有価証券報告書-第6期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/23 11:32
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対処すべき課題

経営の基本方針である各事業の収益の極大化を図るため、それぞれが直面する事業環境に適応して、選択と集中を進め、業績を向上させていくことが当社の最大の課題である。その解決のためには、各事業に最適なビジネスモデルを構築し洗練していける体制面の強化、独立採算による責任と権限の明確化、意思決定の迅速化、事業特性に応じたリスク管理強化等が必要となる。これを実現するために、当社グループでは事業ごとに分社化することが最適であると考え、持株会社の下に造船・陸上・レジャーの各事業会社を連結・非連結子会社として配置したグループ組織とした。
持株会社は各事業会社をグループ全体の観点から統括し、グループ戦略を策定して資源配分を最適化する機能と、経営管理の均質化を含めたガバナンスを事業会社全てに徹底する体制の構築を目指すと共に、各事業会社は各事業に最適なビジネスモデルを構築・洗練し、独立採算で事業を行うことにより、連結経営のレベルアップを図り、社会や市場の変化に迅速に対応できる企業グループ体制の確立を目指す。
各事業においては下記の経営戦略を考えている。
造船事業においては、平成20年のリーマンショック以降も中国・韓国をはじめとする造船設備の過剰から新造船供給が高水準で続き、バルクキャリアーの運賃指標(BDI)は、中国の経済減速等が影響した歴史的低水準からは回復したものの、新造船価格は低迷を続けており、受注環境は厳しい状況である。
当社はこの環境下、建造量をスローダウンして以降年間8隻程度の建造体制が定着した。開発面では新しい共通構造規則及び環境規制を適用したバルクキャリアー(パナマックス型、ハンディーケープ型)の開発を終えるとともに、EEDI(エネルギー効率設計指標)フェーズ3を達成可能な次世代省エネ型のパナマックス・バルクキャリアー新船型の開発が完了した。加えて、新しい船種としてアフラマックス型タンカーの開発も完了し、市況変化に幅広く対応できる商品メニューの整備に取り組んでいる。今後も受注残約3年分の維持を基本方針としているが、市場環境に応じたフレキシブルな対応を行う。
修繕船事業においては、作業船等の新造を含めた改修船事業では、水島製造所のドックと門型クレーンを活用した大型案件の工事に取り組んでいく。さらに、LPG船用タンク事業においては、設備増強を含めた積極的な事業展開を進めていく。
プラント事業においては、わが国トップクラスの実績を持つ食品タンク製造据付においてさらに受注を重ねていく。
陸上事業は主に国内を主要マーケットとしており、製品・サービスの価格競争は依然として厳しく、原材料価格の上昇や人材確保のための賃金上昇圧力を受けつつあるが、国内景気は緩やかに回復に向かっており、事業環境は好転しつつある。陸上事業・レジャー事業は、造船に次ぐ「第二のコア事業」と位置付け強化拡充していく方針である。具体的な戦略は次のとおりである。
① 持株会社の下で、各事業会社の事業特性・ビジネスモデル・企業の成長過程に応じた組織体制の強化拡充を図っていく。精密機械加工を主業とする加藤精機㈱及びケーエス・サノヤス㈱をサノヤス精密工業㈱に平成29年4月1日を期日に経営統合し、経営の効率化を推進するとともに、生産管理・商品開発の強化を図っていく。
② 新規技術・新規業務の開発や、新規市場開拓、旧設備の更新に必要な生産体制の強化拡充を図っていく。平成28年11月には、化粧品用機械製造の新工場が完成し、続いて自動車部品製造工場の建て替えを計画している。また、新規事業として立ち上げたボラード(テロ対策用車止め装置)事業において、業界トップクラスの実績を持つ英国ATG Access社と代理店契約を締結し、受注活動を一層強化する。
レジャー事業は、国内と豪州を主たる市場としている。具体的な戦略は次のとおりである。
① 国内市場では、消費者の嗜好に合った遊具を企画・開発して顧客である遊園地に提案するとともに、ロケーション営業においては安全・安心をベースとして親切丁寧な接客を旨として従業員教育を徹底していく。
② 豪州観覧車事業については、営業開始から3年余りが経過し、現地での認知度は向上した。近隣商業施設の開発の進捗とともに一層の活性化が期待され、海外からの観光客向けのマーケティングにも注力していく。
③ 一昨年に万博記念公園内の大型複合施設「EXPOCITY」(大阪府吹田市)においてオープンした「ポケモンEXPOジム」は、今後も収益改善が見込めないと判断し、平成29年9月をもって営業を終了することとした。
上記の各事業の経営戦略を着実にかつ早期に実現すべく、持株会社体制による効果の発揮に注力していく。
サノヤスホールディングス㈱において、グループ全体の安全対策活動の一層の強化並びに事業会社の現場支援部門統合による効率的推進を図るため、「安全統括室」と「ものづくり推進室」を統合し、平成29年4月1日付で新たに「ものづくり・安全推進部」を設置した。加えて、金融機関取引や資金面業務、各種保険業務、及び投資審査を担当するため、「財務部」を設置した。
造船事業においては、特殊船や起重機船等を扱うマリン事業の強化のため、平成29年4月1日付で技術本部に「マリン設計部」を新設した。
陸上事業、レジャー事業においては、各事業会社が独自のビジネスモデルに一層の磨きをかけ、独立採算による権限と責任の明確化を図ることにより、各市場における競争への適応と意思決定の一層のスピードアップを図っていく。また、当社グループのシステム開発力を各事業会社の業務効率化のためのシステム開発に振り向け、効率向上と人員の効率活用を図っていく。
各事業の経営を革新していくために最重要の人財面については、経営管理層の世代交代を進めると同時に、メーカーとしての根幹である技術・技能の伝承にも最優先で取組んでいく。
資機材調達コストの低減は、メーカーである当社グループにとって大きな経営課題であり、安定調達を大前提としつつ、調達先の拡大あるいは絞り込むことでコストの削減を図り、同時に、生産効率の向上を図る施策を実行することで、トータルの収益性向上を目指す。
コーポレートガバナンスについては、グループガバナンスの一層の充実に努めると同時に、経営資源の最適配分と効率経営を徹底することで企業価値の向上を図っていく。
(2)株式会社の支配に関する基本方針
① 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容
当社は、当社グループの財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上していくことを可能とする者が望ましいと考えております。もっとも、上場会社として当社株式の自由な売買が行われている以上、特定の者の大規模な買付行為に応じて当社株式の売却を行うか否かは、最終的には当社株式を保有する当社株主の皆様の判断に委ねられるべきものであると考えます。
しかしながら、株式の大規模買付行為の中には、その目的等から見て企業価値ひいては株主共同の利益を著しく損なうもの、株主の皆様に株式の売却を事実上強制するおそれがあるもの、株主の皆様が買付けの条件等について検討したり、当社取締役会が代替案を提案したりするための十分な時間や情報を提供しないもの等も散見されます。また、船舶部門及び陸上部門を手掛ける当社グループの経営においては、当社グループが保有する有形無形の経営資源、将来を見据えた施策の潜在的効果、当社グループに与えられた社会的使命、それら当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を構成する要素等への理解に基づく中長期的な視野を持った経営施策が必要不可欠です。かかる買付行為がなされる場合や当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者によりかかる中長期的視野を欠く経営がなされる場合、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益や当社グループに関わる全てのステークホルダーの利益は毀損されることになる可能性があります。
従って、当社としましては、このような当社の企業価値ひいては株主共同の利益に資さない大規模買付行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考えております。

② 当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組み
当社グループは、造船業を祖業として、「まごころこめて生きた船を造る」という、ものづくりに懸ける精神と培った技術を他分野に展開し、安全、環境の配慮と技術に裏打ちされた確かな品質・性能を備えた製品の提供を通じて、ステークホルダーである株主の皆様、顧客、仕入先、協力会社、金融機関、従業員から信頼され、社会にとって魅力ある企業として持続的に発展することを目指しています。
造船業界においては、“二つの過剰”(過剰船腹・過剰建造能力)による需給ギャップが大きく、生き残りをかけ、統合や合従連衡、海外進出といった規模拡大を図る動きも見られる中、当社を取り巻く環境も厳しい状況が続くことが見込まれます。
このような環境の下、当社は、グループの原点である造船業を「コア事業」、造船業以外の様々な多角化事業(陸上・レジャー)を「第2のコア事業」と位置付け、体質を強化し、環境の変化に柔軟に対応しながら、この二つの事業のバランスのとれた成長を通じて企業価値を持続的に高めていくため、「高い技術力」「強い現場力」「コスト競争力」「不断の経営革新」「人財重視経営」を基軸とする諸施策を推し進め、将来に亘って成長を続け、収益力を高める基盤づくりに取り組んでおります。また、グループ各社は、それぞれの事業環境に応じたビジネスモデルを構築し、「自立と自律」を目標にして一層の社業発展に努めております。
さらに、当社は、コーポレート・ガバナンスの強化の一環として、執行役員制度を導入しており、経営の「意思決定」及び「監督」機能と「業務執行」機能の分離を進めているほか、経営環境の変化に迅速に対応できる機動的な経営体制の確立と取締役の経営責任を明確にするために取締役の任期を1年としております。また、取締役会の監督機能を高め経営の透明性を向上させるべく、3名の社外取締役と2名の社外監査役を独立役員として招聘しております。このような体制整備のほか、当社グループでは情報開示をより一層充実させることによって、株主の皆様やその他外部からのチェック機能を高め、経営の透明度を高めてまいりたいと考えております。
③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み
当社は、大規模買付行為を行おうとする者に対しては、大規模買付行為の是非を株主の皆様が適切に判断するための必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて当社取締役会の意見等を開示し、株主の皆様の検討のための時間と情報の確保に努める等、金融商品取引法、会社法及びその他関係法令の許容する範囲内において、適切な措置を講じてまいります。
④ 各取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由
上記の各取組みは、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を向上させるものであり、当社役員の地位の維持を目的とするものではなく、いずれも①の基本方針に沿うものであります。