有価証券報告書-第8期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/21 14:44
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【項目】
161項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。
(1) 経営環境及び課題への取組み
経営の基本方針である各事業の収益の極大化を図るため、それぞれの事業体が直面する事業環境に適応して、選択と集中を進め、業績を向上させていくことが当社の最大の課題である。その解決のためには、各事業に最適なビジネスモデルを構築し洗練していける体制面の強化、独立採算による責任と権限の明確化、意思決定の迅速化、事業特性に応じたリスク管理強化等が必要となる。これを実現するために、当社グループでは事業ごとに分社化することが最適であると考え、2012年1月に持株会社体制に移行した。
持株会社体制により各事業会社をグループ全体の観点から統括し、グループ戦略を策定して資源配分を最適化する機能と、経営管理の均質化を含めたガバナンスを事業会社全てに徹底する体制の構築を目指すと共に、各事業会社は各事業に最適なビジネスモデルを構築・洗練し、独立採算で事業を行うことにより、連結経営のレベルアップを図り、社会や市場の変化に迅速に対応できる企業グループ体制の確立を目指す。
一方、当社グループでは祖業である造船事業を「コアビジネス」とし、造船以外の事業、すなわち陸上事業とレジャー事業(再編後はM&T事業)を「第二のコアビジネス」として位置付け、事業の多角化に取り組んできた。「第二のコアビジネス」を一層強化するため、2018年4月2日に陸上事業とレジャー事業を営む子会社をM&Tグループ(Machinery & Technology Group)として再編するとともに、同グループを統括・支援する会社として「サノヤスMTG㈱」を設立した。更に、当社を分割会社、サノヤスMTG㈱を承継会社とする、M&Tグループ各社の統括事業に関する資産及び権利義務を承継する「吸収分割契約」について、2018年6月22日に開催した当社の第7回定時株主総会において承認され、2018年7月2日をもって吸収分割の効力が発生した。
当社グループは、次のような経営戦略をもって事業を推進する。即ち、当社グループは、造船事業とM&T事業という「二つのコアビジネス」を持ち、相互に補完しながら、バランスの取れたポートフォリオ経営を目指す。ここもとの海運・造船業界における厳しい経営環境の下、「不透明・不確実・不安定」な時代を乗り切るべく、造船事業の体質強化に加え、M&Tグループの強化・発展により、グループ内の補完機能を一層高めることで対応していく方針である。
造船事業においては、船腹及び建造設備の過剰という構造が依然として継続している。バルクキャリアーの海運市況については、2018年内はゆるやかな回復基調にあったものの、2019年は年明け以降弱含みで推移しており、造船市況は十分な回復には至っておらず、受注環境は厳しい状況である。当社はこの環境下、NOx排出3次規制やH-CSR(新共通構造規則)の新規則を適用し燃費性能を向上させた新82千重量トン型パナマックス・バルクキャリアーとクラス最大級の積載量である64千重量トン型に増加した新規則適用のスプラマックス・バルクキャリアーに加え、幅広・浅喫水で大容量化を図った新規制適用の新41千重量トン型ハンディサイズ・バルクキャリアーを開発し、営業を展開している。船価が低迷する状況下で、受注は市況動向を見極めながら臨機応変に対応することを優先し、受注残高を約2.5年分確保する営業方針に沿って引き続き注力する。
マリン・修繕船においては、水島製造所の大型設備を活用し、作業船等の新造を含めた大型の改修船工事への取組みを加速させていく。更に舶用タンクにおいては、これまで大阪製造所(大阪府大阪市)で製造していたが、事業拡大・生産強化を図るため、水島製造所(岡山県倉敷市)でも製造することを決定し、設備投資を進める。舶用LNG燃料供給システムの販売などにも技術開発の成果を活かして積極的に取り組んでおり、成約実績が上がりつつある。また、プラントにおいては、多くの実績を持つ食品タンク製造据付において更に品質を高めて受注を重ねていく。
組織面では、2019年4月1日付で、サノヤス造船㈱において縦割り組織の弊害を回避し、スピーディ且つ柔軟な運営を行うことを目指し、本部制を廃止した。本部制に代わり、組織横断的にコストダウンによる「生産性の向上」と「事業全般の運営改革」を推進する特命組織として「事業改革推進部」を新設した。また、マーケットや顧客の動き・ニーズをリアルタイムに直接補足できる体制とすべく、東京支社内に「技術開発部(商品開発課・東京)」を設置した。加えて、「ガスタンク事業」の強化に向け、「ガスタンク営業部」と「ガスタンク設計部」を既存の各部署から独立させ、専任の組織として新設した。
M&T事業は主に国内を主要マーケットとしており、製品・サービスの価格競争は依然として厳しく、原材料価格の上昇や人材確保のための賃金上昇圧力を受けつつあるが、国内景気は底堅さを維持しており、事業環境は好調が続いている。具体的な戦略は次のとおりである。
① 中間持株会社であるサノヤスMTG㈱の下で、各事業会社の事業特性・ビジネスモデル・企業の成長過程に応じた組織体制の強化拡充を図っていく。具体策として、2018年10月31日に、M&Tグループに属する子会社の内、産業機械製造を主業とし、メンテナンス等のサービスに注力するサノヤス・エンジニアリング㈱と㈱大鋳(2019年4月1日に合併)、サノヤス建機㈱(2020年4月1日に合併予定)の3社を統合し、新会社を機能別組織に再編することにより、経営の効率化や人財の最適配置の一層の推進を図るとともに、既存工場の共同利用によりシナジーを追求する等、事業構造を強化・拡充することを決定した。更に、2018年11月29日に、グループ内のIT化推進を目的として、ソフトウェアの開発及び計算・情報処理業務の受託を営むM&Tグループの㈱サノテックに所属するシステムエンジニアをサノヤスグループ各社に全体最適視点から効果的に配置すること、及び同社とM&Tグループのサノヤス・ビジネスパートナー㈱を2019年4月1日に合併することを決定した。
組織面では、2019年4月1日付でM&Tグループ各社とサノヤスMTG㈱の設計や間接部門の業務効率化・IT化を進める専任組織として「業務改革推進部」をサノヤスMTG㈱内に新設した。
② 新規技術・新規業務の開発や、新規市場開拓、旧設備の更新に必要な生産体制の強化拡充を図っていく。2017年4月にグループ会社3社統合により発足したサノヤス精密工業㈱は、精密機械加工を主業としており、同社の関西地区内3生産拠点を本社のある兵庫県三田市に集約し、生産効率の一層の向上を図る目的で、新工場建設を進めていたが、2019年3月に二期工事が完成し、移転が完了した。また、サノヤス・エンジニアリング㈱の新規事業として立ち上げたボラード(テロ対策用車止め装置)は、昨今の世界各地でのテロ事件増加の影響から注目されており、拡販を強化している。
③ 国内遊園地市場では、消費者の嗜好に合った遊具を企画・開発して顧客である遊園地に提案するとともに、ロケーション営業においては安全・安心をベースとして親切丁寧な接客を旨として従業員教育を徹底していく。
④ 豪州観覧車事業については、営業開始から5年余りが経過し、近隣商業施設の開発が進捗し、一層の活性化が期待され、海外からの観光客向けのマーケティングにも注力していく。
各事業の経営を革新していくために最重要の人財面については、経営管理層の世代交代を進めると同時に、メーカーとしての根幹である技術・技能の伝承にも最優先で取組んでいく。
資機材調達コストの低減は、メーカーである当社グループにとって大きな経営課題であり、安定調達を大前提としつつ、調達先の新規開拓や絞り込みによるスケールメリットの追求等によりコストの削減を図り、同時に、生産性の向上を図る施策を実行することで、トータルの収益性向上を目指す。
コーポレートガバナンスについては、グループガバナンスの一層の充実に努めると同時に、経営資源の最適配分と効率経営を徹底することで企業価値の向上を図っていく。当社は、意思決定の迅速化と業務執行に対する取締役会の監督機能の強化を図るため、2018年6月22日開催の第7期定時株主総会をもって、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行した。また、当社は従前より取締役の人事や報酬に関し、独立社外取締役から適切な関与と助言を得ていたが、更に客観性・透明性を向上させ、経営陣に対する監督機能の一層の強化を図るため、取締役会の諮問機関として任意の指名・報酬委員会を2018年2月1日付で設置した。
(2)株式会社の支配に関する基本方針
① 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容
当社は、当社グループの財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上していくことを可能とする者が望ましいと考えています。もっとも、上場会社として当社株式の自由な売買が行われている以上、特定の者の大規模な買付行為に応じて当社株式の売却を行うか否かは、最終的には当社株式を保有する当社株主の皆様の判断に委ねられるべきものであると考えます。
しかしながら、株式の大規模買付行為の中には、その目的等から見て企業価値ひいては株主共同の利益を著しく損なうもの、株主の皆様に株式の売却を事実上強制するおそれがあるもの、株主の皆様が買付けの条件等について検討したり、当社取締役会が代替案を提案したりするための十分な時間や情報を提供しないもの等も散見されます。また、造船事業及びM&T事業を手掛ける当社グループの経営においては、当社グループが保有する有形無形の経営資源、将来を見据えた施策の潜在的効果、当社グループに与えられた社会的使命、それら当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を構成する要素等への理解に基づく中長期的な視野を持った経営施策が必要不可欠です。かかる買付行為がなされる場合や当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者によりかかる中長期的視野を欠く経営がなされる場合、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益や当社グループに関わる全てのステークホルダーの利益は毀損されることになる可能性があります。
従って、当社としましては、このような当社の企業価値ひいては株主共同の利益に資さない大規模買付行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考えています。
② 当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組み
当社グループは、環境への配慮と安全が担保された高品質の製品・サービスの提供を通じて、ステークホルダーから信頼され、社会にとって魅力ある企業として持続的に発展することを目指しています。また、効率的で透明性の高い経営体制を確立し、激変する経営環境の下での着実な利益による成長を通して企業価値を継続的に高めていくことが企業経営の使命であると考えています。
この様な考えの下、基本方針の実現、すなわち当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益確保・向上に向けて次のとおり取組んでいます。
祖業である造船事業で長年培った技術とものづくりに懸ける精神を他分野に展開し、経営の安定化を図るとともに、造船事業を「コア事業」と造船事業以外の様々な多角化事業を「第二のコア事業」と位置付け、持株会社体制の下で競争力・収益力の強化に向けてそれぞれの事業に応じた諸施策を推進しています。特に、事業規模の比較的小さな会社の集合体である「第二のコア事業」については、各社を専ら統括・支援する会社を設立することにより、各社と課題を共有し、ものづくり、安全推進、経営管理ほか全ての面での強化・拡充に取組んでいます。
また当社では、執行役員制度の導入及び監査等委員会設置会社の移行により、迅速な意思決定、機動的な業務執行の実践とともに取締役会の監査・監督機能の一層の強化に取り組んでいます。加えて、任意の指名・報酬委員会を設置し、経営の透明性・公正性の担保を図っています。さらに、代表取締役社長である委員長を中心に、取締役会から委員を委嘱された当社及び子会社の取締役をもって構成する内部統制推進委員会を設置し、内部統制プロセスの有効性の検証・監督、実効性向上施策を協議することにより、業務の適正性の確保に努めています。
③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み
当社は、大規模買付行為を行おうとする者に対しては、大規模買付行為の是非を株主の皆様が適切に判断するための必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて当社取締役会の意見等を開示し、株主の皆様の検討のための時間と情報の確保に努める等、金融商品取引法、会社法及びその他関係法令の許容する範囲内において、適切な措置を講じてます。
④ 各取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由
上記の各取組みは、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を向上させるものであり、当社役員の地位の維持を目的とするものではなく、いずれも①の基本方針に沿うものです。