有価証券報告書-第40期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/23 13:36
【資料】
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【項目】
141項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
新型コロナウイルスの影響も徐々に収まり、いよいよアフターコロナに向けて積極経営を推進する環境が整いつつあります。
停滞していた新規案件をいかに早く立ち上げるかが中期計画達成の勝敗を分けます。
また、ウクライナ紛争にて更に混乱するサプライチェーンにより、半導体を始めあらゆる商材が不足する中、その代替案を提示して、有利に商談を進めることも目標達成の重要な要素であります。
新型コロナは収束してきましたが、リモートワークによるビジネススタイルの変化はコロナ後も大きく変わらず、ビジネスシーンにおけるネットワークとクラウドを駆使したデジタル化によるDX(※)推進の流れは加速しており、この流れに乗って行くことが、中期計画達成のポイントでもあります。
採用計画につきましては、サービス業界、航空運輸業界が採用を控える中、本来この業界を目指していたサービス精神旺盛で優秀な人材の確保が可能となり、特にITサービス事業の強化を進める上において、女性の採用増には絶好の好機であり、「ピンチはチャンス」と捉えて積極採用を行ってまいります。
平成バブル崩壊後のデフレの長いトンネルを抜け、世界経済は一気にインフレの時代に突入しました。
デフレ時とインフレ時では、ビジネススタイルが180度変わります。
デフレは後発が有利ですが、インフレは先手必勝が最強の戦略と考えます。
しかし、高コストのインフレ下でやみくもに先手を取りに行けば命取りになります。どこで先手を取るかが重要なポイントであり、今まで以上に経営資源の配分と投資分野の高度な選択と集中が必要であると考えます。
このような経営戦略に沿って当社の経営の基本方針である事業のスクラップ&ビルドを更に加速し、成長分野の中でも強みを活かし、勝てるマーケットへの経営資源の迅速な投入を行ってまいります。
この方針に沿って、営業戦術も変えてまいります。従来型の自前の営業力強化だけでなく、営業力のあるパートナーとのアライアンスを積極的に推進し、自社商材と自社サービスの販売強化を図ってまいります。
また、人材育成においても従来のマイルストーン型の育成ではなく、オンザジョブトレーニング型へと育成方針を変更し、大量に採用した人材を早期に戦力化してまいります。
5年前から取り組んできましたデータ経営による経営改革推進プロジェクトは、自社商材の「Canbus.(キャンバスドット)」を使ってシステム構築を進め、2019年度に導入を開始し、途中幾多の修正を行い、昨年度から本格運用に入りました。
これにより、年間コストが数億円程かかっていた社内システムの運用費はゼロになるとともに、各事業部で自由に運用できることで、必要な稼働データ、受注管理データ、利益管理データ、技術者スキルデータ、顧客管理データ、社員一人ひとりの収益管理データ等、経営管理に必要な全てのデータをリアルタイムに取得できるようになり、グラフ化や集計表作成等の機能を使って経営の「見える化」を実現しました。
データ経営システムの導入により、無駄な稼働を減らし受注確度を向上させ、技術管理を徹底することで生産性の向上を図った結果、DXシステムの設計コンサルならびに開発を主業務とするソリューションデザイン本部においては、利益率が5年前の2倍となりました。
2025年3月期を最終年度とする中期計画目標である、売上高1,010億円、営業利益152億円の達成に向けて、先手必勝戦略とデータ経営にて、インフレを大飛躍のチャンスに変えてまいります。
※.DX:Digital Transformation。
ITの浸透により生活やビジネスなどあらゆる面が向上するという概念。
なお、セグメント別の次期の見通しは、次のとおりであります。
ソリューションデザイン事業は、「車載」、「社会インフラ」、「ネットビジネス」、「スマートデバイス/ロボット/AI」、「DXサービス」分野を事業の柱とし、地方拠点を活用したニアショア開発およびベトナムでのオフショア開発をこれまで以上に推進して、更なる受注拡大と収益性の向上を図ってまいります。
「車載」の分野においては、自動車関連企業との関係強化や得意としている車載インフォテインメント、テレマティクスおよびECU(電子制御ユニット)の開発に加え、5G、人工知能(AI)のノウハウを強みとしてモビリティサービスの事業の拡大に注力してまいります。
「ネットビジネス」の分野においては、5Gの本格普及期を迎え、通信キャリアサービス、eコマース、電子書籍などのネットサービスやキャッシュレス決済などの市場拡大が見込まれます。この分野においては、市場拡大とともに開発・品質検証などの技術支援だけでなく、サービスを運営するためのディレクションや運用などサービス支援の引き合いも多く、開発だけではなくサービス全般へ積極的に取り組んでまいります。
「社会インフラ」の分野においては、5Gのインフラ設備に関わる開発や品質検証に加え、エリア拡大に向けたメンテナンス、運用保守などのサービスを拡充してまいります。また、IoT、AIのノウハウを活用し、スマートシティなどのPoCにも積極的に取り組んでまいります。
「スマートデバイス」の分野においては、これまでのスマートフォン開発業務の実績を基に、スマートフォン、ゲーム機、決済端末など様々な製品の開発・品質検証に加え、WebサービスやIoT関連業務の引き合いも増加していることから、5GやIoT、AIなどに関わるサービスの品質検証業務を積極的に展開してまいります。
「ロボット/AI」の分野においては、得意とするコミュニケーションロボットのノウハウを活かし、引き続き介護や日常生活に関わる生活ロボット、産業用ロボット、医療ロボット向けの営業を強化してまいります。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で働き方が変わる中、RPAやロボットの需要が増加していくものと見込んでおり、ロボットの技術支援およびサービス支援を行って受注拡大に繋げてまいります。
「DXサービス」の分野においては、原材料価格の高騰もあり、企業の生産性向上・業務効率化が急務となっております。こうした需要が増加する中、顧客のBtoBシステムのDX化を進めるだけでなく、顧客の顕在的・潜在的な課題に対して、より幅広い自社サービスと自社プロダクトを展開することで、他社との差別化を行い、受注拡大と収益性の向上を図ってまいります。
当事業における新型コロナウイルス感染症への対応状況や事業活動への影響につきましては、各事業分野でテレワークでの業務にシフトしたことにより、事業継続に向けてリスクを低減できている状況ではありますが、短期的にはテレワークでは難しい業務支援においては一時的に受注延伸が発生しうる状況にあります。特に車載事業、社会インフラ事業、ロボット/AI事業の一部の業務において懸念されます。また業務システムの分野は、顧客の経費削減や投資抑制の影響を受けやすく同様に短期的には受注延伸が懸念されます。一方で、ネットビジネスや5G関連業務については今日の状況においても引き合いは堅調に推移しております。このような状況の中、当事業では選択と集中を行い、より需要の大きい分野へのシフトを目指してまいります。
フレームワークデザイン事業は、金融分野で培った業務システム開発のノウハウを展開し、公共分野、法人分野の事業が拡大しております。今後も現行業務の最大化と積極的な事業展開を継続し、市場動向に合わせた営業活動と人材育成を進めてまいります。
既存のシステム開発事業では、進行中の金融(生損保)、公共の大型案件に加え、小売、流通、インターネットサービス事業者への対応を拡大し、当社の開発ノウハウを活かした事業展開を積極的に進めてまいります。
インフラ関連事業では、パブリッククラウド導入に伴う技術支援を中心に事業が拡大しております。クラウド関連の技術支援ニーズは今後も継続していくものと見込んでおり、更なる事業拡大に向け、積極的な人材育成を継続してまいります。
DX関連事業では、DXソリューションを活用した業務改善案件の引合いが増加しております。DXソリューションを中心に置いたシステム連携基盤の実現に向け、専門技術者の育成に力を入れてまいります。その他、基幹系システムの刷新(メインフレームマイグレーション)、クラウドネイティブシステム(サーバレスシステム)の開発案件も拡大しており、今後もDX関連案件の受注活動を積極的に進めてまいります。
営業対応については、ウィズコロナでのビジネス継続を念頭に置き、引き続きオンライン環境を最大限に活用し、提案機会の拡大と顧客対応のスピード向上を図ってまいります。
ITサービス事業は、DX促進や更なる働き方改革に取り組む企業が業界を問わず増加する中、ITサポート業務、ソフトウェアテストサービス等、ITアウトソーシング需要の拡張が見込まれます。
このような状況の中で、ITサポートの実績を活かし、経営資源を成長分野であるDXへ展開。単純なヘルプデスク等のITサポート業務から、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)や社内ITインフラの改善提案ができる業務内容に進化させて、顧客のビジネス成長により直結したサービスの提供に注力してまいります。
ソフトウェアテストサービスにおいては、BtoC向けにWeb/アプリを提供するお客様に向け品質管理工程のコンサルティングからデバッグまでの全工程でのテストサービスに取り組むことにより、受注拡大と収益性の向上に取り組んでまいりました。今後はBtoBtoC領域を拡大しつつも、ソフトウェアテストのノウハウを社会基盤を支えるBtoB向けのお客様にも提供することでサービス拡大に注力してまいります。
障がい者活躍の推進については、一人ひとりの特性や個性を理解し、より付加価値の高い業務に従事できる環境構築を進めるため、BPOを中心に幅広いサービス案件の獲得に注力してまいります。
また、グループ企業・協力会社とのアライアンスによる新サービスやサポート範囲の拡充、インサイドセールスの強化を行い、新たなITサービスソリューションを創造し収益性の向上を図ってまいります。
ビジネスソリューション事業では、新型コロナウイルス感染症の長期化および半導体の供給不足による商品の遅延、資源高による商品価格の高騰など、先行き不透明感はあるものの、ウィズコロナに向けた新たな働き方への取り組み、DXによる生産性の向上やコスト削減、競争力強化など、企業のIT投資は堅調に推移していくと予測されます。
当事業としては、これら経済問題およびお客様の課題解決に向けたソリューションサービスの拡充を図ってまいります。
具体的には、モノありきのビジネスからサービスビジネスに注力し、サブスクリプションビジネスとサポート業務を中心としたストック型ビジネスを更に強化してまいります。
特に注力する分野としてエンドポイントは勿論のこと、セキュリティ全体を担保するサービスの拡大とサポート体制の拡充を進めてまいります。
また、インフラビジネスは底堅い成長が見込まれているため、従来型のインフラ基盤のモダナイズ、クラウドと連携させたハイブリッド環境の提供など、より付加価値の高いサービス提供を進めてまいります。
昨年統合したRPAやデータ連携ツールを手掛けるDX推進部(システム開発部門)では、昨期大きく成長したクラウドマイグレーションをより一層進め、従来のシステム開発に加え、アプリケーションの再構築、データ連携ツールを活用した高速開発サービスを提供し、更なる拡大を進めてまいります。
これにより、今後もお客様へのサービス向上を進め、システムインテグレーターへと変革し、収益性の向上を図ってまいります。
クラウド事業では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で変革が求められる昨今の企業経営において、CRM(顧客管理)や採用管理、人材管理などリソース管理を始めとする様々な業務をデータベース化し、データドリブンな業務を実現する『Canbus.\キャンバスドット』の販売強化を推進しております。アフターコロナを見据えたDX化がますます加速している昨今において、引き続きサービス強化、認知度向上のための先行投資を行い、事業成長の礎を築くとともに新サービスの開発にも取り組んでまいります。既存サービスの『Cloudstep』についても、サービス強化を行い、更なる収益力の向上を目指します。
海外事業では、米国子会社は出資先の米国ONE Tech社と連携し、AIソリューション『MicroAI™』の提供を通じて世界中の企業への販売を推進してまいります。またクラウド事業で提供している『Canbus.』の米国市場への展開を目指してまいります。こうした投資先との協業案件の拡大、米国内の日系企業からの技術支援に対する底堅い需要をベースに、営業黒字の継続を目指してまいります。
投資育成事業では、株式会社GaYaは、ゲーム企画・開発においては、『競馬伝説PRIDE』を2022年夏頃にリリース予定であり、本タイトルの運営に注力いたします。また、ゲーム開発の技術を利用した非ゲームアプリ開発事業においては、設計、開発からサポートまで含めたサービスを推進してまいります。