有価証券報告書-第2期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

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2014/06/30 16:14
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業績等の概要

(1) 業績
当社は、平成24年10月1日に単独株式移転の方法により、アストマックス・トレーディング株式会社(旧商号アストマックス株式会社。以下、ASTRA社という。)の完全親会社として設立されました。また、平成24年8月1日にマネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社(以下、MAI社という。)を、平成24年12月28日にITCインベストメント・パートナーズ株式会社(以下、IIP社という。)をそれぞれグループ会社化するとともに、両社は平成25年4月1日付でIIP社を存続会社とする吸収合併を行い、アストマックス投信投資顧問株式会社(以下、ASTAM社という。)に商号変更をしております。
当連結会計年度(平成25年4月1日~平成26年3月31日)における世界経済・金融市場は、安倍政権下での日銀の超金融緩和政策をはじめ、米国の連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和の継続、及び、欧州中央銀行(ECB)の緩和政策が出揃ったことから、金利が低位安定する中、株式を中心とするリスク資産は総じて上昇する展開となりました。一方、先進国株式市場を中心に、中央銀行の超緩和政策を頼みとする過剰流動性相場の様相を呈してきたことから、各国中央銀行総裁の発言等に一喜一憂する市場環境となりました。平成25年5月21日には、バーナンキFRB議長が、米国における量的緩和の漸次縮小(テーパリング)に言及したことから、各国株式市場が急落しました。特に、先進各国の過剰流動性資金を下支え要因として上昇していた新興国株式市場での下落幅が大きく、投資家のリスク選好度に大きな影響を与えることになりました。同時期には、堅調なドルの影響もあり、また、キプロス中央銀行の在庫放出の噂や、ETFの解約が見られたことで急落した金をはじめとした貴金属を中心に、商品市場は軟調な展開となりました。シャドーバンキング問題などから、中国の景気の先行きに対する懸念の台頭もあり、新興国市場との相関性の高い、銅などの非鉄金属も大きく値を崩しました。
6月末にかけて、バーナンキFRB議長が、市場急落の原因となったテーパリングへの言及を打ち消す発言をしたことを契機に、金利が低位安定し、先進国株式市場が持ち直しました。また、これまで下落を続けていた新興国株式市場や商品市場にも資金が戻ることで、市場に底打ち感が見られました。特に、欧州危機以降、各国株式市場に対して出遅れていた欧州株式市場が、欧州の景気回復を背景に堅調な展開となりました。9月末にかけては、米国の債務上限の増枠を困難にしている上院、下院のねじれ状況から、「財政の崖」問題が引き起こす米国のテクニカルデフォルトの可能性が意識され、一時的に市場が調整しました。しかし、「財政の崖」に代表されるような政治的問題が生じるたびに、先進各国の金融緩和政策の継続が意識され、日米欧の金利は引き続き比較的低位で安定し、結果的に投資家は利回りの低い債券から割安な株式などのリスク資産への資金シフトを進める状況となりました。
10月以降は、米国の財政問題が落ち着いたこと、また、FRB次期議長に決まったイエレン氏がハト派であることが広く認知されていることから、米国の量的緩和政策続行への期待が高まり、米国株式市場は堅調な展開となりました。また、米国の景気指標が堅調さを維持したことや、日本の景気回復期待が高まったことから、引き続き先進各国の株式市場への資金流入が見られました。この傾向は年末まで続き、各国市場で高値を更新する状況となりました。平成26年に入っても1月上旬までは、前年の流れを受け、特に欧州株式市場を中心に堅調なスタートとなりました。しかし、中国景気指標の悪化、中国の信託商品のデフォルト懸念の増加、外貨準備不足によるアルゼンチン・ペソの急落を受けて、一部でリスクオフの流れが加速し、一時、株式市場が調整をする中、金価格等を中心に幅広く商品が買われました。また、年度末にかけては、ロシアによるクリミア接収の動きがあり、ウクライナに対する軍事介入が懸念されました。このような地政学的リスクに敏感な商品が高騰した結果、CRB指数は、3月に年度初来の高値を記録するなど上昇しました。
平成25年度通年では、グローバルの株式市場を代表するMSCI World インデックスの上昇率は16.69%となりました。日経平均株価の上昇率はこれを上回る19.60%となり、前年度の22.95%の上昇率には及ばなかったものの、堅調な上昇率を維持しました。日本の金利水準は、10年国債で概ね0.4%から1.0%のレンジ内での推移となりましたが、日本銀行と政府の2%の物価上昇率に対する目標設定に対する強固な協調体制の下、非常に安定した状態が続きました。また、日本のマネタリーベースの拡大を背景に、ドル円相場も円安方向への推移を続け、ドルは円に対して年間で約9.5%上昇しました。
上述のように、平成25年度は、先進各国の量的緩和を背景とした過剰流動性に支えられた1年となりました。新興国の景気懸念、また、中国における信託商品のデフォルトなどの個別要因は、株式市場への一方的な資金流入を妨げましたが、通年では金融市場環境は概ね良好であったといえます。しかし、年度末にかけて、日本の成長戦略に対して海外投資家が懐疑的な姿勢に転じたことから、他市場に先駆けて日本の株式市場は調整気味の動きとなっています。また、国際間の資金の移動はこれまでに増してスピードを速めており、足下では、市場の変化率が高まる予兆も見られます。
このような環境下、当社グループの事業とかかわりの深い商品市場は、株式市場とは異なる動きとなりました。特に、平成25年4月には、それまで、1オンス1,600ドル台で取引されていた金価格が急落し、4月15日には、一日としては過去30年で最大の下落幅を記録しました。その後も、2008年の金融危機以降、リスク回避先資産として買われていた金が、リスク回帰的な動きの下、投資家の売りに押され、1,200ドルから1,400ドルのレンジでの推移となりました。平成25年12月にかけて安値を付けた後、金価格は底打ちしましたが、中国景気に対する根強い不安が残る中、銅価格が低迷しました。一方、エネルギー価格は年度を通じて小幅ながら上昇しました。WTI原油は、年度初1バレル90ドル割れから始まりましたが、先進国景気の回復による需要期待や地政学的リスクを背景に年度末には100ドルを超えて推移しました。今年度も昨年度に引き続き、商品価格のリターンが株式や社債のリターンに対して大きく劣後する中、ETFを経由した投資家などからの売却が相次ぎました。結果として、投資需給が改善したと見られ、また、金属価格や原油価格が掘削や精製のコストに近づいたと見られており、市場には商品価格の底打ちを意識する声も出始めています。
当社グループは、昨年から続く組織再編の一環として、平成25年4月1日にアセット・マネジメント事業の子会社を合併し、新たなスタートを切りました。アセット・マネジメント事業では、6月迄に、組織統合に伴う当初計画をしておりました重複費用の削減を実現しましたが、投資家の投資方針の変更及び利益確定等の動きに伴う運用資産残高の減少等により、当初想定していました営業収益を確保することはできませんでした。新規顧客の開拓を含め営業努力を継続すると共に、希望退職制度の導入等も含めコスト構造の抜本的な改革を行いました。一方、自己勘定投資事業では、新規事業で行った太陽光発電設備2サイトの売却(再生可能エネルギー事業収益の一部として計1,060百万円の譲渡価額)が収益に貢献しました。
以上の結果、当社グループの当連結会計年度の営業収益は2,619百万円(前年同期間比693百万円(36.0%)の増加)、営業費用は2,689百万円(前年同期間比796百万円(42.0%)の増加)、経常損失は86百万円(前年同期間は6百万円の経常利益)、当期純損失は115百万円(前年同期間は4百万円の当期純損失)となりました。
セグメント毎の業績及び取組み状況は次のとおりです。
① アセット・マネジメント事業
当事業は、主にASTAM社が推進しており、金融商品取引業と商品投資顧問業を行っております。
当連結会計年度においては、第1四半期は、市場全般の下落並びに新年度入りに伴う投資家の投資方針見直しなどにより、運用資産残高が大きく減少する場面もありましたが、本年度の新たな投資方針等に基づく新規投資及び再投資の動きもあり、6月末の運用資産残高は1,268億円となりました。第2四半期は、市場全般が短期間で上下する展開となる中、投資家の売り買いが交錯する展開となりましたが、中間期末を控えた投資家の利益確定等の解約が投資信託の新規設定や既存の投資信託への追加投資を上回り、9月末の運用資産残高は1,116億円となりました。第3四半期は、世界的に株式市場が概ね堅調な展開となり、為替市場も円安傾向で推移する中、投資信託の新規設定や既存の投資信託への追加投資等を背景に運用資産残高も増加しました。しかしながらその後、投資家の利益確定等の解約が新規投資及び再投資等を上回り、12月末の運用資産残高は第2四半期末と同水準の1,156億円となりました。第4四半期においては、投資家の投資姿勢の積極化等を背景に投資信託の新規設定や既存の投資信託への追加投資の動きにより、運用資産残高が増加し、3月末の運用資産残高は1,341億円迄回復しました。
以上の結果、当事業における当連結会計年度の営業収益は940百万円(前年同期間比221百万円(30.8%)の増加)と組織再編途中の前年同期間に比べ増加しましたが、営業費用をまかないきれず、セグメント損失は143百万円(前年同期間は43百万円のセグメント損失)となりました。なお、コスト構造の抜本的な改革を図るため、人員削減等の合理化を進めましたが、当連結会計年度においては特別退職金等を特別損失として計上するなどコストが先行する結果となりました。当事業では、今後とも拡充した事業基盤を活用し、投資信託の販売会社並びに海外の運用会社等との協業を通じて運用資産残高の積み上げに努めるとともに、事業ポートフォリオの分散化及び多様化、収益基盤の拡充にも取り組んでまいります。
② 自己勘定投資事業
当事業は、主にASTRA社が推進しており、国内外の主要取引所において商品先物を中心に、金融先物、更にはOTC市場(取引所を介さない相対取引の市場)を利用した自己勘定取引を行っております。平成25年12月には現物株式取引も開始いたしました。また、当事業では新規事業の一環として、再生可能エネルギー等を利用した発電及び電気の供給に関する事業を展開しております。
・ディーリング事業
当連結会計年度における商品先物市場は、海外商品先物市場が比較的活発な動きを見せる中、国内商品先物市場の流動性は更に低下し、結果として銘柄を問わず、裁定取引機会が減少し、収益低下を余儀なくされました。しかしながらこの間、損益分岐点の更なる引き下げを図るべく、抜本的な事業関連コストの見直しを行う一方、新たな取組みも開始しました。具体的には11月にディーリング部門及び新規事業部門において大幅な人員配置転換等を行い、人員の適正化及び効率化を図りました。また、「アルゴリズム・トレード室」として独立させていた組織をディーリング部が吸収し、アルゴリズム取引への取組みを、より機動的に行える体制にいたしました。更に12月には現物株式の取引を開始しました。従来の商品先物を中心としたディーリングに現物株式を加えることにより、収益の分散化を行うと同時に、収益の増大を図りたいと考えております。
・再生可能エネルギー関連事業
当連結会計年度については、青森県八戸市八太郎山ソーラーパークにおける太陽光発電設備4サイトのうち3サイトの建設が完了し、うち2サイトについては、設備の売却を行い、1サイトについては、当社グループが保有し平成26年1月中旬より売電を開始しました。建設中の1サイトは平成27年3月期第1四半期中に完成する予定ですが、平成26年4月23日付で同サイトの発電設備一式の売買契約を締結しました。また、管理・オペレーション業務については、完成した3サイト(売却した2サイトを含む。)において順次開始しましたが、4サイト目についても管理・オペレーション業務は当社が担当する予定です。
太陽光発電事業につきましては、引き続き新規案件への投資機会を追求しておりますが、自社による設備の継続保有と完成した設備の売却とのバランスを取りつつ、再生可能エネルギー関連事業への投資資金を確保していく所存です。
また、再生可能エネルギー関連事業を営む新規事業部門においては前述のとおり、人員配置転換等に伴い大幅な人員増を行っており、今後は太陽光に留まらず地熱・バイオマス等の再生可能エネルギー等を利用した発電事業に加え、新電力(PPS)事業にも取り組んでいく予定です。
以上の結果、当事業における当連結会計年度の営業収益は1,690百万円(前年同期間比483百万円(40.1%)の増加)、セグメント利益は56百万円(前年同期間比9百万円(20.7%)の増加)となりました。
上記、セグメント利益又は損失は連結財務諸表の経常利益又は経常損失と調整を行っており、連結会社間の内部取引消去等の調整額が含まれております。
報告セグメントについての詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、1,394百万円(前年同期間比1.7%増)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主としてブローカー等に対する差入保証金の減少による収入(811百万円)、仕掛品の増加による支出(324百万円)等により、362百万円(前年同期は86百万円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、太陽光発電事業に係る有形固定資産の取得による支出(△414百万円)が主な要因となり、△338百万円(前年同期は△440百万円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主として長期借入れによる収入(長期借入金の返済による支出との純額は160百万円)、短期借入金の返済による支出(短期借入れによる収入との純額は△149百万円)等により、△0百万円(△230千円、前年同期は377百万円)となりました。