有価証券報告書-第26期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積もり
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められた会計基準に基づき作成されております。また、当社は、財務諸表を作成するにあたり、会計方針に基づいていくつかの重要な見積もりを行っており、これらの見積もりは一定の条件や仮定を前提としております。そのため、条件や仮定が変化した場合には、実際の結果が見積もりと異なることがあり、結果として財務諸表に重要な影響を与える場合があります。重要な会計方針のうち、特に重要と考える項目は、次の4項目です。
① 金融商品の評価
当社では、トレーディング商品に属する有価証券及びデリバティブ取引は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価損益はトレーディング損益として損益計算書に計上しております。評価に用いる時価は、市場で取引が行われている有価証券やデリバティブ取引については当事業年度末時点の市場価格を、市場価格のない有価証券やデリバティブ取引については理論価格を、それぞれ使用しております。理論価格を算出する際には、対象となる商品や取引について最も適切と考えられるモデルを採用しております。
② 有価証券の減損
当社では、投資有価証券等のトレーディング商品に属さない有価証券を保有しております。このうち時価のある有価証券については、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。具体的には、当事業年度末における時価の下落率が取得原価の50%以上の場合は、著しい下落かつ回復する見込みがないものと判断して、減損処理を行っております。時価の下落率が取得原価の30%以上50%未満の場合は、時価の推移及び発行会社の財政状態等を総合的に勘案して回復する見込みを検討し、回復する見込みがないと判断したものについては、減損処理を行っております。また、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券については、実質価額が著しく低下し、かつ、回復する見込みがないと判断した場合には、減損処理を行っております。
③ 固定資産の減損
当社では、各資産グループにおいて、収益性が著しく低下した資産については、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。なお、資産のグルーピングは、証券店舗等の個別性の強い資産については個別物件単位で行い、その他の事業用資産については管理会計上の区分に従って行っております。
④ 繰延税金資産の回収可能性
当社では、企業会計上の資産・負債と税務上の資産・負債との差額である一時差異等について税効果会計を適用し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、将来の合理的な見積可能期間における課税所得の見積額を限度として、当該期間における一時差異等のスケジューリングの結果に基づき判断しております。
(2) 当事業年度の財政状態の分析
<資産の部>当事業年度末の総資産は前年度末比1兆3,977億円(13.6%)増加の11兆6,835億円となりました。内訳は流動資産が同1兆3,996億円(13.8%)増加の11兆5,772億円であり、このうち現金・預金が同1,539億円(13.3%)増加の1兆3,145億円、トレーディング商品が同5,079億円(10.9%)増加の5兆1,632億円、有価証券担保貸付金が同6,389億円(20.1%)増加の3兆8,119億円となっております。固定資産は同19億円(1.8%)減少の1,062億円となっております。
<負債の部・純資産の部>当事業年度末の負債合計は前年度末比1兆4,359億円(15.2%)増加の10兆8,825億円となりました。内訳は流動負債が同1兆1,942億円(14.5%)増加の9兆4,217億円であり、このうちトレーディング商品が同3,210億円(9.1%)増加の3兆8,504億円、有価証券担保借入金が同2,463億円(9.2%)増加の2兆9,202億円、短期借入金が同750億円(6.4%)増加の1兆2,424億円となっております。固定負債は同2,416億円(19.9%)増加の1兆4,568億円であり、このうち社債が同110億円(1.9%)減少の5,833億円、長期借入金が同2,528億円(43.2%)増加の8,381億円となっております。
純資産合計は当期純利益644億円を計上したほか、配当金1,004億円の支払いを行ったことなどから、同381億円(4.5%)減少の8,010億円となりました。
(3) 当事業年度の経営成績の分析
① 事業全体の状況
当事業年度の営業収益は3,588億円(前年度比7.1%増)となりました。受入手数料は株式取引が増加したことによる委託手数料の増加や投資信託の販売にかかる募集・売出しの取扱手数料の増加等により、総額で2,091億円(同15.4%増)、トレーディング損益は株券等が増加したものの債券・為替等の減少により999億円(同14.0%減)となりました。金融収支は169億円(同2.1%増)、純営業収益は3,260億円(同3.8%増)となっております。
販売費・一般管理費は、人件費が1,027億円(同3.0%増)、事務費が465億円(同5.4%増)となったこと等から、合計で2,405億円(同3.8%増)となりました。この結果、経常利益は866億円(同1.7%増)となりました。
これに特別損益、法人税等を加味した結果、当期純利益は644億円(同10.2%増)となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
[リテール営業部門]
リテール営業部門は、主に個人や未上場法人のお客様に幅広い金融商品・サービスを提供しております。
リテール営業部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社の顧客の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、顧客動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、顧客のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。
当事業年度においては、4月より、お客様目線をより重視した営業推進体制へ移行し、個別商品の販売目標を廃止したことなどにより、営業員が、今まで以上に多くの時間を、お客様のニーズやマーケットの動向をより的確に捉えた提案に割けるようになりました。その結果、市場環境が特に好調であった米国株式を中心に、外国株式の売買代金が大幅に増加したほか、外国株式の預り資産残高についても過去最高の水準となりました。
株式投信販売については、マーケットのニーズに沿ったテーマ型投信の取扱いにより、募集・販売額が大幅に向上し、投信募集手数料も前年度比大幅増となりました。
また、ラップ口座サービスの拡充に取り組んだ結果、平成29年度末のラップ口座契約資産残高は過去最高水準となりました。
好調な市場環境に伴う顧客ニーズの高まりに加え、これらの取組みが寄与し、当事業年度のリテール営業部門における純営業収益は2,091億円(前年度比14.6%増)、経常利益は489億円(同72.9%増)となりました。リテール営業部門の当事業年度の純営業収益および経常利益の当社全体の純営業収益および経常利益に占める割合は、それぞれ64.1%および56.5%でした。
[国内ホールセール部門]
国内ホールセール部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングで構成されており、グローバル・マーケッツは、主に国内外の機関投資家や事業法人、金融法人、公共法人等の顧客向けに、株式、債券・為替及びそれらの派生商品のセールスおよびトレーディングを行っております。グローバル・インベストメント・バンキングは、国内外における有価証券の引受け、M&Aアドバイザリー等、多様なインベストメント・バンキング・サービスを提供しております。グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る顧客フロー収益およびトレーディング収益です。グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料です。グローバル・マーケッツにおいては、国際的な地政学リスクや経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。
グローバル・マーケッツにおいては、エクイティ収益は比較的堅調に推移しました。一方で金融市場において低ボラティリティが継続し収益が低調に推移したため、グローバル・マーケッツは減収減益となりました。
グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、複数の大型エクイティ募集・売出し案件でJGC(ジョイント・グローバル・コーディネーター)や主幹事を務めたこと等により好調な業績となりましたが、販売費・一般管理費も増加したため、グローバル・インベストメント・バンキングは増収減益となりました。
以上のことから、当事業年度における国内ホールセール部門における純営業収益は1,150億円(同8.5%減)、経常利益は406億円(同25.4%減)となりました。国内ホールセール部門の当事業年度の純営業収益および経常利益の当社全体の純営業収益および経常利益に占める割合は、それぞれ35.3%および46.9%でした。
③ 経営成績の前提となる平成29年度のマクロ経済環境
<海外の状況>世界経済は緩やかに拡大しており、IMF(国際通貨基金)の推計によれば、平成29年の世界経済成長率は前年を上回り、5年ぶりの高い伸びとなったとみられます。米国経済は、引き続き内外の政治的な混乱に対する懸念を払拭できないものの、平成29年末に成立した税制改革などの拡張的な財政政策によって、国内景気は一段と押し上げられようとしています。また、ユーロ圏の景気も拡大し、デフレ懸念が後退したことから、緩和的な金融政策も徐々に縮小しつつあります。さらに、先進国だけでなく、新興国経済も回復基調にあり、中国が安定的に推移しているほか、ブラジルやロシアはプラス成長に転じています。
米国経済は、平成30年1-3月期こそ個人消費の伸びが抑制され、実質GDP成長率は前期比年率2%台前半の成長に留まりましたが、平成29年4-6月期からの3四半期は3%前後の高成長となりました。平成30年1-3月期の減速は、個人消費が約5年ぶりの低い伸びになったことが響きましたが、消費の裏付けとなる雇用・所得環境が安定しており、平成29年12月に成立した税制改革による可処分所得の押し上げも見られます。また、税制改革の恩恵は、企業業績や企業マインドの改善にも及んでおり、設備投資は堅調な伸びを維持しています。また、労働市場の逼迫に伴う省力化投資へのニーズが高まっている点も設備投資の追い風となっています。しかし、平成30年2月以降、トランプ大統領が保護主義的な通商政策を強力に推進しており、中国をはじめとする世界各国との摩擦が激化すれば、輸入価格の上昇だけでなく、米国からの輸出量が減少し、企業の生産活動や投資計画に悪影響が及ぶ恐れがあります。金融面では、底堅い景気拡大を受けて、FRB(連邦準備制度理事会)は平成29年の計3回の利上げに続いて、平成30年3月にも政策金利を引き上げました。同時に、平成29年10月からは、FRBが保有する資産の規模縮小も開始しています。一方、米国株式市場では、底堅い米国経済や税制改革への期待から騰勢が続き、NYダウ平均株価は平成30年1月に過去最高値を更新しました。もっとも、その後は、インフレへの懸念から長期金利が上昇したり、通商摩擦への懸念の高まりとともに株価が大きく下落する場面もありました。
欧州経済は、緩やかながら安定した成長が続いており、平成29年のユーロ圏の実質GDP成長率は2.4%と10年ぶりの高成長になりました。平成30年1-3月期は前期比年率1.5%増、前年比では2.5%増となり、過去3四半期平均の前期比年率2.9%増から大きく鈍化しましたが、1%程度とされる潜在成長率を上回り、堅調に推移しているといえます。ユーロ圏の雇用情勢は改善傾向にあり、家計の所得環境も良好なことから、個人消費が底堅く、内需を中心にバランスの取れた形で成長しています。もっとも、ユーロ高が進行してきたために、輸出依存度が高いドイツなどでは、景気減速感が見られます。一方、金融面では、デフレ懸念の後退を受けて、ECB(欧州中央銀行)は非伝統的な金融緩和政策の軌道修正を進めています。平成29年4月から量的緩和の規模を縮小させたのに続き、平成30年1月以降、資産買取額を毎月300億ユーロに半減させています。ただ、平成30年に入ってからのユーロ圏のインフレ率は、ECBが目指すインフレ目標「2%をやや下回る水準」とは大きな乖離が見られることから、ECBは、非伝統的な金融緩和政策の修正を慎重に進めていくとみられます。
新興国経済は、平成27年をボトムにして成長率が加速しており、平成29年は4年ぶりの高成長となりました。中国経済は、平成30年1-3月期の実質GDP成長率が前年比6.8%増と、平成29年の6.9%成長から僅かに減速したものの、堅調に成長を続けています。もっとも、前期比では、平成29年7-9月期をピークに2四半期連続で減速しています。個人消費が成長の最大の牽引役となっており、総資本形成の伸びの鈍化をある程度カバーしています。平成30年1-3月期に入って、消費関連にやや減速感が見られますが、底堅く推移しています。固定資産投資は、過剰生産能力を指摘される製造業やインフラ投資が減速する一方、不動産開発投資は大きく伸びたことから、投資全体ではやや加速しています。また、米国との通商摩擦問題は今後のリスク要因ではありますが、互いに制裁を発動し合うというように状況がエスカレートしない限り、影響は限定的とみられます。一方、中国以外の新興国では、総じて平成29年の経済成長率は当初の想定を上回る回復が見られ、原油などの資源価格の上昇は資源国経済にとって追い風になっています。ただ、一部では、米国など先進国の金利上昇の影響から資本が国外に流出し、通貨安に伴う高インフレや通貨防衛のための政策金利の引き上げなど、経済的な困難に直面しているケースも散見されます。
<日本の状況>日本経済は、平成28年半ば以降、内需を中心に緩やかな回復基調が続きましたが、平成30年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率0.6%減と9四半期ぶりのマイナス成長に陥り、過去4四半期の平均年率2%弱の成長から大幅に減速しました。背景には、個人消費や住宅投資が軟調であったことに加えて、これまで堅調に拡大してきた設備投資や輸出の伸びも鈍化したことがあります。内需の弱さを反映して輸入も減速したために、外需の寄与度はプラスとなったものの、内需の寄与度のマイナス幅が上回ったことから、全体でマイナス成長になりました。このように、直近では内需項目が軒並み小幅なマイナス成長になり、景気拡大の足踏みが見られましたが、平成29年度全体では1.6%成長に加速し4年ぶりの高い伸びとなりました。平成28年度の成長が外需に依存した形だったことと比べると、平成29年度は内需の寄与度が1.2%ポイント、外需の寄与度が0.4%ポイントとなり、よりバランスの取れた成長であったといえます。
GDPに占めるウエイトの大きい個人消費は、平成30年1-3月期に小幅ながらも2四半期ぶりに減少しました。自動車を中心とした耐久消費財をはじめ総じて弱い内容になりましたが、天候不順による生鮮食品の高騰や原油価格の上昇、人手不足などに伴うコスト増などを受けて、消費者が直面する物価上昇率は高止まり、消費者の生活に影響を及ぼしているとみられます。また、年度全体でみると、失業率が2%台半ばまで一段と低下したほか、企業の採用意欲が引き続き強く、賃金も緩やかに増加するなど雇用・所得環境の改善が続き、消費者マインドは高い水準を維持しました。
住宅投資については、日本銀行の緩和的な金融政策によって、低い住宅ローン金利が下支え要因となったものの、建材コストや人件費の上昇もあって、大都市圏を中心に住宅価格が上昇したことが需要を抑制したほか、相続税対策などの特殊要因によって押し上げられてきた貸家建設の減速感が強まりました。この結果、平成29年7-9月期以降、3四半期連続で前期比マイナス成長となっています。
一方、企業の設備投資は、平成29年度全体では前年比3.2%増と8年連続で増加しました。企業収益が高水準にあることや労働需給の逼迫を背景に、深刻な人手不足に対応した合理化・省人化投資や、競争力を維持するための設備の更新、研究開発投資などが増加しました。もっとも、企業は支出全般に慎重な姿勢を崩しておらず、設備投資の水準は、キャッシュ・フローを大きく下回り、減価償却費を一定程度上回る水準に留まっています。また、平成30年1-3月期の設備投資はプラス成長を維持したものの、伸び率が鈍化している背景には、輸出の伸びが減速したために生産活動が一服したことが考えられます。
外需に関しては、海外経済が底堅く拡大していることから輸出は増加基調にあり、平成29年度は前年比6.2%の成長と、前年度から伸び率が加速しました。地域別に見ると、アジア向けの輸出が持ち直したほか、米国やEU(欧州連合)向けは概ね横ばいとなるなど、総じて堅調に推移しました。自動車や半導体等製造装置の輸出が好調でしたが、引き続き、海外経済の動向には留意が必要です。特に、平成30年に入って、米国が保護主義的な通商政策を推し進めており、この先、世界貿易の縮小につながるリスクがあります。また、米国など先進国の金利上昇により、資本流出に直面する新興国経済に変調が生じると、日本からの輸出にネガティブに作用するとみられます。一方、輸入は、平成29年度全体では内需の回復を受けて持ち直し、2年ぶりに増加しました。
金融面では、日本銀行による強力な金融緩和措置が続いています。「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の一環として、イールドカーブ・コントロールを導入し、短期金利と長期金利の両方を事実上管理するという政策を実行しています。米国の市場金利の上昇を受けて、日本の国債利回りが上昇する局面もありましたが、長期金利(10年国債利回り)は、平成29年度を通じて、概ね0.0%~0.1%という狭いレンジで安定的に推移しました。為替レートは平成29年に入ると、7月から9月上旬にかけて、地政学的リスクの高まりを受けてリスク回避の動きが強まり、円高が進む局面がみられましたが、総じて109~114円という狭いレンジのなかでの変動を繰り返しました。ただ、平成30年に入って、米国の長期金利上昇をきっかけに世界的な株安が進み、さらに、米国の保護主義的な通商政策によって、米中の貿易摩擦激化への警戒感が強まると、リスク回避の動きから円高が加速し、平成30年3月下旬には、1年4カ月ぶりの円高水準となる104円台を記録しました。一方、対ユーロでは、欧州経済の順調な拡大やECBの金融政策の正常化への思惑を背景に、年末にかけて、円安・ユーロ高が進みました。しかし、平成30年2月に入ると、対ドル同様にリスク回避の動きが強まり、円高・ユーロ安に振れました。
平成30年3月末の日経平均株価は21,454円30銭(前年3月末比2,545円04銭高)、10年国債利回りは0.043%(同0.024ポイントの低下)、為替は1ドル106円19銭(同5円61銭の円高)となりました。
(4) 当事業年度のキャッシュ・フローの状況の分析
① 営業活動、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物
当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
当事業年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは、トレーディング商品の増減や有価証券担保貸付金及び有価証券担保借入金の増減、短期貸付金の増減などにより2,256億円の減少(前年度は229億円の減少)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、無形固定資産の取得による支出などにより155億円の減少(同196億円の減少)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増減や長期借入れによる収入及び長期借入金の返済による支出などにより3,982億円の増加(同694億円の増加)となりました。この結果、当事業年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末比1,569億円増加の1兆3,175億円となりました。
② 資本の財源及び流動性に係る情報
(ⅰ) 流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>当社は、多くの資産及び負債を用いて有価証券関連業務を中心としたビジネスを行っており、ビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社の資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めております。特に近年においては、世界的金融危機及び信用危機による不測の事態に備え、市場からの資金調達、金融機関からの借入等により、手元流動性の更なる積み増しを行っております。同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
また、当社の親会社である大和証券グループ本社を中心とする大和証券グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、大和証券グループ本社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。その中で当社は、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しております。
なお、当社の親会社である大和証券グループ本社は、平成26年金融庁告示第61号による連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)の最低基準(平成27年3月末から段階的に導入)の遵守が求められております。大和証券グループ本社の平成30年3月期第4四半期日次平均のLCRは146.6%となっており、上記金融庁告示による要件を満たしております。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>当社は、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社は機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。
当社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
(ⅱ) 株主資本
当社が株式や債券、デリバディブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、証券担保ローン等の有価証券関連業務を中心とした幅広い金融サービスを展開するためには、十分な資本を確保する必要があります。当事業年度末の株主資本は、7,961億円(前事業年度末比360億円減)となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,499億円であり、利益剰余金は当期純利益644億円を計上したほか、配当金1,004億円の支払いを行った結果、3,462億円(同360億円減)となりました。
(1) 重要な会計方針及び見積もり
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められた会計基準に基づき作成されております。また、当社は、財務諸表を作成するにあたり、会計方針に基づいていくつかの重要な見積もりを行っており、これらの見積もりは一定の条件や仮定を前提としております。そのため、条件や仮定が変化した場合には、実際の結果が見積もりと異なることがあり、結果として財務諸表に重要な影響を与える場合があります。重要な会計方針のうち、特に重要と考える項目は、次の4項目です。
① 金融商品の評価
当社では、トレーディング商品に属する有価証券及びデリバティブ取引は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価損益はトレーディング損益として損益計算書に計上しております。評価に用いる時価は、市場で取引が行われている有価証券やデリバティブ取引については当事業年度末時点の市場価格を、市場価格のない有価証券やデリバティブ取引については理論価格を、それぞれ使用しております。理論価格を算出する際には、対象となる商品や取引について最も適切と考えられるモデルを採用しております。
② 有価証券の減損
当社では、投資有価証券等のトレーディング商品に属さない有価証券を保有しております。このうち時価のある有価証券については、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。具体的には、当事業年度末における時価の下落率が取得原価の50%以上の場合は、著しい下落かつ回復する見込みがないものと判断して、減損処理を行っております。時価の下落率が取得原価の30%以上50%未満の場合は、時価の推移及び発行会社の財政状態等を総合的に勘案して回復する見込みを検討し、回復する見込みがないと判断したものについては、減損処理を行っております。また、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券については、実質価額が著しく低下し、かつ、回復する見込みがないと判断した場合には、減損処理を行っております。
③ 固定資産の減損
当社では、各資産グループにおいて、収益性が著しく低下した資産については、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。なお、資産のグルーピングは、証券店舗等の個別性の強い資産については個別物件単位で行い、その他の事業用資産については管理会計上の区分に従って行っております。
④ 繰延税金資産の回収可能性
当社では、企業会計上の資産・負債と税務上の資産・負債との差額である一時差異等について税効果会計を適用し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、将来の合理的な見積可能期間における課税所得の見積額を限度として、当該期間における一時差異等のスケジューリングの結果に基づき判断しております。
(2) 当事業年度の財政状態の分析
<資産の部>当事業年度末の総資産は前年度末比1兆3,977億円(13.6%)増加の11兆6,835億円となりました。内訳は流動資産が同1兆3,996億円(13.8%)増加の11兆5,772億円であり、このうち現金・預金が同1,539億円(13.3%)増加の1兆3,145億円、トレーディング商品が同5,079億円(10.9%)増加の5兆1,632億円、有価証券担保貸付金が同6,389億円(20.1%)増加の3兆8,119億円となっております。固定資産は同19億円(1.8%)減少の1,062億円となっております。
<負債の部・純資産の部>当事業年度末の負債合計は前年度末比1兆4,359億円(15.2%)増加の10兆8,825億円となりました。内訳は流動負債が同1兆1,942億円(14.5%)増加の9兆4,217億円であり、このうちトレーディング商品が同3,210億円(9.1%)増加の3兆8,504億円、有価証券担保借入金が同2,463億円(9.2%)増加の2兆9,202億円、短期借入金が同750億円(6.4%)増加の1兆2,424億円となっております。固定負債は同2,416億円(19.9%)増加の1兆4,568億円であり、このうち社債が同110億円(1.9%)減少の5,833億円、長期借入金が同2,528億円(43.2%)増加の8,381億円となっております。
純資産合計は当期純利益644億円を計上したほか、配当金1,004億円の支払いを行ったことなどから、同381億円(4.5%)減少の8,010億円となりました。
(3) 当事業年度の経営成績の分析
① 事業全体の状況
当事業年度の営業収益は3,588億円(前年度比7.1%増)となりました。受入手数料は株式取引が増加したことによる委託手数料の増加や投資信託の販売にかかる募集・売出しの取扱手数料の増加等により、総額で2,091億円(同15.4%増)、トレーディング損益は株券等が増加したものの債券・為替等の減少により999億円(同14.0%減)となりました。金融収支は169億円(同2.1%増)、純営業収益は3,260億円(同3.8%増)となっております。
販売費・一般管理費は、人件費が1,027億円(同3.0%増)、事務費が465億円(同5.4%増)となったこと等から、合計で2,405億円(同3.8%増)となりました。この結果、経常利益は866億円(同1.7%増)となりました。
これに特別損益、法人税等を加味した結果、当期純利益は644億円(同10.2%増)となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
| 純営業収益 | 経常利益 | |||||||
| 平成29年 3月期 | 平成30年 3月期 | 対前年度 増減率 | 構成比率 | 平成29年 3月期 | 平成30年 3月期 | 対前年度 増減率 | 構成比率 | |
| リテール営業部門 | 182,579 | 209,162 | 14.6% | 64.1% | 28,341 | 48,995 | 72.9% | 56.5% |
| 国内ホールセール部門 | 125,705 | 115,001 | △8.5% | 35.3% | 54,498 | 40,653 | △25.4% | 46.9% |
| その他・調整等 | 5,817 | 1,928 | ― | 0.6% | 2,394 | △2,984 | ― | △3.4% |
| 合計 | 314,102 | 326,092 | 3.8% | 100.0% | 85,234 | 86,664 | 1.7% | 100.0% |
[リテール営業部門]
リテール営業部門は、主に個人や未上場法人のお客様に幅広い金融商品・サービスを提供しております。
リテール営業部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社の顧客の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、顧客動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、顧客のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。
当事業年度においては、4月より、お客様目線をより重視した営業推進体制へ移行し、個別商品の販売目標を廃止したことなどにより、営業員が、今まで以上に多くの時間を、お客様のニーズやマーケットの動向をより的確に捉えた提案に割けるようになりました。その結果、市場環境が特に好調であった米国株式を中心に、外国株式の売買代金が大幅に増加したほか、外国株式の預り資産残高についても過去最高の水準となりました。
株式投信販売については、マーケットのニーズに沿ったテーマ型投信の取扱いにより、募集・販売額が大幅に向上し、投信募集手数料も前年度比大幅増となりました。
また、ラップ口座サービスの拡充に取り組んだ結果、平成29年度末のラップ口座契約資産残高は過去最高水準となりました。
好調な市場環境に伴う顧客ニーズの高まりに加え、これらの取組みが寄与し、当事業年度のリテール営業部門における純営業収益は2,091億円(前年度比14.6%増)、経常利益は489億円(同72.9%増)となりました。リテール営業部門の当事業年度の純営業収益および経常利益の当社全体の純営業収益および経常利益に占める割合は、それぞれ64.1%および56.5%でした。
[国内ホールセール部門]
国内ホールセール部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングで構成されており、グローバル・マーケッツは、主に国内外の機関投資家や事業法人、金融法人、公共法人等の顧客向けに、株式、債券・為替及びそれらの派生商品のセールスおよびトレーディングを行っております。グローバル・インベストメント・バンキングは、国内外における有価証券の引受け、M&Aアドバイザリー等、多様なインベストメント・バンキング・サービスを提供しております。グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る顧客フロー収益およびトレーディング収益です。グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料です。グローバル・マーケッツにおいては、国際的な地政学リスクや経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。
グローバル・マーケッツにおいては、エクイティ収益は比較的堅調に推移しました。一方で金融市場において低ボラティリティが継続し収益が低調に推移したため、グローバル・マーケッツは減収減益となりました。
グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、複数の大型エクイティ募集・売出し案件でJGC(ジョイント・グローバル・コーディネーター)や主幹事を務めたこと等により好調な業績となりましたが、販売費・一般管理費も増加したため、グローバル・インベストメント・バンキングは増収減益となりました。
以上のことから、当事業年度における国内ホールセール部門における純営業収益は1,150億円(同8.5%減)、経常利益は406億円(同25.4%減)となりました。国内ホールセール部門の当事業年度の純営業収益および経常利益の当社全体の純営業収益および経常利益に占める割合は、それぞれ35.3%および46.9%でした。
③ 経営成績の前提となる平成29年度のマクロ経済環境
<海外の状況>世界経済は緩やかに拡大しており、IMF(国際通貨基金)の推計によれば、平成29年の世界経済成長率は前年を上回り、5年ぶりの高い伸びとなったとみられます。米国経済は、引き続き内外の政治的な混乱に対する懸念を払拭できないものの、平成29年末に成立した税制改革などの拡張的な財政政策によって、国内景気は一段と押し上げられようとしています。また、ユーロ圏の景気も拡大し、デフレ懸念が後退したことから、緩和的な金融政策も徐々に縮小しつつあります。さらに、先進国だけでなく、新興国経済も回復基調にあり、中国が安定的に推移しているほか、ブラジルやロシアはプラス成長に転じています。
米国経済は、平成30年1-3月期こそ個人消費の伸びが抑制され、実質GDP成長率は前期比年率2%台前半の成長に留まりましたが、平成29年4-6月期からの3四半期は3%前後の高成長となりました。平成30年1-3月期の減速は、個人消費が約5年ぶりの低い伸びになったことが響きましたが、消費の裏付けとなる雇用・所得環境が安定しており、平成29年12月に成立した税制改革による可処分所得の押し上げも見られます。また、税制改革の恩恵は、企業業績や企業マインドの改善にも及んでおり、設備投資は堅調な伸びを維持しています。また、労働市場の逼迫に伴う省力化投資へのニーズが高まっている点も設備投資の追い風となっています。しかし、平成30年2月以降、トランプ大統領が保護主義的な通商政策を強力に推進しており、中国をはじめとする世界各国との摩擦が激化すれば、輸入価格の上昇だけでなく、米国からの輸出量が減少し、企業の生産活動や投資計画に悪影響が及ぶ恐れがあります。金融面では、底堅い景気拡大を受けて、FRB(連邦準備制度理事会)は平成29年の計3回の利上げに続いて、平成30年3月にも政策金利を引き上げました。同時に、平成29年10月からは、FRBが保有する資産の規模縮小も開始しています。一方、米国株式市場では、底堅い米国経済や税制改革への期待から騰勢が続き、NYダウ平均株価は平成30年1月に過去最高値を更新しました。もっとも、その後は、インフレへの懸念から長期金利が上昇したり、通商摩擦への懸念の高まりとともに株価が大きく下落する場面もありました。
欧州経済は、緩やかながら安定した成長が続いており、平成29年のユーロ圏の実質GDP成長率は2.4%と10年ぶりの高成長になりました。平成30年1-3月期は前期比年率1.5%増、前年比では2.5%増となり、過去3四半期平均の前期比年率2.9%増から大きく鈍化しましたが、1%程度とされる潜在成長率を上回り、堅調に推移しているといえます。ユーロ圏の雇用情勢は改善傾向にあり、家計の所得環境も良好なことから、個人消費が底堅く、内需を中心にバランスの取れた形で成長しています。もっとも、ユーロ高が進行してきたために、輸出依存度が高いドイツなどでは、景気減速感が見られます。一方、金融面では、デフレ懸念の後退を受けて、ECB(欧州中央銀行)は非伝統的な金融緩和政策の軌道修正を進めています。平成29年4月から量的緩和の規模を縮小させたのに続き、平成30年1月以降、資産買取額を毎月300億ユーロに半減させています。ただ、平成30年に入ってからのユーロ圏のインフレ率は、ECBが目指すインフレ目標「2%をやや下回る水準」とは大きな乖離が見られることから、ECBは、非伝統的な金融緩和政策の修正を慎重に進めていくとみられます。
新興国経済は、平成27年をボトムにして成長率が加速しており、平成29年は4年ぶりの高成長となりました。中国経済は、平成30年1-3月期の実質GDP成長率が前年比6.8%増と、平成29年の6.9%成長から僅かに減速したものの、堅調に成長を続けています。もっとも、前期比では、平成29年7-9月期をピークに2四半期連続で減速しています。個人消費が成長の最大の牽引役となっており、総資本形成の伸びの鈍化をある程度カバーしています。平成30年1-3月期に入って、消費関連にやや減速感が見られますが、底堅く推移しています。固定資産投資は、過剰生産能力を指摘される製造業やインフラ投資が減速する一方、不動産開発投資は大きく伸びたことから、投資全体ではやや加速しています。また、米国との通商摩擦問題は今後のリスク要因ではありますが、互いに制裁を発動し合うというように状況がエスカレートしない限り、影響は限定的とみられます。一方、中国以外の新興国では、総じて平成29年の経済成長率は当初の想定を上回る回復が見られ、原油などの資源価格の上昇は資源国経済にとって追い風になっています。ただ、一部では、米国など先進国の金利上昇の影響から資本が国外に流出し、通貨安に伴う高インフレや通貨防衛のための政策金利の引き上げなど、経済的な困難に直面しているケースも散見されます。
<日本の状況>日本経済は、平成28年半ば以降、内需を中心に緩やかな回復基調が続きましたが、平成30年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率0.6%減と9四半期ぶりのマイナス成長に陥り、過去4四半期の平均年率2%弱の成長から大幅に減速しました。背景には、個人消費や住宅投資が軟調であったことに加えて、これまで堅調に拡大してきた設備投資や輸出の伸びも鈍化したことがあります。内需の弱さを反映して輸入も減速したために、外需の寄与度はプラスとなったものの、内需の寄与度のマイナス幅が上回ったことから、全体でマイナス成長になりました。このように、直近では内需項目が軒並み小幅なマイナス成長になり、景気拡大の足踏みが見られましたが、平成29年度全体では1.6%成長に加速し4年ぶりの高い伸びとなりました。平成28年度の成長が外需に依存した形だったことと比べると、平成29年度は内需の寄与度が1.2%ポイント、外需の寄与度が0.4%ポイントとなり、よりバランスの取れた成長であったといえます。
GDPに占めるウエイトの大きい個人消費は、平成30年1-3月期に小幅ながらも2四半期ぶりに減少しました。自動車を中心とした耐久消費財をはじめ総じて弱い内容になりましたが、天候不順による生鮮食品の高騰や原油価格の上昇、人手不足などに伴うコスト増などを受けて、消費者が直面する物価上昇率は高止まり、消費者の生活に影響を及ぼしているとみられます。また、年度全体でみると、失業率が2%台半ばまで一段と低下したほか、企業の採用意欲が引き続き強く、賃金も緩やかに増加するなど雇用・所得環境の改善が続き、消費者マインドは高い水準を維持しました。
住宅投資については、日本銀行の緩和的な金融政策によって、低い住宅ローン金利が下支え要因となったものの、建材コストや人件費の上昇もあって、大都市圏を中心に住宅価格が上昇したことが需要を抑制したほか、相続税対策などの特殊要因によって押し上げられてきた貸家建設の減速感が強まりました。この結果、平成29年7-9月期以降、3四半期連続で前期比マイナス成長となっています。
一方、企業の設備投資は、平成29年度全体では前年比3.2%増と8年連続で増加しました。企業収益が高水準にあることや労働需給の逼迫を背景に、深刻な人手不足に対応した合理化・省人化投資や、競争力を維持するための設備の更新、研究開発投資などが増加しました。もっとも、企業は支出全般に慎重な姿勢を崩しておらず、設備投資の水準は、キャッシュ・フローを大きく下回り、減価償却費を一定程度上回る水準に留まっています。また、平成30年1-3月期の設備投資はプラス成長を維持したものの、伸び率が鈍化している背景には、輸出の伸びが減速したために生産活動が一服したことが考えられます。
外需に関しては、海外経済が底堅く拡大していることから輸出は増加基調にあり、平成29年度は前年比6.2%の成長と、前年度から伸び率が加速しました。地域別に見ると、アジア向けの輸出が持ち直したほか、米国やEU(欧州連合)向けは概ね横ばいとなるなど、総じて堅調に推移しました。自動車や半導体等製造装置の輸出が好調でしたが、引き続き、海外経済の動向には留意が必要です。特に、平成30年に入って、米国が保護主義的な通商政策を推し進めており、この先、世界貿易の縮小につながるリスクがあります。また、米国など先進国の金利上昇により、資本流出に直面する新興国経済に変調が生じると、日本からの輸出にネガティブに作用するとみられます。一方、輸入は、平成29年度全体では内需の回復を受けて持ち直し、2年ぶりに増加しました。
金融面では、日本銀行による強力な金融緩和措置が続いています。「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の一環として、イールドカーブ・コントロールを導入し、短期金利と長期金利の両方を事実上管理するという政策を実行しています。米国の市場金利の上昇を受けて、日本の国債利回りが上昇する局面もありましたが、長期金利(10年国債利回り)は、平成29年度を通じて、概ね0.0%~0.1%という狭いレンジで安定的に推移しました。為替レートは平成29年に入ると、7月から9月上旬にかけて、地政学的リスクの高まりを受けてリスク回避の動きが強まり、円高が進む局面がみられましたが、総じて109~114円という狭いレンジのなかでの変動を繰り返しました。ただ、平成30年に入って、米国の長期金利上昇をきっかけに世界的な株安が進み、さらに、米国の保護主義的な通商政策によって、米中の貿易摩擦激化への警戒感が強まると、リスク回避の動きから円高が加速し、平成30年3月下旬には、1年4カ月ぶりの円高水準となる104円台を記録しました。一方、対ユーロでは、欧州経済の順調な拡大やECBの金融政策の正常化への思惑を背景に、年末にかけて、円安・ユーロ高が進みました。しかし、平成30年2月に入ると、対ドル同様にリスク回避の動きが強まり、円高・ユーロ安に振れました。
平成30年3月末の日経平均株価は21,454円30銭(前年3月末比2,545円04銭高)、10年国債利回りは0.043%(同0.024ポイントの低下)、為替は1ドル106円19銭(同5円61銭の円高)となりました。
(4) 当事業年度のキャッシュ・フローの状況の分析
① 営業活動、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物
当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
| 平成29年3月期 | 平成30年3月期 | |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | △22,968 | △225,692 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △19,685 | △15,569 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | 69,482 | 398,224 |
| 現金及び現金同等物の増減額(△は減少) | 26,829 | 156,961 |
| 現金及び現金同等物の期首残高 | 1,133,757 | 1,160,586 |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 1,160,586 | 1,317,548 |
当事業年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは、トレーディング商品の増減や有価証券担保貸付金及び有価証券担保借入金の増減、短期貸付金の増減などにより2,256億円の減少(前年度は229億円の減少)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、無形固定資産の取得による支出などにより155億円の減少(同196億円の減少)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増減や長期借入れによる収入及び長期借入金の返済による支出などにより3,982億円の増加(同694億円の増加)となりました。この結果、当事業年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末比1,569億円増加の1兆3,175億円となりました。
② 資本の財源及び流動性に係る情報
(ⅰ) 流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>当社は、多くの資産及び負債を用いて有価証券関連業務を中心としたビジネスを行っており、ビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社の資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めております。特に近年においては、世界的金融危機及び信用危機による不測の事態に備え、市場からの資金調達、金融機関からの借入等により、手元流動性の更なる積み増しを行っております。同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
また、当社の親会社である大和証券グループ本社を中心とする大和証券グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、大和証券グループ本社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。その中で当社は、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しております。
なお、当社の親会社である大和証券グループ本社は、平成26年金融庁告示第61号による連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)の最低基準(平成27年3月末から段階的に導入)の遵守が求められております。大和証券グループ本社の平成30年3月期第4四半期日次平均のLCRは146.6%となっており、上記金融庁告示による要件を満たしております。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>当社は、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社は機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。
当社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
(ⅱ) 株主資本
当社が株式や債券、デリバディブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、証券担保ローン等の有価証券関連業務を中心とした幅広い金融サービスを展開するためには、十分な資本を確保する必要があります。当事業年度末の株主資本は、7,961億円(前事業年度末比360億円減)となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,499億円であり、利益剰余金は当期純利益644億円を計上したほか、配当金1,004億円の支払いを行った結果、3,462億円(同360億円減)となりました。