有価証券報告書-第30期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/29 15:21
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【項目】
95項目
本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められた企業会計の基準に基づき作成されております。また、当社は、財務諸表を作成するにあたり、会計方針に基づいていくつかの重要な見積りを行っており、これらの見積りは一定の条件や仮定を前提としております。そのため、条件や仮定が変化した場合には、実際の結果が見積りと異なることがあり、結果として財務諸表に重要な影響を与える場合があります。重要な会計方針のうち、特に重要と考える項目は、次の4項目です。
① トレーディング商品の評価
当社では、トレーディング商品に属する有価証券及びデリバティブ取引は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価損益はトレーディング損益として損益計算書に計上しております。また、「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号 2019年7月4日)等を適用しており、トレーディング商品の時価は、時価の算定に用いたインプットの観察可能性及び重要性に応じて、3つのレベルに分類しております。これらの時価は「第5 経理の状況 (金融商品関係) 2. 金融商品の時価等及び時価のレベルごとの内訳等に関する事項」に記載しております。
時価測定に用いた評価技法及びインプットの詳細は以下のとおりであります。これらは、市場参加者が商品を評価するときに考慮するであろう当社による仮定及び見積りを含んでおります。
(ⅰ)商品有価証券等
主に同一又は類似の商品に関する市場価格を用いております。また、特定の負債性金融商品及び資産担保証券については、デリバティブ取引に準じた評価技法もしくは、ディスカウント・キャッシュ・フロー・モデルにより時価を測定しております。
(ⅱ)デリバティブ
上場デリバティブについては原則として市場価格を、店頭デリバティブについては、評価技法により理論価格を算定しております。
デリバティブ取引の理論価格には、信用リスク及び流動性リスクを考慮した調整が含まれており、時価測定においては、市場で一般に用いられるリスク中立測度の仮定のもとでの期待キャッシュ・フローの現在価値を、主に数値積分法、有限差分法及びモンテカルロ法による価格算定モデルにより算定しております。
価格算定モデルには、金利、為替レート、株価、ボラティリティ、相関係数などの様々なインプットがあります。また、市場で観察可能でないインプットとしては、相関係数、長期のボラティリティ、長期のクレジット・スプレッドなどがあります。
価格算定モデルの選択及びその価格算定モデルに投入するインプットの決定、信用リスク及び流動性リスクにかかる評価調整には見積り及び前提を含んでおり、特に、市場で観察可能でないインプットを使用する場合には、その見積り及び前提は、トレーディング商品の評価額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
算定に用いたインプットを含め、価格算定モデルは社内における指針に基づいて承認され、価格算定モデルの開発部署から独立した部署が、モデル内の仮定及び技法、算定に用いたインプットについて検証を行っております。また、価格算定モデルを観察可能な市場情報や代替可能なモデルとの比較分析等により、市場動向に合わせて調整する体制を構築しております。
経営者は、時価測定に用いられた前提は合理的であると考えております。しかしながら、これらの見積りには不確実性が含まれているため、将来キャッシュ・フローや時価の下落を引き起こすような見積りの変化が、評価金額に不利に影響し、結果として、財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
② 有価証券の減損
当社では、投資有価証券等のトレーディング商品に属さない有価証券を保有しております。このうち市場価格のある有価証券については、市場価格が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。具体的には、当事業年度末における市場価格の下落率が取得原価の50%以上の場合は、著しい下落かつ回復する見込みがないものと判断して、減損処理を行っております。市場価格の下落率が取得原価の30%以上50%未満の場合は、市場価格の推移及び発行会社の財政状態等を総合的に勘案して回復する見込みを検討し、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。また、市場価格のない有価証券については、実質価額が著しく低下し、かつ、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられない場合には、減損処理を行っております。
③ 固定資産の減損
当社では、各資産グループにおいて、収益性が著しく低下した資産については、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。なお、資産のグルーピングは、証券店舗等の個別性の強い資産については個別物件単位で行い、その他の事業用資産については管理会計上の区分に従って行っております。
④ 繰延税金資産の回収可能性
当社では、会計基準に従い、企業会計上の資産・負債と税務上の資産・負債との差額である一時差異等について税効果会計を適用し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、将来の合理的な見積可能期間における課税所得の見積額を限度として、当該期間における一時差異等のスケジューリングの結果に基づき判断しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の制限と緩和が繰り返される中での経済、企業活動の停滞・悪化や、ロシア・ウクライナ情勢に起因した資源価格の高騰、米国長期金利の上昇に伴う経済情勢や相場環境の悪化は、現時点においてはこれらの見積りに重大な影響を及ぼしておりませんが、今後、入手可能となる情報等によりこれらの市場、経済または地政学リスクが顕在化した場合には、会計上の見積りに用いられた前提条件に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)当事業年度の財政状態の分析
<資産の部>当事業年度末の総資産は前年度末比1兆5,478億円(11.8%)増加の14兆6,452億円となりました。内訳は流動資産が同1兆5,253億円(11.8%)増加の14兆4,564億円であり、このうち現金・預金が同432億円(2.9%)増加の1兆5,389億円、トレーディング商品が同3,770億円(7.4%)増加の5兆4,506億円、有価証券担保貸付金が同7,890億円(16.8%)増加の5兆4,819億円となっております。固定資産は同225億円(13.5%)増加の1,888億円となっております。
<負債の部・純資産の部>当事業年度末の負債合計は前年度末比1兆8,315億円(14.9%)増加の14兆1,345億円となりました。内訳は流動負債が同1兆4,916億円(13.7%)増加の12兆3,509億円であり、このうちトレーディング商品が同271億円(0.8%)減少の3兆4,370億円、有価証券担保借入金が同1兆757億円(22.2%)増加の5兆9,190億円、短期借入金が同3,969億円(30.8%)増加の1兆6,857億円となっております。固定負債は同3,398億円(23.6%)増加の1兆7,799億円であり、このうち社債が同1,915億円(28.4%)増加の8,660億円、長期借入金が同1,517億円(21.2%)増加の8,667億円となっております。
純資産合計は当期純利益を574億円計上、配当金413億円の支払いを行ったほか、大和証券グループ本社への臨時配当金3,000億円の支払いによる資本剰余金の減少などから、同2,836億円(35.7%)減少の5,107億円となりました。
(3)当事業年度の経営成績の分析
① 事業全体の状況
当事業年度の営業収益は3,260億円(前年度比3.4%増)となりました。受入手数料は募集・売出しの取扱手数料及び代理事務手数料等を含むその他の受入手数料が増加し、総額で2,008億円(同7.9%増)、トレーディング損益は債券等の減少により1,004億円(同2.1%減)となりました。金融収支は138億円(同9.6%増)、純営業収益は3,151億円(同4.5%増)となっております。
販売費・一般管理費は、不動産関係費が215億円(同10.7%減)であったものの、取引関係費が374億円(同4.8%増)、事務費が497億円(同5.3%増)となったこと等から、合計で2,396億円(同1.7%増)となりました。この結果、経常利益は782億円(同18.0%増)となりました。
これに特別損益、法人税等を加味した結果、当期純利益は574億円(同38.7%増)となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
純営業収益経常利益又は経常損失(△)
2021年
3月期
2022年
3月期
対前年度
増減率
構成比率2021年
3月期
2022年
3月期
対前年度
増減率
構成比率
リテール営業部門165,145184,48511.7%58.5%18,53040,379117.9%47.2%
国内ホールセール部門135,995128,573△5.5%40.8%56,34445,170△19.8%52.8%
その他・調整等2572,0480.7%△8,591△7,316
合計301,399315,1064.5%100.0%66,28378,23418.0%100.0%

(注)経常利益又は経常損失(△)の構成比率は、当事業年度において経常利益であったセグメントの経常利益合計に占める、各セグメントの経常利益の割合としております。
[リテール営業部門]
リテール営業部門は、主に個人や未上場法人のお客様に幅広い金融商品・サービスを提供しております。
リテール営業部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。
当事業年度においては、以下の事業計画に沿って活動を行いました。
1.資産管理型ビジネスモデルの実現
2.お客様ニーズを捉えた商品・サービスの提供、総資産アプローチによるソリューションビジネスの拡大
3.デジタルとリアルの融合による顧客接点の拡大とコスト最適化
4.外部チャネルを活用したニュービジネス展開と収益化
各項目の実績は以下のとおりです。
1.ゴールベース・アプローチツールの高度化や、残高ベース商品の開発など、資産管理型ビジネスモデルの実現に向けた取り組みを進めました。ファンドラップや投信フレックスプランなどのストック関連資産残高拡大による残高ベース収益の拡大に取り組みました。
2.お客様の声を起点とする商品・サービスの向上を目的に、「お客様満足度協議会」を半期毎に開催し、外国株式の取扱銘柄の拡充、相続手続きの迅速化によるお客様負担の軽減などに取り組みました。また、資産承継サポートと資産保全をコンセプトとしたラップ口座サービス「安心つながるラップ」や、大和証券グループで組成する不動産信託受益権小口化商品の取扱いを開始するなど、お客様のあらゆるニーズに応える商品・サービスの提供に努めました。
3.営業所の出店等によるお客様接点の拡大、大型店舗の統合・効率化やデジタル化の推進による業務効率化を進めました。
4.お客様基盤の拡大や資産形成分野における商品・サービス提供を目的として、四国銀行との包括的業務提携契約の締結など、外部提携先との協業について推進・検討しました。
当事業年度においては、資産管理型ビジネスモデルへの移行とコスト構造改革などに取り組みました。2020年10月より取扱いを開始した投信フレックスプランの販売額が増加したことが寄与し、株式投信の募集・販売額が増加しました。また、ラップ口座サービスの契約額・純増額がともに増加したことにより契約資産残高は過去最高の2兆9,573億円となり、ラップ関連収益である投資顧問・取引等管理料も増加しました。
当事業年度のリテール営業部門における純営業収益は1,844億円(前年度比11.7%増)、経常利益は403億円(同117.9%増)となりました。リテール営業部門の当事業年度の純営業収益及び経常利益の当社全体の純営業収益及び経常利益に占める割合は、それぞれ58.5%及び47.2%でした。
[国内ホールセール部門]
国内ホールセール部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングで構成されており、グローバル・マーケッツは、主に国内外の機関投資家や事業法人、金融法人、公共法人等のお客様向けに、株式、債券・為替及びそれらの派生商品のセールスおよびトレーディングを行っております。グローバル・インベストメント・バンキングは、国内外における有価証券の引受け、M&Aアドバイザリー等、多様なインベストメント・バンキング・サービスを提供しております。グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る顧客フロー収益およびトレーディング収益です。グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料です。グローバル・マーケッツにおいては、地政学リスクや国際的な経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。
当事業年度においては、以下の事業計画に沿って活動を行いました。
1.お客様ニーズを捉えた多様なプロダクト・高度なソリューションの提供
2.アジアのリージョナル・ブローカーとしての汎アジアビジネス基盤拡大
3.SDGs関連ファイナンスの促進による企業のサステナビリティ支援
4.デジタルを活用した機動性・サービスクオリティの向上
各項目の実績は、以下のとおりです。
1~2.M&Aビジネスへの取組みとしてミッドキャップの海外クロスボーダー案件獲得に努めました。IPOビジネスへの取組みとしてはDaiwa Innovation Networkを開催するなどスタートアップ企業の発掘・育成を推進しました。その他、大型ファイナンス案件獲得に取り組みました。
3.SDGs-IPO(注1)の引受をはじめとしたSDGs関連ファイナンスへの取組み強化に努めました。
4.不動産信託受益権を対象とした、資産裏付型セキュリティトークン(注2)の大和証券グループでの発行1号案件を実現するなど、先端技術を活用したサービス提供に努めました。
当事業年度のグローバル・マーケッツは減収減益となりました。お客様の多様なニーズを踏まえたタイムリーな商品提供に加え、市場環境の変化に応じた株式・債券トレーディングが、収益に貢献しました。一方で、フィクスト・インカム収益は金利・ボラティリティの低下により収益機会が減少しました。
グローバル・インベストメント・バンキングでは、日本郵政株式会社の株式売出しやルネサスエレクトロニクス株式会社の株式公募売出しにおいてグローバル・コーディネーター(注3)を務めたほか、テスホールディングス株式会社によるSDGs-IPO(注1)、ソフトバンクグループ株式会社及びENEOSホールディングス株式会社による劣後債の発行など、多くの案件で主幹事証券会社を務めました。当事業年度の引受け・売出し手数料は、前年度比2.6%減の329億円となりました。M&Aアドバイザリー業務では多数の案件を国内外で遂行したことにより増収となり、M&A関連手数料は同10.0%増の80億円となりました。
以上のことから、当事業年度の国内ホールセール部門における純営業収益は1,285億円(同5.5%減)、経常利益は451億円(同19.8%減)となりました。国内ホールセール部門の当事業年度の純営業収益及び経常利益の当社全体の純営業収益及び経常利益に占める割合は、それぞれ40.8%及び52.8%でした。
(注1)SDGs-IPO(Initial Public Offering):新規株式公開時の株式公募において、その資金使途及び発行体について、SDGsへの貢献、ソーシャルボンド原則への準拠性についての評価を第三者評価機関から取得したもの。
(注2)資産裏付型セキュリティトークン:不動産、再生エネルギー等の資産を裏付けとした、有価証券の性質を有するトークンであり、ブロックチェーン等の先端技術を活用して発行・管理される金融商品。
(注3)グローバル・コーディネーター:株式の公募・売出しを国内外に対して実施するときに、全体の業務を統括する主幹事証券会社。
③ 経営成績の前提となる2021年度のマクロ経済環境
<海外の状況>2020年前半に新型コロナウイルスの感染拡大によって急激に悪化した世界経済は、2020年後半には持ち直しに転じ、2021年以降も回復基調が続いています。IMF(国際通貨基金)が2022年4月に公表した世界経済見通しによれば、2020年の大幅な落ち込みからの反動もあり、2021年の世界経済成長率は+6.1%と、IMFが成長率を公表する1980年以降で最も高い成長となりました。2020年は世界の大半の国がマイナス成長に陥ることになりましたが、2021年にはその多くの国がプラス成長へと転じています。ただし、世界経済は引き続き新型コロナウイルスの感染状況に大きく左右されていることに加え、世界的なインフレ率の高進や、ロシアのウクライナ侵攻など、新たなリスクに直面しており、先行きの不透明感が強い状況が続いています。
米国経済は、2020年後半以降、着実な回復傾向が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大以降、政府が実行してきた経済対策が下支えとなったことに加えて、新型コロナウイルスワクチンの接種が順調に進む中、政府による行動規制が緩和されたことで、2021年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+6.3%となりました。4-6月期に入ると、経済再開の動きが一層進展したことに加えて、2021年1月に発足したバイデン政権が3月に成立させた追加経済対策による家計所得の増加が個人消費を後押ししました。個人消費の増加を主因に、4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+6.7%と前期から加速し、実質GDPはコロナ禍前の水準を回復しました。7-9月期には、変異株による新型コロナウイルスの感染再拡大や、自動車産業などでの半導体などの部品不足による供給制約の影響によって、成長率は前期比年率+2.3%と鈍化しましたが、10-12月期には、感染拡大が落ち着く中、雇用環境の回復を背景とした個人消費の増加などにより、実質GDP成長率は前期比年率+6.9%と再加速しました。2022年1-3月期の実質GDP成長率は、前期比年率△1.5%と2020年4-6月期以来のマイナス成長となりました。もっとも、これは上記の供給制約を背景とした輸出の伸び悩み、輸入の増加及び在庫の調整が主因であり、個人消費を中心とした国内最終需要については、前期から伸びが加速し底堅い状況が続いています。
金融面では、FRB(連邦準備制度理事会)は、コロナ禍以降続けてきた緩和的な金融政策を2021年中は継続しました。しかし、米国経済のコロナ禍による落ち込みからの回復が十分進んだことに加えて、インフレ率が目標である2%を大きく上回っていることを受けて、FRBは、2021年末から金融緩和の縮小、金融引き締めへと姿勢を転換しています。FRBは、2021年11月のFOMC(連邦公開市場委員会)で量的緩和の縮小開始を決定し、コロナ禍以降続いてきた、FRBによるバランスシートの拡大は2022年2月に停止されました。さらに、2022年3月のFOMCでは政策金利が0.25%pt引き上げられ、2020年3月以降続いてきた実質的なゼロ金利政策が終了しました。
欧州経済(ユーロ圏経済)は、新型コロナウイルスの感染動向に大きく左右されつつも、総じて見れば回復基調が続いています。新型コロナウイルス感染再拡大によって、ドイツ、フランスなど、多くの国で2度目のロックダウンを余儀なくされたことで、2021年1-3月期のユーロ圏の実質GDP成長率は前期比年率△0.5%と2四半期連続のマイナス成長となり、2021年のユーロ圏経済は低調なスタートとなりました。しかし、4-6月期に入ると、新型コロナウイルスワクチンの接種が進展する中、行動制限が緩和されたことで、ユーロ圏経済は持ち直しへと向かいました。4―6月期の実質GDP成長率は、前期比年率+8.9%と3四半期ぶりのプラス成長に転じ、続く7-9月期も前期比年率+9.6%と2四半期連続で潜在成長率を上回る高めの成長となりました。しかし、10-12月期には新規感染者数が再び増加に転じる中、行動規制が強化されたことなどから、実質GDP成長率は前期比年率+1.0%と小幅な増加にとどまりました。また、2022年に入ると、行動制限が緩和され経済の下押し圧力が弱まる一方で、2月下旬に開始したロシアによるウクライナ侵攻を背景としたエネルギー価格の高騰が、個人消費や企業活動を鈍らせる要因となりました。2022年1-3月期の実質GDP成長率は、輸入の減少を主因に前期比年率+2.5%と伸びが加速しましたが、国内需要については前期からさらに伸びが鈍化しました。
金融面では、ECB(欧州中央銀行)による金融緩和が続いています。ただし、ユーロ圏経済の回復が進んだことを受け、金融緩和は縮小へと向かいつつあります。2021年9月のECB理事会では、コロナ禍で新設されたパンデミック緊急購入プログラムによる資産の買い入れペースを10-12月期以降減速させる方針が示され、同年12月のECB理事会では、2022年3月で同プログラムによる資産の買い取りを終了することが決定されました。また、インフレの加速を受け、2022年3月のECB理事会では、コロナ禍以前から実施されてきた資産買入プログラムに関しても終了を前倒しし、早ければ2022年7-9月期に終了する方針が示されました。
新興国経済は、先進国と同様に2020年前半に急激に悪化した後、2020年後半以降は持ち直しの動きが続いています。IMFによれば、新興国の実質GDP成長率は、2020年に△2.0%とマイナス成長に陥った後、2021年は+6.8%と高い成長となりました。
新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国では経済の持ち直しが続いています。2021年に入ると、米国の成長加速を主因に輸出の伸びが加速したことに加え、出遅れていた個人消費の回復が進み、1-3月期の実質GDP成長率は前年比+18.3%と、四半期統計が公表される1992年以来、最も高い成長率となりました。もっとも、4-6月期以降、中国の成長ペースは鈍化傾向にあります。4-6月期の実質GDP成長率は、前年からの反動の影響が一巡したこともあり、前年比+7.9%と前期から大きく減速しました。さらに7-9月期以降は、変異株の感染拡大を受けた行動制限や、資源価格の上昇、不動産市場の調整、電力不足の問題などから一層減速感が強まり、7-9月期は前年比+4.9%、10-12月期は前年比+4.0%の成長にとどまりました。その後、個人消費の持ち直しなどから、2022年1-3月期の実質GDP成長率は前年比+4.8%と前期から加速しました。しかし、2022年3月に入って新型コロナウイルスの感染者数が急増し、ゼロコロナ政策の下、上海などの多くの都市でロックダウンが実施されたことから、急速に景気減速懸念が高まりました。
中国以外の新興国は、総じて見れば持ち直しの動きが続きました。多くの新興国でもワクチンの接種が進展し、行動制限が徐々に緩和されたことに加え、米国や中国を中心とした主要国経済の回復による外需の拡大が新興国経済を下支えしました。一方、資源価格の上昇による高インフレや、米国での金融緩和縮小、金利上昇に伴う資金流出抑制のため、多くの国が利上げを余儀なくされており、景気減速のリスクは高まりつつあります。
<日本の状況>日本経済は、新型コロナウイルスの感染動向に大きく左右され一進一退の推移が続きました。2021年1月7日に2回目の緊急事態宣言が発出されたことで、2021年1-3月期の実質GDP成長率は、前期比年率△1.6%と3四半期ぶりのマイナス成長に転じました。4-6月期には前期比年率+2.6%とプラスに転じましたが、4月23日に発出された3回目の緊急事態宣言が9月末まで続いたことで、7-9月期は前期比年率△3.2%とマイナス成長となりました。10月以降は経済活動が再開されたことから、10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+4.0%とプラス成長に転じましたが、2022年に入ると感染者数が再び増加し、多くの地域でまん延防止等重点措置が適用されたため、2022年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率△0.5%と再びマイナス成長となりました。
需要項目ごとに見ると、個人消費は、感染状況とそれに伴う行動規制に大きく左右される形で増加・減少を繰り返しました。2021年1-3月期の個人消費は、緊急事態宣言の影響により、外食や娯楽サービスなどを中心としたサービス消費の減少を主因に3四半期ぶりに減少しました。その後、4-6月期には人出が回復したことで個人消費は持ち直しに転じましたが、7-9月期に入ると新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、3回目の緊急事態宣言が発出されたことにより個人消費は減少しました。9月末に緊急事態宣言等が解除された後、10-12月期には、個人消費は一時持ち直しに向かいましたが、2022年に入ると、感染再拡大に伴い多くの地域でまん延防止等重点措置が適用され、2022年1-3月期の個人消費は、サービス消費を中心に再び回復が足踏みすることになりました。住宅投資については、コロナ禍によって大きく落ちこんだ後、2021年前半は持ち直しの動きがみられました。しかし、雇用・所得環境の先行きに対する不透明感や、資材価格上昇を背景とした価格上昇により、2021年後半以降は緩やかに減少しています。
企業部門の需要である設備投資は、横ばい圏で推移しています。2020年10-12月期から2021年前半にかけて、設備投資は増加傾向にありましたが、緊急事態宣言等の発出や、海外での感染拡大によるサプライチェーンの混乱から供給制約が強まった2021年7-9月期には、設備投資の落ち込みが見られました。その後、欧米や中国など海外経済の回復を背景に輸出の増加基調が続いたことや供給制約の緩和を受け、10-12月期には再び増加に転じましたが、感染再拡大などによる先行き不透明感から、2022年1-3月期に入って回復が足踏みしました。日銀短観(2022年3月調査)によれば、2021年度の設備投資計画(含む土地投資額)は、前年比+4.6%となり、2022年度については前年比+0.8%と小幅ながら増加が続く見通しとなっています。
金融面では、日本銀行による短期金利に加えて長期金利も操作対象とする金融緩和措置が継続しています。また、新型コロナウイルスの感染拡大による急激な景気の悪化を受けて、2020年4月以降は日本銀行による国債の購入額の上限が撤廃されたほか、社債などの買い入れ枠が拡大されるなど、量的緩和が強化されました。ただし、日本経済が徐々に持ち直す中、日本銀行は2021年12月の政策決定会合で、社債などの買い入れ増額を2022年3月で終了することを決定しました。
日本銀行による緩和的な金融政策が続く中、日本の10年国債利回りは0%近傍での推移が続いています。もっとも、2021年に入ってからは、特に米国長期金利の変動に影響される形で、日本の長期金利も小幅ながら上昇と下落を繰り返しました。2021年初めには米国での景気過熱や財政悪化への懸念から米国の長期金利が上昇したことに伴い日本の長期金利も小幅ながら上昇し、2月末には一時、2018年10月以来初めて0.15%を上回りました。3月以降、米国の長期金利が低下したことを受けて日本の長期金利もしばらくは低下傾向となりましたが、FRBの量的緩和縮小や利上げ開始前倒し観測が強まった7月頃からは、米国長期金利が上昇を続け、日本の長期金利も上昇傾向へと転じました。とりわけ、2021年末頃からは高インフレを背景とした米国での利上げペース加速への見方が強まり、米国長期金利の上昇ペースが加速したため、日本の長期金利も上昇基調が強まり、2022年3月末には一時0.25%を上回りました。
為替市場をみると、2021年以降、総じて円安傾向で推移しました。米国での長期金利の大幅な上昇を受けて日米金利差が拡大したことで、2021年1-3月期は速いペースで円安が続き、年初時点で102円台だった対ドルレートは3月末には110円台となりました。その後、米国金利の上昇が収まったことで4月から9月頃にかけては概ね横ばい圏で推移しました。しかし、米国で金利が再び上昇基調を強める中、9月末以降はドル高・円安傾向となり、2022年3月には2015年8月以来となる124円台まで円安が進みました。対ユーロについては、欧州では日本に比べて早くワクチンの接種が進んだことによる欧州経済の回復期待から、2021年年初から6月初頭まではユーロ高・円安傾向となりました。6月中旬以降は欧州経済の回復ペースが緩やかとなる中、ECBによる金融緩和が長期化するとの見方が広がったことにより、概ね横ばい圏で推移しました。一方、2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まると、一時的にユーロ安・円高となりましたが、エネルギー価格上昇によるインフレ高進を背景としたECBによる金融引き締め観測が強まり、年度末にかけて急速にユーロ高・円安が進みました。
株式市場では、2021年2月に日経平均株価が一時1990年8月以来となる30,000円台まで上昇したものの、2021年度に入ると、緊急事態宣言が繰り返し発出されたことなどが重荷となり、株価は緩やかな下落傾向となりました。9月には新政権への期待感から株価は大幅に上昇し、日経平均株価は再び一時30,000円を上回る局面もありました。しかし、感染の再拡大や金利上昇などが重荷となり、2021年末にかけては一進一退で推移し、米国での金融引き締め加速観測が強まった2022年以降は、再び日経平均も下落基調となりました。
2022年3月末の日経平均株価は27,821円43銭(前年3月末比1,357円37銭安)、10年国債利回りは0.218%(同0.114%ptの上昇)、為替は1ドル121円64銭(同10円90銭の円安)となりました。
(4)当事業年度のキャッシュ・フローの状況の分析
① 営業活動、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物
当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
2021年3月期2022年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー247,944△174,107
投資活動によるキャッシュ・フロー△22,064△48,508
財務活動によるキャッシュ・フロー286,993271,901
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)512,87349,285
現金及び現金同等物の期首残高981,8081,494,682
現金及び現金同等物の期末残高1,494,6821,543,967

当事業年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは、トレーディング商品の増減などにより△1,741億円(前年度は2,479億円)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、無形固定資産の取得による支出や貸付けによる支出などにより△485億円(同△220億円)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増や長期借入れによる収入などにより2,719億円(同2,869億円)となりました。この結果、当事業年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末比492億円増加の1兆5,439億円となりました。
② 資本の財源及び流動性に係る情報
(ⅰ)流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>当社は、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務を中心としたビジネスを行っており、ビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社の資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
また、当社の親会社である大和証券グループ本社を中心とする大和証券グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、大和証券グループ本社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。その中で当社は、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しております。
なお、当社の親会社である大和証券グループ本社は、「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき、最終指定親会社が当該最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性のうち流動性に係る健全性の状況を表示する基準」(平成26年金融庁告示第61号)により連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)及び連結安定調達比率(以下、「NSFR」という。)を所定の比率(それぞれ100%)以上に維持することが求められており、大和証券グループ本社の2022年3月期第4四半期日次平均のLCRは149.0%です。また、同第4四半期末のNSFRは有価証券報告書提出日における速報値で148.0%となっており、確定値は算出完了次第、大和証券グループ本社ホームページにて公表する予定です。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>当社は、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社は機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。
当社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
(ⅱ)株主資本
当社が株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、証券担保ローン等の有価証券関連業務を中心とした幅広い金融サービスを展開するためには、十分な資本を確保する必要があります。
当事業年度末の株主資本は、5,085億円(前事業年度末比2,839億円減)となりました。資本金及び資本剰余金の合計は、大和証券グループ本社への臨時配当金3,000億円の支払いにより資本剰余金が減少した結果、1,523億円となりました。利益剰余金は当期純利益574億円を計上したほか、配当金413億円の支払いを行った結果、3,561億円(同160億円増)となりました。

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