半期報告書-第30期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)
本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当中間会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の中間財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる中間財務諸表の作成基準に基づき作成されております。また、当社は、中間財務諸表を作成するにあたり、会計方針に基づいていくつかの重要な見積りを行っており、これらの見積りは一定の条件や仮定を前提としております。そのため、条件や仮定が変化した場合には、実際の結果が見積りと異なることがあり、結果として中間財務諸表に重要な影響を与える場合があります。重要な会計方針のうち、特に重要と考える項目は、次の4項目です。
① トレーディング商品の評価
当社では、トレーディング商品に属する有価証券及びデリバティブ取引は、時価をもって中間貸借対照表価額とし、評価損益はトレーディング損益として中間損益計算書に計上しております。「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号 2019年7月4日)等を適用しており、トレーディング商品の時価は、時価の算定に用いたインプットの観察可能性及び重要性に応じて、3つのレベルに分類しております。これらの時価は「第5 経理の状況 (金融商品関係) 1.金融商品の時価等及び時価のレベルごとの内訳等に関する事項」に記載しております。
時価測定に用いた評価技法及びインプットの詳細は以下のとおりであります。これらは、市場参加者が商品を評価するときに考慮するであろう当社による仮定及び見積りを含んでおります。
(ⅰ)商品有価証券等
主に同一又は類似の商品に関する市場価格を用いております。また、特定の負債性金融商品及び資産担保証券については、デリバティブ取引に準じた評価技法もしくは、ディスカウント・キャッシュ・フロー・モデルにより時価を算定しております。
(ⅱ)デリバティブ
上場デリバティブについては原則として市場価格を、店頭デリバティブについては、評価技法により理論価格を算定しております。
デリバティブ取引の理論価格には、信用リスク及び流動性リスクを考慮した調整が含まれており、時価算定においては、市場で一般に用いられるリスク中立測度の仮定のもとでの期待キャッシュ・フローの現在価値を、主に数値積分法、有限差分法及びモンテカルロ法による価格算定モデルにより算定しております。
価格算定モデルには、金利、為替レート、株価、ボラティリティ、相関係数などの様々なインプットがあります。また、市場で観察可能でないインプットとしては、相関係数、長期のボラティリティ、長期のクレジット・スプレッドなどがあります。
価格算定モデルの選択及びその価格算定モデルに投入するインプットの決定、信用リスク及び流動性リスクにかかる評価調整には見積り及び前提を含んでおり、特に、市場で観察可能でないインプットを使用する場合には、その見積り及び前提は、トレーディング商品の評価額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
算定に用いたインプットを含め、価格算定モデルは社内における指針に基づいて承認され、価格算定モデルの開発部署から独立した部署が、モデル内の仮定及び技法、算定に用いたインプットについて検証を行っております。また、価格算定モデルを観察可能な市場情報や代替可能なモデルとの比較分析等により、市場動向に合わせて調整する体制を構築しております。
経営者は、時価算定に用いられた前提は合理的であると考えております。しかしながら、これらの見積りには不確実性が含まれているため、将来キャッシュ・フローや時価の下落を引き起こすような見積りの変化が、評価金額に不利に影響し、結果として、中間財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
② 有価証券の減損
当社では、投資有価証券等のトレーディング商品に属さない有価証券を保有しております。このうち時価のある有価証券については、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。具体的には、当中間会計期間末における時価の下落率が取得原価の50%以上の場合は、著しい下落かつ回復する見込みがないものと判断して、減損処理を行っております。時価の下落率が取得原価の30%以上50%未満の場合は、時価の推移及び発行会社の財政状態等を総合的に勘案して回復する見込みを検討し、回復する見込みがないと判断したものについては、減損処理を行っております。また、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券については、実質価額が著しく低下し、かつ、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられない場合には、減損処理を行っております。
③ 固定資産の減損
当社では、各資産グループにおいて、収益性が著しく低下した資産については、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。なお、資産のグルーピングは、証券店舗等の個別性の強い資産については個別物件単位で行い、その他の事業用資産については管理会計上の区分に従って行っております。
④ 繰延税金資産の回収可能性
当社では、会計基準に従い、企業会計上の資産・負債と税務上の資産・負債との差額である一時差異等について税効果会計を適用し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、将来の合理的な見積可能期間における課税所得の見積額を限度として、当該期間における一時差異等のスケジューリングの結果に基づき判断しております。
(2)当中間会計期間の財政状態の分析
<資産の部>当中間会計期間末の総資産は前事業年度末比5,237億円(4.0%)増加の13兆6,211億円となりました。内訳は流動資産が同5,301億円(4.1%)増加の13兆4,611億円であり、このうち現金・預金が同246億円(1.7%)増加の1兆5,203億円、トレーディング商品が同1,528億円(3.0%)減少の4兆9,207億円、有価証券担保貸付金が同5,653億円(12.0%)増加の5兆2,583億円となっております。固定資産は同63億円(3.8%)減少の1,599億円となっております。
<負債の部・純資産の部>当中間会計期間末の負債合計は前事業年度末比5,306億円(4.3%)増加の12兆8,336億円となりました。内訳は流動負債が同5,726億円(5.3%)増加の11兆4,319億円であり、このうちトレーディング商品が同3,476億円(10.0%)減少の3兆1,166億円、有価証券担保借入金が同5,779億円(11.9%)増加の5兆4,212億円、預り金が同2,259億円(65.0%)増加の5,734億円となっております。固定負債は同420億円(2.9%)減少の1兆3,980億円であり、このうち社債が同993億円(14.7%)増加の7,738億円、長期借入金が同1,392億円(19.5%)減少の5,758億円となっております。
純資産合計は、中間純利益を344億円計上したほか、配当金413億円の支払いを行ったこと等から、同68億円(0.9%)減少の7,875億円となりました。
(3)当中間会計期間の経営成績の分析
① 事業全体の状況
当中間会計期間の営業収益は1,702億円(前年同期比20.2%増)となりました。受入手数料は委託手数料及び募集・売出しの取扱手数料が増加し、総額で1,026億円(同21.9%増)、トレーディング損益は株券等の増加により548億円(同27.7%増)となりました。金融収支は71億円(同11.6%増)、純営業収益は1,646億円(同23.3%増)となっております。
販売費・一般管理費は、人件費が500億円(同6.7%増)、事務費が241億円(同5.4%増)となったこと等から、1,191億円(同3.7%増)となりました。この結果、経常利益は466億円(同147.6%増)となりました。
これに特別損益、法人税等を加味した結果、中間純利益は344億円(同174.2%増)となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。
[リテール営業部門]
リテール営業部門は、主に個人や未上場法人のお客様に幅広い金融商品・サービスを提供しております。
リテール営業部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。
当中間会計期間においては、エクイティ収益は、新型コロナウイルスの感染拡大に起因する前年同期のマーケット下落時に比べてお客様のアクティビティが拡大したことにより、増加しました。債券収益は、大型の債券引受案件があったことにより増加しました。投資信託は、投信フレックスプランの効果も寄与し、販売額が拡大した結果、募集手数料、代理事務手数料ともに増加しました。また、契約額の増加により、ラップ口座サービスの契約資産残高は過去最高となりました。
その結果、当中間会計期間のリテール営業部門における純営業収益は946億円(前年同期比28.4%増)、経常利益は215億円(同20.8倍)となりました。リテール営業部門の当中間会計期間の純営業収益及び経常利益の当社全体の純営業収益及び経常利益に占める割合は、それぞれ57.5%及び46.3%でした。
[国内ホールセール部門]
国内ホールセール部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングで構成されており、グローバル・マーケッツは、機関投資家や事業法人、金融法人、公共法人等の顧客向けに、株式、債券・為替及びそれらの派生商品のセールスおよびトレーディングを行っております。グローバル・インベストメント・バンキングは、有価証券の引受け、M&Aアドバイザリー等、多様なインベストメント・バンキング・サービスを提供しております。
グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る取引手数料およびトレーディング収益です。グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料です。グローバル・マーケッツにおいては、国際的な地政学リスクや経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。
グローバル・マーケッツは増収増益となりました。エクイティ収益は、国内株式及び外国株式の相場上昇を背景に投資家のアクティビティが増加したことから増収となりました。また、フィクストインカム収益は、ボラティリティの低下により収益機会が減少したため、債券市場が活況を呈した前年同期比では減収となりました。
グローバル・インベストメント・バンキングも増収増益となりました。引受け・売出し手数料は、多数の債券主幹事案件を積上げたことなどから増収となり、またM&Aビジネスにおいても、多数の案件を遂行したことにより増収となりました。
その結果、当中間会計期間の国内ホールセール部門における純営業収益は635億円(前年同期比6.6%増)、経常利益は223億円(同3.7%増)となりました。国内ホールセール部門の当中間会計期間の純営業収益及び経常利益の当社全体の純営業収益及び経常利益に占める割合は、それぞれ38.6%及び47.8%でした。
③ 経営成績の前提となる当中間会計期間のマクロ経済環境
<海外の状況>新型コロナウイルスの感染拡大により2020年初から急激に悪化した世界経済は、2020年後半以降、持ち直しへと向かっています。IMF(国際通貨基金)が2021年10月に公表した世界経済見通しによれば、2020年は先進国、新興国ともにマイナス成長に転じ、世界経済成長率は△3.1%とリーマン・ショック時を上回る大幅なマイナス成長となりました。一方、2021年は、世界的に新型コロナウイルスワクチンの普及が進みつつあることに加えて、前年の落ち込みからの反動もあり+5.9%と高い成長が見込まれています。もっとも、世界経済は最悪期を脱しつつも、引き続き新型コロナウイルスの感染状況に左右される不安定な状況が続いています。
米国経済は、2020年後半以降、回復傾向が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大以降、政府が実行してきた経済対策が下支えとなったことに加えて、2021年に入って新型コロナウイルスワクチンの接種が順調に進む中、政府による行動規制が緩和されたことで、2021年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+6.3%となりました。4-6月期に入ると経済再開の動きが一層進展したことに加えて、2021年1月に発足したバイデン政権が3月に成立させた追加経済対策による家計所得の増加が個人消費を後押ししました。個人消費の増加を主因に4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+6.7%と前期から加速し、実質GDPはコロナ禍前の水準を回復しました。7-9月期には変異株によって新型コロナウイルスの感染が再拡大し、経済の再開は足踏みすることになりましたが、雇用環境の回復が継続する中、実質GDP成長率は前期比年率+2.0%と前期から鈍化しつつも5四半期連続のプラス成長となりました。
金融面では、FRB(連邦準備制度理事会)がコロナ禍への対応として復活させたゼロ金利政策が続き、緩和的な環境が継続しています。また、FRBは経済が十分に回復するまでバランスシートの拡大を続けることを約束しており、量的緩和政策も継続されています。ただし、2021年に入ってインフレ率がFRBの目標とする2%を大きく上回って推移していることに加えて、雇用環境の改善が続いてきたことを受けて、2021年9月のFOMCでは、近いうちに量的緩和の縮小を開始する可能性があることが示されました。
欧州経済(ユーロ圏経済)は、新型コロナウイルス感染症による落ち込みから持ち直しつつあります。2020年後半からの感染再拡大を受け、ドイツ、フランスなど、多くの国で2度目のロックダウンを余儀なくされたことから、ユーロ圏経済は、2020年10-12月期、2021年1-3月期は2四半期連続のマイナス成長となりました。一方、4-6月期に入ると、新型コロナワクチンの接種が進展する中、行動制限が緩和されたことで、ユーロ圏経済は持ち直しへと向かっています。4―6月期の実質GDP成長率は前期比年率+8.7%と3四半期ぶりのプラス成長に転じ、続く7-9月期も前期比年率+9.1%と2四半期連続のプラス成長となりました。
金融面では、ECB(欧州中央銀行)による金融緩和が続いています。新型コロナウイルス感染症対応のための資産買い取りプログラムは「少なくとも2022年3月まで」継続するとされており、ECBは緩和的な金融政策を当面続けることを約束しています。ただし、ユーロ圏でもインフレが加速していることなどから、9月のECB理事会では10-12月期以降、資産の買い入れペースを幾分減速させる方針が示されました。
新興市場国・発展途上国経済は、先進国と同様に2020年前半に急激に悪化した後、2020年後半以降持ち直しの動きが続いています。IMFによれば、新興国の実質GDP成長率は2020年に△2.1%とマイナス成長に陥った後、2021年は+6.4%と高い成長が見込まれています。
新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国では、世界に先んじて新型コロナウイルスの感染が収束へ向かったこともあり、2020年4-6月期以降、経済の持ち直しが続いています。2021年に入ると、米国の成長加速を主因に輸出の伸びが加速したことに加え、出遅れていた個人消費の回復が進み、1-3月期の実質GDP成長率は前年比+18.3%と四半期統計の公表を開始した1992年以来、最も高い成長となりました。もっとも、4-6月期以降、中国の成長ペースは鈍化傾向にあります。4-6月期の実質GDP成長率は、前年からの反動の影響が一巡したこともあり、同+7.9%と前期から大きく減速しました。さらに7-9月期は、変異株の感染拡大を受けた行動制限や、資源価格の上昇、不動産市場の調整によって一層減速感が強まり、前年比+4.9%の成長にとどまりました。
中国以外の新興国についても、2020年後半以降総じて見れば持ち直しの動きが続いています。米国や中国を中心とした海外経済の回復や、それに伴う資源価格の上昇、世界的な金融緩和を背景とした資金流入が新興国経済を下支えしています。ただし、新興国ではワクチン接種の実施が遅れている国が多く、2021年夏場に東南アジア諸国がロックダウンを余儀なくされたように、感染拡大による経済の下振れリスクが高い状況が続いています。
<日本の状況>日本経済は、2020年後半には一時、新型コロナウイルス感染症による落ち込みから持ち直したものの、感染再拡大によって2021年に入り再び回復が足踏みしています。新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて2021年1月8日に2回目の緊急事態宣言が発出され、2021年1-3月期の実質GDP成長率は、前期比年率△4.2%と3四半期ぶりのマイナス成長に転じました。4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.9%とプラスに転じましたが、4月25日に発出された3回目の緊急事態宣言が9月末まで続き、経済活動が抑制される中、日本経済はコロナ禍前に比べて低い水準での推移が続いています。
需要項目ごとに見ると、個人消費は低い水準で一進一退の動きが続いています。2020年後半には持ち直しの動きが見られていましたが、2回目の緊急事態宣言が発出されたことで、外食や娯楽サービスなどを中心としたサービス消費の減少を主因に、2021年1-3月期の個人消費は前期比年率△4.9%と3四半期ぶりに減少しました。4-6月期には一時的に人手が回復したことで前期比年率+3.8%と持ち直しに転じましたが、7-9月に入ると新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、緊急事態宣言が続いたことで、サービスを中心に個人消費の抑制傾向が続きました。住宅投資についても、コロナ禍によって大きく落ちこんだ後、持ち直しの動きがみられつつも、雇用環境の先行きに対する不透明感が続く中で低い水準にとどまっています。
企業部門の需要である設備投資は、2020年後半に一時持ち直した後、緊急事態宣言の再発出によって2021年1-3月期には再び減少に転じました。しかし、4-6月期以降は、欧米や中国など海外経済の回復を背景に輸出の増加が続いたことが下支えとなり、設備投資についても増加傾向に転じています。日銀短観(2021年9月調査)によれば、2021年度の設備投資計画(含む土地投資額)は、2020年度からの反動もあり、前年比+7.9%と高めの伸びが見込まれています。
金融面では、日本銀行による短期金利に加えて長期金利も操作対象とする金融緩和措置が継続しています。また、新型コロナウイルスの感染拡大による急激な景気の悪化を受けて、2020年4月以降は日本銀行による国債の購入額の上限が撤廃されたほか、社債などの買い入れ枠が拡大されるなど、量的緩和が強化されています。こうした日本銀行による金融緩和策を受けて、日本の10年国債利回りは0%近傍での推移が続いています。ただし、2021年に入ってからは、特に米国長期金利の変動に影響される形で、日本の長期金利も小幅ながら上昇と下落を繰り返しました。2021年初めには米国での景気過熱や財政悪化への懸念から米国の長期金利が上昇したのに伴い日本の長期金利も小幅ながら上昇し、2月末には一時、2018年10月以来初めて0.15%を上回りました。その後、米国の長期金利が低下したことを受けて日本の長期金利も低下傾向に転じましたが、2021年7月から9月末にかけては、FRBの量的緩和が縮小されるとの観測による米国長期金利上昇を受けて、日本の長期金利は再び上昇傾向となりました。
為替市場をみると、2021年前半は対ドルでは総じて円安傾向で推移しました。米国での長期金利の大幅な上昇を受けて日米金利差が拡大したことで、2021年1-3月期は速いペースで円安が続き、年初時点で102円台だった対ドルレートは3月末には110円台となりました。米国金利の上昇が収まったことで4月には一時的に円高が進む局面もありましたが、米国での着実な景気回復や金利上昇を受けてその後は再びドル高・円安傾向となり、9月末には111円台まで円安が進みました。対ユーロについては、欧州では日本に比べて早くワクチンの接種が進んだことによる欧州経済の回復期待から、2021年年初から6月初頭まではユーロ高・円安傾向となりました。一方、ECBによる金融緩和が長期化するとの見方が広がったことにより、6月中旬以降は緩やかなユーロ安・円高となりました。
株式市場では、2021年2月に日経平均株価が一時1990年8月以来となる30,000円台まで上昇しました。その後、2021年度に入ると、緊急事態宣言が繰り返し発出されたことなどが重荷となり、株価は緩やかな下落傾向となりました。しかし、9月には新政権への期待感から株価は大幅に上昇し、日経平均株価は再び一時30,000円を上回りました。
2021年9月末の日経平均株価は29,452円66銭(同年3月末比273円86銭高)、10年国債利回りは0.081%(同0.023ポイントの低下)、為替は1ドル111円88銭(同1円14銭の円安)となりました。
(4)キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物
当中間会計期間におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
当中間会計期間において、営業活動によるキャッシュ・フローは、顧客分別金信託の増減、短期貸付金の増減、短期差入保証金の増減、預り金の増減などにより1,886億円(前年同期は823億円)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出などにより△76億円(同△114億円)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増減、配当金の支払いなどにより△1,503億円(同3,930億円)となりました。当中間会計期間末の現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末に比べ306億円増加し、1兆5,253億円となりました。
(5)資本の財源及び流動性に係る情報
① 流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>当社は、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務を中心としたビジネスを行っており、ビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社の資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
また、当社の親会社である大和証券グループ本社を中心とする大和証券グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、大和証券グループ本社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。その中で当社は、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しております。
なお、当社の親会社である大和証券グループ本社は、平成26年金融庁告示第61号により連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)及び連結安定調達比率(以下、「NSFR」という。)を所定の比率(それぞれ100%)以上に維持することが求められており、大和証券グループ本社の2022年3月期第2四半期日次平均のLCRは155.9%です。同第2四半期末のNSFRは半期報告書提出日における速報値で160%となっております。確定値は算出完了次第、大和証券グループ本社ホームページにて公表する予定です。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>当社は、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社は機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。
当社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
② 株主資本
当社が株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、証券担保ローン等の有価証券関連業務を中心とした幅広い金融サービスを展開するためには、十分な資本を確保する必要があります。
当中間会計期間末の株主資本は、7,856億円(前事業年度末比68億円減)となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,523億円であり、利益剰余金は中間純利益344億円を計上したほか、配当金413億円の支払いを行った結果、3,332億円(同68億円減)となりました。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の中間財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる中間財務諸表の作成基準に基づき作成されております。また、当社は、中間財務諸表を作成するにあたり、会計方針に基づいていくつかの重要な見積りを行っており、これらの見積りは一定の条件や仮定を前提としております。そのため、条件や仮定が変化した場合には、実際の結果が見積りと異なることがあり、結果として中間財務諸表に重要な影響を与える場合があります。重要な会計方針のうち、特に重要と考える項目は、次の4項目です。
① トレーディング商品の評価
当社では、トレーディング商品に属する有価証券及びデリバティブ取引は、時価をもって中間貸借対照表価額とし、評価損益はトレーディング損益として中間損益計算書に計上しております。「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号 2019年7月4日)等を適用しており、トレーディング商品の時価は、時価の算定に用いたインプットの観察可能性及び重要性に応じて、3つのレベルに分類しております。これらの時価は「第5 経理の状況 (金融商品関係) 1.金融商品の時価等及び時価のレベルごとの内訳等に関する事項」に記載しております。
時価測定に用いた評価技法及びインプットの詳細は以下のとおりであります。これらは、市場参加者が商品を評価するときに考慮するであろう当社による仮定及び見積りを含んでおります。
(ⅰ)商品有価証券等
主に同一又は類似の商品に関する市場価格を用いております。また、特定の負債性金融商品及び資産担保証券については、デリバティブ取引に準じた評価技法もしくは、ディスカウント・キャッシュ・フロー・モデルにより時価を算定しております。
(ⅱ)デリバティブ
上場デリバティブについては原則として市場価格を、店頭デリバティブについては、評価技法により理論価格を算定しております。
デリバティブ取引の理論価格には、信用リスク及び流動性リスクを考慮した調整が含まれており、時価算定においては、市場で一般に用いられるリスク中立測度の仮定のもとでの期待キャッシュ・フローの現在価値を、主に数値積分法、有限差分法及びモンテカルロ法による価格算定モデルにより算定しております。
価格算定モデルには、金利、為替レート、株価、ボラティリティ、相関係数などの様々なインプットがあります。また、市場で観察可能でないインプットとしては、相関係数、長期のボラティリティ、長期のクレジット・スプレッドなどがあります。
価格算定モデルの選択及びその価格算定モデルに投入するインプットの決定、信用リスク及び流動性リスクにかかる評価調整には見積り及び前提を含んでおり、特に、市場で観察可能でないインプットを使用する場合には、その見積り及び前提は、トレーディング商品の評価額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
算定に用いたインプットを含め、価格算定モデルは社内における指針に基づいて承認され、価格算定モデルの開発部署から独立した部署が、モデル内の仮定及び技法、算定に用いたインプットについて検証を行っております。また、価格算定モデルを観察可能な市場情報や代替可能なモデルとの比較分析等により、市場動向に合わせて調整する体制を構築しております。
経営者は、時価算定に用いられた前提は合理的であると考えております。しかしながら、これらの見積りには不確実性が含まれているため、将来キャッシュ・フローや時価の下落を引き起こすような見積りの変化が、評価金額に不利に影響し、結果として、中間財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
② 有価証券の減損
当社では、投資有価証券等のトレーディング商品に属さない有価証券を保有しております。このうち時価のある有価証券については、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。具体的には、当中間会計期間末における時価の下落率が取得原価の50%以上の場合は、著しい下落かつ回復する見込みがないものと判断して、減損処理を行っております。時価の下落率が取得原価の30%以上50%未満の場合は、時価の推移及び発行会社の財政状態等を総合的に勘案して回復する見込みを検討し、回復する見込みがないと判断したものについては、減損処理を行っております。また、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券については、実質価額が著しく低下し、かつ、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられない場合には、減損処理を行っております。
③ 固定資産の減損
当社では、各資産グループにおいて、収益性が著しく低下した資産については、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。なお、資産のグルーピングは、証券店舗等の個別性の強い資産については個別物件単位で行い、その他の事業用資産については管理会計上の区分に従って行っております。
④ 繰延税金資産の回収可能性
当社では、会計基準に従い、企業会計上の資産・負債と税務上の資産・負債との差額である一時差異等について税効果会計を適用し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、将来の合理的な見積可能期間における課税所得の見積額を限度として、当該期間における一時差異等のスケジューリングの結果に基づき判断しております。
(2)当中間会計期間の財政状態の分析
<資産の部>当中間会計期間末の総資産は前事業年度末比5,237億円(4.0%)増加の13兆6,211億円となりました。内訳は流動資産が同5,301億円(4.1%)増加の13兆4,611億円であり、このうち現金・預金が同246億円(1.7%)増加の1兆5,203億円、トレーディング商品が同1,528億円(3.0%)減少の4兆9,207億円、有価証券担保貸付金が同5,653億円(12.0%)増加の5兆2,583億円となっております。固定資産は同63億円(3.8%)減少の1,599億円となっております。
<負債の部・純資産の部>当中間会計期間末の負債合計は前事業年度末比5,306億円(4.3%)増加の12兆8,336億円となりました。内訳は流動負債が同5,726億円(5.3%)増加の11兆4,319億円であり、このうちトレーディング商品が同3,476億円(10.0%)減少の3兆1,166億円、有価証券担保借入金が同5,779億円(11.9%)増加の5兆4,212億円、預り金が同2,259億円(65.0%)増加の5,734億円となっております。固定負債は同420億円(2.9%)減少の1兆3,980億円であり、このうち社債が同993億円(14.7%)増加の7,738億円、長期借入金が同1,392億円(19.5%)減少の5,758億円となっております。
純資産合計は、中間純利益を344億円計上したほか、配当金413億円の支払いを行ったこと等から、同68億円(0.9%)減少の7,875億円となりました。
(3)当中間会計期間の経営成績の分析
① 事業全体の状況
当中間会計期間の営業収益は1,702億円(前年同期比20.2%増)となりました。受入手数料は委託手数料及び募集・売出しの取扱手数料が増加し、総額で1,026億円(同21.9%増)、トレーディング損益は株券等の増加により548億円(同27.7%増)となりました。金融収支は71億円(同11.6%増)、純営業収益は1,646億円(同23.3%増)となっております。
販売費・一般管理費は、人件費が500億円(同6.7%増)、事務費が241億円(同5.4%増)となったこと等から、1,191億円(同3.7%増)となりました。この結果、経常利益は466億円(同147.6%増)となりました。
これに特別損益、法人税等を加味した結果、中間純利益は344億円(同174.2%増)となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。
| (単位:百万円) | ||||||||
| 純営業収益 | 経常利益又は経常損失(△) | |||||||
| 2020年 9月期 | 2021年 9月期 | 対前年同期 増減率 | 構成比率 | 2020年 9月期 | 2021年 9月期 | 対前年同期 増減率 | 構成比率 | |
| リテール営業部門 | 73,719 | 94,664 | 28.4% | 57.5% | 1,034 | 21,573 | 20.8倍 | 46.3% |
| 国内ホールセール 部門 | 59,565 | 63,503 | 6.6% | 38.6% | 21,514 | 22,312 | 3.7% | 47.8% |
| その他・調整等 | 307 | 6,499 | - | 3.9% | △3,714 | 2,751 | - | 5.9% |
| 合計 | 133,592 | 164,667 | 23.3% | 100.0% | 18,834 | 46,636 | 147.6% | 100.0% |
[リテール営業部門]
リテール営業部門は、主に個人や未上場法人のお客様に幅広い金融商品・サービスを提供しております。
リテール営業部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。
当中間会計期間においては、エクイティ収益は、新型コロナウイルスの感染拡大に起因する前年同期のマーケット下落時に比べてお客様のアクティビティが拡大したことにより、増加しました。債券収益は、大型の債券引受案件があったことにより増加しました。投資信託は、投信フレックスプランの効果も寄与し、販売額が拡大した結果、募集手数料、代理事務手数料ともに増加しました。また、契約額の増加により、ラップ口座サービスの契約資産残高は過去最高となりました。
その結果、当中間会計期間のリテール営業部門における純営業収益は946億円(前年同期比28.4%増)、経常利益は215億円(同20.8倍)となりました。リテール営業部門の当中間会計期間の純営業収益及び経常利益の当社全体の純営業収益及び経常利益に占める割合は、それぞれ57.5%及び46.3%でした。
[国内ホールセール部門]
国内ホールセール部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングで構成されており、グローバル・マーケッツは、機関投資家や事業法人、金融法人、公共法人等の顧客向けに、株式、債券・為替及びそれらの派生商品のセールスおよびトレーディングを行っております。グローバル・インベストメント・バンキングは、有価証券の引受け、M&Aアドバイザリー等、多様なインベストメント・バンキング・サービスを提供しております。
グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る取引手数料およびトレーディング収益です。グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料です。グローバル・マーケッツにおいては、国際的な地政学リスクや経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。
グローバル・マーケッツは増収増益となりました。エクイティ収益は、国内株式及び外国株式の相場上昇を背景に投資家のアクティビティが増加したことから増収となりました。また、フィクストインカム収益は、ボラティリティの低下により収益機会が減少したため、債券市場が活況を呈した前年同期比では減収となりました。
グローバル・インベストメント・バンキングも増収増益となりました。引受け・売出し手数料は、多数の債券主幹事案件を積上げたことなどから増収となり、またM&Aビジネスにおいても、多数の案件を遂行したことにより増収となりました。
その結果、当中間会計期間の国内ホールセール部門における純営業収益は635億円(前年同期比6.6%増)、経常利益は223億円(同3.7%増)となりました。国内ホールセール部門の当中間会計期間の純営業収益及び経常利益の当社全体の純営業収益及び経常利益に占める割合は、それぞれ38.6%及び47.8%でした。
③ 経営成績の前提となる当中間会計期間のマクロ経済環境
<海外の状況>新型コロナウイルスの感染拡大により2020年初から急激に悪化した世界経済は、2020年後半以降、持ち直しへと向かっています。IMF(国際通貨基金)が2021年10月に公表した世界経済見通しによれば、2020年は先進国、新興国ともにマイナス成長に転じ、世界経済成長率は△3.1%とリーマン・ショック時を上回る大幅なマイナス成長となりました。一方、2021年は、世界的に新型コロナウイルスワクチンの普及が進みつつあることに加えて、前年の落ち込みからの反動もあり+5.9%と高い成長が見込まれています。もっとも、世界経済は最悪期を脱しつつも、引き続き新型コロナウイルスの感染状況に左右される不安定な状況が続いています。
米国経済は、2020年後半以降、回復傾向が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大以降、政府が実行してきた経済対策が下支えとなったことに加えて、2021年に入って新型コロナウイルスワクチンの接種が順調に進む中、政府による行動規制が緩和されたことで、2021年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+6.3%となりました。4-6月期に入ると経済再開の動きが一層進展したことに加えて、2021年1月に発足したバイデン政権が3月に成立させた追加経済対策による家計所得の増加が個人消費を後押ししました。個人消費の増加を主因に4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+6.7%と前期から加速し、実質GDPはコロナ禍前の水準を回復しました。7-9月期には変異株によって新型コロナウイルスの感染が再拡大し、経済の再開は足踏みすることになりましたが、雇用環境の回復が継続する中、実質GDP成長率は前期比年率+2.0%と前期から鈍化しつつも5四半期連続のプラス成長となりました。
金融面では、FRB(連邦準備制度理事会)がコロナ禍への対応として復活させたゼロ金利政策が続き、緩和的な環境が継続しています。また、FRBは経済が十分に回復するまでバランスシートの拡大を続けることを約束しており、量的緩和政策も継続されています。ただし、2021年に入ってインフレ率がFRBの目標とする2%を大きく上回って推移していることに加えて、雇用環境の改善が続いてきたことを受けて、2021年9月のFOMCでは、近いうちに量的緩和の縮小を開始する可能性があることが示されました。
欧州経済(ユーロ圏経済)は、新型コロナウイルス感染症による落ち込みから持ち直しつつあります。2020年後半からの感染再拡大を受け、ドイツ、フランスなど、多くの国で2度目のロックダウンを余儀なくされたことから、ユーロ圏経済は、2020年10-12月期、2021年1-3月期は2四半期連続のマイナス成長となりました。一方、4-6月期に入ると、新型コロナワクチンの接種が進展する中、行動制限が緩和されたことで、ユーロ圏経済は持ち直しへと向かっています。4―6月期の実質GDP成長率は前期比年率+8.7%と3四半期ぶりのプラス成長に転じ、続く7-9月期も前期比年率+9.1%と2四半期連続のプラス成長となりました。
金融面では、ECB(欧州中央銀行)による金融緩和が続いています。新型コロナウイルス感染症対応のための資産買い取りプログラムは「少なくとも2022年3月まで」継続するとされており、ECBは緩和的な金融政策を当面続けることを約束しています。ただし、ユーロ圏でもインフレが加速していることなどから、9月のECB理事会では10-12月期以降、資産の買い入れペースを幾分減速させる方針が示されました。
新興市場国・発展途上国経済は、先進国と同様に2020年前半に急激に悪化した後、2020年後半以降持ち直しの動きが続いています。IMFによれば、新興国の実質GDP成長率は2020年に△2.1%とマイナス成長に陥った後、2021年は+6.4%と高い成長が見込まれています。
新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国では、世界に先んじて新型コロナウイルスの感染が収束へ向かったこともあり、2020年4-6月期以降、経済の持ち直しが続いています。2021年に入ると、米国の成長加速を主因に輸出の伸びが加速したことに加え、出遅れていた個人消費の回復が進み、1-3月期の実質GDP成長率は前年比+18.3%と四半期統計の公表を開始した1992年以来、最も高い成長となりました。もっとも、4-6月期以降、中国の成長ペースは鈍化傾向にあります。4-6月期の実質GDP成長率は、前年からの反動の影響が一巡したこともあり、同+7.9%と前期から大きく減速しました。さらに7-9月期は、変異株の感染拡大を受けた行動制限や、資源価格の上昇、不動産市場の調整によって一層減速感が強まり、前年比+4.9%の成長にとどまりました。
中国以外の新興国についても、2020年後半以降総じて見れば持ち直しの動きが続いています。米国や中国を中心とした海外経済の回復や、それに伴う資源価格の上昇、世界的な金融緩和を背景とした資金流入が新興国経済を下支えしています。ただし、新興国ではワクチン接種の実施が遅れている国が多く、2021年夏場に東南アジア諸国がロックダウンを余儀なくされたように、感染拡大による経済の下振れリスクが高い状況が続いています。
<日本の状況>日本経済は、2020年後半には一時、新型コロナウイルス感染症による落ち込みから持ち直したものの、感染再拡大によって2021年に入り再び回復が足踏みしています。新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて2021年1月8日に2回目の緊急事態宣言が発出され、2021年1-3月期の実質GDP成長率は、前期比年率△4.2%と3四半期ぶりのマイナス成長に転じました。4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.9%とプラスに転じましたが、4月25日に発出された3回目の緊急事態宣言が9月末まで続き、経済活動が抑制される中、日本経済はコロナ禍前に比べて低い水準での推移が続いています。
需要項目ごとに見ると、個人消費は低い水準で一進一退の動きが続いています。2020年後半には持ち直しの動きが見られていましたが、2回目の緊急事態宣言が発出されたことで、外食や娯楽サービスなどを中心としたサービス消費の減少を主因に、2021年1-3月期の個人消費は前期比年率△4.9%と3四半期ぶりに減少しました。4-6月期には一時的に人手が回復したことで前期比年率+3.8%と持ち直しに転じましたが、7-9月に入ると新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、緊急事態宣言が続いたことで、サービスを中心に個人消費の抑制傾向が続きました。住宅投資についても、コロナ禍によって大きく落ちこんだ後、持ち直しの動きがみられつつも、雇用環境の先行きに対する不透明感が続く中で低い水準にとどまっています。
企業部門の需要である設備投資は、2020年後半に一時持ち直した後、緊急事態宣言の再発出によって2021年1-3月期には再び減少に転じました。しかし、4-6月期以降は、欧米や中国など海外経済の回復を背景に輸出の増加が続いたことが下支えとなり、設備投資についても増加傾向に転じています。日銀短観(2021年9月調査)によれば、2021年度の設備投資計画(含む土地投資額)は、2020年度からの反動もあり、前年比+7.9%と高めの伸びが見込まれています。
金融面では、日本銀行による短期金利に加えて長期金利も操作対象とする金融緩和措置が継続しています。また、新型コロナウイルスの感染拡大による急激な景気の悪化を受けて、2020年4月以降は日本銀行による国債の購入額の上限が撤廃されたほか、社債などの買い入れ枠が拡大されるなど、量的緩和が強化されています。こうした日本銀行による金融緩和策を受けて、日本の10年国債利回りは0%近傍での推移が続いています。ただし、2021年に入ってからは、特に米国長期金利の変動に影響される形で、日本の長期金利も小幅ながら上昇と下落を繰り返しました。2021年初めには米国での景気過熱や財政悪化への懸念から米国の長期金利が上昇したのに伴い日本の長期金利も小幅ながら上昇し、2月末には一時、2018年10月以来初めて0.15%を上回りました。その後、米国の長期金利が低下したことを受けて日本の長期金利も低下傾向に転じましたが、2021年7月から9月末にかけては、FRBの量的緩和が縮小されるとの観測による米国長期金利上昇を受けて、日本の長期金利は再び上昇傾向となりました。
為替市場をみると、2021年前半は対ドルでは総じて円安傾向で推移しました。米国での長期金利の大幅な上昇を受けて日米金利差が拡大したことで、2021年1-3月期は速いペースで円安が続き、年初時点で102円台だった対ドルレートは3月末には110円台となりました。米国金利の上昇が収まったことで4月には一時的に円高が進む局面もありましたが、米国での着実な景気回復や金利上昇を受けてその後は再びドル高・円安傾向となり、9月末には111円台まで円安が進みました。対ユーロについては、欧州では日本に比べて早くワクチンの接種が進んだことによる欧州経済の回復期待から、2021年年初から6月初頭まではユーロ高・円安傾向となりました。一方、ECBによる金融緩和が長期化するとの見方が広がったことにより、6月中旬以降は緩やかなユーロ安・円高となりました。
株式市場では、2021年2月に日経平均株価が一時1990年8月以来となる30,000円台まで上昇しました。その後、2021年度に入ると、緊急事態宣言が繰り返し発出されたことなどが重荷となり、株価は緩やかな下落傾向となりました。しかし、9月には新政権への期待感から株価は大幅に上昇し、日経平均株価は再び一時30,000円を上回りました。
2021年9月末の日経平均株価は29,452円66銭(同年3月末比273円86銭高)、10年国債利回りは0.081%(同0.023ポイントの低下)、為替は1ドル111円88銭(同1円14銭の円安)となりました。
(4)キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物
当中間会計期間におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
| (単位:百万円) | ||
| 2020年9月期 | 2021年9月期 | |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 82,350 | 188,675 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △11,493 | △7,624 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | 393,045 | △150,362 |
| 現金及び現金同等物の増減額(△は減少) | 463,901 | 30,688 |
| 現金及び現金同等物の期首残高 | 981,808 | 1,494,682 |
| 現金及び現金同等物の中間期末残高 | 1,445,710 | 1,525,370 |
当中間会計期間において、営業活動によるキャッシュ・フローは、顧客分別金信託の増減、短期貸付金の増減、短期差入保証金の増減、預り金の増減などにより1,886億円(前年同期は823億円)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出などにより△76億円(同△114億円)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増減、配当金の支払いなどにより△1,503億円(同3,930億円)となりました。当中間会計期間末の現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末に比べ306億円増加し、1兆5,253億円となりました。
(5)資本の財源及び流動性に係る情報
① 流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>当社は、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務を中心としたビジネスを行っており、ビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社の資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
また、当社の親会社である大和証券グループ本社を中心とする大和証券グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、大和証券グループ本社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。その中で当社は、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しております。
なお、当社の親会社である大和証券グループ本社は、平成26年金融庁告示第61号により連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)及び連結安定調達比率(以下、「NSFR」という。)を所定の比率(それぞれ100%)以上に維持することが求められており、大和証券グループ本社の2022年3月期第2四半期日次平均のLCRは155.9%です。同第2四半期末のNSFRは半期報告書提出日における速報値で160%となっております。確定値は算出完了次第、大和証券グループ本社ホームページにて公表する予定です。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>当社は、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社は機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。
当社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
② 株主資本
当社が株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、証券担保ローン等の有価証券関連業務を中心とした幅広い金融サービスを展開するためには、十分な資本を確保する必要があります。
当中間会計期間末の株主資本は、7,856億円(前事業年度末比68億円減)となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,523億円であり、利益剰余金は中間純利益344億円を計上したほか、配当金413億円の支払いを行った結果、3,332億円(同68億円減)となりました。