有価証券報告書-第2期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

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2014/06/30 16:14
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財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

本文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
当社の経営者は、連結財務諸表の作成に当たりまして、会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に関する見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
(2) 経営成績の分析
アセット・マネジメント事業においては、企業買収を含めた組織再編を推進しました。平成25年3月期において、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社とITCインベストメント・パートナーズ株式会社(以下、IIP社という。)を相次いで買収した上で、平成25年4月1日付でIIP社を存続会社とする吸収合併を行い、アストマックス投信投資顧問株式会社に商号変更をしました。
事業規模を拡大したことにより、運用資産残高は大幅に増加しましたが、平成25年度に入り市場環境及び投資家の投資方針の変更等により、利益確定等の解約が大きく発生した結果、当初想定していた営業収益を確保することはできませんでした。組織統合を受けて、当初計画していた重複費用の削減は実現したものの、営業収益が伸び悩む中で、コスト構造の抜本的な改革を図るため、希望退職制度の導入等も含めた合理化を進めました。この結果、特別退職金の計上など、当連結会計年度も先行する費用の計上がありました。
組織再編を経て強化された事業基盤を用いて、新規顧客開拓を含めた営業努力を継続することで、運用資産残高は平成26年3月末には1,341億円まで回復しております。
平成27年3月期においては、商品ラインナップ・販売チャネルを拡大し、既存顧客の拡充と分散を図りたいと考えております。また、太陽光発電や地熱発電等のインフラファンドビジネスや、個人投資家ビジネスへの参入も検討しており、インフラファンドビジネスにおきましては、再生可能エネルギー関連事業を推進するグループ会社との協業を既に開始しております。
自己勘定投資事業においてはディーリング事業の効率化及び再生可能エネルギー関連事業への進出を行って参りました。(*1)
ディーリング事業が主要な取引市場としている東京商品取引所の出来高は、4月は月間300万枚超を記録しましたが、その後は徐々に減少し、11月には月間150万枚を割る状況となり、ディーリング事業の収益は大幅に減少しました。この間、損益分岐点の更なる引き下げを図るべく、抜本的な事業関連コストの見直しを行う一方、人員配置転換や組織変更、投資対象の拡大等を行いました。今後も資金効率の向上、取引サポートの強化等業務体制の見直しを進め、当事業を推進してまいります。
再生可能エネルギー関連事業については、当社グループが初めて手掛けた青森県八戸市内の八太郎山ソーラーパークにおける太陽光発電設備4サイトのうち2サイトを当連結会計年度第3四半期に売却し、1サイトについては、当社グループが保有し平成26年1月中旬より売電を開始しました。この売却により、営業収益は大幅に増加いたしました。
平成27年3月期においては、引き続き太陽光発電案件について自社保有と売却とのバランスを取って進めていくことに加え、地熱発電等についても調査を開始して取り組んでまいります。また、開発した発電所等を中心に、管理・オペレーション業務を行うと共に、PPS(特定規模電気事業者)への参入も視野に入れております。
なお、事業の種類別セグメント情報の詳細については、[1 業績等の概要 (1)業績]に記載のとおりです。
(*1) 平成27年3月期より、当社グループでは、「自己勘定投資事業」を「ディーリング事業」および「再生可能エネルギー関連事業」に分け、独立セグメントとして取り扱う予定です。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当連結会計年度の世界経済の情勢については、各国で継続してきた金融緩和政策等の影響もあり、日米を中心に株価が上昇し、景気回復ムードが増してきております。欧州各国でも、債務問題による混乱が収束し、経済回復が観測されています。一方で、中国経済成長の急速な鈍化リスクに加えて、東アジア・東南アジア・中東・アフリカ・ウクライナなどの地政学リスクについても予断を許さない状況が継続しています。
この様な環境下、平成25年春にかけて為替市場で円安が一方的に進むと共に、平成25年を通じて本邦株式市場が大幅上昇する等の動きを受けて、当社グループのアセット・マネジメント事業で取り扱う公募・私募の投資信託には、利益確定による解約が発生し易い状況となりました。この結果、同事業の収益に直接影響する運用資産は、平成25年5月末には、平成24年12月末比約600億円減少し1,000億円強にまで減少する局面がありました(平成26年4月末には、1,550億円を超える水準にまで回復)。
当社グループの自己勘定投資事業においては、太陽光発電事業を中心とする再生可能エネルギー関連事業での設備売却が、営業収益に大きく貢献した他、自社保有案件からの売電収入も、平成26年3月期から計上されました。本事業は、平成27年3月期以降、独立した事業セグメントとして取り扱うこととなりましたが、積極的に経営資源を投入して、太陽光発電事業の更なる拡大と地熱発電等への取組みを開始する予定であります。
一方、自己勘定投資事業の中でもディーリング事業においては、運用対象の多角化を進めているものの、依然として東京商品取引所を中心とする商品先物市場での収益が大半を占めております。平成25年3月期第4四半期に最悪期を脱したかにみえた商品先物市場の市場環境は、好調な株式市場を横目に、前述の様な低迷を続けました。同事業は、平成27年3月期以降についても、引き続き重要な収益部門であるとの認識をしており、市場関係を受けたその収益の増減は、当社グループの経営成績に重要な影響を与えます。
営業費用の面では、当連結会計年度において、アセット・マネジメント事業で、事業基盤の拡大のために買収した2社の統合による経費削減効果が徐々に実現されました。買収した2社で負担していた年間地代家賃合計の55百万円は、当社オフィスへの統合を経て両社の賃貸借契約が満了した平成25年7月以降は不要となった他、人員配置の適正化等による人件費削減も平成26年3月末までに達成致しました。この結果、平成27年3月期は、その削減効果が年間を通じて反映されるため、営業費用が大幅に削減される見込みです。一方、自己勘定投資事業では、効率化を進めるディーリング事業から、事業拡大を目指す再生可能エネルギー関連事業の営業部隊に人員をシフトしたことで、ディーリング事業の採算ラインが低下したことから、平成27年3月期には年間を通じて削減効果が見込める予定です。
当社グループの『中期事業計画2014』で公表した通り、アセット・マネジメント事業においては、今後さらに、買収した2社を含めたシナジー効果を発揮させ、運用資産の拡大を通じて当社グループの経営成績向上を図ると共に、投資対象を市場環境の変化に左右されにくい商品構成へ転換を図ることによって、経営成績の安定度を高めてまいります。
新規事業としてスタートした再生可能エネルギー関連事業は、市場の変動の影響を受けにくい安定収益源として営業収益への貢献が期待できる一方で、「事業等のリスク」に記載の通り、不測の事態が生じて、経営成績にマイナスの影響を与える可能性もあります。
(4) 戦略的現状と見通し
当社グループの主要事業は、アセット・マネジメント事業と自己勘定投資事業の2つに分けられます(前述の通り、自己勘定投資事業については、平成27年3月期より「再生可能エネルギー関連事業」と「ディーリング事業」に分け、独立セグメントとして取り扱う予定です。)。
アセット・マネジメント事業につきましては、運用戦略とマーケティングチャネルの再構築を進めており、さらなる運用資産の積み上げに努めてまいります。商品企画・運用・顧客サービスから、投信計理等の管理部門・法務コンプライアンスに至るまで、機動的かつ効率的に業務を遂行しつつ、的確な相互連携と、適切な牽制機能の発揮を共存させて優先課題への迅速な対応を行ってまいります。また、グループ内の再生可能エネルギー関連事業と協働して、インフラファンド等への取組み及び海外運用会社との協業による事業展開の強化を通じて、ソリューション提案力とクライアントサービスの質的水準を向上させた、独自性の高い資産運用会社を目指してまいります。さらに、マーケティングを中心とした協業可能なパートナーとの関係を強化して、一層の事業展開を図ってまいります。
なお、当社グループのアセット・マネジメント事業において、組織統合以前の中心となってきたコモディティを投資対象とした顧客資産運用についても、引き続き、当社グループの運用商品の重要な一角を占めるものと考えており、十分な潜在的成長余力もあるものと考えております。
一方、自己勘定投資事業における新規事業として立ち上げた再生可能エネルギー関連事業においては、青森県八戸市において4サイトの運営に携わっている他、既に公表済の案件も含めて全国で新規案件への取組み拡大を進めると共に、地熱発電等に対しても調査を開始し現在フィージビリティースタディーの段階にあります。太陽光発電事業を中心にファンド化等を通じ、アセット・マネジメント事業と連携した展開も事業計画に入れており、直接の売却に加えて、ファンド化によっても回収される当社グループの投資資金を新たな案件に再投資していくビジネスモデルの展開を図ってまいります。各発電所の管理・運営業務は、売却またはファンド化後も当社グループが引き続き行い、手数料収入も獲得していく方針です。今後も、新規事業を推進する上での管理・運営体制を強化し、継続して太陽光発電事業及びその他の再生エネルギー関連事業へ取組んでまいります。
自己勘定投資事業のディーリング事業につきましては、従前より積極的に取組んでまいりましたコモディティの国内及び海外市場を対象とした裁定取引に関しては、アルゴリズムトレード室の吸収、資金効率の向上等の努力を続けております。更に、株式市場などに取引対象を拡大し、収益の多角化を図る取組みも継続してまいります。
当社グループでは、平成24年10月に持株会社体制へ移行いたしましたが、上記の各事業の取組みを進めるにあたり、持株会社を中心に、適切な内部管理体制の確立と業務効率の向上、最適な経営資源の配分及び、意思決定の迅速化を図ってまいります。その上で、公開企業として十分な株主還元を実現するとともに、将来の事業展開に必要な内部留保を確保できる純利益を計上することにより、企業価値を向上させることに全力を挙げて取組んでまいります。
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 資産、負債及び純資産の状況
当連結会計年度における総資産は、ブローカー等に対する差入保証金の減少(522百万円)、株式会社日本商品清算機構の清算資格喪失に伴う長期差入保証金の減少(304百万円)、太陽光発電事業の推進に伴う機械及び装置の増加(333百万円)及び同事業の推進に伴う仕掛品の増加(324百万円)等により、4,917百万円(前年同期比3.3%減)となりました。
負債は、短期借入金の減少(149百万円)、営業未払金の減少(101百万円)、1年内返済予定の長期借入金の減少(94百万円)、長期借入金の増加(255百万円)等により981百万円(前年同期比5.0%減)となりました。
純資産は、当期純損失計上により利益剰余金の減少等により3,936百万円(前年同期比2.9%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、1,394百万円(前年同期間比1.7%増)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主としてブローカー等に対する差入保証金の減少による収入(811百万円)、仕掛品の増加による支出(324百万円)等により、362百万円(前年同期は86百万円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、太陽光発電事業に係る有形固定資産の取得による支出(△414百万円)が主な要因となり、△338百万円(前年同期は△440百万円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主として長期借入れによる収入(長期借入金の返済による支出との純額は160百万円)、短期借入金の返済による支出(短期借入れによる収入との純額は△149百万円)等により、△0百万円(△230千円、前年同期は377百万円)となりました。
(6) 経営者の問題認識と今後の方針について
当社の経営陣は、現状の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するよう努めておりますが、当社を取り巻く経営環境は、依然として、内外の商品先物市場等の動向、金融商品市場の動向等の諸経済情勢により大きく影響を受けるものとなっております。このため、商品先物市場等及び金融商品市場等に関する情報を幅広く入手し、市場動向に迅速に対応すべく努力する一方、前述のとおり、当社グループの事業について、市場動向の影響を受けにくい体質への改善を進めております。今後は、上記のほか、我が国の再生可能エネルギー等に対する政策の動向も踏まえつつ、業績と事業計画に大きな乖離が生じる可能性がある場合には、事業計画を抜本的に見直し、環境変化への対応を適切に行ってまいります。