有価証券報告書-第27期(2023/04/01-2024/03/31)
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「これからの食卓、これからの畑」という企業理念の下で、食に関する社会課題をビジネスの手法で解決することで、持続可能な社会の実現を目指しています。BtoCサブスク事業である「Oisix」「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」をはじめ、子会社の「とくし丸」「Purple Carrot」など、いずれのブランドも、事業を通じ、食の社会課題を解決することを成長の糧としています。当連結会計年度は、「社会課題解決型企業」を目指し、事業展開を行ってきているシダックス株式会社が連結子会社となりました。
当社グループの主要事業であるBtoCサブスク事業のビジネスモデルは、生産者とお客さまを直接つなぐ役割を担っており、サプライチェーン全体を持続可能にする「サステナブルリテール」の関係を築いています。サステナブルな仕組みが成り立つ背景として、蓄積されたお客さまの嗜好情報と天候によって左右される作物の生育状況とを、独自のアルゴリズムでマッチングさせるサブスクリプションボックスを確立している点があります。その結果、畑の生育状況を反映した商品ラインナップを提案しながら、お客さまにとっては好みの商品を継続的に購入できる仕組みとなり、生産された作物の有効活用とお客さまに満足いただけるサービスとを両立しています。
当社グループは、社会課題を解くことへの責任感と、自分たちだったら課題を解けるかもしれないという可能性を同時に感じています。事業をさらに広げることを通じて、よりよい社会、持続可能な社会をつくり、食のこれからをつくり、ひろげていきます。
そのようななか、当社グループを取巻く現在の事業環境やシダックス株式会社を連結子会社化したこと等を考慮したうえで、以下の3つの領域を重要なサステナビリティ項目と定め、社会価値と経済価値を創出し、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでまいります。
1_環境・気候変動への対応
2_人的資本の強化に向けた社内環境整備・人材育成
3_コミュニティ創出への対応
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び個々の取組につきましては、当社のサステナビリティページ(https://www.oisixradaichi.co.jp/sustainability/)をご参照ください。
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社グループでは、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティ推進体制を強化しており、代表取締役社長髙島宏平がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任者として取締役会及び経営会議においてサステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有する体制を取っております。
当社グループのサステナビリティに関するリスク管理については、リスク管理委員会を中心に実施しております。リスク管理委員会は社長直轄の組織で委員長と各部署を代表する委員と事務局で構成されています。リスク管理委員会では毎月会議を実施し、リスク事例の共有、部署横断的なリスク対応についての議論、各委員の活動報告を行っています。四半期に1回リスク管理委員会から執行役員会に定例報告をおこない、各リスク案件について議論し、承認を受けています。
当社グループは、サステナビリティをめぐる課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組んでまいります。
(2)重要なサステナビリティ項目
上記、ガバナンス及びリスク管理を通じて識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下の3項目であります。また、その他の項目につきましては、3 事業等のリスク において記載します。
1_環境・気候変動への対応
2_人的資本の強化に向けた社内環境整備・人材育成
3_コミュニティ創出への対応
1_環境・気候変動への対応
(1)基本方針と取り組み事例
当社は、以下「気候変動シナリオ分析の概要」に記載のとおり、気候変動シナリオの分析を行い、気候変動に関するリスクと機会による影響を把握して、その結果を事業運営の中に取り込むことにより、特に食の社会課題解決を通じた事業成長の実現を目指しています。
(気候変動シナリオ分析の概要)
当社は、気候変動の異なるシナリオ下でのリスクと機会を特定するため、TCFDの提言を踏まえ、シナリオ分析を実施しました。
2100年に産業革命前から1.5℃気温が上昇するシナリオ(1.5℃シナリオ)と、4℃上昇するシナリオ(4℃シナリオ)における2030年時点での気候変動による影響リスク・機会それぞれに関して検討しています。そのためにまず、各部署の代表者と具体的なリスクと機会を洗い出し、当社およびバリューチェーン全体への影響を踏まえ、より影響の大きいものを抽出しました。抽出したリスクと機会に対して、定性・定量的な方法で評価を実施し、財務的な影響度を確認しております。
①気候変動への対応:TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示
・シナリオ分析による影響度評価(財務影響評価)
前提としている主なシナリオ
a. 抽出されたリスクと2030年時点での影響
財務影響度の金額イメージ(大:20億円以上、中:1~20億円、小:1億円未満)
(移行リスク)
(物理リスク)
※影響度は、当連結会計年度末現在において取得可能な情報をもとに算定しうる範囲で記載
※定量評価は、2030年時点まで2024年3月期と同様の事業規模拡大が続いていることを前提に評価
b. シナリオ分析を踏まえたリスクへの対応と、対応から生まれる機会
上記、シナリオ分析に記載したリスクへの対応とそこから生まれる機会において、特に「フードロス削減」と「プラスチック削減」に関連した社会課題解決の取り組みとして具体的に以下のようなことに取り組んでいます。
◆フードロス削減
1.川上:生産地や製造元で発生するフードロスの削減
※フードロスの購入単価818円/Kg(参照:京都市平成29年度調査(http://www.sukkiri-kyoto.com/data))
(ⅰ)ふぞろいRadish
「自然の恵みを次世代につなぐ」ことの地続きの活動として、従来の小売流通の概念にとらわれない多彩な規格外食材を展開する、フードロス削減と生産者支援目指した取り組み。
(ⅱ)Upcycle by Oisix
これまで捨てられていたものに付加価値をつけ、新しい商品にアップグレードさせることをコンセプトに開発・販売するフードロス解決型ブランド。
2.川中:流通過程で発生するフードロスの削減
(ⅰ)需給マッチング
蓄積されたお客さまの嗜好情報と天候によって左右される作物の生育状況とを、独自のアルゴリズムでマッチングさせることで、流通過程でのフードロスは約0.2%と食品小売業において低い水準。また、需要予測システムにはAIを導入し、お客さまの行動、購買データ、レシピデータ、販促データなどを学習することで、最適値での発注が可能になることで、「欠品率」「在庫回転率」を改善。
(ⅱ)オペレーション改善(フードレスキューセンター)
規格に準じた青果のほか、ふぞろい食材の加工も柔軟に対応し、ミールキット原料・加工品として活用できるため、青果の積極的な仕入れや、豊作時に食材を大量に仕入れて加工原料に活用すること等が可能。
3.川下:家庭でのフードロスの削減
ミールキット「Kit Oisix」
調理に必要な食材を必要な分だけ集めてお届けすることで食品廃棄量を1/3に削減。
◆商品資材のプラスチック削減
商品パッケージや包装方法の見直しにより、プラスチック使用料を約半分に削減(2022年3月期比)
1. リサイクル資材、環境対応型資材への切り替え促進
Oisixでは、お客様にお届けする際に使用している段ボールについて、リサイクル用紙使用率100%を実現しております。また、Kit Oisixの外袋にバイオマス素材を配合することで、石油由来プラスチックの削減に取り組んでいます。
2. 不要なプラスチック素材の削減
Oisixでは、内容量によって高さの調整できる新型段ボールを導入することで、商品の上部にあったプラスチック緩衝材の削減を図っています。また、Oisixに加えて、らでぃっしゅぼーやでもプラスチック包装の最適化(薄肉化、簡易包装)による使用料の削減に継続して取り組んでいます。
(2)指標及び目標
当社グループは、脱炭素社会実現への貢献と、そこへの移行に伴うリスク・機会への対応として、2020年にグリーンシフト施策を定めています。そのようななか、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルの達成目標として2026年3月を掲げておりましたが、2024年1月にシダックス社及びその子会社等を連結子会社化したことにより、事業領域が大きく広がり、これまで掲げていた目標や取組みについての見直しが必要な状況となっております。
その状況を踏まえて、改めてグループ全体としての取り組むべき施策を新たに整理した上で、コミュニケーションを取ってまいります。
◆温室効果ガス排出量推移
排出量:CO2排出総量[t-CO2e]
原単位:CO2排出総量原単位(売上高あたり)[t-CO2e/百万円]
(※1):事業業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス等)
(※2):他社から供給された電気・熱・上記の使用に伴う間接排出
(※3):スコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
※算定方法:排出量の算定はGHGプロトコルに基づく
※GHG算定における組織境界(バウンダリ)は、算定期初における財務支配力基準を採用し、オイシックス・ラ・大地株式会社単体に加え、子会社3社(Three Limes,Inc.・株式会社フルーツバスケット・株式会社とくし丸)を算定範囲として設定。
2_人的資本の強化に向けた社内環境整備・人材育成
<人材戦略の基本方針>当社グループは、社員が自律的に挑戦的な課題解決に取り組めるようサポートを行うとともに、社内での議論が尊重され、社員一人ひとりが生き生きと働けるよう風通しがよい職場作りに努めております。
特に課題解決については、ロジカルシンキングをベースとする内製化した研修に力を注いでいます。学んだことを実践で活用できるだけでなく、受講者の中から人にも教えられるスキルを身につけた講師を担える体制としています。
<ガバナンス>経営戦略と人材戦略の連動を図るため、取締役である小﨑宏行が執行役員を兼務し2015年より人事部門を管掌して戦略策定から実行する役割を果たしております。重要な戦略に関する事項については、取締役会においても提案や報告を行い社外取締役の意見も適宜取り入れております。
<戦略>私たちは、「これからの食卓、これからの畑」という企業理念を明示し、食に関する社会課題をビジネスの手法で解決することをミッションとし持続可能な社会の実現を目指しております。その実現のためには、社内の人材の成長や優秀な人材を迎え入れることが不可欠と考えます。
当社では『人が育ち、育てられ、社員が生き生きと働くことが出来る居場所(会社)を創造する!』というビジョンを掲げ、以下3つの戦略を推進して参ります。
1.社員目線での多様性や働きやすさを追求するとともに、行動規範「ORDism」の浸透や体現を通じた理念の貢献実感を得ることで働きがいを醸成する
2.中期事業ポートフォリオ戦略の実現に向けた必要な人材育成・獲得を行う
3.社員の自律的なキャリアづくり・成長機会づくりを支援して「活躍人材の創出」を行う
1.社員目線での多様性や働きやすさを追求するとともに、行動規範「ORDism」の浸透や体現を通じた理念の貢献実感を得ることで働きがいを醸成する
(経営理念の浸透・共感)
私たちは、「これからの食卓、これからの畑」という企業理念を浸透・共感されるよう様々な取組みをしております。インターナルコミュニケーションの1つとして代表による全社向けビデオレター配信の中で理念に触れることや、自社ブランド、そして自身の仕事の意義を深く理解するために、生産者・お客様それぞれの話を聞く機会を設け、生産現場を訪問し農作業の体験もすることで、理念や行動規範「ORDism」の浸透・共感につなげております。
理念を実現する行動規範「ORDism」は、実践したチームや個人をビデオレター内や半期に1度の社員総会内で表彰し、その体現状況のコメントを配信したり同時にその表彰に対する代表コメントも加えたりすることで浸透を図っております。
(社内環境整備)
働き方の面では、産休復帰の働き方支援などを行ってきました。アフターコロナでのハイブリットな働き方でも、社員のパフォーマンスの維持・向上に寄与する環境づくりを目指しており、グループアドレス化の推進やWEB会議ブースの導入や集中スペースの増加など改善を行なっています。今後も本社・各拠点の改善及び採用活動も考慮した本社内のスペース改革を行ない、社員一人ひとりの事情や背景も考慮しながら働きやすい職場環境づくりを推進しています。
2.中期事業ポートフォリオ戦略の実現に向けた必要な人材育成・獲得を行う
(人材育成)
人材育成の面では、個人やチームとしての成果を生み出すために効果的な育成プログラムを構築し、かつ研修で理解したことを実際に「できる」状態にするため、後続人材のOJTでの育成も併せて体系化を行っております。
2022年の物流拠点移転時に発生させたトラブルを教訓にして、全社員参加必須の講義やワークショップを毎年開催することとし、当連結会計年度には「失敗に繋がりやすい考え方や行動」についての講義受講や、自身の業務を振り返り具体的な対策を考えるワークショップを実施しました。対策をしっかりと行い、事業成長につながる様々な挑戦をしていくための育成と位置付けています。
また、主要部門後継人材育成については、部門別、取締役「成長支援会議」の開催を通して育成候補人材の状態をアセスメントし、その情報に基づきwill skill mustについてのソリューションを検討し、具体的育成プランを策定しオンジョブ・オフジョブの成長支援施策の実行管理を行っています。オフジョブの機会としては、マネジメントプログラムやロジカルシンキングプログラム、職種別のスキル独学プログラムを提供しています。
3.社員の自律的なキャリアづくり・成長機会づくりを支援して「活躍人材の創出」を行う
(自律的キャリア支援)
当社独自のセルフ・キャリアドックの仕組みを、社外取締役であり慶應義塾大学名誉教授の花田先生の指導のもと設計しています。2022年1月から段階的に導入し、2024年3月期より社員の全年代が5年に1度は受講できる体制とし自社内のキャリアコンサルタントにて実行しています。
ⅰ.キャリアセミナー実施回数と人数 (2024年3月期実績18回/114人)
ⅱ.キャリア面談実施人数 (2024年3月期実績138人)
年齢別のキャリアセミナーをワークショップ形式で開催し、その後の個別面談を行うことで、キャリア自律の意識向上を図ることで、具体的なキャリアイメージを持ち、新しいビジネスチャンスや新規サービスに従事することで全社収益により貢献することや、エンゲージメントを高めることにつなげていきます。
(エンゲージメントサーベイ)
エンゲージメントサーベイによる状態の定点観測により、偶然に依存しない仕組み化されたWILL育成による熱量高い人材の養成を目指しています。また、個人・チームのエンゲージメントの状態を定量的かつ定期的に見える化することにより、チームの組織課題を捉えて解決ができる状態をつくれるようアプローチしています。
ⅰ.エンゲージメントサーベイ結果(HRbrain社 2024年3月期 実績平均67.5)
<リスクマネジメント>人的資本に関するリスクは、リスク管理委員会の活動を通して管理しております。
リスク管理委員会の活動については、(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理をご参照ください。
<その他の指標>当社のサステナビリティページ(https://www.oisixradaichi.co.jp/sustainability/)をご参照ください。
3_コミュニティ創出への対応
(1)基本方針と取組み事例
1.余暇時間創出
<商品開発>BtoCサブスク事業の主要ブランドであるOisixでは、必要量の食材とレシピがセットになっており、主菜と副菜の2品を20分で作ることができる「Kit Oisix」シリーズを展開しております。「Kit Oisix」は、時短を実現しながら、しっかりと美味しい食事を用意することができる価値を提供するミールキット商品です。また、買い物に行く手間やメニューを考えることからも解放され、自由に使える時間の創出にも役立っています。
共働き世帯の増加やアフターコロナにおける在宅時間の減少など、生活スタイルの変化に合わせて様々な商品ラインナップを展開してきており、2023年7月に発売から10周年を迎えています。
2.労働力不足対応
<業務用ミールKit>全国的に保育士が不足している環境において、保育施設での業務を省力化して今よりももっと子どもと向き合える環境作りをサポートすることを目指し、下処理済みで調理時間を短縮できる手づくり給食ミールキットを展開しています。
手づくり給食ミールキットは、保育施設の給食向けにOisixがノウハウを活かして開発した新しい給食のかたちです。保育施設の給食・食育に関わるスタッフの業務負荷軽減ができ、今まで以上に「食事の介助」や「食育」の時間を創出することが可能となっています。
<包括受託行政サービス>少子高齢化、人口減に伴う財源減少やサービス運営の担い手となる人手不足が進展などの課題を抱える地方自治体から、複数の業務を包括受託することにより、業務の効率化と高度化を大規模に推進し、行政サービスのコスト削減と民間ノウハウを活用した業務の高度化の実現を目指しています。
業務を分析・集約しマルチタスク化することで人員のスリム化を図る、当社が一括管理をしたうえで一部業務を外部企業へ再委託するなどの工夫により、限られた資源の中においても、地域社会を支える持続的な行政サービス運営が実現できるようサポートしています。
3.社会インフラ構築
<とくし丸>国内においては、高齢化の進展に伴い、買い物へのアクセスが困難となっている「買い物難民」、「フードデザート」といった社会課題が顕在化するようになってきています。
そのような中、「とくし丸」は軽トラックを活用した移動スーパーとして、消費者の方の玄関先まで伺い、対面販売により、現物を「見て・触って・感じて・選んで」もらうことで、「買い物」本来の楽しさを実感してもらっています。現在は、全国の各都道府県において、合計で約1,200台が稼働しており、各地域での買い物インフラの一部としての存在感を高めてきています。
また、各地域の地方自治体(県、市、町、区)等と「見守り協定」を締結しており、社会福祉協議会、地域包括センター、ケアマネージャー、民生委員等との連携が図りやすい立場となることで、事業を通じた「見守り」を継続することで、特に高齢化が進展する地域社会の安心・安全を支える役割も担うようになっています。
当社、一般社団法人RCF、ココネット株式会社が連携して運営している、ひとり親世帯を中心としたこどものいる困窮家庭に向けた食支援のプロジェクトです。食品の寄付にご協力いただけるサポート企業と、困窮家庭を支援する各団体とをマッチングし、各団体が運営するフードパントリーなどを通じて必要としている家庭に食支援を行っております。2024年3月時点で、毎月食品をお届けする支援世帯数は首都圏を中心に約2万5,000世帯、食品を寄付するサポート企業は約60社となっております。
<コミュニティバス>路線バスの撤退などで交通空白地の課題が深刻化するなか、「住民の足」として地域の交通を支えるコミュニティバスを民間のノウハウで安定的に運行しています。
地域の交通インフラの担い手として、過疎化に伴う交通需要の縮小下においても持続可能な新しい交通インフラを提案し、その実現をサポートしています。
当社グループは、「これからの食卓、これからの畑」という企業理念の下で、食に関する社会課題をビジネスの手法で解決することで、持続可能な社会の実現を目指しています。BtoCサブスク事業である「Oisix」「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」をはじめ、子会社の「とくし丸」「Purple Carrot」など、いずれのブランドも、事業を通じ、食の社会課題を解決することを成長の糧としています。当連結会計年度は、「社会課題解決型企業」を目指し、事業展開を行ってきているシダックス株式会社が連結子会社となりました。
当社グループの主要事業であるBtoCサブスク事業のビジネスモデルは、生産者とお客さまを直接つなぐ役割を担っており、サプライチェーン全体を持続可能にする「サステナブルリテール」の関係を築いています。サステナブルな仕組みが成り立つ背景として、蓄積されたお客さまの嗜好情報と天候によって左右される作物の生育状況とを、独自のアルゴリズムでマッチングさせるサブスクリプションボックスを確立している点があります。その結果、畑の生育状況を反映した商品ラインナップを提案しながら、お客さまにとっては好みの商品を継続的に購入できる仕組みとなり、生産された作物の有効活用とお客さまに満足いただけるサービスとを両立しています。
当社グループは、社会課題を解くことへの責任感と、自分たちだったら課題を解けるかもしれないという可能性を同時に感じています。事業をさらに広げることを通じて、よりよい社会、持続可能な社会をつくり、食のこれからをつくり、ひろげていきます。
そのようななか、当社グループを取巻く現在の事業環境やシダックス株式会社を連結子会社化したこと等を考慮したうえで、以下の3つの領域を重要なサステナビリティ項目と定め、社会価値と経済価値を創出し、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでまいります。
1_環境・気候変動への対応
2_人的資本の強化に向けた社内環境整備・人材育成
3_コミュニティ創出への対応
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び個々の取組につきましては、当社のサステナビリティページ(https://www.oisixradaichi.co.jp/sustainability/)をご参照ください。
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社グループでは、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティ推進体制を強化しており、代表取締役社長髙島宏平がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任者として取締役会及び経営会議においてサステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有する体制を取っております。
当社グループのサステナビリティに関するリスク管理については、リスク管理委員会を中心に実施しております。リスク管理委員会は社長直轄の組織で委員長と各部署を代表する委員と事務局で構成されています。リスク管理委員会では毎月会議を実施し、リスク事例の共有、部署横断的なリスク対応についての議論、各委員の活動報告を行っています。四半期に1回リスク管理委員会から執行役員会に定例報告をおこない、各リスク案件について議論し、承認を受けています。
当社グループは、サステナビリティをめぐる課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組んでまいります。
(2)重要なサステナビリティ項目
上記、ガバナンス及びリスク管理を通じて識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下の3項目であります。また、その他の項目につきましては、3 事業等のリスク において記載します。
1_環境・気候変動への対応
2_人的資本の強化に向けた社内環境整備・人材育成
3_コミュニティ創出への対応
1_環境・気候変動への対応
(1)基本方針と取り組み事例
当社は、以下「気候変動シナリオ分析の概要」に記載のとおり、気候変動シナリオの分析を行い、気候変動に関するリスクと機会による影響を把握して、その結果を事業運営の中に取り込むことにより、特に食の社会課題解決を通じた事業成長の実現を目指しています。
(気候変動シナリオ分析の概要)
当社は、気候変動の異なるシナリオ下でのリスクと機会を特定するため、TCFDの提言を踏まえ、シナリオ分析を実施しました。
2100年に産業革命前から1.5℃気温が上昇するシナリオ(1.5℃シナリオ)と、4℃上昇するシナリオ(4℃シナリオ)における2030年時点での気候変動による影響リスク・機会それぞれに関して検討しています。そのためにまず、各部署の代表者と具体的なリスクと機会を洗い出し、当社およびバリューチェーン全体への影響を踏まえ、より影響の大きいものを抽出しました。抽出したリスクと機会に対して、定性・定量的な方法で評価を実施し、財務的な影響度を確認しております。
①気候変動への対応:TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示
・シナリオ分析による影響度評価(財務影響評価)
前提としている主なシナリオ
シナリオ | 主に参照したシナリオ |
1.5℃シナリオ | SSP1-1.9シナリオ(IPCC,2023) Net Zero Emissions by 2050シナリオ(IEA,2022) |
4℃シナリオ | SSP5-8.5(IPCC,2023) Stated Policyシナリオ(STEPS)(IEA,2022) |
a. 抽出されたリスクと2030年時点での影響
財務影響度の金額イメージ(大:20億円以上、中:1~20億円、小:1億円未満)
(移行リスク)
分類 | 時間軸 | 財務影響領域 | 可能性のある事業インパクト | 影響度 | ||
1.5℃ | 4℃ | |||||
政策と法 | 炭素税の導入 | 中~長期 | コスト | ‐農作物・水産品・畜産品・消耗費等の原材料・仕入れコストが上昇する。 ‐工場及び物流・配送のエネルギーコストが上昇する。 ‐保有車両の見直しの必要性や自社排出量に対しての費用が発生する。 | 大 | 小 |
プラスチック規制の強化 | 中~長期 | コスト | ‐プラスチック規制が強化されることで、包装材における代替素材の開発・導入が求められコストが上昇する。 | 中 | 小 | |
GHG排出規制の強化 | 中期 | コスト/資産 | ‐社有車や配送車両の電気自動車へ置き換えに伴い、転換コストなどの負担が上昇する。 | 大 | 小 | |
その他環境規制の導入・強化 | 短期 | コスト/資産 | ‐環境関連規制強化への対応による設備投資の増加や、食品安全基準等の見直しへの対応コストが上昇する。 | 中 | 小 |
業界 / 市場 | 消費者の環境志向の変化 | 中~長期 | 収益 | ‐環境への取組みや非財務情報の開示が不十分な場合、消費者からの支持が低下し、ブランド力の下落や顧客離れによる減収が発生する。 | 大 | 小 |
エネルギー需給の変化 | 中期 | コスト | ‐化石燃料を用いたエネルギー調達コストが上昇し、原材料・仕入れの生産コストやガソリン車(現車両)の利用による配送コストが上昇する。 ‐再エネ調達需要の高まりにより、再エネ価格や再エネ対応切り替え設備の稼働価格が上昇する。 | 小 | 小 | |
投資家の評判変化 | 中~長期 | 資本 | ‐気候変動への取組みや非財務情報の開示が不十分な場合、優遇金利が適用されず、企業評価が低下する。 | 小 | 小 |
分類 | 時間軸 | 財務影響領域 | 可能性のある事業インパクト | 影響度 | ||
1.5℃ | 4℃ | |||||
技 術 | 農・水産業における生産イノベーション | 中~長期 | コスト/資産 | ‐農・水産業がスマート農業等脱炭素モデルに移行するために最新設備等を導入することでコスト負担が上昇する。 | 大 | 小 |
物流・配送におけるイノベーション | 中期 | コスト/資産 | ‐配送車両の電気自動車へ置き換えに伴い、コスト負担が上昇する。 | 大 | 小 |
(物理リスク)
分類 | 時間軸 | 財務影響領域 | 可能性のある事業インパクト | 影響度 | ||
1.5℃ | 4℃ | |||||
急 性 | 異常気象の激甚化 | 短~長期 | コスト | ‐集中豪雨や台風によって生産地域の浸水被害や、物流網の混乱が発生し、商品の調達ができなくなる。 ‐台風等の自然災害による運休の発生等で売上の減少や車両損傷による補償対応が増加する。 ‐事業所の浸水等により、事業活動が停止する。 | 大 | 大 |
慢 性 | 調達・供給体制への影響 | 長期 | コスト/収益 | ‐気候変動による直接的・間接的な収穫量の低下により、調達必要量の確保が難しくなる。 ‐需給バランスの調整が難しくなり、欠品や廃棄処理の増加が懸念される。‐高温により農作業効率が低下し収穫量が減少する。 | 小 | 大 |
品質への影響 | 長期 | コスト/収益 | ‐当社グループが設定する水準の品質確保が難しくなる。 ‐顧客への配送時に、冷凍食品を中心に品質担保が困難になる。 ‐熱中症や食中毒などの発生リスクが高まり、発生してしまった場合に評判悪化により売上が減少する。 | 小 | 大 | |
コスト構造への影響 | 長期 | コスト | ‐原材料・資材等の仕入れコストが上昇する。 ‐人材不足や操業可能設備不足等からコスト負担が上昇する。 | 小 | 大 | |
消費者の食ニーズ全般の変化 | 長期 | 収益 | ‐消費者の生活における気候変動への適応負担が増加し、食費支出そのものが減少する。 | 中 | 大 |
※影響度は、当連結会計年度末現在において取得可能な情報をもとに算定しうる範囲で記載
※定量評価は、2030年時点まで2024年3月期と同様の事業規模拡大が続いていることを前提に評価
b. シナリオ分析を踏まえたリスクへの対応と、対応から生まれる機会
分類 | 対応 | 機会 |
炭素税の導入 | ‐カーボンニュートラルの達成 | ‐省エネの積極的な導入によりコスト削減ができる。 ‐カーボンニュートラル達成により、炭素税の負担を減らせる。 |
プラスチック規制の強化 | ‐商品パッケージのさらなるグリーン化 | ‐代替プラスチックの新包装材の先行導入により差異化をはかる。 |
その他環境規制の導入・強化 | ‐食品安全基準の強化 ‐特定フロン排出抑制 | ‐カーボンフットプリント開示規制の強化により、自社の優位性の訴求や、その他環境配慮に対する補助金導入による金銭的なメリットを享受する。 |
消費者の環境志向の変化 | ‐アップサイクル食品の販売推進‐商品パッケージのさらなるグリーン化 | ‐環境志向・ニーズの高まりに的確に対応し、顧客との関係性を構築・向上させることで、ブランド力や既存顧客との関係性が強化されるだけでなく、新たな顧客開拓・既存顧客のロイヤリティ向上へも繋がる。 |
エネルギー需給の変化 | ‐省電力化‐オフィス・全物流拠点電力に再生エネルギーを導入 | ‐グリーン配送や、省エネ設備の早期導入等によりコスト負担を抑えられる。 |
農・水産業における生産イノベーション | ‐「サステナブルリテール」の強化 | ‐環境負荷が少ない食材の製造等、フードテックの活用・開発促進によりニューフードの市場を活性化する。 ‐冷凍食品、加工生産、可食化技術も含めたイノベーティブな生産、安定供給体制を先行して構築し差異化をはかる。 |
分類 | 対応 | 機会 |
物流・配送におけるイノベーション | ‐配送車の省エネルギー配送とEV化の実証実験 | ‐自動運転技術やドローン技術等を用いて、気候変動に影響を受けにくく、顧客の利便性の高い物流・配送体制を先行して構築する。 |
異常気象の激甚化 | ‐「サステナブルリテール」の強化 ‐良質なサプライの拡大‐ローコストオペレーション、マーケティングノウハウ共有による収益力改善 | ‐生産地の多様な地理的ポートフォリオにより、局所的な収穫不良時でも商品の安定供給が図れる。 -学童における災害時の緊急連絡サービスの必要性が高まり、需要が増加する |
調達・供給体制への影響 | ‐トレーサビリティのデータを有効活用し、需給調整を綿密に実施し、安定供給が図れる。 ‐国内外での収穫可能性の拡大を想定し、安定生産できる栽培、生産方法の確立を後押しする。 | |
品質への影響 | ‐従来の小売流通基準に満たない原材料(B級品等)の活用機会を増加させ、顧客にもその価値を理解してもらうことで、新たな訴求要素を確立する。 | |
消費者の食ニーズ全般の変化 | ‐熱中症予防や備蓄可能な食品に対するニーズが高まる。 ‐外出の困難化から宅配そのもののニーズが増加する。 |
上記、シナリオ分析に記載したリスクへの対応とそこから生まれる機会において、特に「フードロス削減」と「プラスチック削減」に関連した社会課題解決の取り組みとして具体的に以下のようなことに取り組んでいます。
◆フードロス削減
1.川上:生産地や製造元で発生するフードロスの削減
2024年3月期 削減量 | 2024年3月期 削減量の経済的価値 |
506,654Kg | 約414万円 |
※フードロスの購入単価818円/Kg(参照:京都市平成29年度調査(http://www.sukkiri-kyoto.com/data))
(ⅰ)ふぞろいRadish
「自然の恵みを次世代につなぐ」ことの地続きの活動として、従来の小売流通の概念にとらわれない多彩な規格外食材を展開する、フードロス削減と生産者支援目指した取り組み。
(ⅱ)Upcycle by Oisix
これまで捨てられていたものに付加価値をつけ、新しい商品にアップグレードさせることをコンセプトに開発・販売するフードロス解決型ブランド。
2.川中:流通過程で発生するフードロスの削減
(ⅰ)需給マッチング
蓄積されたお客さまの嗜好情報と天候によって左右される作物の生育状況とを、独自のアルゴリズムでマッチングさせることで、流通過程でのフードロスは約0.2%と食品小売業において低い水準。また、需要予測システムにはAIを導入し、お客さまの行動、購買データ、レシピデータ、販促データなどを学習することで、最適値での発注が可能になることで、「欠品率」「在庫回転率」を改善。
(ⅱ)オペレーション改善(フードレスキューセンター)
規格に準じた青果のほか、ふぞろい食材の加工も柔軟に対応し、ミールキット原料・加工品として活用できるため、青果の積極的な仕入れや、豊作時に食材を大量に仕入れて加工原料に活用すること等が可能。
3.川下:家庭でのフードロスの削減
ミールキット「Kit Oisix」
調理に必要な食材を必要な分だけ集めてお届けすることで食品廃棄量を1/3に削減。
◆商品資材のプラスチック削減
商品パッケージや包装方法の見直しにより、プラスチック使用料を約半分に削減(2022年3月期比)
1. リサイクル資材、環境対応型資材への切り替え促進
Oisixでは、お客様にお届けする際に使用している段ボールについて、リサイクル用紙使用率100%を実現しております。また、Kit Oisixの外袋にバイオマス素材を配合することで、石油由来プラスチックの削減に取り組んでいます。
2. 不要なプラスチック素材の削減
Oisixでは、内容量によって高さの調整できる新型段ボールを導入することで、商品の上部にあったプラスチック緩衝材の削減を図っています。また、Oisixに加えて、らでぃっしゅぼーやでもプラスチック包装の最適化(薄肉化、簡易包装)による使用料の削減に継続して取り組んでいます。
(2)指標及び目標
当社グループは、脱炭素社会実現への貢献と、そこへの移行に伴うリスク・機会への対応として、2020年にグリーンシフト施策を定めています。そのようななか、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルの達成目標として2026年3月を掲げておりましたが、2024年1月にシダックス社及びその子会社等を連結子会社化したことにより、事業領域が大きく広がり、これまで掲げていた目標や取組みについての見直しが必要な状況となっております。
その状況を踏まえて、改めてグループ全体としての取り組むべき施策を新たに整理した上で、コミュニケーションを取ってまいります。
◆温室効果ガス排出量推移
排出量:CO2排出総量[t-CO2e]
原単位:CO2排出総量原単位(売上高あたり)[t-CO2e/百万円]
項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | |||
排出量 | 排出量 原単位 | 排出量 | 排出量 原単位 | 排出量 | 排出量 原単位 | |
スコープ1(※1) | 2,468 | - | 1,224 | - | 1,131 | - |
スコープ2(※2) | 5,308 | - | 45 | - | 43 | - |
自社排出量(スコープ1+2)計 | 7,776 | 0.08 | 1,269 | 0.01 | 1,174 | 0.01 |
スコープ3(※3) | 287,705 | - | 281,278 | - | 302,831 | - |
サプライチェーン排出量(スコープ1+2+3)計 | 295,481 | 2.86 | 282,547 | 2.45 | 304,005 | 2.60 |
(※1):事業業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス等)
(※2):他社から供給された電気・熱・上記の使用に伴う間接排出
(※3):スコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
※算定方法:排出量の算定はGHGプロトコルに基づく
※GHG算定における組織境界(バウンダリ)は、算定期初における財務支配力基準を採用し、オイシックス・ラ・大地株式会社単体に加え、子会社3社(Three Limes,Inc.・株式会社フルーツバスケット・株式会社とくし丸)を算定範囲として設定。
2_人的資本の強化に向けた社内環境整備・人材育成
<人材戦略の基本方針>当社グループは、社員が自律的に挑戦的な課題解決に取り組めるようサポートを行うとともに、社内での議論が尊重され、社員一人ひとりが生き生きと働けるよう風通しがよい職場作りに努めております。
特に課題解決については、ロジカルシンキングをベースとする内製化した研修に力を注いでいます。学んだことを実践で活用できるだけでなく、受講者の中から人にも教えられるスキルを身につけた講師を担える体制としています。
<ガバナンス>経営戦略と人材戦略の連動を図るため、取締役である小﨑宏行が執行役員を兼務し2015年より人事部門を管掌して戦略策定から実行する役割を果たしております。重要な戦略に関する事項については、取締役会においても提案や報告を行い社外取締役の意見も適宜取り入れております。
<戦略>私たちは、「これからの食卓、これからの畑」という企業理念を明示し、食に関する社会課題をビジネスの手法で解決することをミッションとし持続可能な社会の実現を目指しております。その実現のためには、社内の人材の成長や優秀な人材を迎え入れることが不可欠と考えます。
当社では『人が育ち、育てられ、社員が生き生きと働くことが出来る居場所(会社)を創造する!』というビジョンを掲げ、以下3つの戦略を推進して参ります。
1.社員目線での多様性や働きやすさを追求するとともに、行動規範「ORDism」の浸透や体現を通じた理念の貢献実感を得ることで働きがいを醸成する
2.中期事業ポートフォリオ戦略の実現に向けた必要な人材育成・獲得を行う
3.社員の自律的なキャリアづくり・成長機会づくりを支援して「活躍人材の創出」を行う
1.社員目線での多様性や働きやすさを追求するとともに、行動規範「ORDism」の浸透や体現を通じた理念の貢献実感を得ることで働きがいを醸成する
(経営理念の浸透・共感)
私たちは、「これからの食卓、これからの畑」という企業理念を浸透・共感されるよう様々な取組みをしております。インターナルコミュニケーションの1つとして代表による全社向けビデオレター配信の中で理念に触れることや、自社ブランド、そして自身の仕事の意義を深く理解するために、生産者・お客様それぞれの話を聞く機会を設け、生産現場を訪問し農作業の体験もすることで、理念や行動規範「ORDism」の浸透・共感につなげております。
理念を実現する行動規範「ORDism」は、実践したチームや個人をビデオレター内や半期に1度の社員総会内で表彰し、その体現状況のコメントを配信したり同時にその表彰に対する代表コメントも加えたりすることで浸透を図っております。
(社内環境整備)
働き方の面では、産休復帰の働き方支援などを行ってきました。アフターコロナでのハイブリットな働き方でも、社員のパフォーマンスの維持・向上に寄与する環境づくりを目指しており、グループアドレス化の推進やWEB会議ブースの導入や集中スペースの増加など改善を行なっています。今後も本社・各拠点の改善及び採用活動も考慮した本社内のスペース改革を行ない、社員一人ひとりの事情や背景も考慮しながら働きやすい職場環境づくりを推進しています。
2.中期事業ポートフォリオ戦略の実現に向けた必要な人材育成・獲得を行う
(人材育成)
人材育成の面では、個人やチームとしての成果を生み出すために効果的な育成プログラムを構築し、かつ研修で理解したことを実際に「できる」状態にするため、後続人材のOJTでの育成も併せて体系化を行っております。
2022年の物流拠点移転時に発生させたトラブルを教訓にして、全社員参加必須の講義やワークショップを毎年開催することとし、当連結会計年度には「失敗に繋がりやすい考え方や行動」についての講義受講や、自身の業務を振り返り具体的な対策を考えるワークショップを実施しました。対策をしっかりと行い、事業成長につながる様々な挑戦をしていくための育成と位置付けています。
また、主要部門後継人材育成については、部門別、取締役「成長支援会議」の開催を通して育成候補人材の状態をアセスメントし、その情報に基づきwill skill mustについてのソリューションを検討し、具体的育成プランを策定しオンジョブ・オフジョブの成長支援施策の実行管理を行っています。オフジョブの機会としては、マネジメントプログラムやロジカルシンキングプログラム、職種別のスキル独学プログラムを提供しています。
3.社員の自律的なキャリアづくり・成長機会づくりを支援して「活躍人材の創出」を行う
(自律的キャリア支援)
当社独自のセルフ・キャリアドックの仕組みを、社外取締役であり慶應義塾大学名誉教授の花田先生の指導のもと設計しています。2022年1月から段階的に導入し、2024年3月期より社員の全年代が5年に1度は受講できる体制とし自社内のキャリアコンサルタントにて実行しています。
ⅰ.キャリアセミナー実施回数と人数 (2024年3月期実績18回/114人)
ⅱ.キャリア面談実施人数 (2024年3月期実績138人)
年齢別のキャリアセミナーをワークショップ形式で開催し、その後の個別面談を行うことで、キャリア自律の意識向上を図ることで、具体的なキャリアイメージを持ち、新しいビジネスチャンスや新規サービスに従事することで全社収益により貢献することや、エンゲージメントを高めることにつなげていきます。
(エンゲージメントサーベイ)
エンゲージメントサーベイによる状態の定点観測により、偶然に依存しない仕組み化されたWILL育成による熱量高い人材の養成を目指しています。また、個人・チームのエンゲージメントの状態を定量的かつ定期的に見える化することにより、チームの組織課題を捉えて解決ができる状態をつくれるようアプローチしています。
ⅰ.エンゲージメントサーベイ結果(HRbrain社 2024年3月期 実績平均67.5)
<リスクマネジメント>人的資本に関するリスクは、リスク管理委員会の活動を通して管理しております。
リスク管理委員会の活動については、(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理をご参照ください。
<その他の指標>当社のサステナビリティページ(https://www.oisixradaichi.co.jp/sustainability/)をご参照ください。
3_コミュニティ創出への対応
(1)基本方針と取組み事例
1.余暇時間創出
<商品開発>BtoCサブスク事業の主要ブランドであるOisixでは、必要量の食材とレシピがセットになっており、主菜と副菜の2品を20分で作ることができる「Kit Oisix」シリーズを展開しております。「Kit Oisix」は、時短を実現しながら、しっかりと美味しい食事を用意することができる価値を提供するミールキット商品です。また、買い物に行く手間やメニューを考えることからも解放され、自由に使える時間の創出にも役立っています。
共働き世帯の増加やアフターコロナにおける在宅時間の減少など、生活スタイルの変化に合わせて様々な商品ラインナップを展開してきており、2023年7月に発売から10周年を迎えています。
2.労働力不足対応
<業務用ミールKit>全国的に保育士が不足している環境において、保育施設での業務を省力化して今よりももっと子どもと向き合える環境作りをサポートすることを目指し、下処理済みで調理時間を短縮できる手づくり給食ミールキットを展開しています。
手づくり給食ミールキットは、保育施設の給食向けにOisixがノウハウを活かして開発した新しい給食のかたちです。保育施設の給食・食育に関わるスタッフの業務負荷軽減ができ、今まで以上に「食事の介助」や「食育」の時間を創出することが可能となっています。
<包括受託行政サービス>少子高齢化、人口減に伴う財源減少やサービス運営の担い手となる人手不足が進展などの課題を抱える地方自治体から、複数の業務を包括受託することにより、業務の効率化と高度化を大規模に推進し、行政サービスのコスト削減と民間ノウハウを活用した業務の高度化の実現を目指しています。
業務を分析・集約しマルチタスク化することで人員のスリム化を図る、当社が一括管理をしたうえで一部業務を外部企業へ再委託するなどの工夫により、限られた資源の中においても、地域社会を支える持続的な行政サービス運営が実現できるようサポートしています。
3.社会インフラ構築
<とくし丸>国内においては、高齢化の進展に伴い、買い物へのアクセスが困難となっている「買い物難民」、「フードデザート」といった社会課題が顕在化するようになってきています。
そのような中、「とくし丸」は軽トラックを活用した移動スーパーとして、消費者の方の玄関先まで伺い、対面販売により、現物を「見て・触って・感じて・選んで」もらうことで、「買い物」本来の楽しさを実感してもらっています。現在は、全国の各都道府県において、合計で約1,200台が稼働しており、各地域での買い物インフラの一部としての存在感を高めてきています。
また、各地域の地方自治体(県、市、町、区)等と「見守り協定」を締結しており、社会福祉協議会、地域包括センター、ケアマネージャー、民生委員等との連携が図りやすい立場となることで、事業を通じた「見守り」を継続することで、特に高齢化が進展する地域社会の安心・安全を支える役割も担うようになっています。
<コミュニティバス>路線バスの撤退などで交通空白地の課題が深刻化するなか、「住民の足」として地域の交通を支えるコミュニティバスを民間のノウハウで安定的に運行しています。
地域の交通インフラの担い手として、過疎化に伴う交通需要の縮小下においても持続可能な新しい交通インフラを提案し、その実現をサポートしています。