有価証券報告書-第18期(平成26年1月1日-平成26年12月31日)

【提出】
2015/03/26 16:29
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【項目】
98項目

業績等の概要

(1)業績
当連結会計年度におけるIT業界では、「クラウドコンピューティング」の本格的普及や、スマートフォンをはじめとする「モバイル端末」の利活用が一層の進展を見せ、新しい形態・領域におけるサービスの活用が急速に広がってまいりました。
当社グループでは5年前からクラウド分野へ重点投資を継続しており、適時に製品・サービスを市場に投入してまいりました。その結果、グループウェアのクラウド版「サイボウズ Office(以下、Office)」の売上高が前年比約1.8倍、同じくクラウド版「Garoon」が同1.6倍の伸びとなりました。一方、パッケージ版の製品では、クラウドへの移行が売上の下押し圧力となる状況ではありましたが売上高(「Office」と「Garoon」の合計)は微増となりました。
このようにクラウド投資の成果が見え始めたことを受け、当社グループのクラウドビジネスを一層強固なものとし同事業を加速させるため、売上高経常利益率を一時的に低下させてでもクラウド事業への先行投資を優先させることを引き続き実施してまいります。
上記方針の下、当社グループは、クラウド事業の拡大及びグループウェア製品の機能強化に向け以下のような取り組みを行ってまいりました。
1.エコシステム推進への取り組み
自社開発のクラウド基盤「cybozu.com」で稼動するソフトウェアを中心に、販売パートナーやアプリ開発パートナーをはじめ、SI、ITコンサルティング、教育・支援などを行う多様なパートナーとの連携を進める取り組みを行ってまいりました。こうした外部との共存共栄を目指した「生態系(エコシステム)」を発展させることに注力いたしました。
そうした活動の一つとして、業務アプリ構築クラウド「kintone」を他のシステムと連携させるためのAPIの強化や、データ処理のパフォーマンス向上といった機能の拡充とともに、多様なパートナー・プログラムの提供を開始いたしました。販売パートナー向けのプログラムはもちろんのこと、アプリ開発を行うパートナー向けのプログラムも充実させてまいりました。技術者向けコミュニティサイト「cybozu.com developer network」には、1,200名を超える開発者にご登録いただき、日々Tipsやサンプルプログラムの共有を活発に行っています。有志の方が企画運営してくださっている勉強会「kintone Café」は、北海道から沖縄まで20回以上開催され、パートナーが提供する公式アライアンスソリューションは60種類を超えました。短納期でシステムを開発できる「kintone」は、SI業界に新しいビジネスモデルを生み出しており、「定額でのシステム開発」や「来店型のアプリ作成サービス」が起こりつつあります。
2.継続的な機能改善への取り組み
当連結会計年度も各製品の機能改善・強化を継続して行ってまいりました。
○「Office」は、半年に一度のマイナーバージョンアップで機能を進化させ続けています。最新バージョンでは、「商談進捗管理」「クレーム管理」などの業務アプリケーションを自由に作成できる「カスタムアプリ」のデザインや表示を強化いたしました。また、β版として公開していたリマインダー、「Cybozu Desktop」バージョン2.0を正式版としてリリースいたしました。
○エンタープライズグループウェア「Garoon」は、4年ぶりにパッケージ版のメジャーバージョンアップをいたしました。先行して新機能を提供しているクラウド版で特にユーザーから評価の高かったスマートフォン専用画面や、組織の事前設定機能を追加したほか、メールやスケジュール、管理機能を中心に改良し、合計64件の機能追加及び機能改善を行いました。その結果、カスタマイズニーズの高いお客様に対する訴求力が高まり、大規模組織での導入も順調に増加しています。
○業務アプリ構築クラウド「kintone」は、複数の JavaScript や CSS をパックで適用できるプラグインの追加により、「kintone」の機能拡張や他クラウドサービスとの連携が、より簡単に実現できるようになりました。当連結会計年度においては、クラウド版「Garoon」スケジュール機能との連携やクラウド版「メールワイズ」連携等のプラグインを公開いたしました。「kintone」は2011年11月の販売開始より、短いサイクルでの機能追加・品質向上を継続してきました。今後も、「kintone」をさらに便利にご利用いただけるよう、アップデートを実施する予定です。
○無料グループウェア「サイボウズLive」は、チャット機能を追加したことで、情報の整理(ストック)とリアルタイムコミュニケーション(フロー)の両面をカバーするサービスとなりました。現在、登録者数は100万人を超え、企業間をつなぐプロジェクトに加え、NPO、大学・教育機関、同人活動、PTAなど、多種多様なチームの「情報共有のプラットフォーム」としてご利用いただいています。
3.信頼性の強化への取り組み
当連結会計年度も引き続き注力した活動の一つが、製品及びサービス、そして当社グループ自身への信頼を高める取り組みでした。
「cybozu.com」を中心とするクラウドシステムの信頼性強化には重点を置いて取り組みを進め、セキュアな環境の実現、セキュリティ向上に対して継続的な投資を行いました。社内のセキュリティ・エンジニアの育成や第三者機関による定期的な検証に加え、「脆弱性報奨金制度」を常設しました。その結果、昨年は約100名の高度な技術をもったエンジニアに発見いただいた81件の脆弱性を改修できました。制度は見直しを行い、今年も継続して実施してまいります。
こうした取り組みを進める中、当社のグループウェアは、ノークリサーチ社「2014年版中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」グループウェア部門において8年連続シェアNo.1を獲得いたしました。企業としても、「日経コンピュータ」誌 (発行:株式会社日経BP) が発表した「顧客満足度調査 2014-2015 グループウェア部門」及び「自治体ITシステム満足度調査 2014-2015 グループウェア部門」において、第1位を獲得いたしました。
また、Great Place to Work® Institute Japan が主催する2014年「働きがいのある会社」ランキングにおいて、ベストカンパニーの1社として選出されました。当社グループでは、従業員が満足して働くことが、顧客満足の向上、企業価値の向上につながると考えています。今後も社員の能力を最大限に発揮できる環境作りに引き続き取り組んでまいります。
上記活動を通じて、当社グループの製品・サービスは利用者層を順調に拡大してまいりました。
2011年11月に提供を開始したクラウドサービス「cybozu.com」は、提供開始から3年余りで有料契約社数は9,000社を超え、順調に利用者数を伸ばしております。なかでも業務アプリ構築クラウド「kintone」は大きく利用企業数を伸ばし、前年比で売上が倍増いたしました。
また「cybozu.com」を中心とした自社カンファレンスにおいては約2,500名のお客様にご来場いただきました。中小企業だけではなく大企業のご契約も増え、100社を超える東証一部上場企業でご利用いただいております。
このような状況下において、当連結会計年度の連結業績については「cybozu.com」上で提供するクラウドサービスの売上が増加したことに加えパッケージ製品への下押し圧力の影響が少なかったことから、売上が計画を上回って推移し、連結売上高は5,965百万円(前年同期比14.8%増)となりました。利益項目につきましては、前連結会計年度に引き続き積極的な開発投資や広告宣伝投資を行ったため、利益率は前連結会計年度に比べ低下し、営業利益が22百万円(前年同期比92.0%減)、経常利益は7百万円(前年同期比97.3%減)となりました。
特別損益項目に関しましては、関係会社株式売却益32百万円の特別利益及び関係会社株式売却損19百万円の特別損失を計上したこと等から、当期純利益は11百万円(前年同期比94.0%減)となりました。
(2)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末より849百万円増加し、3,120百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金収支は、281百万円の収入(前年同期比515百万円の収入減)となりました。これは積極的な投資により未払金が増加したことや、売上の増加に伴い複数年間含む年間サービス契約に対する前受金が増加したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金収支は、611百万円の収入(前年同期比550百万円の収入増)となりました。これは固定資産の取得による支出や敷金の差入による支出があったものの、定期預金の払戻による収入があったこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金収支は、96百万円の支出(前年同期比629百万円の支出減)となりました。これは主に剰余金の配当を実施したことによるものです。