有価証券報告書-第17期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/30 10:26
【資料】
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【項目】
149項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「売場を元気に、日本を元気に、そして世界を元気に!」をテーマに店舗店頭に特化したフィールドマーケティング(※注)支援事業を展開しております。「社会性ある事業の創造」を経営理念に掲げ、流通業に新しいコミュニケーションの流れを創造し、当社グループに蓄積されている日本の店舗店頭の運営ノウハウを世界各国に輸出し、最終消費者の生活文化の向上につなげることで、新たなマーケットの拡大を推進してまいります。
※注 フィールドマーケティングとは、フィールド(店頭)を重視したマーケティングのことを指します。店頭など消費者の生活により
近いところでのマーケティング展開は、商品陳列、POP類、顧客動線などすべての要素が対象となるため販売促進効果も大きく、販売に直結したマーケティング。ラウンダー、推奨販売、デジタルサイネージ、覆面調査など、こうしたソリューションを個別、あるいは組み合わせることでブランドが構築され、その実行中にブランドオーナーに対して明確で実質的な投資回収率(ROI)を提
示することになります。収益支出の中で特定の利益を上げることが主な目的であり利点でもあります。
当社グループの経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大による店頭での販売促進活動自粛の影響を受け、HRソリューション事業における店頭での試飲試食販売員の派遣サービスが大幅に落ち込んだ一方、IoTソリューション事業におけるデジタルサイネージ製造販売は、販売員派遣の代替サービスとして大幅に需要が高まりました。またMRソリューション事業では、主力クライアントである飲食・サービス業における営業自粛状態が長引いた影響で覆面調査サービスが落ち込んだ一方、非接触型調査であるホームユーステストや郵送調査の需要が高まっております。
ウィズコロナ時代において、どのような店頭販売促進施策がスタンダードになるか、という課題への対応を当社グループとして求められる中ではありますが、各店舗のニーズに応じた店頭活性化施策を提案することで、更なる受注の拡大が見込まれます。
(2)目標とする経営指標
当社グループの事業は、①HRソリューション事業、②IoTソリューション事業、③MRソリューション事業の3事業に分かれております。これら3つの事業のうち、HRソリューション事業・MRソリューション事業を主軸とし売上の増加を拡大しIoTソリューション事業で高付加価値のサービスを提供することで、収益性の向上を目指しております。主な成長性・収益性の財務的な指標として、売上高増加率、売上総利益率、営業利益率、営業利益増加率などを掲げております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
上記の経営の基本方針を踏まえて、目標指標を達成するために、次のとおり取り組んでまいります。
① HRソリューション
これまでフィールドマーケティング事業で当社が積み重ねてきた726万件に及ぶ店頭ビッグデータ情報(店舗DB)を武器として最適な販促対象店舗を選定し、効果的な販促手法をコンサルティングが出来るようになることで、更に競合他社との差別化を図ってまいります。
また、店舗店頭以外の領域への人材インフラ提供も拡大しております。2020年にM&Aで、コールセンターやバックオフィスのBPOセンター事業を展開するジェイエムエス・ユナイテッド株式会社、オフィスやコールセンター、工場向けに人材派遣・人材紹介事業を展開するジェイ・ネクスト株式会社が当社グループへ参画しいたしました。当社グループと経営、業務、意識などの企業統合を推進するともに、さらに当社グループ内での事業シナジーの創出及び利益率の改善を図り、事業を成長させてまいります。
さらには、㈱伸和企画、㈱INSTORE LABO等のM&A企業・新規設立企業が事業拡大フェーズに入っております。特に㈱伸和企画は、販促物・什器製作や、それを設置し魅力ある売場を創造するためのラウンダーサービス等、グループソリューションのクロスセルを推進しており、コロナ禍でニューノーマル販促という位置づけで需要が高まっているため、この波に乗り確実な事業拡大を狙ってまいります。
② IoTソリューション
2020年よりオンライン版店頭用デジタルサイネージ(※注)の販売をさらに拡大させております。これにより従来のハード機器売上に加えて、オンライン利用料・ASPサービス利用料によるストック型収益の積上げが可能となり、利益率が伸長しており、今後も成長が見込めます。
また、これまで培った小型デジタルサイネージ事業のノウハウを基に、開発スピード・コスト・低ロット対応等に更に磨きをかけ、エレベーター内や美容室座席前、自動ドア防護柵などを使って広告インフラを敷設する企業向けにオリジナル業務用デジタルサイネージを開発・提供していきます。こちらも掲示ポスターの代替えとしての店頭用と同様、オンライン利用料やASPサービス利用料による収益が見込めます。
新製品PISTAを昨期より販売スタートしましたが、本製品の特長でもある「顧客の棚前購買行動」をデータベース化している企業は、世界にも類を見ないと考えております。これは世界的大手ECサービス企業でも収集ができない当社グループ独自の店頭情報群です。このデータベースをさらに強化し、今後の販促企画ビジネスにおいて有効な武器の1つにすべく、データの収集・分析を継続してまいります。
※注 店頭用デジタルサイネージとは、主に売場の棚に設置されている3.5~19インチの小型デジタルサイネージのことを指します。
③ MRソリューション
当社の祖業である覆面調査は、リアル店舗が大手ECサービス企業に負けない売場作り・接客をする為の中核を担うサービスと言えます。今後はよりリアルだからこそのきめ細やかな接客サービスが求められます。さらに、接客同様重要視されるのは「オリジナル商品開発」だと考えております。従来の顧客である飲食・小売・サービス業以外に消費財メーカー等でのマーケティングニーズに対応すべく、今後はホームユーステスト、グループインタビューなどの商品開発支援型マーケティングリサーチやコンサルティングが出来る体制を構築していく予定です。
またアジア諸国における小売業向けコンサルティングサービスについては、単なるリサーチ事業からの脱却を模索しつつも地場リサーチ会社との連携を強固なものとし、グローバル展開する飲食・小売・サービス業の大規模案件を獲得すべく、さらに踏み込んだ展開も志向していきます。こちらの実現は、当社のMRソリューション事業が次のステージへステップアップするための重要な事業拡大方針の1つとして、重点的に取り組んでまいります。
(4)会社の対処すべき課題
① 経営理念のさらなる浸透強化
事業環境に左右されず事業基盤の拡大、成長させていくためには経営理念の浸透を人材育成の軸とした教育が必要であると考えております。
当社グループでは「HEART OF Impact HD」という「経営理念」「インパクトホールディングスメッセージ」、行動指針である「インパクトホールディングスウェイ」「インパクトホールディングスリーダーシップ」等を纏めて解説した冊子を作成・配布しております。また、日々の朝礼ではグループ会社も合同で理念に基づいた経験談の発表を行い、全従業員が参加する会議の場で理念に基づいた講話を代表取締役社長自らが実施する等、徹底した理念の浸透を図っております。これにより、離職率の低下による既存従業員の安定化や、業務ミスの発生を削減し、品質の向上に繋がる等の効果が得られております。
また、メディアクルーに対しても、「メディアクルーへの約束」を定め、「理念共有型のフィールドスタッフネットワーク」※注 の構築に注力しております。今後についても、経営理念浸透を最重要課題ととらえ、全従業員の方向性の統一を図るための経営理念浸透につながる取り組みを実施してまいります。
※注 理念共有型フィールドスタッフネットワークとは、当社グループの理念に基づき、当社グループに蓄積した流通現場の知
識、考え方を十分に理解し、現場の重要性を熟知したメディアクルーを増やしていく活動のことを指します。
② 経営者人材の確保と育成
当社グループは、今後さらなる事業拡大を目指す上で、優秀な経営者人材の確保及び理念浸透を軸とした教育による人材育成が重要な経営課題であると認識しております。人材確保については、新卒採用及び中途採用を積極的に実施し、当社グループの経営理念・方針に共感を持った人材の確保と、様々なOJT・社内教育等による従業員のレベルアップを進めてまいります。
また、HRソリューション事業及びMRソリューション事業の業務を支えるメディアクルーの更なる増加については、当社グループの認知度・信用力・露出度の向上を図ることで登録者数の増加を進めてまいります。メディアクルーの教育方針については、店舗の自社運営や流通チェーン出身従業員による流通業界の経験と知識、店舗販促ノウハウを最大限に活かした教育を行うことで流通現場の知識を落とし込みます。加えて、当社グループの理念に基づいた考え方を理解することで流通現場の重要性を十分に理解し、単なる登録者に留まることなく流通現場を熟知した理念共有型フィールドスタッフネットワークを構築してまいります。また全国に約1,200名を超えるフラッグクルー ※注 を配置し、業務に関連性の高い資格保有者や難易度の高い店頭業務の経験者に対し、最優先で業務を案内する制度を運用しております。今後につきましては、フラッグクルーをよりきめ細やかに全国展開し、高付加価値サービス提供による高利益体質を目指し、幅広い属性の方々へ労働機会を提供してまいります。
※注 フラッグクルーとは、全国28万人のメディアクルーの中から一定の審査基準をクリアし、当社グループの理念や考え方に理
解・共感頂き、当社グループと共に社会性ある事業の創造を担って頂く特別なクルーのことを指します。
③ 店頭販促に関するマルチメニュー展開
当社グループでは、グループ全体での取引口座数が1,500社超、年間フィールド業務数が100万件超と強固な顧客資産を保有しております。しかし店舗店頭の販促・マーケティング領域では、当社グループが主力サービスとして展開するラウンダー・推奨販売・デジタルサイネージ・商品POP製作・店頭什器製作・ノベルティ製作・店頭調査に加え、販促企画・イベント運営・映像制作等、様々なソリューションが様々な企業により展開されております。当社グループは、「マルチフィールドメニュー」のラインナップを目指し、店頭販促に関する主要業務すべてを網羅すべく事業を推進しております。
今後も同領域におけるM&Aや業務提携を積極的に進め、店頭実現ビジネスパートナーの地位を確たるものにしてまいります。
④ 店舗DBの活用による店頭販促のDX化
昨今の日本における流通業界は、オーバーストアやECの台頭、店舗のショールーム化、そして新型コロナウィルス感染拡大の影響による客質・客層の変化等、大きな変化に直面しており、店頭販促活動での変革を求められております。
(オーバーストア)
総合スーパーやコンビニエンスストア、家電量販店等の業態にみられるように、不採算店舗の大量閉店を実施しながら、新規出店を続ける企業が増えており、世界一店舗の改廃が多い国と言っても過言ではありません。そして、競合する各社が商圏となるエリアを越え、積極的な出店を行ってきたことで、業種・業態を越えた価格競争の激化、販売手法の変化、新規参入企業の増加等、流通小売業界での商圏内競争が激化し、商圏に対して需要より供給が過剰になるほど出店が進み、オーバーストア(店舗過剰)に陥っております。
(ECの台頭、店舗のショールーム化)
近年、ECサイトやオンラインショップの成長率が高まっていることに伴って、インターネットやSNSで顧客を集めようとする動きが高まっております。消費の中心がインターネットへシフトしていく中で、リアル店舗のショールーム化にも拍車がかかっております。これまでは、リアル店舗に来店して商品を購入するのが主流でしたが、現在では店舗で商品仕様を確認したうえで、インターネットへアクセスし、より安く販売しているサイトを探すようになりました。
また、新型コロナウィルスの影響で、多くの方が不要・不急の外出を控え、自宅からオンラインでの買い物やサービス利用等、巣ごもり消費需要の高まりにより、今後も更にEC化や店舗のショールーム化が進んでいくことが予想されます。
(コロナ禍における客質・客層の変化)
コロナ禍前までは、日本経済圏の中で大きな盛り上がりを見せていた日本のインバウンド産業。今回の新型コロナウィルス感染拡大に伴い、世界各国でのロックダウンや他国への渡航制限等により、訪日外国人観光客をターゲットとしていたインバウンド産業は壊滅的状況となりました。特に日本の観光地に立地する免税店やドラッグストア、家電量販店等では、訪日外国人観光客の消費により、売上の大半を占めていた店舗もあり、新型コロナウィルスが原因で閉店に追い込まれる店舗もありました。
また、緊急事態宣言の発令による店舗の休業や営業時間短縮要請、不要・不急の外出自粛、テレワーク(在宅勤務)の推進、おうち時間の増加等により、日本人の消費行動にも大きな変化をもたらしております。これまで都心のオフィス街で勤務していたサラリーマンやOLがテレワーク(在宅勤務)の推進に伴い、郊外・住宅立地で消費する人々が増えたことで、都心のオフィス街に立地する店舗の売上低迷に悩む事業者も多く、客質・客層に大きな変化をもたらしております。
当社グループでは、創業期よりサービスを提供してきたラウンダー・推奨販売・店頭調査による人的支援サービスを活用した「アナログ」ビッグデータに加え、IoT対応型デジタルサイネージPISTAを活用した「デジタル」ビッグデータを店舗店頭から収集し、リアル店舗の売場・販促活動に関するデータベース「店舗DB」として一元管理しております。また、地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」や政府統計ポータルサイト「e-Stat(イースタット)」等のオープンデータとの連携や企業のホームページ等に掲載されている店舗情報を自動クローリングすることで最新の店舗情報を整備し、日本全国の主要流通店舗をデータベース化しております。
この店舗DBを活用することで、売場の状況と棚前のAIDMA状況を数値で捕捉でき、消費財メーカーは最適な売場かつ予算で、最適な販促施策を実施することが可能になります。既に多数の店頭販促ソリューションを持っている当社グループがデータドリブンマーケティングの領域に踏み込んでいくことで、販促企画やコンサルティングの領域にビジネスモデルを昇華させるとともに、店頭販促のDX化を推進してまいります。
⑤ インドでの事業展開
新型コロナウイルス感染拡大により、インドコンビニエンスストア事業を取り巻く経営環境は非常に厳しい状況となりました。インドでは新型コロナウイルス感染者数が1,000万人を超え、CDEPLがコンビニエンスストア事業を展開しているニューデリー、バンガロールは感染者数がインドの他の地域と比較して多く、その影響により残念ながらコンビニエンスストア各店舗の販売不振が続いており、一部の店舗が閉店に追い込まれてしまい、今後も販売不振により閉店が発生する可能性も生じております。
このため、当社と致しましては、新型コロナウイルス感染拡大が収束するまでの当面の間は、コンビニエンスストアへの業態転換を控え、業態転換前のコーヒー豆販売事業の継続による資金繰りの改善及び既存のコンビニエンスストアの収益改善を通じて黒字化を図り、一刻も早く MACEL 及び CDGL への貸付債権を回収することで新規出店に必要な資金を確保し、新しいパートナー企業の協力のもとコンビニエンスストア事業の収益改善と拡大を図る所存です。
また、インドの経済成長に後れを取ることなく現地環境の情報収集を円滑に行い、代表取締役社長をはじめ多数のリテール出身者が在籍し、かつインドでの実業経験値と現地有力企業とのパートナーシップを持つという当社グループの強みをいかんなく発揮し、今後の新事業セグメント創出も見据えて引き続き取り組んでまいります。