有価証券報告書-第29期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/24 16:14
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96項目
本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められた会計基準に基づき作成されております。また、当社は、財務諸表を作成するにあたり、会計方針に基づいていくつかの重要な見積りを行っており、これらの見積りは一定の条件や仮定を前提としております。そのため、条件や仮定が変化した場合には、実際の結果が見積りと異なることがあり、結果として財務諸表に重要な影響を与える場合があります。重要な会計方針のうち、特に重要と考える項目は、次の4項目です。
① トレーディング商品の評価
当社では、トレーディング商品に属する有価証券及びデリバティブ取引は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価損益はトレーディング損益として損益計算書に計上しております。なお、当事業年度の期首より、「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号 2019年7月4日)等を早期適用しており、トレーディング商品の時価は、時価の算定に用いたインプットの観察可能性及び重要性に応じて、3つのレベルに分類しております。これらの時価は「第5 経理の状況 (金融商品関係) 2. 金融商品の時価等及び時価のレベルごとの内訳等に関する事項」に記載しております。
時価測定に用いた評価技法及びインプットの詳細は以下のとおりであります。これらは、市場参加者が商品を評価するときに考慮するであろう当社による仮定及び見積りを含んでおります。
(ⅰ)商品有価証券等
主に同一又は類似の商品に関する市場価格を用いております。また、特定の負債性金融商品及び資産担保証券については、デリバティブ取引に準じた評価技法もしくは、ディスカウント・キャッシュ・フロー・モデルにより時価を測定しております。
(ⅱ)デリバティブ
上場デリバティブについては原則として市場価格を、店頭デリバティブについては、評価技法により理論価格を算定しております。
デリバティブ取引の理論価格には、信用リスク及び流動性リスクを考慮した調整が含まれており、時価測定においては、市場で一般に用いられるリスク中立測度の仮定のもとでの期待キャッシュ・フローの現在価値を、主に数値積分法、有限差分法及びモンテカルロ法による価格算定モデルにより算定しております。
価格算定モデルには、金利、為替レート、株価、ボラティリティ、相関係数などの様々なインプットがあります。また、市場で観察可能でないインプットとしては、相関係数、長期のボラティリティ、長期のクレジット・スプレッドなどがあります。
価格算定モデルの選択及びその価格算定モデルに投入するインプットの決定、信用リスク及び流動性リスクにかかる評価調整には見積り及び前提を含んでおり、特に、市場で観察可能でないインプットを使用する場合には、その見積り及び前提は、トレーディング商品の評価額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
算定に用いたインプットを含め、価格算定モデルは社内における指針に基づいて承認され、価格算定モデルの開発部署から独立した部署が、モデル内の仮定及び技法、算定に用いたインプットについて検証を行っております。また、価格算定モデルを観察可能な市場情報や代替可能なモデルとの比較分析等により、市場動向に合わせて調整する体制を構築しております。
経営者は、時価測定に用いられた前提は合理的であると考えております。しかしながら、これらの見積りには不確実性が含まれているため、将来キャッシュ・フローや時価の下落を引き起こすような見積りの変化が、評価金額に不利に影響し、結果として、財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
② 有価証券の減損
当社では、投資有価証券等のトレーディング商品に属さない有価証券を保有しております。このうち市場価格のある有価証券については、市場価格が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。具体的には、当事業年度末における市場価格の下落率が取得原価の50%以上の場合は、著しい下落かつ回復する見込みがないものと判断して、減損処理を行っております。市場価格の下落率が取得原価の30%以上50%未満の場合は、市場価格の推移及び発行会社の財政状態等を総合的に勘案して回復する見込みを検討し、回復する見込みがないと判断したものについては、減損処理を行っております。また、市場価格のない有価証券については、実質価額が著しく低下し、かつ、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられない場合には、減損処理を行っております。
③ 固定資産の減損
当社では、各資産グループにおいて、収益性が著しく低下した資産については、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。なお、資産のグルーピングは、証券店舗等の個別性の強い資産については個別物件単位で行い、その他の事業用資産については管理会計上の区分に従って行っております。
④ 繰延税金資産の回収可能性
当社では、会計基準に従い、企業会計上の資産・負債と税務上の資産・負債との差額である一時差異等について税効果会計を適用し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、将来の合理的な見積可能期間における課税所得の見積額を限度として、当該期間における一時差異等のスケジューリングの結果に基づき判断しております。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済情勢や相場環境の悪化及び外出自粛に伴う経済、企業活動の停滞・悪化は、現時点においてはこれらの見積りに重大な影響を及ぼしておりませんが、今後、入手可能となる情報等により新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化し、会計上の見積りに用いられた前提条件に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)当事業年度の財政状態の分析
<資産の部>当事業年度末の総資産は前年度末比1兆1,171億円(9.3%)増加の13兆974億円となりました。内訳は流動資産が同1兆785億円(9.1%)増加の12兆9,310億円であり、このうち現金・預金が同5,138億円(52.3%)増加の1兆4,956億円、トレーディング商品が同7,535億円(12.9%)減少の5兆736億円、有価証券担保貸付金が同1兆3,223億円(39.2%)増加の4兆6,929億円となっております。固定資産は同385億円(30.2%)増加の1,663億円となっております。
<負債の部・純資産の部>当事業年度末の負債合計は前年度末比1兆676億円(9.5%)増加の12兆3,030億円となりました。内訳は流動負債が同9,555億円(9.6%)増加の10兆8,592億円であり、このうちトレーディング商品が同7,997億円(18.8%)減少の3兆4,642億円、有価証券担保借入金が同1兆6,424億円(51.3%)増加の4兆8,433億円、短期借入金が同1,231億円(10.6%)増加の1兆2,887億円となっております。固定負債は同1,123億円(8.5%)増加の1兆4,400億円であり、このうち社債が同783億円(13.1%)増加の6,744億円、長期借入金が同254億円(3.7%)増加の7,150億円となっております。
純資産合計は当期純利益を413億円計上、配当金116億円の支払いを行ったほか、「大和プロパティ㈱」及び「大和オフィスサービス㈱」を吸収合併したことによる利益剰余金等の増加などから、同494億円(6.6%)増加の7,944億円となりました。
(3)当事業年度の経営成績の分析
① 事業全体の状況
当事業年度の営業収益は3,151億円(前年度比5.5%増)となりました。受入手数料は委託手数料及び引受け・売出しの取扱手数料が増加し、総額で1,861億円(同4.7%増)、トレーディング損益は株券等の増加により1,025億円(同33.7%増)となりました。金融収支は125億円(同17.6%減)、純営業収益は3,013億円(同11.7%増)となっております。
販売費・一般管理費は、人件費が968億円(同1.8%増)、減価償却費が230億円(同14.6%増)であったものの、取引関係費が357億円(同20.1%減)となったこと等から、合計で2,357億円(同2.0%減)となりました。この結果、経常利益は662億円(同122.5%増)となりました。
これに特別損益、法人税等を加味した結果、当期純利益は413億円(同255.4%増)となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
純営業収益経常利益
2020年
3月期
2021年
3月期
対前年度
増減率
構成比率2020年
3月期
2021年
3月期
対前年度
増減率
構成比率
リテール営業部門161,714165,1452.1%54.8%4,46618,530314.9%24.7%
国内ホールセール部門103,864135,99530.9%45.1%29,52356,34490.8%75.3%
その他・調整等4,292257-0.1%△4,201△8,591--
合計269,872301,39911.7%100.0%29,78866,283122.5%100.0%

(注)構成比率は経常利益のセグメントの合計に占める割合としております。
[リテール営業部門]
リテール営業部門は、主に個人や未上場法人のお客様に幅広い金融商品・サービスを提供しております。
リテール営業部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。
当事業年度においては、以下の事業計画に沿って活動を行いました。
1.プリンシプルベースの営業体制の構築2.お客様のあらゆるニーズに応える魅力的な商品・サービスの開発、ソリューション提案の高度化3.外部チャネル・外部リソースを活用したビジネス展開
4.収益構造の転換、コスト構造の見直し
各項目の実績は以下のとおりです。
1.お客様の声を起点とする商品・サービスの向上を目的に、「お客様満足度協議会」を半期毎に開催し、ラップ口座サービスにおける投資対象ファンドの見直しや口座開設手続きのペーパレス化などに取り組みました。
2.投資信託の購入時手数料を無料とし、評価額や保有期間に応じた手数料とする新プラン「投信フレックスプラン」を導入し、お客様の投資スタイルに合わせた手数料体系が選択できるようになりました。また、「ダイワのフューチャー・デザイナー~未来のカルテ~」に「資産運用プランニング」が加わり、資産運用のあらゆるシーンで最適なソリューションを提供することが可能となりました。
3.お客様基盤の拡大や資産形成分野における商品・サービス提供を目的として、外部提携先との協業について推進・検討しました。
4.ラップサービスの統合・刷新や、投信フレックスプランの導入など、資産管理型ビジネスモデルへの進化を進めました。また、大型店舗の統合・効率化、デジタル化の推進による業務効率化を進めました。
当事業年度は、新型コロナウィルス感染症拡大の影響による初の緊急事態宣言が東京をはじめとする各地域で発出されたことから、第1四半期は商品募集・販売額が減少しましたが、当該緊急事態宣言の解除後は段階的に回復しました。一方で株式売買代金は第1四半期から好調で、株式相場の上昇にともない国内株・外国株ともに四半期ごとに増加しました。加えて、複数の大型エクイティ引受案件が貢献し、エクイティ収益が増加しました。
また、リテール営業部門における販売費・一般管理費は収支構造改革の取組みの結果減少し、利益率が向上しました。
当事業年度のリテール営業部門における純営業収益は1,651億円(前年度比2.1%増)、経常利益は185億円(同314.9%増)となりました。リテール営業部門の当事業年度の純営業収益及び経常利益の当社全体の純営業収益及び経常利益に占める割合は、それぞれ54.8%及び24.7%でした。
[国内ホールセール部門]
国内ホールセール部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングで構成されており、グローバル・マーケッツは、主に国内外の機関投資家や事業法人、金融法人、公共法人等のお客様向けに、株式、債券・為替及びそれらの派生商品のセールスおよびトレーディングを行っております。グローバル・インベストメント・バンキングは、国内外における有価証券の引受け、M&Aアドバイザリー等、多様なインベストメント・バンキング・サービスを提供しております。グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る顧客フロー収益およびトレーディング収益です。グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料です。グローバル・マーケッツにおいては、地政学リスクや国際的な経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。
当事業年度においては、以下の事業計画に沿って活動を行いました。
1.企業の高付加価値化を促進
2.お客様ニーズを捉えたプロダクト・サービスの提供
3.事業構造や日本の産業構造転換を支援
4.アジアのリージョナル・ブローカーとしての汎アジアビジネスサポート
各項目の実績は、以下のとおりです。
1~3.M&Aビジネスへの取組みとしてミッドキャップの海外クロスボーダー案件獲得に努めました。IPOビジネスへの取組みとしてはDaiwa Innovation Networkを開催するなどスタートアップ企業の発掘・育成を推進しました。その他、大型ファイナンス案件獲得に取り組みました。
4.国内外のリサーチ力強化に注力した結果、日経ヴェリタスのアナリストランキング2021で会社別1位を3年連続で獲得したほか、Institutional Investorsの2021Institutional Investor All-Japan Research Teamでも1位を2年連続で獲得しました。
当事業年度のグローバル・マーケッツは増収増益となりました。グローバル・マーケッツでは良好なマーケット環境の中、リテール部門との連携によるタイムリーな商品提供、金利動向の変化を適切に捉えた債券などのトレーディング、及び市場環境の変化に対応した株式トレーディングが、収益に大きく貢献しました。フィクスト・インカム収益は第1四半期にJGBとクレジットの顧客フロー増加及びポジション運営が奏功し特に伸長しましたが、第2四半期以降も堅調に推移しました。
グローバル・インベストメント・バンキングは増収増益となりました。エクイティ引受けは、新型コロナウィルスの影響で第1四半期には市場全体で案件数が減少しましたが、第2四半期以降、ソフトバンク株式会社や日本航空株式会社など複数の大型ファイナンスにおいてジョイント・グローバル・コーディネーターを務めたほか、株式会社ポピンズホールディングスによるSDGs-IPO(注1)、株式会社学研ホールディングスによるソーシャルPO(注2)など、多くの主幹事を務めました。デット引受けは新型コロナウィルスの影響で企業のニーズが堅調であったことに加え、及び国立大学法人東京大学によるソーシャルボンド(注3)などの本邦初となる案件の主幹事を務めました。当事業年度の引受け・売出し手数料は、前年度比20.6%増の338億円となりました。M&Aアドバイザリー業務では新型コロナウィルスの影響で第1四半期には案件の進行が遅れる等の影響がありましたが、一方で社会的な変化を受けて企業のM&Aニーズは増加しており、案件のパイプラインは第4四半期にかけて高水準となりました。M&A関連手数料は同47.1%減の73億円となりました。
以上のことから、当事業年度の国内ホールセール部門における純営業収益は1,359億円(同30.9%増)、経常利益は563億円(同90.8%増)となりました。国内ホールセール部門の当事業年度の純営業収益及び経常利益の当社全体の純営業収益及び経常利益に占める割合は、それぞれ45.1%及び75.3%でした。
(注1) SDGs-IPO(Initial Public Offering):新規株式公開時の株式公募において、その資金使途及び発行体について、SDGsへの貢献、ソーシャルボンド原則への準拠性についての評価を第三者評価機関から取得したもの。
(注2) ソーシャルPO(Public Offering):ソーシャルボンド原則などに適合しているとの評価を第三者評価機関から取得したソーシャルエクイティ・ファイナンス・フレームワークに則って実施する公募による資金調達。
(注3) ソーシャルボンド:特定の社会的課題への対処や軽減、あるいは、ポジティブな社会的成果の達成を目指す新規又は既存のプロジェクトに必要な資金を調達するために発行する債券。
③ 経営成績の前提となる2020年度のマクロ経済環境
<海外の状況>世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大を主な要因として、2020年前半に急激に悪化しましたが、2020年後半以降は総じて持ち直しの動きが見られています。IMF(国際通貨基金)が2021年4月に公表した世界経済見通しによれば、2020年は先進国、新興国ともにマイナス成長に転じ、世界経済成長率は△3.3%とリーマン・ショック時を上回る大幅なマイナス成長となる一方、2021年は前年の落ち込みからの反動もあり+6.0%と高い成長が見込まれています。もっとも、最悪期を脱した2020年後半以降も、世界経済は新型コロナウイルスの感染状況によって左右される状況が続いており、引き続き非常に不安定な状態が続いています。
米国経済は、新型コロナウイルスの感染者数の急増を受けて2020年前半に急速に悪化しましたが、その後は持ち直しの動きが続いています。2020年3月半ばに当時のトランプ大統領が緊急事態を宣言し、小売店や飲食店、娯楽施設などの営業規制や外出制限を実施したことによって、外食や娯楽関連など不要不急のサービスを中心に個人消費が急減しました。これにより、2020年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率△5.0%と6年ぶりのマイナス成長となり、続く4-6月期の実質GDP成長率は同△31.4%と、1947年の現行統計開始以来最大のマイナス幅を記録しました。しかし、営業規制・外出制限の段階的な解除に伴い経済活動が再開されたことに加え、政府による経済対策が下支えとなり、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+33.4%と大幅なプラスに転じました。10-12月期に入ると新型コロナウイルスの新規感染者数が大幅に増加する中、一部の州・地域で営業規制・外出制限が再び導入され、実質GDP成長率は前期比年率+4.3%と、経済の回復ペースは大幅に鈍化しました。しかし、2021年に入って新型コロナウイルスワクチンの接種が順調に進む中、政府による行動規制の緩和が進んだことに加え、2020年12月、および2021年3月に成立した追加経済対策の効果もあり、2021年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+6.4%と再加速しました。
金融面では、FRB(連邦準備制度理事会)が積極的な金融緩和を行いました。新型コロナウイルス感染症の影響によって経済が急激に悪化したことを受け、FRBは2020年3月に2度の緊急利下げを実施し、2015年12月以来となる実質的なゼロ金利政策を復活させました。また、量的緩和の拡大も決定し、FRBのバランスシートは大幅に拡大しています。12月のFOMCでは、経済が十分に回復するまでFRBのバランスシートの拡大を続けることが約束されたことに加え、2021年3月時点では少なくとも2023年末まで政策金利がゼロで据え置かれる見通しが示され、緩和的な金融環境を長期にわたって維持する方針が引き続き示されています。
欧州経済(ユーロ圏経済)は、新型コロナウイルス感染症の影響が長引く中、厳しい状況が続いています。ユーロ圏でも多くの国が2020年3月半ばからロックダウンに踏み切ったことにより、個人消費や生産など、幅広い分野で経済が大きく落ち込み、1-3月の実質GDP成長率は前期比年率△14.2%と大幅なマイナスとなりました。また、4-6月期には同△38.8%とさらにマイナス幅が拡大し、2四半期連続で統計開始以降の最悪値を更新しました。その後、早い国では4月半ばから、遅い国でも5月以降はロックダウンを緩和したことで、5月以降、ユーロ圏経済は持ち直しに転じ、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+60.3%とプラスに転じました。しかし、新型コロナウイルスの感染者数が再び増加に転じたことを受け、ドイツ、フランスなど、多くの国で再びロックダウンを余儀なくされ、10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率△2.7%、続く2021年1-3月期も同△2.5%と2四半期連続のマイナス成長となり、一時的に持ち直していた欧州経済は再び悪化しました。
金融面では、ECB(欧州中央銀行)による金融緩和が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大による急激な景気悪化を受けて、ECBは2020年3月の緊急会合で、新型コロナウイルス感染症対応のための新規の資産買い取りプログラムを設定し、量的緩和策の拡大を決定しました。その後、6月、12月には資産の買い取り枠が拡大されたほか、当初は2020年末までとされていた買い入れ期間も、12月に「少なくとも2022年3月まで」延長されるなど、金融緩和策が強化されました。新興市場国・発展途上国経済は、先進国と同様に2020年前半に急激に悪化した後、2020年後半以降持ち直しの動きが続いています。IMFによれば、新興国の実質GDP成長率は2020年に△2.2%とマイナス成長に陥った後、2021年は+6.7%と高い成長が見込まれています。
新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国では、2020年1-3月期には新型コロナウイルス感染症によって経済活動の停止を余儀なくされ、実質GDP成長率は前年同期比△6.8%と、1992年に四半期ベースの統計が開始されて以降、初めてのマイナス成長となりました。しかし、他国に先んじて新型コロナウイルスの感染が収束へ向かったこともあり、4-6月期以降は着実に経済が持ち直しています。4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+3.2%と、新型コロナウイルスの感染拡大以前に比べると成長率は小幅ながらプラス成長へと転じ、政策による下支えを背景とした投資の回復を主な要因として、7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.9%とプラス幅が拡大しました。また、10-12月期以降も、世界の多くの地域で感染再拡大によって経済活動が制限されたのとは対照的に、中国国内での感染拡大は抑制された状況が続き、10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+6.5%、2021年1-3月期は同+18.3%と成長ペースが加速しました。
中国以外の新興国についても、2020年後半以降持ち直しの動きが続いています。2020年前半は、新興国でも新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために経済活動を制限せざるを得ない状況になったことに加えて、世界的な景気悪化を受けた資金流出や、資源価格の低迷などが、新興国経済を下押しする要因となりました。一方、2020年後半からは、米国や中国を中心とした海外経済の回復や、世界的な金融緩和を背景とした資金流入が新興国経済を下支えしています。ただし、新興国ではワクチン接種の実施が遅れている国が多く、感染再拡大による経済の下振れリスクが高い状況が続いています。
<日本の状況>日本経済は、2020年初めから新型コロナウイルス感染症の影響によって大幅に悪化した後、2020年後半に一時持ち直しに転じたものの、感染再拡大によって2021年に入り再び回復が足踏みしています。
日本の実質GDP成長率は、消費増税に伴う反動減があった2019年10-12月期から3四半期連続でマイナス成長となり、特に新型コロナウイルス感染症の影響が本格的に顕在化した2020年4-6月期は前期比年率△28.6%と、戦後最大のマイナス幅を記録しました。その後、緊急事態宣言が全面解除された5月下旬以降、社会経済活動が徐々に再開されたことで日本経済は持ち直しに転じ、7-9月期の実質GDPは前期比年率+22.9%と大幅な回復を見せました。また、10-12月期も政策による下支えなどを背景に、前期比+11.7%と持ち直しが続きました。しかし、感染再拡大に伴う緊急事態宣言の再発出による個人消費の低迷を主因に、2021年1-3月期は前期比年率△3.9%と再びマイナス成長に転じ、実質GDPは新型コロナウイルスの感染拡大前を下回る水準での推移が続いています。2020年度の実質GDP成長率は前年比△4.6%と、2年連続のマイナス成長となりました。
需要項目ごとに見ると、個人消費は低い水準での推移が続いています。2020年1-3月期は、2019年10月に実施された消費増税による落ち込みからの持ち直しが期待されていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大による自粛の動きによって、外食などをはじめとする不要不急のサービス消費を中心に減少しました。さらに、個人消費を手控える動きは2020年4月7日の緊急事態宣言によって加速し、個人消費は大幅に減少することとなりました。その後、5月下旬に緊急事態宣言が全面解除されたことに加えて、特定定額給付金などの経済対策による下支えなどから、個人消費は持ち直しへと向かいました。しかし、感染拡大への懸念が強い状況が続く中、対面や移動を伴う接触型サービスの回復は緩やかなものとなり、緊急事態宣言の再発出により2021年に入って再び個人消費は悪化することとなりました。住宅投資については、消費増税に伴う反動減があった2019年10-12月期から2020年7-9月期にかけて減少し、その後は横ばい圏で推移しました。コロナ禍に伴う販売の低迷や建設の遅れに加えて、雇用環境の悪化や先行きに対する不透明感が、住宅投資の下押し要因となりました。
企業部門の需要である設備投資についても、新型コロナウイルス感染症の影響による収益環境の急速な悪化をうけて、2020年4-6月期から7-9月期にかけて減少傾向となりました。経済活動の再開が進む中で収益の悪化に歯止めがかかったことや、輸出の持ち直しを受けて2020年10-12月期は一時持ち直しの動きも見られましたが、緊急事態宣言の再発出によって2021年1-3月期には再び減少に転じました。日銀短観(2021年3月調査)によれば、2021年度の設備投資計画(含む土地投資額)は、前年比+0.5%の増加が見込まれています。もっとも、新型コロナウイルスの影響を強く受けた業種などでは、引き続き設備投資に対して慎重であり、全体の回復ペースは緩やかなものにとどまっています。
金融面では、日本銀行による短期金利に加えて長期金利も操作対象とする金融緩和措置が継続しています。日本銀行は、新型コロナウイルスの感染拡大による急激な景気の悪化を受けて、2020年4月に、国債の購入額の上限を撤廃したほか、社債などの買い入れ枠を拡大するなど、量的緩和を強化しました。日本銀行による追加緩和策を受けて、日本の10年国債利回りは2020年4月に一時△0.04%台まで低下しました。世界的に経済活動再開の動きが広まる中で、5月末にはプラス圏を回復しつつも、2020年末頃までゼロ%近傍と非常に低い水準で安定的に推移しました。しかし、2021年に入って、景気過熱や財政悪化への懸念から米国の長期金利が上昇したのに伴い日本の長期金利も小幅ながら上昇し、2月末には一時、2018年10月以来初めて0.15%を上回りました。
為替市場をみると、対ドルでは2020年4月から2020年末にかけては、総じて円高傾向で推移しました。世界的に経済活動再開への期待が高まった6月前半には、リスク回避の動きが弱まり、一時109円台まで円安が進みましたが、6月後半以降は、米国で新型コロナウイルスの感染が再拡大し、FRBによる追加金融緩和への期待感が強まったことなどから円高傾向に転じ、11月には2020年3月以来の103円台まで円高が進みました。しかし、2021年に入ると、経済対策による米国経済回復への期待感の高まりや米国での金利上昇を受け、それまでの円高傾向から一転して、3月末にかけて円安が進行しました。対ユーロについては、世界経済が急激に悪化し、リスク回避の動きが強まった4月から5月前半までは、対ドルと同様に円高傾向で推移しました。しかし、5月後半には欧州の景気回復期待から円安傾向へと転じ、さらにEU27カ国による復興基金案の合意を受けて、7月以降は円安が進行しました。欧州での新型コロナウイルスの感染再拡大などを懸念して、一時円高が進む局面もありましたが、ワクチン普及に伴う行動制限の緩和による欧州経済の回復期待から、年度末にかけて一層の円安が進みました。
株式市場は、2020年度に入って以降、総じて上昇基調で推移しました。新型コロナウイルスの感染拡大をうけて世界的に金融緩和が強化されたことによる低金利や、量的緩和拡大による需給の改善が株価を押し上げる要因となりました。また、2020年後半以降は、ワクチンの世界的な普及や、経済対策を背景とした米国経済の力強い回復への期待感が株価の押し上げ要因となり、2021年2月、日経平均株価は一時、1990年8月以来となる30,000円台まで上昇しました。
2021年3月末の日経平均株価は29,178円80銭(前年3月末比10,261円79銭高)、10年国債利回りは0.104%(同0.073ポイントの上昇)、為替は1ドル110円74銭(同2円32銭の円安)となりました。
(4)当事業年度のキャッシュ・フローの状況の分析
① 営業活動、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物
当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
2020年3月期2021年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー△242,892247,944
投資活動によるキャッシュ・フロー△29,945△22,064
財務活動によるキャッシュ・フロー△182,380286,993
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)△455,218512,873
現金及び現金同等物の期首残高1,437,026981,808
現金及び現金同等物の期末残高981,8081,494,682

当事業年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは、有価証券担保貸付金及び有価証券担保借入金の増減などにより2,479億円(前年度は△2,428億円)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、無形固定資産の取得による支出などにより△220億円(同△299億円)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増などにより2,869億円(同△1,823億円)となりました。この結果、当事業年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末比5,128億円増加の1兆4,946億円となりました。
② 資本の財源及び流動性に係る情報
(ⅰ)流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>当社は、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務を中心としたビジネスを行っており、ビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社の資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
また、当社の親会社である大和証券グループ本社を中心とする大和証券グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、大和証券グループ本社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。その中で当社は、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しております。
なお、当社の親会社である大和証券グループ本社は、平成26年金融庁告示第61号による連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)の最低基準の遵守が求められております。大和証券グループ本社の2021年3月期第4四半期日次平均のLCRは161.2%となっており、上記金融庁告示による要件を満たしております。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>当社は、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社は機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。
当社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
(ⅱ)株主資本
当社が株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、証券担保ローン等の有価証券関連業務を中心とした幅広い金融サービスを展開するためには、十分な資本を確保する必要があります。当事業年度末の株主資本は、7,925億円(前事業年度末比491億円増)となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,523億円であり、利益剰余金は当期純利益413億円を計上したほか、配当金116億円の支払いを行った結果、3,401億円(同467億円増)となりました。

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