有価証券報告書-第35期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/22 9:47
【資料】
PDFをみる
【項目】
108項目

研究開発活動

当連結会計年度の研究開発活動は、本格的なクラウド・コンピューティング時代を迎え、クラウドを中心とした企業情報システムの構築およびサービス提供を対象として、高度で差別性のある情報技術の開発を進めてまいりました。また、IoT(注1)を含むビッグデータの活用、ITによるワークスタイルの変革、システムの設計・構築における品質向上・生産性向上に関する技術開発も積極的に進めています。
当連結会計年度における研究開発費の総額は、1,546百万円であり、主な研究開発成果は以下のとおりです。
(1)クラウドを中心とする情報システムの高度化
サービスインテグレーション(注2)に関しては、複数のクラウドサービスの組み合わせにより、短期間の構築が可能で環境変化にも柔軟に対応できるアプリケーション基盤の整備を進めています。お客様が事前に評価・検証できる環境として、「XaaS & SDx Integration Center」を平成26年11月に開設しました。またSaaSやPaaS(注3)など内部・外部のサービスを繋いでシステムを構築する次世代のSOA(注4)に備えて、高品質で安全なサービスを実現する新しいシステム構築手法を開発し、必要なツールを整備しています。
サービス事業に関しては、提供するクラウドシステムを効率的に構築するオープンソースソフトウェアOpenStack(注5)、柔軟なネットワーク構築が可能なSDN(注6)などについて利用技術の開発を推進しています。
今後の適用拡大が期待されるIoTに関しては、新日鐵住金グループ企業と連携して複数のPoC(注7)を開始しました。一例として、新日鐵住金株式会社と共同で、鉄道台車に取り付けた各種センサーから得られるデータを利用して安全性を向上させる取組みを行っています。
IoTの本格的な展開に合わせて重要性を増すビッグデータ分析に関する技術開発にも継続的に取り組んでいます。平成26年11月、これまでの研究開発の成果に基づき、データ分析統合環境 「Data Veraci (ダータヴェラーチ) 」をリリースしました。
(2) 知的作業支援、ワークスタイル変革の促進
ITを活用した高度な知的作業の支援に加え、これからの新しい働き方を支えるワークスタイル変革を実現するための手法とソリューションの開発を行っています。具体的には、人間行動の観察やラピッドプロトタイピング(注8)を活用し、またデザイン思考アプローチ(注9)を実際の開発プロジェクトで適用するなどして、ソリューションコンセプトの企画を進めています。
(3) システムの構築・運用における品質および生産性の向上
システム構築においては、大規模ソフトウェア開発の生産性向上と基盤構築の品質向上、またシステム運用においては、運用効率性の向上をめざして、定型業務の自動化と非定型業務のコンピュータによる作業支援の実現に向けた研究開発に取り組んでいます。
システム構築・運用の生産性を向上する手法として注目されているDevOps(注10)にも積極的に取り組み、開発と運用のプロセス、開発担当者と運用担当者が連携する仕組みを設計し、有用なツールを選定して実証検証を行っています。
スマートデバイスの活用については、BaaS/MBaaS(注11) の提供に向けたアプリケーション基盤の整備を進めています。また次世代Webシステム開発のためにHTML5準拠のアプリケーションフレームワークとして公開したオープンソースソフトウェア「hifive」については、インターネットメディアへの寄稿や開発者コミュニティーへの参画を通じた認知度向上を図り、利用促進のための活動を継続しています。
(注1) IoT : Internet of Things の略。世の中に存在する様々なモノに通信機能を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信したりすることにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。
(注2) サービスインテグレーション:サーバー・ネットワーク機器などのハードウェアやOS・アプリケーションなどのソフトウェアに加えて、クラウドなどで利用可能な様々なサービスの統合。
(注3) SaaS/PaaS:Softoware as a Service / Platform as a Service の略。ソフトウェアの機能そのもの、あるいはソフトウェアを動かす環境(Platform)を、インターネットを通じてサービスとして提供する形態。
(注4) SOA :Service Oriented Architectureの略。大規模なシステムを「サービス」の集まりとして構築する設計手法。
(注5) OpenStack:オープンソースで開発されているクラウド環境構築用のソフトウェア群の名称。
(注6) SDN:Software Defined Networkの略。ネットワーク関係のIT基盤の制御をソフトウェアで定義して実現する概念。複雑化・肥大化するITネットワークを柔軟に変更しながら運用できる。
(注7) PoC:Proof of Conceptの略。実証試験を通じて概念やアイデアの実現可能性を検証すること。
(注8) ラピッドプロトタイピング:敏速に試作することを繰り返すことにより製品の改良を図っていく手法。
(注9) デザイン指向アプローチ:共感、問題定義、創造、プロトタイプ、テストといったステップを通じてイノベーションを生み出す方法論。
(注10) DevOps :ソフトウェア開発手法の一つ。開発担当者と運用担当者が連携の上、推進する開発手法。
(注11) BaaS/MBaaS:(Mobile) Backend as a Serviceの略。スマートフォン向けのWebアプリケーションに必要なサーバ側機能をインターネット経由でサービスとして提供するクラウドサービスの一種。