有価証券報告書-第18期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/29 16:06
【資料】
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【項目】
130項目

対処すべき課題

以下の文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
1) 経営の基本理念
当社グループは、以下の経営理念を掲げ、インターネットを通じて、コンテンツ、商品、サービスを提供し、人々が人生を楽しく過ごせるために貢献したいと考えています。
・「日本のエンタテイメント市場の活性化」
・「新たなエンタテイメントビジネスの流通・販売形態の創造」
2) 経営方針
・コンテンツホルダーから利用者に至るまでのエンタテインメントビジネスに関わる全ての方々に対して、最適なコンテンツとその流通のためのシステムを提供
・コンテンツホルダー出身者が、より利用者にとって魅力的なコンテンツ、商品を提供することに主眼を置いてサイトを運営
以上により、コンテンツホルダーと利用者の関係性を重視し、両者をより密接に繋げることを意識
3) 事業展開方針
当社グループは、これまでに培ってきたレコード会社をはじめとする様々なコンテンツホルダーとの良好な関係と、権利ビジネスにおける経験を十分に活用し、また、コンテンツホルダーとサイト収益を分配する方針をもって、事業の起点となった音楽コンテンツだけではなく、キャラクターなどのエンタテインメントコンテンツや、アーティスト及びタレント等のファンクラブサイトなど、取り扱うコンテンツ数やその分野、並びに運営するサイト数を増加させ、事業規模の拡大を図ってまいりました。
一方、システム業者に対してもサイト収益を分配するビジネスモデルを採用し、サイト運営に係る協業体制を確立することにより、サイトやサービス開始時における開発費用を抑制し、新規コンテンツ分野への進出時のリスク低減を図るとともに、日進月歩の携帯技術への迅速な対応を行うことのできる体制の整備も進めてまいりました。
今後につきましても、幅広いコンテンツ分野においてサイトやサービスを展開できる強みを生かし、コンテンツホルダーに対して様々なコンテンツの利用機会を提供し、より多くのコンテンツの獲得に注力するとともに、その結果として得られる豊富なコンテンツを背景とし、収益力の高いサービス運営を行うことによりシステム業者の更なる開拓とその関係の深化に務めるなど、コンテンツ獲得力とシステム業者とのネットワークを両輪に、それらを乗数的に活用できるビジネス展開を行ってまいります。
また、当社グループは、現代の「音楽ビジネス」の形は、多様化するユーザーのニーズに合ったフレキシブルなサービスを提供することであり、従来の「音楽ビジネス」に、当社の持つIT技術のインフラを加えることで、さらなるアーティストとユーザーの掛け橋となることが出来ると考えており、新たな「音楽ビジネス」の可能性を創造・具現化することで、レコード会社やプロダクションとのパートナーシップ構築を推進し、サービスの向上を継続していく方針です。
(2) 経営戦略の現状と見通し
当社グループでは、中期的にコンテンツ事業、電子チケット事業及び新規事業からなるその他事業それぞれが成長することを目指すとともに、それぞれの事業が相互に連携し、相乗効果を生み出すような取り組みを行ってまいります。
各事業は、特定の消費者のニーズに対応したコンテンツや商品の提供を、他社に先駆けて実現するとともに、サイトやサービス数の増加により事業規模の拡大を図っていく戦略であります。一方、新たなサイトやサービスの運営にあたっては、既存サイト及びサービスの運営システムを最大限転用することで新たな固定費の支出を抑え、サイト及びサービス毎の収益性をより高めてまいります。
相乗効果を生み出す事業といたしましては、当社グループが運営するサイト間での相互リンクにより他サイトからの導線を確保し、ユーザーの回遊性の向上とユーザー獲得のための間口の拡大を図っております。また、事業セグメントの垣根を超え、例えばコンテンツ事業のファンクラブサイトを取り扱うアーティスト、タレントのグッズ付き電子チケットの販売・チケットトレードサービスの導入、チケット事業導線からのイベント用グッズやギフト等の事前EC販売等、サイトを通じたコンテンツ配信による収益だけでなく、多角的に収益を獲得し、収益機会を増大させることなども計画しております。
当社グループの新規事業へ向けた取り組みといたしましては、積極的に子会社を展開することで、様々な視点をもって、かつ機動的に事業展開を実施していく方針であり、子会社を通じた他社との事業提携、新規事業領域の開拓などを行ってまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、安定的な事業成長を通じて企業価値を拡大することが重要であると考え、売上高及び営業利益を経営の重点指標としております。業容の拡大により売上高の更なる成長を図ると同時に、高収益事業の開発、ビジネスモデルの確立により、収益力を高めることで営業利益を増加させることで、これらの指標の向上を図ってまいります。
(4) 経営環境
当社グループの事業領域であるインターネット関連市場は、第5世代移動通信システムの商用化が始まり、今後の新たな市場の創生と拡大への期待が高まっております。また、新型コロナウイルスの感染拡大により社会経済活動は制限された一方で、行動変容により自宅からのインターネットの利用頻度や時間は顕著に高まっております。また、社会のデジタル化やエンタテインメントの分野をはじめとした各種サービスのデジタルシフトも急速に進んでおります。
こうしたテクノロジーの進化や新たなビジネス、サービスの創出は加速しており、事業環境は目まぐるしく変化しております。
音楽やアーティスト関連の市場では、依然として新型コロナウイルス感染症の影響を受けているものの、一部に回復の兆しも見えております。2021年の音楽ソフト(オーディオレコード及び音楽ビデオ合計)の生産金額は1,933億円(前年同期比0.5%減)、音楽配信の販売金額が895億円(前年同期比14.4%増)となりました(出所:一般社団法人日本レコード協会)。音楽ソフトは横ばいであるものの、自宅等でのストリーミングサービスの利用の増加により音楽配信が引き続き伸長し、市場全体としては拡大しており堅調な音楽需要が見られます。
ライブ、コンサート市場は、新型コロナウイルス感染症の影響がいまだに大きく、2021年上半期(1月から6月)の公演回数は9,564回(前年同期比116.2%増)と、前年と比較すると増加しておりますがコロナ禍前2019年との比較では36.0%減少しております。また、動員数は712万人(同2.6%増)となり、収容人数制限による影響が大きくコロナ禍前2019年より68.3%減少しております(出所:一般社団法人コンサートプロモーターズ協会)。足下の状況としては、イベント開催制限の緩和に伴い、十分に感染症対策を講じた上でライブ、コンサートを再開する動きも見られ始めており、公演回数、動員数ともに増加してきております。
音楽市場の中でも特にライブ、コンサートを筆頭とした従来からのエンタテインメントのフォーマットにおいては、新型コロナウイルス感染症の影響がより大きく見られました。その一方で、有料のライブ配信やサブスクリプション型のストリーミングが普及、拡大し、デジタルシフトが急速に進むなど事業環境は変化しており、それらを的確に捉え、競争力を維持、向上させていくことがより重要となってきております。
(5) 対処すべき課題
当社グループの継続的かつ安定的な成長とそれに伴う収益基盤の拡大のためには、変化に富むユーザーの嗜好を的確に捉えた魅力的なコンテンツや商品の提供を行うとともに、新規の顧客層を開拓していくことが必要であると認識しております。また、新型コロナウイルス感染症拡大の終息時期が見通せないことなど、不確実性の高い経営環境が続くと考えており、そのため当社グループは、以下のような課題に取り組んでまいります。
(a) 新規事業の開発
スマートフォンの普及が進み、またテクノロジーが進歩するに伴い、スマートフォン向けアプリやコンテンツ、サービスの提供や新たな事業を開発すること、それらを通じた収益の拡大が課題であると考えております。これに対し当社グループでは、よりスマートフォンに適したサイト展開やコンテンツの高付加価値化に努めております。また、アーティスト等を題材としたアプリ、電子書籍などの配信、動画サービスの提供にも注力しております。加えて、VRや電子チケットなどの新規事業の積極的な開拓を行っております。今後についても、スマートフォン向けの有料サイトやコンテンツ、アプリを拡大していく方針であります。
また、新規事業につきましては、積極的な新規子会社の展開や、子会社を通じた他社との事業提携、並びに新規事業の開発とビジネスモデルの確立にも取り組んでおります。
(b) 有力コンテンツの獲得推進と認知度の向上並びに他社との差別化
コンテンツ事業においては、競合や市場環境はより一層厳しさを増すものと予想されます。当社グループが今後も優位性を保つためには、他社にはない有力コンテンツの獲得によるサイトの認知度の向上と、サイト内容の差別化、スマートフォン向けの新規コンテンツサービスや技術への迅速な対応が課題であると認識しております。
これに対して当社グループでは、各種メディアや業界動向などから幅広く情報収集を行うとともに、これまでに培った音楽業界での経験から、今後の流行が予想されるコンテンツの目利きを行っております。また、それと同時にこれまで構築してきた業界内でのネットワークを活用し、同業他社に先駆けそれらコンテンツの獲得を行うことができるよう営業活動に努めてまいります。
また、サイト運営にあたっては、技術力の高いシステム開発会社を選定の上、収益をあらかじめ定められた料率で分配する方式を採用することにより、固定的な開発費用の発生を抑制すると同時に、日進月歩のテクノロジーの進歩に対して機動的に対応する体制を構築しております。
(c) 顧客基盤の拡大
当社グループの継続的かつ安定的な成長のためには、顧客基盤の拡大が重要であると認識しております。このため、当社グループでは、今後の利用者の拡大が見込まれる新規コンテンツ分野については、より多くの利用者の目に触れることのできるよう、いち早く市場に参入することにより、サイトやサービス注目度と集客力を上昇させ、新規会員の獲得を推進しております。
また、様々なコンテンツカテゴリーにおいて様々なサイトやサービスを提供するノウハウや、有力なコンテンツを多数保有するという強みを生かし、コンテンツやサービスの相互利用などによって、新規会員獲得を推進するとともに、既存会員の当社グループサイトの利用継続性の向上、収益力の向上も図っております。
(d) 優秀な人材の確保
上記の課題に対応していくためには、優秀な人材の確保が重要であると認識しております。当社グループは、潜在顧客の求める魅力あるコンテンツを企画出来る能力、商品ライフサイクルにわたって利用者を引き付けるサイトを運営できる能力、ニーズの高いコンテンツを発掘できる能力、外注先を含めた人的資源をマネジメントできる能力等を有する優れた人材の確保するために、新卒も含めた採用活動の強化、社内教育の充実による人材の育成に注力していく方針であります。