(経営指標)
・財務目標
持続的な成長に向けた事業分野・モデルの再構築により高収益成長を実現
<2026年3月期>- 営業利益:650億円
- 営業利益率:12.5%以上
- ROE:14%
・株主還元
<2026年3月期>- 配当性向:50%
(2)中期経営計画の進捗
本中期経営計画を、「2030年 共創ITカンパニー」に向けた第二期として位置付け、第一期(FY2020-FY2022)の基本戦略の施策を収益化・業績貢献に繋げるべく、本中期経営計画における3つの基本戦略、経営基盤強化により推進いたします。
●基本戦略1:事業シフトを断行~3つのシフト~
•事業環境の変化に対応し持続的な成長に向け、事業分野・事業モデルを再構築いたします。
•収益率の向上とともに、持続的成長への投資余力・成長余力を創出いたします。
(取り組み例)
① 成長力ある事業領域へのシフト
組織ごとに対象領域を決め、事業の選択と集中を実施し、全社レベルで成長力ある事業領域(製造領域、モビリティ、セキュリティなど)へ要員をシフトし、個別リスキリング施策を実施しております。また全社でも、成長力ある事業領域への対応力を高めるべく、デジタルスキル標準教育を行っております。
② 高付加価値分野へのシフト
システム開発における上流工程へのシフト、及び、上流工程を担う高度人材の育成・獲得に取り組んでおります。また、提供価値に見合った取引価格へと、単価の適正化の取り組みが順調に進展しております。
③ 高生産性モデルへのシフト
生成AI活用による開発生産性向上に向けて、要件定義から運用、営業支援、企画・分析まで、各工程における適用検証を、全社の推進事項として実施しております。
●基本戦略2:成長市場において、市場をリードする事業を推進
•クラウド・デジタル活用にて成長を期する市場・技術領域において、当社グループの保有する強みをもとに、市場成長への貢献と共に、当社グループの高成長を実現いたします。
•現有リソースにとらわれないリソース集中、先進技術を組織的に活用、継続的に対象事業を見出します。
●基本戦略3:社会との共創による「次世代デジタル事業」を創出
•コア事業の知見を活かし、従来とは非連続な「次世代デジタル事業」、社会へ新たな価値創出をリードいたします。
•当社グループ「マテリアリティ」を起点とした領域における継続的な事業の開拓・挑戦を行います。
(基本戦略2及び基本戦略3の取り組み例)
・金融領域において、AML(Anti-Money Laundering)専業子会社「SCSK RegTech Edge㈱」が、2022年6月に成立した「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図る為の資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」における為替取引分析業の許可を第1号業者として取得しました。SCSK RegTech Edge㈱は、当社事業を承継し、金融犯罪対策ソリューション「BankSavior®シリーズ」製品のサービス提供を主軸に、長年にわたり培ってきた金融犯罪対策業務の知見と経験をもとに、ますます巧妙化が進む犯罪組織の手口に対応し、専門特化した組織においてさらなる知見の蓄積と高度なサービスを提供してまいります。
・セキュリティ領域において、サイバーセキュリティ対策に特化した専業子会社「SCSKセキュリティ㈱」を設立し、事業を開始いたしました。セキュリティの専門家として、プロダクト事業とサービス事業の両輪で、お客様のサイバーセキュリティにおける課題解決を支援してまいります。
●経営基盤強化
「技術ドリブン推進」
先進技術獲得による新たな価値創出・事業開拓、社会実装に向けた高度先進技術者の拡充を行うとともに、長年蓄積された業務ノウハウ・著作物等の知財化、全ての顧客フロントでの顧客課題解決に向けた活用促進による知財価値の向上、ファンド出資等を通じたベンチャー企業との協業等のオープンイノベーションの推進を一層強化いたします。
「人材価値最大化」
本中期経営計画の方針である「社員の成長が会社の成長ドライバーと認識し、社員一人ひとりの市場価値を常に最大化する」の実現のため、多様な人材が活躍できるよう、ダイバーシティ&インクルージョンの実践、Well-Being・健康経営の推進、事業戦略と人材ポートフォリオの最適化、処遇・報酬制度等による基盤整備を行います。
「共感経営の推進」
会社・トップマネジメント・リーダーと社員の双方が“共感”することで、一人ひとり、あるいは一企業では成し得ない、大きく・新たな価値を生む原動力となることを踏まえ、共感経営を推進してまいります。
(経営基盤強化取り組み例)
・AIの戦略的専門組織として「AI CoE」ならびに「SCSK AI Integration Lab.」を設立し、自社事業における AI 適用、及びお客様向けの AI 導入支援を加速いたします。お客様への価値提供を通じて蓄積された技術、及びAI をはじめとした、当社グループが将来を見据え、先行して習得・蓄積する先進技術を起点に、主体的にお客様や社会のデジタル化に貢献してまいります。
・持続的な人的資本の向上や確保の推進に取り組んでおり、事業戦略に連動した人材ポートフォリオを策定し、デジタル先進技術者や高度デジタルスキル人材等の育成とその能力を発揮する場を整備しております。また、当社独自の「SCSK Well-Being Score」を定義、社員のWell-Beingの実感度を測る重要な指標として、可視化の推進・改善サイクルを実行し、働きやすい、働きがいのある会社へのステージアップを目指しております。