有価証券報告書-第23期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 14:00
【資料】
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【項目】
133項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当期末現在において当企業グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当企業グループは、Strategic Business Innovator(戦略的事業の革新者)として、創業時から常に時流を捉え、革新的な事業を創造することを目指しています。同時に、企業は社会に帰属しているからこそ存続できるという考えのもと、事業を通じて、社会の維持・発展に貢献することを志しています。
また、当企業グループには、持続的に成長する企業グループであり続けるため、今後も継承すべきと考える企業文化のDNAが4つあります。それは、常にチャレンジし続けるために「起業家精神を持ち続けること」、「スピード重視」の意思決定と行動、過去の成功体験に捉われず「イノベーションを促進すること」、環境の変化を敏感に察知して「自己進化し続けること」です。
そして、全ての役職員が共有する規範として、当企業グループでは5つの経営理念を掲げています。
当企業グループの5つの経営理念
正しい倫理的価値観を持つ
「法律に触れないか」、「儲かるか」ではなく、それをすることが社会正義に照らして正しいかどうかを判断基準として事業を行う。
金融イノベーターたれ
従来の金融のあり方に変革を与え、インターネットの持つ爆発的な価格破壊力を利用し、より顧客便益性を高める金融サービスを提供する。
新産業クリエーターを目指す
21世紀の中核的産業の創造および育成を担うリーディング・カンパニーとなる。
セルフエボリューションの継続
経済環境の変化に柔軟に適応する組織を形成し、「創意工夫」と「自己変革」が組織のDNAとして組み込まれた自己進化していく企業であり続ける。
社会的責任を全うする
当企業グループ各社は、社会の一構成要素としての社会性を認識し、さまざまなステークホルダー(利害関係者)の要請に応えつつ、社会の維持・発展に貢献していく。
当企業グループでは、企業価値は顧客価値の創出を土台に、株主価値および人材価値を加えた3つの価値が相互に連関する好循環を生むことによって増大していくと認識しています。創業以来、掲げてきた価値観である「顧客中心主義」を徹底的に実践することで、お客様のために、投資家のために、より革新的なサービス、ビジネスの創出に努め、顧客価値、株主価値、人材価値の総和たる企業価値の極大化を追求します。
(2)経営環境及び対処すべき課題等
当企業グループの組織構築の基本観
当企業グループの組織構築は常に3つの基本観、即ち(1)「顧客中心主義」の徹底、(2)「仕組みの差別化」の構築、(3)「企業生態系」の形成に基づき行われています。「顧客中心主義」の徹底とは、より安い手数料・より良い金利でのサービス、金融商品の一覧比較、魅力ある投資機会、安全性と信頼性の高いサービス、豊富かつ良質な金融コンテンツの提供といった、真に顧客の立場に立ったサービスを徹底的に追求するものです。「仕組みの差別化」の構築とは、インターネット時代における競争概念の劇的な変化に対応すべく、単純な個別商品・サービスの価格や品質で差別化するのではなく、顧客の複合的なニーズに応える独自の「仕組み」を構築し、そのネットワーク全体から価値を提供することを意味します。また、「企業生態系」の形成とは、構成企業相互のポジティブな相乗効果を促進し、それぞれのマーケットとの相互進化のプロセスを生み飛躍的な企業成長を実現させるものでありますが、当企業グループにおいては、グループ企業間および国内外の他の企業グループとの相互作用を通じてネットワーク価値を創出する「企業生態系」の形成を重視した経営を展開していきます。
これらの基本観の実践を通じ、当企業グループは事業領域や事業規模を加速度的に拡大してきました。例えば、証券・銀行・保険を中心とする金融サービス事業では、競合他社を大きく上回る口座数や預り資産などの顧客基盤のほか、マーケットシェアを獲得しています。現在、当企業グループ全体の顧客基盤は3,000万を超えるなど順調に拡大しているほか、外部の各種顧客満足度調査においても高い評価をいただいています。
目標とする経営指標
当企業グループでは、資本効率を考慮しながら、「金融イノベーター」や「新産業クリエーター」として、事業の「選択と集中」で回収した資金を成長分野や革新的な事業展開を可能とする分野へ再投資することで、グループ全体としての持続的な成長を目指しています。このように、経営資源を国内外の注力分野に投下することで、さらなる利益成長につなげ、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)を10%以上の水準で恒常的に維持することを目標に掲げています。但し、キャッシュ・フローを伴わない営業投資有価証券の公正価値評価損益の総額が連結税引前利益に占める水準によっては、連結税引前利益より公正価値評価損益の総額を控除する等の調整を実施した上で還元額を決定することとしています。
また、当企業グループは、株主への利益還元を充実させることを、株主価値を高めることにつながる重要な経営施策の1つとして捉え株主還元を決定しています。当社では、株主還元の基本方針として、配当金総額と自己株式取得額の合計により算出される総還元性向に関して、当面の間は原則として親会社の所有者に帰属する当期利益の40%を下限として株主還元を実施することを謳っています。
このほか、当企業グループが創業以来掲げる「顧客中心主義」の考え方に基づき、常に顧客の目線に立った商品ラインナップ拡充や、便益性の高い多様なサービスの提供を図ることで、業界最高水準のサービス提供を目指しています。そのため、当企業グループの金融サービス事業各社では、第三者評価機関が実施する顧客満足度調査において、継続して高評価を得ることを志向しています。
中長期的な経営戦略
当企業グループは、1999年の創業以来、日本国内においてインターネットをメインチャネルとし、証券・銀行・保険を中心とする金融サービス事業において企業生態系の構築を進めてきました。この企業生態系は2016年に完成し、世界的に見ても極めてユニークな総合金融グループが誕生しました。また、創業以来、国内外において次世代の成長産業への注力投資やアジア地域を中心とした成長著しい国々への投資を積極的に行い、ベンチャー企業等の育成にも取り組んできました。
近年、金融業界だけでなく様々な業界において、AIやブロックチェーン・分散台帳技術(DLT)を中心にそれらと親和性の高いビッグデータ、IoT、ロボティクス等の先進技術の導入が急速に進んでいます。そうした中、今後も引き続きこれらの先進技術における有望な企業への投資や提携を積極的に進めると共に、当企業グループの各金融サービスでこれらの先進技術を活用した新サービスの開発や新たな金融ビジネスの創造に向けた取り組みを強化し、競争力を高めて他社との差別化を図っていきます。
当企業グループでは、中期的にその実現を目指すものとして当企業グループのビジョンを定めています。2018年4月に制定したこれまでのビジョンの達成状況や当企業グループを取り巻く事業環境の変化等を踏まえ、このたび、2022年3月期を起点とし3~5年での達成を目指す新中期ビジョンを策定しました。
策定した新中期ビジョンでは、第一に、既存事業・新規事業(※1)ともにグループ内企業やアライアンスパートナーとのシナジーを徹底追求することで、本期間中に連結税引前利益3,000億円超の達成を目指しており、このとき、新規事業の税引前利益の総額が連結税引前利益に占める割合が20%程度となるよう、新規事業の育成を図ることとしています。第二に、グループ各事業においてオーガニック・グロースだけでなく、M&A等も活用した成長を図ることで、ROEは10%以上の水準を恒常的に維持することを目指すとしています。
(※1)新規事業とは、暗号資産関連やブロックチェーン等の革新的技術を活用した事業や2018年4月以降にM&Aによりグループ入りした事業を指す。
当企業グループでは、新中期ビジョンの実現に向けて4つの持続的成長目標(SGGs:Sustainable Growth Goals)を掲げ、重点施策として推進していきます。
(1)グループ各社で徹底してオープンアライアンス戦略を進展させ、大きな顧客基盤を有するパートナーとのシナジーを効率的に生み出す生態系を構築
(2)新規事業分野を開拓すべく革新的技術を有するベンチャー企業に積極的に投資し、そのテクノロジーを当企業グループ内に導入するとともに、アライアンスパートナーにも拡散していくことで、新技術を通じた有機的結合を図りシナジーの極大化を目指す
(3)デジタル金融分野に積極的かつ多角的に進出し、新たな事業拡大を図る。また、同分野では内外一体化の方針に基づいてグローバル展開を推進
(4)グループ運用資産残高は現在の4.4兆円から10兆円超への拡大を目指す
SGGs(1)の実現に向けて、証券関連事業ではネオ証券化を具現化することで顧客基盤を拡大し、ビッグデータの効率的な活用も行いながら当企業グループ全体へのシナジーの波及を目指します。また、銀行分野では、多様な企業とのアライアンスによるネオバンク構想を推進し、証券分野と同様にグループ全体に対する効率的なシナジー創出のための基盤を構築します。そして、日本の社会課題ともいえる地方創生の具現化に向けた取り組みは、地域金融機関だけでなく様々なパートナーとの協業により推進していきます。
またSGGs(2)の実現に向けては、革新的技術を有するベンチャー企業への投資、投資先ベンチャー企業の技術優位性を持つテクノロジーの当企業グループへの導入、そしてアライアンスパートナー等へのテクノロジーの拡散を推進していきます。
SGGs(3)の実現に向けては、ブロックチェーン等の先端技術を取り込んだデジタルアセット関連の新事業に本格的に挑戦していきます。セキュリティートークンについては、その発行市場の整備と共に、当企業グループの投資・提携先の海外取引所との提携も視野に、グローバルな流通市場の構築を目指します。また、ベンチャーファンドからのデジタルアセット関連企業への投資を通じて投資先の技術・知見を積極的に導入することで、国内初となるデジタルアセット銀行を創設すべく準備を開始しました。このように、当企業グループ内だけでなく投資・提携先とのシナジーを徹底的に追求することで、当企業グループがこれまでに構築してきたオンライン金融生態系とブロックチェーン等の新テクノロジーとを有機的に結合し、ブロックチェーンや分散台帳技術(DLT)を中核技術としたデジタル金融生態系の構築を目指していきます。
最後にSGGs(4)については、遅くとも2026年3月までには10兆円超への拡大を目指します。具体的には、ベンチャーキャピタル事業では2015年から注力してきたフィンテック領域や独創的な技術を有するベンチャー企業への投資において「特別買収目的会社(SPAC)」なども利用して回収を進めるとともに新規ファンドからの投資も本格化させます。また、資産運用受託事業では、時流に沿ったポートフォリオの適正化や高度化を強化すべく海外有力運用機関との協業を推進し、地域金融機関等からの運用受託の拡大を図ります。海外金融事業では海外で構築した銀行や証券を中心とする事業基盤を一層充実させるとともに内外の金利差や為替の変動を利用した効率的なアービトラージを推進し、運用パフォーマンスの向上につなげていきます。
最後に、当企業グループ全体を通じた課題としましては、急速に拡大した事業を支える優秀な人材の確保と社員の能力開発を通じて人的資源の継続的な向上を図ることがますます重要となっています。そのため、性別、国籍、人種等に関わらず当企業グループの経営理念に共感し即戦力となる優秀な人材の採用活動のさらなる強化と共に、独自の企業文化を育み継承する人的資源の確保として新卒採用を継続して実施しています。2006年4月から採用を進めてきました新卒採用者は、急速に拡大する当企業グループの未来を担う幹部候補生として、既に各々重要なポジションで活躍をしています。今後もより優秀かつグローバルな人材の確保と、社員のキャリア開発を促進し、当企業グループの持続的な成長と発展を図っていきます。